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2015年04月29日 (水) 午前11:00〜[NHK総合放送]
解説スタジアム 「安全保障法制を問う」
安達 宜正 解説委員 / 島田 敏男 解説委員 / 高橋 弘行 解説委員 / 津屋 尚 解説委員 / 司会:西川 吉郎 解説委員長
○西川 政府与党は、戦後日本の安全保障政策を転換する、新しい安全保障法制の検討を進めています。連休明け、来月半ばには、国会に関連法案が提出される見通しです。今日はこの安全保障法制のあり方について、討論して行きます。まず、安全保障を考える上で重要な、日米首脳会談が、今日未明行われました。高橋解説委員に解説してもらいます。
○高橋 日米同盟の一層の強化を強くアピールした、今回の日米首脳会談。“OTAGAINO TAMENI”。お互いのために。オバマ大統領は、今回の会談の後の記者会見でこの日本語を使って、『会談の成果はアメリカと日本の双方に、大きな利益になるんだ』と強調しました。会談の最大の特徴は、日本の防衛協力の大幅拡大の方針が歓迎されたことです。具体的には、日本が集団的自衛権の行使を可能にすることによって、自衛隊のアメリカ軍への新たな協力、例えば、弾道ミサイルの迎撃などの協力が想定されています。また、アメリカ軍への後方支援における、地理的制約をなくし、さらに有事だけでなく、平時での協力など、自衛隊の幅広い活動が想定されています。
一方、経済面では、TPP、環太平洋パートナーシップ協定が重要であるとして、早期妥結を、改めて確認したんですが、その背後にあるのが、中国の存在です。南シナ海での権益拡大の動き。また、AIIB、アジアインフラ投資銀行に見られる、経済面での存在感も拡大させる中国を強く意識した日米双方が、連携を強化した形の会談でもありました。
ただ、自衛隊がアメリカ軍への協力を、実際に大幅に拡大するためには、安保法制の整備が必要です。そのための、国会での議論はまだこれから始まるというのが現状です。
○西川 では討論に入ってまいります。まず、安全保障法制の議論に入る前に、きょう未明行われた日米首脳会談をどのように見たか、ということなんですけど、まず私から。
高橋解説委員からあったように、やはり中国が大きな存在感となって見えて来たと思います。両首脳、必ずしも個人的にはしっくり行っていないとされるものの、この日米同盟を強化するという思惑のところでは一致して、記者会見での強い発言になったと思うんですけれども、そういう意味では、この点でも中国が日米関係の向こう側に一層強く立っているという構図が見えて来たと思います。では、まず、島田さんからお願いします。
○島田 今の西川さんの話にもありました。安倍総理とオバマ大統領は、良く言われるのが、太い信頼関係というもので結ばれた間柄ではない、ということだったんですけど、今回は、まさに2人の政治家の思惑が一致した、という会談だったと思うんですね。
1つは、オバマ大統領は、自分の8年の任期の最後の仕上げとしての、いわゆる遺産、レガシー作りということで、日米安保というこの枠組みを、これまでアジア太平洋と言っていたものを、それをさらに世界の規模にまで広げるということを宣言した。これを1つの成果としたい。一方で、安倍総理の方も、長期政権をこれから先、まだ目指して行く上で、日米の同盟関係の一層の強化。日本の負担をもっと増やすから、アメリカもずっと日本と共にいてくれ、というメッセージを大きく打ち出した。自らの政治的な、今後に向けての大きな足掛かりにしたということなんでしょうね。これが思惑の一致だと思います。
○西川 高橋さんはどう思いますか。
○高橋 はい。今の島田さんの意見と、かなり似ているんですけども、アメリカの立場から言うと、やはり、アメリカも、その国際的な力関係から見て、自分の力が相対的に落ちて来たということを、徐々に自覚し始めています。ですから、こうした中で日本の側から、集団的自衛権の行使を容認しますということを、言って来てくれているというのは、ある意味非常にタイミングとしてはアメリカにとってありがたい、その意味では、相思相愛の時期での首脳会談だったということが言えるんですけれども、ただ、日本の側に立ってみれば、これだけ自衛隊の活動が大きく変わる、それなのに日本国内の議論がまだ充分ではない、と思われる中で、先にアメリカと極めて良好な関係で、歓迎しましょうっていう、合意を結んだということは、これから先の議論で、どうなのかなという気はします。
○西川 安達さんは。
○安達 今、高橋さんが言った最後のところは重要だと思うんですね。この前、自民党の幹部と話したんですけど、安全保障を巡る議論はまったく盛り上がってないって言うんですね。そういう中で、オバマ大統領が首脳会談の中で、日米はグローバルなパートナーと。日米の防衛協力というか、軍事面での協力の拡大ということを強調したんですけど、これは一体誰が決めたんだと。安倍総理大臣は確かにおっしゃっているんですが、国会の議論は、まだまったくやっていないわけですよね。で、これからの立法機関である国会の議論を前にアメリカと約束することが良いことなのか。また、憲法解釈の変更や、今までの安全保障政策を大きく踏み越えることを、ここで約束していいのかっていうのは、今後の議論として残ってくるんじゃないかと思いますね。
○西川 津屋さんは、どうですか。
