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AIIBと中国共産党の日本工作【門田隆将】
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150512-00010000-will-pol
WiLL 5月12日(火)11時59分配信
■AIIBをめぐって中国は対日チャンネルを総動員
「中国が焦っている。“対日チャンネル”が総動員されているらしい」
春先、そんな真偽不明の噂が、永田町を駆けめぐっていた。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加の是非をめぐって焦っていたのは、「日本側だろう」と思い込んでいた向きには、それは、意外このうえない噂だった。
そして、その“対日チャンネル”とやらが功を奏したのか、三月から四月にかけて、“親中派”と目される政治家たちの「発言」や「パフォーマンス」が目立ち、日本のメディアでも、盛んにAIIBへの参加を促す論陣が張られていった。メディアでは、日経新聞が社説で〈中国が主導するインフラ銀に積極関与を〉(三月二十日付)と訴えたのをはじめ、朝日新聞や毎日新聞を中心に、積極的に参加を呼びかけるものが目立った。
しかし、周知のように、日本は、アジア開発銀行(ADB)の最大出資者として、アメリカと共に一九六六年の創立以来、これを取り仕切ってきた歴史がある。歴代総裁は、すべて日本人だ。これに対してAIIBは、中国の楼継偉・財務相が、「西側が示すルールが最善だとは思わない」と語ったように、真っ向から「対抗する形」で発足するものである。
もし、これに参加し、出資するというのなら、相当な「理由」と貸し倒れに対する「覚悟」が必要であり、国民に納得いく説明が要求されるだろう。常識的に考えるなら、金融分野における主導権を日米から奪いたい中国が、円・ドルに代わる人民元による一大経済圏をつくる野望の一環がAIIBではないか、と捉えるのが妥当かもしれない。
日米が参加しない国際金融機関は信用性に欠け、格付けの面でも打撃を受けて資金調達にコスト面で直接、影響が出る。それだけに中国による日本への参加要請が相当なものだったことは想像に難くない。しかし、理事会の透明性や融資基準など、クリアされなければならない問題が数多くあり、そのための「日本側からの質問」に回答がないままの参加など、あり得なかったはずだ。
それでも、やはり親中派として知られる福田康夫・元総理が、「AIIBに参加を拒否する理由はない」と語るなど、参加拒否を貫く安倍政権への揺さぶりは大きかった。
私は、前号(『WiLL』2015年6月号)の当コラムでも書いた共産圏による日本の政治家への工作について、あらためて想起した。中国の人民解放軍総参謀部第二部に原籍を持つ工作員が竹下総理の事務所に私設秘書として入り込んでいたという前号での指摘には、かなりの反響があった。
しかし、日本の政治家が中国の工作員に脇が甘いのは、いわば伝統とも言えるものだ。
■親中派の政治家が多い理由
一九九〇年代、橋本龍太郎総理その人が、中国の女性工作員と男女の関係となり、国会でも取り上げられたことがある。共産国からの工作に、日本の政治家はあまりに無防備だ。
しかし、中国共産党は長い間、日本の社会党や共産党にしかルートを持たず、政権への直接的な影響を行使できないでいた。それは、中華民国の国民党が自民党と太いパイプを持っていたからでもある。その突破口を開いたのは、自民党の有力者だった松村謙三氏(一八八三年〜一九七一年)だ。
清貧な人柄で知られる同氏は、蘭の花が唯一の趣味と言われ、この人物に狙いを定めた中国は、わざわざ蘭の協会を立ち上げ、その訪日団を組織して、自然な形で松村氏と接触することに成功する。中国は、そこから自民党内部に徐々に浸透していく。そして、ついには竹下事務所にまで人民解放軍の工作員を私設秘書として送り込むまでの関係を築いたのだ。ちなみに河野洋平氏は、松村氏が日中友好を押し進めるために池田勇人氏の後継総裁として推した河野一郎氏の次男である。
なぜ、これほど日本の政治家には親中派が多いのだろうか──国民はそんな素朴な疑問を抱いているに違いない。だが、それは苦労の末に掴んだルートを“運営”する中国共産党による「不断の努力」の結果に過ぎない。
河野洋平氏と翁長沖縄県知事がなぜこの時期、中国に招かれ、わざわざ李克強首相まで、その会談に出てきたのか。そこには、計算し尽くされた中国共産党の深謀遠慮がある。
それを思えば、「われわれは歴史を忘れていないし、忘れてはいけない。中国が提唱したAIIBを私たちは重視している」(河野氏)や、「沖縄はかつて琉球王国として、中国をはじめ、アジアとの交流の中で栄えてきた歴史がある」(翁長氏)というその会談での発言も、不思議でも何でもない。
今も現在進行形で行われている中国共産党による水面下の「日本工作」を想像しながら中国報道に接することを是非、お勧めしたい。
門田隆将(ノンフィクション作家)
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