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「ブラック企業被害対策弁護団HP」より
塩崎厚労相の失言が波紋 残業代ゼロ法案成立後の対象拡大を経済界と“約束”
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150514-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 5月14日(木)6時1分配信
塩崎恭久厚生労働大臣の発言が波紋を呼んでいる。4月20日、日本経済研究センターの「会員会社・社長朝食会」に招かれた塩崎大臣が今国会に提出されている「残業代ゼロ制度」の高度プロフェッショナル労働制度について「小さく産んで大きく育てるので、ぐっと我慢してとりあえず通す」と発言したのだ。この朝食会は「経済団体など各界を代表する方々を招く会員交流の場」という触れ込みで、当日約100人の経営者が参加していた。
塩崎厚労大臣,残業代ゼロ法案について本音を暴露!
塩崎大臣の発言は国会でも取り上げられ、4月24日の衆議院厚生労働委員会で民主党の山井和則議員が「(残業代ゼロ制度の対象となる下限年収である)1075万円は高すぎるけれども我慢してほしいという趣旨のことをおっしゃったと聞いているのですが、そういう趣旨の話はされませんでしたか」と質問し、塩崎大臣はこう答えている。
「1075万円というのでお願いするということでありますから、それが高いだとか、低いとか、そんなようなことは私は言うはずもないと思います。ただ、申し上げているように、記録が残っているわけではないので、正確に一字一句どう言ったかはよく覚えておりません」(厚生労働委員会速記録より)
塩崎大臣は「記録が残っているわけではない」と言い、同センター事務局もレコーダーでの記録や速記も取っていなかったらしい。しかし、その後、音声記録が存在していたことが明らかになり、現在ブラック企業被害対策弁護団のHP上にアップされている。その声はまさしく塩崎大臣の声であり、同HPによればこう述べている。
「高度プロフェッショナル制度はまあ、1000万円以上もらっている人って、実は働いている人の4%くらいしかいないんですね。そのうちの1.5%は役員ですから、残り2.5%でそれも希望者だけとなればものすごく少ないところでスタートするんですけど、まあ、我々としては小さく産んで大きく育てるという発想を変えて、まあ、時間法制ではかからない、労働時間法制はかからないけど、健康時間ということで別の論理で健康はちゃんと守って、だけどむしろクリエイティビティを重んじる働き方をやってもらうということで、まあ、とりあえず入っていくので、経団連がさっそく1075万円を下げるんだといったもんだから、まああれでまた質問が無茶苦茶きましたよ。ですから皆さん、それはちょっとぐっと我慢していただいてですね、まあとりあえず通すことだと言って、合意をしてくれると大変ありがたいと思っています」
●対象者の拡大を“約束”
この発言を聞く限りその趣旨は、年収要件の1075万円という対象者がものすごく少ないところでスタートするが、「小さく産んで大きく育てる」という発想に変えて、とりあえず制度を導入するので、経営者の皆さんは我慢してとりあえず法案を通すことに合意をしてほしいというものだ。
つまり塩崎大臣の本音は、「経済界に今は静かにしていてほしいが、法案が成立すれば、いずれ経済界が望んでいる対象者の拡大をしますよ」と約束しているに等しい。
なぜこんな発言が飛び出したのか。塩崎大臣も「経団連がさっそく1075万円を下げるんだと言ったもんだから」と話している。これは残業代ゼロ法案が4月3日に閣議決定された直後の6日、榊原定征経団連会長の記者会見における発言を指している。榊原会長は高度プロフェッショナル制度について「制度が適用される範囲をできるだけ広げていっていただきたい」と述べている。もっとも、この発言は驚くに値しない。榊原会長は以前に「少なくとも全労働者の10%程度は適用を受けられるような制度にすべきだ」と発言し、これまでも対象者の拡大を求め続けてきた経緯がある。
対象の拡大についてより踏み込んだ要望をしているのが、同じ経済団体の経済同友会だ。厚生労働省の審議会が法案内容のベースとなる報告書を提出したことを受けて、3月17日に意見を発表している(長時間労働是正と高度プロフェッショナル制度に関する意見)。
高度プロフェッショナル制度の対象者は年収要件と対象業務を省令で定めることになっている。具体的な対象業務としては「金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント」などが例示されているが、詳細については法案成立後に定めることになる。この対象業務について経済同友会は、「限定的に対象業務を列挙することは極めて困難だ」と指摘し、こう主張している。