○津屋 中国の軍事的台頭に対して強い懸念を持っているという点では、日米は間違いなく一致していると思います。ただ、脅威の認識のレベルというか、危機感の強さとなると、必ずしも一致しているわけではないと思います。つまり、安倍政権に比べてオバマ大統領の方が脅威認識の度合いは低いと言われています。
首脳会談では、今回強固な日米同盟というものが強調されはしましたけれども、実際に抑止力を強化して行くという時に、この認識のずれをどのように埋めて行くのかが課題になって行くと思います。
○西川 こうした日米関係を踏まえたところで、安全保障法制を巡る問題を具体的に考えて行きたいと思います。島田解説委員に、その内容を解説してもらいます。
○島田 はい。政府が来月中旬の閣議決定を目指しています、安全保障の法制整備関連法案、これは内容が実に複雑多岐にわたっていますので、あえて2つの柱にまとめて見ますと、こうなります。
第一の柱は、集団的自衛権の行使を限定的に容認するための自衛隊法などの改正です。日本が直接攻撃をされていなくても、日本の安全確保につながる場合には、武力行使を可能にします。
第二の柱は、外国軍部隊に対する後方支援を大幅に拡大するための法整備です。こちらは自衛隊が、直接武力を行使するのではなくて、外国の軍隊に物資を補給したりする活動です。
まず、このうちの第一の柱、集団的自衛権。こちらについて見てみますと、政府与党は、武力行使が可能な要件を厳しく限定したと、こう言います。しかし、ここにありますように、この密接な関係にある他国というのは、どこまでを指すのか。我が国の存立が脅かされる明白な危険、といったのは、一体どういう状況なのか。こうした疑問点について、政府与党がどこまで具体的に説明出来るか。ここがポイントになります。
そして次に、第二の柱の、外国軍隊に対する後方支援。こちらの方の拡大ですけれども、これはですね、周辺事態法を改正する、重要影響事態法というものへの抜本改正。そして、もう1つ。新たな法律、国際平和支援法の新規立法。この2つに分かれます。
上の方は、日本の安全を守る外国軍隊に対する後方支援で、下の方はと言いますと、国際社会の平和と安全のために活動している、外国軍隊の後方支援です。
とりわけこちらの国際平和支援法に基づく活動と言いますのは、新規立法で、自衛隊の海外派遣を一気に広げる面がありまして、「どこまでやる必要があるんだろう」という国民の素朴な疑問に政府与党がどう答えるかがポイントになりますね。自民党の中でも、安保政策というのは、勢いで変えてはいけないんだという意見の議員は決して少なくありません。必要性、そしてそれと同時に歯止めをどうかけるか。この点を国民にどこまで説明出来るかというのが、政府与党の大型連休明けの大きな課題になります。
○西川 この安全保障法制、相当複雑ですね。そこで、まず、そもそも論のところで、こういう法制を見直すということをどういうふうに捉えているか。まず、津屋さん、いかがですか。
○津屋 中国や北朝鮮など、現在の安全保障環境は非常に厳しくなっている。それに加えてサイバーやテロの脅威も出て来ている中で、自衛隊に許される活動の範囲を拡大することで日米の協力態勢を強化し、日本の防衛のために抑止力を高めるということが目的だと政府はしています。この問題では、日本がアメリカの戦争に巻き込まれるのではないかという見方があると思うんですが、実は、正反対の見方も出来るんです。どういうことかと言いますと、アメリカは今、「世界の警察官」を返上し、逆にアジアの紛争に巻き込まれることを恐れているということなんですね。日本にとって、中国の軍事的、軍事力に対峙し、対処するためには、アメリカ軍の存在は不可欠ですから、そこをガイドラインによってアメリカの関与を確保するということが1つの目的だったと思います。
○西川 アメリカが出て来たんですが、高橋さん、いかがですか。
○高橋 今の津屋さんの話は、要するに、アメリカの危機の認識がどうか、ということだと思うんですけれども、去年、オバマさんが4月に日本を訪問して、日米首脳会談がありましたけれども、あれからちょうど1年経ちました。で、この1年経ってみると、やっぱりアメリカにとって、中国は、より脅威の方が強い存在になっているという分析がアメリカから出ています。ですから、日本の集団的自衛権の行使というのは、もともとアメリカがずっと強く求めていたことですけれども、よりその要求は、アメリカにとっては強くなっているという問題だと思います。ただ、一方でアメリカは、安倍政権に対して、近隣諸国との摩擦を起こしかねない言動がしばしば見られるということについて懸念がありますので、日本がそういう不要な行為は行わないように、必要な時には釘を刺しているという状況であろうと思います。
○西川 なるほど。中国、朝鮮半島をはじめとする世界の安全保障情勢の変化に対応する、あるいは日本の安全保障に同盟国アメリカを強く巻き込んでおこうと。そういうことは、アメリカ側の要望でもあるということだと思うんですけど、特に中国は、安全保障面では気がかりな存在になっています。尖閣諸島周辺での示威行動、それから力を背景とした南シナ海への海洋進出、その背景にする軍備増強ですね。やはり共産党体制の不透明性というものもありまして、中国のその行動というのは、覇権主義的と言われることもあります。
