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古賀発言問題で隙を与えた安倍政権のテレビ「支配」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150513-00000001-sasahi-pol
週刊朝日 2015年5月22日号より抜粋
テレビが危ない。放送の許認可権を持つ政権与党が、NHK、テレビ朝日の幹部を自民党本部に呼びつけ、報道の自由を守るための放送法をも「圧力」にして恫喝をはじめた。「数の力」で国会の次にメディアを支配しようとする安倍政権。迎え撃つ知恵を探った。
「クローズアップ現代」の“やらせ疑惑”の最終報告があった28日、監督官庁の総務省は調査結果の説明のため訪ねてきたNHKの理事に高市早苗大臣名で「厳重注意」の行政指導文書を渡そうとした。「クロ現」が放送法4条の「報道は事実をまげないですること」という規定に抵触するという内容だ。
理事はその場での受け取りを拒否したものの、NHKは深夜になって一転、文書を受け取った。NHKが行政指導文書を受け取るのは1993年に起きたやらせ問題以来だという。
「メディアに対する露骨な介入は昔なら許されなかった。行政指導文書の受け取りを一瞬だけ拒否したNHK理事が処分されるという噂も出たが、安倍政権に近いとされる理事だからあり得ない。ポーズです。それよりこの騒動後、『クロ現』での鋭い質問で菅義偉官房長官を激怒させたと報じられた国谷キャスターを追い込む材料にされるのではないかと、局内では噂されています」(NHK関係者)
一方の当事者であるテレ朝にも異変が起きている。
「報道ステーション」での元経産官僚の古賀茂明氏の発言問題を受け28日、同局は「報ステ」の責任者3人を戒告処分に、早河洋会長ら役員3人の報酬を10%自主返上するなどの処分を発表。報道局内に「コメンテーター室」(仮称)を設ける再発防止策を打ち出した。同局関係者がこう内情を明かす。
「これまでコメンテーターの人選はプロデューサーの専権事項で番組ごとに契約していたが、それを会社で一括管理し、発言についてもチェックするという方向と聞いている。コメンテーターの中には『言論統制じゃないか』と不満を漏らしている人もいます」
古賀発言についても、菅官房長官が「放送法という法律があるので、まずテレビ局がどう対応されるかを見守りたい」と会見で述べるなど、政権は放送法をチラつかせている。上智大学の音好宏教授(メディア論)がこう語る。
「放送法は『報道は事実をまげないですること』と定めているが、これは倫理的規定であるというのが研究者、識者の通説。そうしないと、この規定が表現の自由を保障した憲法21条との関係で齟齬をきたすからだ。放送行政に詳しい与党議員もそれはわかっているはずで、放送法を口にするのはパフォーマンスでしょう。ただ、圧倒的な議席を持つ政権与党に言われれば放送経営者は萎縮し、現場もそれを忖度してしまう」
実際、「報ステ」の関係者は口ぐちに揺れる思いを口にした。
「古賀発言は介入の隙を与えてしまった。自民党に『あの問題は解決してない』などと今後も言われ、ことあるごとに圧力をかけられると思う」(関係者A)
「古賀さんの騒動は一種の“自爆テロ”。騒がれて世論がなびくと困るので、介入してきた」(同B)
言論の自由を真剣に考える時が来ている。
(今西憲之/本誌・小泉耕平)
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