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13年近く前のこんな光景は、安倍政権下ではもう見られない!? photo Getty Images
拉致問題で誠意ある回答のない北朝鮮を恫喝!? 朝鮮総連トップ次男逮捕の裏側
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43302
2015年05月14日(木) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
「これで安倍(晋三)政権の間に、拉致被害者が帰国することはないだろう」
朝鮮総連トップ、許宗萬議長の次男逮捕を受けて、総連関係者がこう断言した。
■北朝鮮政府も抗議
複雑な歴史的背景を抱え、どんでん返しが相次ぐ日朝関係は、先行きの予想がつかないものの、現段階で、息子を逮捕された許議長が、激しい怒りを燃やしているのは想像に難くない。
また、北朝鮮政府も最近は総連との一体化をアピールしており、次男・許政道逮捕につながった一連の「マツタケ不正輸入事件」の捜査に対し、抗議を続けている。
拉致被害者らの総括的な調査を約束した「ストックホルム合意」から約1年が経過したが、今回の事件で、両国の関係が、当面、冷え込むのは避けられまい。
事件構図はシンプルであり、容易に想像できる範囲のものだった。
2010年9月27日、北朝鮮産のマツタケ約1800キロ(輸入申告価格約450万円)を中国産と偽り、中国経由で不正に輸入したというもの。
産地を偽装して北朝鮮産を輸入する外為法違反事件は、過去に何度も繰り返され、マツタケの他、アサリ、ウニ、漢方薬など枚挙にいとまない。
日本政府は、北朝鮮が核実験を行なったのを機に、06年以降、北朝鮮からのマツタケ輸入を全面禁止。重要な“稼ぎの品”を失った朝鮮総連は、傘下の貿易会社「朝鮮特産物販売」が、ダミーを使って中国経由で輸入した。許政道容疑者は、それを主導したという。
問題は、「なぜ今なのか」である。
■ 総連本部ビル問題では「寛容」だったが・・・
逮捕容疑は5年近く前の不正輸入で、しかも家宅捜索は昨年5月、大掛かりに行われ、許政道容疑者の自宅も含まれていた。その際、マツタケの仕入れに関し、同容疑者が記録していたノートも押収されていた。
菅義偉官房長官は、事件後、「警察は、法と証拠に基づいて捜査している。わが国は法治国家で自然なことだ」と、述べている。
外為法違反の容疑があり、証拠もあるのだから捜査は自然だが、時期は自然ではない。明らかに北朝鮮政府の“出方”を見ていた。象徴が、総連中央本部ビルの売却で日本政府が示した“寛容”との落差である。
今年1月28日、総連ビルを約22億円で落札した四国の不動産会社「マルナカホールディングス(マルナカHD)」が、山形県の倉庫業「グリーンフォーリスト(グ社)」に、約44億円で売却した。
売買は難航した。
マルナカHDは純投資だから高値で売却したい。だが、総連は「事実上の大使館」である総連ビルを離れたくはない。そこで登場したのが、マルナカHDとも総連の許宗萬議長とも親しい山内俊夫元参院議員である。
不動産業者でもある山内氏は、もともと総連にパイプがあり、総連の継続使用を認めるグ社をマルナカHDの売却先とした。
「総連ビルは、拉致問題を含めた日朝交渉における“喉に刺さったトゲ”のようなもの。それを抜き、一日でも早く交渉が進展するように協力したかった」
山内氏は、仲介業者となった理由をこう説明した。
グ社がダミーであるのは、所有権移転と同時に、総連系企業の白山出版会館管理会が、50億円の根抵当権を設定しているのでも明らかだ。
朝銀信用組合の破綻が相次ぎ、政府は1兆4000億円の公的資金を投入して処理。そのうちの627億円分が総連融資分とされたが、総連は返済せず、競売となった経緯がある。本来、ダミー使用の“居座り”は許されない。だが、政府は黙認した。許宗萬議長と情報を共有、金正恩第一書記も望む「継続使用」を認めたのである。
理由は拉致問題の解決。ストックホルム合意は進展せず、日本にとって副次的な日本人妻や遺骨問題を優先、拉致問題の調査報告は先延ばしされていた。その打開策として、「継続使用」という塩を贈った。
私は、グ社への売却が決まった際、本ブログに「朝鮮総連ビルをマルナカHDから44億円で購入、元都銀マンの会社が『総連の大家』に」(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/41959)と、題する記事を掲載。最後をこう締めくくった。
「今度は、北朝鮮(総連)が、拉致被害者などの帰国問題で、最大限の配慮をする番だ」
■ 「融和路線」の終了
しかし、北朝鮮は日本の“誠意”に応えない。2月末、外務省が、アジア大洋州局の小野敬一北東アジア課長を大連に派遣、北朝鮮と接触させたところ、北朝鮮は引き続き、日本人妻や遺骨問題の調査を先行させる意向であることが判明した。
ストップしていた外為法違反事件が動き出すのは3月に入ってからである。3月26日、合同捜査本部は輸入の窓口になった貿易会社「東方」の社長らを逮捕、許宗萬議長の自宅を家宅捜索した。
「融和路線」の終了を告げるもので、北朝鮮は、4月2日、再調査をめぐる日朝政府間協議の中断をほのめかす通知を送付してきた。だが、政府は“ゆさぶり”と受け止めており、引き続き圧力を強める方針で、4月13日に期限を迎えた北朝鮮経済制裁措置の2年間の延長を決めている。
また、総連ビルにおいて、ダミー利用の継続使用を黙認はしたが、違法性まで認めたわけではない。グ社の資金調達には、香港から10億円が振り込まれるなど、資金洗浄を伺わせる動きもある。
政府の路線変更は、総連本体を巻き込む事件に発展するかも知れない。
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