世界の安全保障環境を考える際には、安全保障体制の見直しが行われるというのは自然な流れかとも考えられます。そこで、島田さん、日本政府の認識というのは、どういうことなんでしょう。
○島田 これはもう歴史的な、いろんな経緯、議論があるんですけども、こういう不等式があるんですよ。
これをどう見るかと言いますと、日米の力、大なり、中国の力。中国の力、大なり、日本の力。この不等式。これは冷戦崩壊の1980年代の末に、当時防衛事務次官だった西廣整輝さん、西廣さんはもう亡くなられたんですけどね、21世紀の東アジアの安定のために必要なパワーバランス。それがまさにこの不等式だと、このように後輩たちに予言をしたんです。それが今日に引き継がれているんですよ。いずれ、日本の力が、経済力、そして安全保障を支える軍事の力、そういったものが、トータルで中国に及ばない日が来る。その時には日米の協力で、経済、そして軍事の総合的な力が中国を上回るようにする必要があるんだと。これは日米が力を合わせないと、中国に及ばない現実を予言したものですけれども、どうもそんな実際の姿が、今、目の前に現れて来ているということだと思うんですね。
○西川 こういう安全保障政策の転換という際にですね、安倍総理大臣は積極的平和主義ということを訴えているわけなんですけれども、これはどういう意味を持っているんでしょう。安達さん。
○安達 今の島田さんの説明もありましたし、皆さんの発言もあるように、国際情勢の変化は重要なファクターではあると思うんですが、もう1つ、日本の国内を考えると、今、この時期に、安倍さんが総理大臣だったっていうのが、やっぱり大きいと思うんですよね。
安倍さんの外交姿勢は、今、西川さんがおっしゃった積極的平和主義、日本が世界の平和のために、先頭に立って頑張って行きましょうということ。それからもう1つ、政治姿勢として、戦後レジームからの脱却、戦後体制をもう1回見直すべきじゃないか、というのが安倍さんの政治信条なわけですね。この積極的平和主義と、戦後レジームからの脱却というのが相まってですね、今の安全保障法制の再検討が始まっているのは間違いないと思います。特に、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を限定的に認めるというのは、今までの内閣でやって来なかったことですからね。安倍総理大臣だというファクターというのは大きいと思います。
○西川 周辺国にも影響が及んでいるようですね、津屋さん。
○津屋 そうですね。周辺国が持っている懸念は、今、安達さんが話したことにも関連すると思います。つまり、安倍総理大臣がリーダーであるという点です。
韓国政府の当局者、国防当局者や外交の当局者と話をしますと、彼らが言うのは、日本が今の安全保障環境に対応するために安全保障の政策を見直そうとしていることそのものは理解は出来ると言うんですね。では何が心配なのかというと、安保法制をやろうとしているのが安倍総理大臣だという点だということのようなんですね。日本はこれまで平和的な国家で、他国への侵略は絶対にしないということを彼らも信頼することが出来たけれども、安倍総理大臣が歴代の総理大臣の談話などを見直そうとしているような動きに対する警戒感が広がっていてもう安心出来ないということなんです。
○安達 安倍総理大臣だからこそやっているという側面もあるんですよね。韓国や中国が心配だという意見もあるのかもしれませんけれども、安倍総理大臣だからこそ、ここに踏み出しているという面も強いと思いますね。
○西川 周辺国からは、日本が独立国として、どのような形であれ、自衛権は持っている、国際平和に貢献しようというのも当然というところもありながら、警戒を含んだ視線が投げかけられているというのも事実だということのようですね。
さて、そこで、今回の安全保障法制の中身に入って行きたいと思います。個別の論点を考えて行きます。
島田さんから解説があったように、その柱の1つは、集団的自衛権に基づいて武力行使を限定的に認めるということです。憲法解釈を変更するということで進められることになっていて、大きな議論が起きています。まず安達さん。
○安達 そうですね。今も議論があったように、国際情勢の変化がありますから、何らかの対応をしなければならないというのは、まぎれもない事実ですね。それが一気に憲法解釈の変更まで進んでいいのかどうか。今、日本の国民が脅威と感じているのは、むしろ沖縄県の尖閣諸島をめぐる中国の領海侵犯だとか、そういうことだと思いますね。そうすると、そういう国際貢献よりも、まず領域警備、今まで海上保安庁がやっていた領域の警備を自衛隊が協力してやる形にするとかですね、そういうところから、まず議論をすべきで、一気に国際貢献とか集団的自衛権の行使まで行くことが正解なのかどうかというのは、これは慎重に検討すべきところではないでしょうか。
○津屋 今の点でちょっと申し上げたいことがあります。自衛隊が領域警備に協力するということなんですが、このやり方については慎重に見ないといけないと思うんですね。
今、海上保安庁がやっている領域警備に自衛隊も協力してやるということは、自衛隊が今まで出て来なかった前面に出て来るということで、一種の危険な選択肢になる可能性があります。どういうことかと言うと、今、アジアの海洋をめぐる領土領海の争いでは、中国も含めて海上保安庁のような法執行機関が対応することで、いわば「緩衝材」の役割を担っているという側面があるんです。そこに自衛隊が出て来るということになると、対立のステージを上げてしまうという懸念がありますから、その点は注意しないといけないというのが一点です。