「個別企業の労使で話し合い、適切な業務を設定することが妥当であり、本制度の活用を阻まないような制度設計にすべきである。(略)上記(1)のとおり、対象労働者を狭く限定していることから、対象業務については、過度に限定する必要はない」
上記(1)とは年収要件の1075万円を指す。要するに「年収要件が高いのだから、せめて対象業務は個別の会社で決めさせてほしい」と言っているのだ。個別の企業で対象業務を決められるようになれば、当然対象者は広がる。とくに大手企業の中には40代以上で1000万円を超える層も少なくない。また、その人たちに残業代を支払うことで管理職の給与との逆転現象も起きており、制度の対象者にしたいとの思惑もある(詳細は拙著『2016年残業代がゼロになる』<光文社>参照)。
●過去のトラウマ
こうした経団連や経済同友会など経済界の要望は、今に始まったことではない。第一次安倍政権下で残業代ゼロ制度が浮上する前後において、政府・自民党に同じ要求を繰り返していたからだ。そうした過去の経緯を踏まえた場合、今回の塩崎発言は2つの点から重要な意味を持つ。
実は対象者となる年収要件「1075万円以上」を安倍政権の成長戦略(「日本再興戦略」改定2014)に盛り込む際に、政府の産業競争力会議内において攻防が繰り広げられた。制度を導入して対象者を拡大したい経済産業省側と、制度導入に消極的かつ対象者を絞り込みたい厚生労働省側が対立し、最終的に「1075万円以上」で決着した経緯がある。
経産省・経済界としては当然それで納得したわけではなく、対象要件の引き下げを狙っていた。経団連会長の発言や経済同友会の意見は、それに沿ったものであることは間違いない。その意味では、今回の塩崎大臣の「小さく産んで大きく育てる」発言は経済界の意向に沿って「いずれ対象者を拡大します」と厚労省が了解したという意思表示とみることができる。
もう1つは、法案に反対する野党以上に、世論の反発を過度に恐れているからだ。それは8年前のトラウマがある。2007年の通常国会では、残業代ゼロ制度の法案が、提出寸前まで至っていた。だが法案の中身は対象者を管理職(管理監督者)の一歩手前に位置する者と想定。年収については「相当程度高い者」とし、対象者の範囲は個別企業の労使に委ねていた。
しかし、法案の内容が明らかになると、年収要件の「相当程度高い者」という曖昧な基準に不審の目が向けられ、経団連が主張する「年収400万円以上」も対象になるのではないかという不安が広がり、世論の反発が一気に強まった。メディアなどでも「残業代ゼロ制度」「長時間労働の野放し合法化法」「過労死促進法」と批判され、しだいに反対世論が形成されていった。
慌てたのは厚労省である。07年1月11日、同省は対象者の範囲を「年収900万円以上」とし、対象業務を「企画・立案・調査・研究・分析の5業務に限る。実際の運用対象者は2万人程度」と発表し、反発を和らげようと努めたが、時すでに遅かった。ついに安倍首相も同年1月16日、法律案について「(法案成立には)働く人たち、国民の理解が不可欠だ。今の段階では理解が得られていない」と述べ、通常国会への法案提出を断念するに至った。
●塩崎大臣の胸中
当然、安倍政権はこの時の苦い経験を学習している。そのため、当初から対象者の要件に「年収1000万円以上」を掲げ、対象業務も「高度の専門知識を持つプロフェッショナル」に限定すると発表した。その戦略がうまくいき、大方の国民に「自分たちとは関係ない」という雰囲気を醸成させるのに成功している。また、07年の時にはほとんどの新聞が反対の論陣を張っていたが、今は法案の評価をめぐり四分五裂の状態にあることを見てもわかる。
そしていよいよ法案提出にこぎつけた段階での、経済界の相次ぐ要望発言である。塩崎大臣としては「せっかくここまでうまく運んできたのに、余計なことで世論の反発を招くと、07年の二の舞いになりかねない」と思ったのではないか。じつは塩崎大臣は法案が廃案になったときの内閣官房長官であり、当時の実情をよく知っていた。
民主党の山井議員は、塩崎大臣の発言について「今国民を騙している最中なので、経団連の思いはわかっていますから黙っていてくださいという趣旨だ」と述べている。塩崎大臣としても、昔年のリベンジを果たしたいという強い思いがあったのかもしれない。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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