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渡邉恒雄会長が新聞社の多角経営を自慢、「読売新聞は全く安泰です」、ジャーナリズムから情報産業への変質の危険性
http://www.kokusyo.jp/shinbun10/7646/
2015年05月13日 MEDIA KOKUSYO
新聞社の衰退が指摘されるようになって久しいが、読売の渡邉恒雄会長は、今年4月の入社式に行った挨拶で、読売の経営が依然として安定していることを強調してみせた。多角経営の優位性を次のように述べている。新聞人の言葉というよりも、むしろ財界人の言葉である。
「各新聞社とも今、活字不況時代ということもあって、経営は相当苦しいですが、読売新聞は全く安泰です。しかも新聞だけではなく、全ての分野の経営において成功しています。
野球では巨人軍があるし、出版部門では、一番古い総合雑誌としての歴史を持つ「中央公論」を中心とした中央公論新社があるし、1部上場会社で、最近視聴率も上げている日本テレビも読売新聞が筆頭株主で姉妹関係にあります。
また、非常に大きな不動産や土地を持ったよみうりランドも1部上場会社ですが、読売新聞から会長、社長等を出し、筆頭株主も読売新聞です。
ただいま皆さんに名演奏を聴かせてくれた読売日本交響楽団もグループの一員です。
そのほか読売理工医療福祉専門学校や読売自動車大学校、読売・日本テレビ文化センターなどがあります。
読売が持っている不動産では、プランタン銀座や、ビックカメラ(有楽町店)、マロニエゲートのほか、札幌駅前にはワシントンホテルグループのホテルがあります。非常に多角的に経営し、すべて万全の財務基盤を持って、文化的な貢献をしています」
渡邉氏が具体的にあげた業種で出版やジャーナリズムとはまったく関係がない分野としては、次のようなものがある。
※読売ジャイアンツ(プロ野球)
※よみうりランド(レジャー)
※読売日本交響楽団(音楽)
※読売理工医療福祉専門学校(学校)
※読売自動車大学校(学校)
※プランタン銀座(不動産)
※ビックカメラ・有楽町店(不動産)
※マロニエゲート(不動産)
※ワシントンホテルグループ(旅行)
読売はさまざまな分野へ進出している。読売新聞社はもはや新聞社単体とうよりも、多種多様な事業を展開する巨大グループの一企業と言ったほうが適切だ。
◆新聞産業の衰退
新聞社が大規模な多角経営を行っている例は、日本のケースを除いてあまり聞いたことがない。ジャーナリズムという職種上、経済界と一定の距離を置かなければ、特定の企業や特定の業界のPR媒体に変質する恐れがあり、それなりの自粛が働くからだ。一般企業の区別は、新聞人の誇りでもある。
しかし、日本の新聞社は、読売ほど大きな規模ではないが、多角経営が一般化しているようだ。たとえば朝日新聞社は、東京・銀座に、新ビル「銀座朝日ビル(仮称)」(地下2階地上12階建ての)を建設する。毎日新聞社も不動産物件の所有者である。
新聞の読者離れに歯止めがかからないわけだから、多角経営に乗り出さなければ、新聞社本体の経営が悪化していく事情は理解できるが、それにより真実を伝えるジャーナリズムの役割が衰退し、単なる情報産業と化してしまう危険性も高い。
◆出版人としてのプライド
読売新聞社は、新聞販売店やフリーのジャーナリストに対して、たびたび裁判を起こしてきた事実がある。しかも、改憲問題などで、本来であれば読売の改憲論とは相容れないはずの護憲派・自由人権協会の弁護士を使っている。
そこには新聞人の核をなすはずの自分の思想への強いこだわりが感じられない。言論に対しては言論で対抗するという出版人としてのプライドも感じられない。企業法務が最優先されている印象がある。これも多角経営がもたらした弊害ではないか。
渡邉恒雄氏が語った内容には、新聞人というよりも、財界人の視点で貫かれている。記者が大企業の中の一員になってしまえば、ジャーナリズムもお金儲けの道具に変質しかねない。
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