それと、今の中国の軍事力の増強の現状を見ると、ミサイルですとかアメリカ海軍の動きを封じる数々の兵器を持っている。これらを増強していることを考えると、そこについても日米は連携を深めて対処せざるを得ない状況だということが言えると思います。
○島田 そもそも、先ほど話が出ました憲法解釈の変更ということで、どこまでやっていいのかという点なんですけれども、やはり本来ならば憲法を改正して、そして自衛隊、そして自衛権、こういったものの存在を明記してから、日本は、なすべきことだと思うんですよね。今の憲法には一言も書いてないわけですからね。
しかし、憲法9条にも関わるそうした部分を改正するというのは、簡単でない。だから、その状況の中で、政府の憲法解釈の変更で、出来ることを増やそうと、こういう選択なんですね。この便法で進むならば、これは国民に必要性というものを、相当に詳しく理解してもらって、納得を得てやって行くということが必要だと思うんですね。
だけど、これは、現状では、与党の中の、しかも開かれていない密室の中での会議が、断片的に外に伝えられているという状況ですから、これはとても説明は不足しています。法案が今後提出された後の国会審議で、検討すべき点というのは、やはり、洗いざらい国民の前に示して、そして議論をするということが前提にならないといけないと思います。
○西川 そのへんの事情をアメリカの方はどう見ているんでしょうね。
○高橋 今、逆の立場から言うとですね、まさにその島田さんが言ったことの裏返しなんですけども、アメリカにしてみたら、やはり今の日本の状況を見て、憲法を改正することは極めて難しいと。しかも、今、与党の中に公明党がいて、なかなか自民党だけの考えで進めることも難しいという状況の中で、今、解釈を変えることで行使を容認するということについては、日本政府は、今、出来る範囲で最大限のことをしてくれてるな、という、アメリカから見ると、そういう評価なんですよね。
だから、今のアメリカの側の立場としては、この動きは歓迎しているということであって、実際、島田さんが言ったように、オバマ大統領と安倍総理大臣の人間関係というのが、決して濃厚ではないにも関わらず、今回の会談は歓迎ムードですよね。あれは、日本はよくここまでやったという、アメリカのある種のサインだと思って良いと思います。
○西川 そういうアメリカ側の事情もあるわけですね。
さて、それでは次に、その集団的自衛権に基づく武力行使の要件を見て行きたいと思います。3つの要件があります。他に適当な手段がない、必要最小限度の実力行使などが、これまで個別的な自衛権の時は要件になって来たんですけれども、これが新たに加わったところですね。密接な関係にある他国が攻撃を受けて、これによって我が国の存立が脅かされ、明白な危険があること、ということで、こうした事態のことを「存立危機事態」と呼んでいたりするんですけれども、この要件をどういうふうに見ますか。まず、島田さんからどうでしょう。
○島田 これは自民・公明の両党の協議によって、憲法解釈を変更した上で、どこまで集団的自衛権の行使を認めるかということの、ぎりぎりの合意点として出たものですね。
アメリカへの攻撃であっても、それが日本の存立を脅かすような場合のことであれば、日本が、自衛隊が、武力行使するのは可能と、こういうふうに限定的にしたわけなんですけど、これは、「日本を守るために」という、この言葉がキーワードになっていて、個別的自衛権の行使、それに一番近い、接触している部分を少し広げて、集団的自衛権の行使を可能にしたと、こういう考え方でして、自民・公明の両党の合意づくりとしては、これで筋は通ると思うんですね。
しかしですね、これは、法律に書き込まれる条文だけで、どういう場所で、そしてどういう状況ならば、集団的自衛権の行使としての武力行使が可能なのかということは、まったく分かりませんね。この説明がどこまで出来るんだろうかと。出来なければ、すべて政府に任せて下さいということになりかねませんから、これは解釈の拡張が、いくらでも出て来ます。ここは国民が厳しく見て行かなきゃいけない点です。
○西川 限定的にしようという仕掛けは見えるけれども、というところですね。
○島田 本当にそうか、と。
○西川 安達さん、どうですか。
○安達 個別的自衛権に接触する部分との違いが、本当に分かるようで分からないような感じがするんですね。例えば、それを具体的に考えると、朝鮮半島有事はかなり接触して来る部分があるかもしれません。それから、あと、今、自民党と公明党との間でも意見の分かれている、もしかするとペルシャ湾岸での機雷の掃海みたいなのが含まれるのかどうか。確かに日本の原油は、この地域に9割依存しているという事実もあって、ここが経済封鎖されてしまうと、原油が入って来ないから打撃を受けるっていうこともある。その一方で、官民合わせて160日間備蓄があるという事実もあるわけですね。これを政府がどう判断するか。時の政府、誰が総理大臣で、どういう政権が組まれているかで、だいぶこの3要件の捉え方っていうのは、幅が広くなるんじゃないかという気もしますね。
○西川 具体的な事態を前にしているわけではないというところですね。
高橋さん、それはアメリカから見たらどうなんでしょう。
○高橋 例えば、その新3要件ですよね。存立が脅かされる、という文言がありますけど、その文言は、じゃあ、具体的にどの程度だったら脅かされるのか、というのは、今の段階ではまったく不明ですよね。だけど、それは逆に、アメリカの立場に立って見ると、その曖昧さゆえに自衛隊の幅広い防衛協力を期待出来るという、そういう思いも、アメリカ側にはあるわけです。
例えば、具体的には、まだガイドラインの合意までされていない段階ですが、アメリカ海軍の太平洋を管轄する第7艦隊のトーマス司令官が、もし防衛協力がさらに緊密になるのであれば、是非日本には、南シナ海での自衛隊の監視活動、参加を期待すると、こういう発言もしています。いったいアメリカがどこまでお願いして来ることになるのか、というのは、日本側がきちんと決めておかないと、かなり歯止めが効かなくなる可能性があります。
○西川 南シナ海という話が出て来たんですけれども、具体的に歯止めとして、この3要件が働くかどうか、実際に武力行使が行われる可能性というのは、どうなんですか。
○津屋 私はですね、この要件の文言を、日本語として素直に読むのであれば、特にこの「根底から覆される明白な危険」という表現。「根底から覆される」というのは、相当の事態だと思うんですが、素直に読むとこの集団的自衛権を行使するハードルは非常に高い。武力行使が行われるケースはほとんど考えられないのではないか、というのが多くの専門家の見方だと思うんです。そうした意味で、この積極推進派と慎重派・反対派にとって、この要件は「痛み分け」のような結論ではないかという気がします。つまり、どちらから見ても不満が残る内容だと思います。反対派から見ると、集団的自衛権を限定的であれ容認するということ自体が不満なわけですし、推進派にとっても、このハードルが高いことで、実際に集団的自衛権の行使が必要になった時に本当に行使出来るのかという疑問が生じてくると。この状況で仮に集団的自衛権を本当に行使すると決断することになると、それはかなり無理をして行うという印象が拭えないんじゃないかと思いますね。
○安達 今、津屋さんの方から、この条文を素直に読むと、という発言があったんですけど、もう1つちょっと考えてみると、憲法9条を素直に読むとですね、これは集団的自衛権の行使が容認される文章なのかどうか、というのは、かなり議論のあるところだと思うんですね。それを時の政府の判断で、憲法解釈の変更まで踏み込んでいますから、この条文を素直に読むと、逆に言うと、政府の裁量というのは大きいんじゃないかっていうふうに思います。
○西川 この自衛権については、いろんな幅広い議論があって、自衛権は個別的・集団的もない、自然権なんだということで、当然認められるべきだという議論もあるわけですけれども、そのへんはどうなんでしょうか、島田さん。
○島田 今の点ですね。集団的、個別的の考え方、これは、去年5月に有識者懇談会が、安倍総理に提出した報告書の中に、1つの考え方として盛り込まれていたんです。だけど、安倍総理は、そうした考え方は採用しませんでした。で、これまでの歴代内閣が積み重ねて来た個別的自衛権、これは行使出来る。それに極めて近い、さっきも言いましたけども、一種、日本の安全確保つながりというか、そういう理屈を使ってですね、集団的自衛権の行使を可能にする方針というのを決めたわけですね。
ただ、この地理的な限定がかかっていない。だから、世界中どこでも、武力行使が可能な余地を残している。それともう一つ、先ほど、根底から覆すというのは、どういう状況かということも疑問だという話も出ましたけど、もう一つ、密接な関係にある国というのが、アメリカだけなのかと言ったら、どうもこれは、アメリカは安保条約があるから当然だけど、その後、日本の安全を守るために手伝ってくれる国だったら、どんどん、どんどん広がって行くというふうに読めてしまうんですよ。こういったことも議論すべきですね。
○西川 歯止めをめぐる議論は、やはり注目されるところですね。これから法案が固まって、来月以降、国会で議論が始まります。この論戦、それから世論の動向をしっかり見守って、私たちも考えていきたいと思います。
続いて、法整備の2つ目の大きな柱とされる、外国軍隊への自衛隊の後方支援を拡大することなんですけれども、まず、日本の安全を守る外国軍隊を支援するための周辺事態法の改正による後方支援の拡大ということを考えて行きたいと思います。
安達さん、この改正、どういうふうに見ますか。
○安達 僕は、今度の安全保障法制の中で、実は一番大きいのは、この周辺事態法の拡大じゃないかと思っているんですね。
先ほど、南シナ海の話もありましたけれども、今までは、事実上、地理的制約はないと言いながらも、周辺という名前があるとおり、日本周辺地域の平和と安全のために、この周辺事態法を適用して来たわけですね。これを、地理的要因をなくして、言ってみれば、世界どこでも、日本の平和と安全に影響がある事態ならばアメリカ軍への後方支援が出来るようになるわけですから、これが一番大きな拡大ではないかと。で、今度のガイドラインでも、日本の島しょ防衛、島を守るために、アメリカが日本に協力するというところは、本来、安保条約の中で、日本は基地を提供することで、防衛義務がアメリカにあるわけですね。ただ、安全保障条約の方では、極東の範囲というのがあって、そこが日米の協力範囲だったのが、この周辺事態法の改正によって世界中に広がるわけですから、日本の方が持ち出しが大きくなっているんじゃないか、というふうに思いますし、その点のところは、これから慎重に議論して行く必要があるのではないかと思います。
○西川 津屋さんはどうですか。
○津屋 その範囲が際限なく広がって行くのではないかという懸念はもちろんあると思うんですね。で、その一方で、日本にとって海上貿易が生命線であるということに変わりありませんから、遠くの離れた場所だからと言って必ずしも無関係とは言えない事態というのはあり得ると思います。
日本のシーレーンが通る、南シナ海とか、またペルシャ湾での事態に何らかの対応をしなければならない局面はあり得るかもしれないと思います。
しかしその一方で、地球の裏側で自衛隊が戦争に参加するというようなことを国民が望んでいるのかと言うと、望まない人の方が多いのではないかという印象を持っています。そもそも、自衛隊の能力を考えると、遠方での本格的な軍事作戦であったり、自衛隊を動かして大規模なオペレーションを行うということは、実は、日本の自衛隊の能力からすると、特に兵たんの能力、物資を運んで補給したり、隊員を輸送したりという能力ですが、そういうことがそもそも十分ではないわけですね。今の時点では、そういう地球の裏側で自衛隊が本格的な軍事作戦を行うことは起こりにくい。
○西川 ただ、その点では、アメリカ側は期待があると思うんですね。
○高橋 そうですね。ちょっと具体的な話になりますけど、例えば、南シナ海で、仮にフィリピンと、例えば中国が軍事衝突が起きてしまったと。それを、例えば、アメリカが、様々な艦船などを使って、この事態を鎮静化するために問題の海域に展開する、というケースがあったとします。そうしますと、じゃあ、日本はアメリカ軍に対して燃料補給するのかどうかということが問題になって来たりする。多分、その時に、当然アメリカは、お願いしますと言って来ると思います。その時、日本にとって中国との関係をどう考えるのか。南シナ海など様々な幅広い地域の中で、日本はどこまで協力するのか。当然アメリカは求めて来ますし、日本はその都度きちんと考えなければいけないと思います。
○西川 この点、島田さん、どういうふうに見ていますか。
○島田 今の南シナ海の問題というのは、これから実際の現実がどういうふうになって来るかによって、まさに今回の、この日米の同盟関係の拡大というものが、まったく今までと違うものとして現れるかどうかの、一つの大きな試金石になると思うんですね。
東シナ海なら分かります。日本の領土、領海、領空のすぐ近くですからね。南シナ海は、シーレーンではあるけれども、日本の領土、領空、領海、守るべき対象と、ちょっとイコールとは言い難いんじゃないか。そういう議論は当然起きると思うんですよね。
ですから、そこのところで、あまり軽々に何でもやりますというふうに、日本が言ってはいけないんだろうと思う。その時に、NOと言える日本というものが、そういう時にこそ、初めて意味を持って来ると思うんですよね。そこがどうなのかな、というのは、これから注目すべき点ですね。
○西川 日本側の判断が大切だ、ということですね。
○島田 出来ないことまで無理してやるか、ということですね。
○西川 はい。実際に自衛隊の能力としても、そこまでの能力があるかどうか。その議論はまだまだ、ということになるようですね。
次に、国際社会のために外国軍隊を支援するというケースについて考えて行きたいと思います。これについては国際平和支援法という、新しい法律を作るということになっています。これについては、島田さん、どう見ていますか。
○島田 この新規立法は、やはり、膨張主義というような批判を、当然浴びる性格があると思うんですよ。湾岸戦争の時、冷戦崩壊直後の湾岸戦争の際の、あの130億ドルの拠出。日本がそれだけのお金を出しながら、国際社会から評価されなかったことに、当時の政府関係者、とりわけ外務省の関係者はショックを受けたんです。その湾岸トラウマ、これが長年の間、引きずって来られて、先ほど話が出た、安倍さんの政権になって安保法制整備という形が現実になったので、そこに飛び乗って来たということだと思うんですね。
直接の武力行使はしないとは言いますけれども、外国軍隊に弾薬も提供出来るという内容に、今回最終的に着地しそうですので、そうなって来ますと、果たして外国軍隊と一体となる、外国軍の武力行使と一体となるという懸念がないのかどうか。これまで憲法上、それは認められないと言い続けて来たわけですから、その問題を、果たしてきちんと整理出来るのかなと、ここは大いに疑問の残る点ですね。
○西川 一体化の歯止めが難しいというところでしょうか。津屋さん、実際、自衛隊の能力という点ではどうなんですか。
○津屋 先ほども少し申し上げましたけれども、自衛隊の海外での任務を拡大するということは、実際にどの程度能力があるのかというのを冷静に見ないといけないと思います。
他のミッションでも同じことが言えるんですが、例えば海上自衛隊には、護衛艦が40隻あまりあります。ただ、実際にすぐに使える護衛艦がどれぐらいあるかというと、ソマリア沖で今、海賊対処もやっている、東シナ海では連日のようにパトロールもやっていて、運用的にはぎりぎりな状態です。それに加えて、整備・修理とか、訓練をしている船もあるということを考えると、実は、同時に任務につける船というのはあまり多くはないんです。
ですから、海外での活動を拡大すると言っても、自衛隊の現場の状況を考えると、その計画は「絵に描いた餅」になる可能性もありますから、そのへんも議論しないといけないと思いますね。
○西川 やはりこの点についても、アメリカは。
○高橋 新規立法にして恒久化するということについては、当然、アメリカは歓迎です。
ただ、アメリカはやはり、日本での審議の様子も見ていまして、自衛隊の支援活動の歯止めとして、国連の総会、もしくは安保理の決議が必要、というようなことが要件に入っているんですけれども、国連についてアメリカは結構冷やかな認識で、特に、アメリカが対中国、対ロシアという関係が膨張を増していくという意味で、安保理常任理事国の間の対立が、むしろこれからさらに激しくなって来るのではないかということなんですね。そういう中で、安保理決議はなかなかこれまで以上に出にくくなってしまうと。冷戦が終わったんだけれども、むしろ出にくくなってしまうということを考えると、逆にここは日本にとっては、大きな歯止めになるだろうという認識です。
○西川 今回の新法の中ではですね、武器・弾薬の提供、これまで後方支援には含まれないというのが政府の立場だったわけなんですけれども、これも可能とするような変更が検討されています。安達さん、そのへんはどうなんですか。
○安達 今までは、武力行使との一体化はだめだっていうことで、武器・弾薬はやめたんですけど、弾薬については消耗品だからいいじゃないかというような議論になって、軍隊の後方支援で弾薬を提供して、これは一体化してないっていう議論は、なかなか説得力に乏しいと思うんですね。向こうからしてみれば、弾薬を提供している国が、どう考えたって、これは戦闘行為ですよ、みたいなところですね。だから、敵から攻撃を受けたところで、なかなか文句は言えませんよね。
それからもう一つ重要なのは、武力行使の一体化をしないために、今までは、非戦闘地域っていう概念があって、現に戦闘が行われていない、かつ仕事をしている間に戦闘に巻き込まれない地域っていうのはあったんですけれども、今は現に戦闘が行われてない地域だったら後方支援出来るというふうに、法改正になりそうですから、ここはさらに踏み込んでいると見ていいと思います。
○島田 確かに、これまでは非戦闘地域、後方地域というものを、大きなゾーンとしてね、安全ゾーンとして設けてという、そういう手続きを作っていたんですけれどもね、それが今度は、自衛隊が現地に行って、そして現場に行って、弾が飛んでいないということを確認したら、そうしたらOKと、こういう論法なんですよね。
これは一体化すること、外国軍隊の武力行使と一体化することを避けるという、その面から言っても、充分かどうか疑問ですし、自衛隊が危険な場所に置かれて、犠牲が出たりしないかと、そういう問題にも直結して来ますので、私は、これは、用心深さというものを、もう少し再確認するということが必要だと思います。
○西川 さて、ここまで、安全保障法制について議論して来たんですけれども、その背景にある国際関係、とりわけ冒頭に触れた日米関係なんですけれども、今一度、これを考えてみたいと思います。
その背景にある国際関係、どの点に注目して行ったらいいんでしょうか。まず島田さん、いかがですか。
○島田 やはり、この東アジアのことを考えますとね、日米が力を合わせれば中国の力を上回るというパワーバランス。経済力、そして安全保障上の力、このトータルの総合力においてですね、そういう関係を維持することが重要だと思います。かと言って、アメリカに言われたら何でもする、ということでは、決して国家の姿勢として好ましいとは思いません。それに、今回、この日米首脳会談、そしてその前の日米の新しいガイドライン、そこで日本側から相当新たな持ち出しをして、アメリカに是非日本と一緒にいてくれと、つなぎとめるような努力をしているように見えるんですね。これは確かにアメリカが離れて行きかねないという一面もあるから、そういう判断になるんですけれども、逆に言うと、オバマ大統領が去年日本に来た時に、尖閣諸島も日本の施政権の下にあるので、何らか事が起きた時には、日米安保条約の適用の範囲内だと、こういうふうに発言をして、日本側でそれを歓迎する人たちも大勢いました。けれども今回、この問題について、領土問題は中立だという今までのアメリカの基本姿勢を変えて、日本に関しては特別ですよと言っているかと言うと、何も言ってないわけですよ。ですから、それはその時々の、アメリカの国益に照らして、日本と協力はするけれども、領土の問題で、もしのっぴきならないところまで行った場合に、最後までアメリカがついて来るかと言ったら、これは疑問のままです。ここを忘れてはいけないと思います。
○西川 そのアメリカはどうですか。
○高橋 島田さんの発言に加えると、やはり、アメリカは、当然日本との同盟関係も重視しますけれども、その日本の周りにいる近隣諸国と日本との関係というのも極めて注意深く見ています。つまり、同盟関係が深まっていくことは歓迎しつつも、安倍総理大臣が、これから近隣諸国に対して、どんな態度を取るのか。ちょうど、折しも70年談話などもあるようですけれども、そうしたことを注意深く見ているというのがアメリカのスタンスだと思います。
○西川 アメリカは、日本が中国、韓国に、どうやって向き合おうとするのか、というところにも注目しているということですね。安達さんはいかがですか。
○安達 日米関係は大事ですし、日米安保条約が極東の平和と安全に貢献していることも間違いないと思うんですけれども、少し心配しているのは、沖縄問題なんですね。沖縄では、県民を挙げて、今、普天間基地の辺野古への移設に強く反対をしています。ここが政府と沖縄との関係が、あまりにこじれてしまって、仮に、今の法律に基づいて移設をした場合、沖縄県民のアメリカに対する反米感情みたいなのが、どんどん高まって行きかねないのではないか。そうすると、冷静に考えてみると、逆に日米安保条約が弱くなってしまうんじゃないか、という懸念を持っています。
○西川 津屋さんはどうですか。
○津屋 アメリカが世界でどう見られているか。日本だけではなくて、例えば、ヨーロッパにおけるアメリカの同盟国が、今、アメリカをどう見ているかと言いますと、これまで頼ってきたアメリカの軍事力に対する信頼感が下がってきていると思うんですね。というのは、アメリカは、リビア情勢ですとか、シリア、またウクライナの情勢に対して、ヨーロッパ諸国が期待したような軍事的関与をしなかったわけです。ですから、アメリカの同盟国であっても、アメリカを信頼していいのかどうか、迷いが生じているという点があると思います。で、日本にとっては、アメリカとの同盟関係は基軸であることに変わらないと思うんですけれども、これまでのように、アメリカ一辺倒でいいのかどうかという点は、議論の余地があって、日本の多層的な外交をより進めて行く必要があるのではないかという見方もあると思います。
○西川 そうなって来ますとね、やはり、中国、韓国との関係ということなんですが、島田さん、戦後70年の談話が予定されているんですけど、これが鍵になって来そうですね。
○島田 そうですね。そこに向かって、どのような姿勢を取って行くか、ということですよね。今の日本政府の立場から行きますと、基本認識として、中国との関係は、今、小康状態に入ったと。先日、安倍=習近平会談も実現出来たということで、これは一息つけたかな、と。中国との個別外交関係というのは、アメリカにちょっと待ってくれと言うためにも、これから太くしていく必要がある。その共通認識はある。一方で、韓国ですね。こちらは東アジアの安定の上で、日米韓という、この3か国の枠組みが基本になって来たわけですね。ところが、その韓国との関係が、今ひとつ上手くいかない。ここに向けてですね、私は朴槿恵大統領の側にも、かなり神経過敏な行き過ぎがあるとは思うんですが、ここは、安倍総理の側も、一歩こちらからですね、朴槿恵大統領、韓国に、こちらの日本の認識に近づいてもらうための努力、そのメッセージは必要だと思うんです。その意味で、日本時間の明日の未明に、上下両院の合同会議で、安倍総理が行う演説の中で、やはり、韓国を大事にしているんだというメッセージを、どこまできちんと出せるのか。そして、また、それが70年の総理大臣談話というものの中の表現ということにもつながって行けば、そうしたら、意味が出て来るんじゃないかなと思うんですけれどもね。
○西川 今夜のアメリカ議会での安倍総理大事の演説に注目したいと思います。さて、この今日の議論を通じて来てですね、各委員、これだけは強調しておきたいということについて、まず、津屋さん、どうですか。
○津屋 付け加えておきたいのは、アメリカの中でも、中国については脅威の認識にずれがあるわけですね。ホワイトハウスと国防当局、あるいはさらに米海軍との間では違いがあり、その辺のブレを、どう日本として見て行くかということが、これから大事になって来ると思います。
○西川 高橋さん。
○高橋 はい。その意味で、今回の首脳会談というのは、その中国の台頭をどう日米が自分たちでコントロール、抑えて行くかということで言えば、お互いの思惑が、非常に今回合致したタイミングでの会談だと思うんですけれども、一方で、アメリカと中国というのは、これから経済的にもさらに接近して行く可能性がありますので、日本、中国、アメリカ、この距離感ですね。今後しっかり外交で見て行かなくちゃいけないと思います。
○西川 米中から目が離せないということでしょうか。安達さんは。
○安達 僕は国会の役割だと思いますね。安全保障法制は、これから国会に付されるわけですね。ここで議論があったように、いろんな論点がある。それを1つ1つ、安全保障政策の大転換になるわけですから、慎重に審議してほしいということ。それから、外国軍隊の後方支援のところで、国会の事前承認ということを義務付けました。これも国会が機能しなかったら、ただの絵に描いた餅になりますので、国会の役割は、これから重要になって来るんじゃないかというふうに思います。
○西川 島田さん。
○島田 安保法制をめぐる、これからの議論です。これは、その先に、憲法改正問題があると思います。ですから、今回、法律案の先に、そもそも自衛隊というものと憲法の関係、これを視野に入れた、懐の深い論戦というものが、是非、国会で繰り広げられることに期待したいと思います。
○西川 今度のこの議論、大きな国際情勢の変化を受けて、新たな事態に向けてということだけに曖昧さも指摘されるのですけれども、やはり深く、広く、議論を重ねて行くことが大切だというふうに感じました。
(司会:西川吉郎 解説委員長 /安達宜正 解説委員 / 島田敏男 解説委員 / 高橋弘行 解説委員 / 津屋 尚 解説委員 )
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