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China Report 中国は今
【第178回】 2015年5月8日 姫田小夏 [ジャーナリスト]
戦後70年談話に向けて、
反日エネルギーをため込む中国の事情
戦後70年の節目に当たる今年、中国では「抗戦勝利70周年」「世界反ファシスト抗戦勝利70周年」と称したイベントが各地で開催される。中国ではすでに年明けから、70周年イベントに向けた準備や取り組みが進められているが、沿海部の大都市上海では市民の関心は薄い。
4月19日、CCTVの特集番組は、日中戦争当時に収録されたというあるフィルムを取り上げた。それは、日本軍が中国に投降するシーンをアメリカ人が撮影したもので、湖南省で日本軍の代表が投降書に署名するシーンを映したものだった。中国では「日本軍の投降フィルム初公開」と掲げ、数日にわたり、ニュース番組でも取り上げられた。
このように、中国のテレビでは、「抗日」をテーマにした報道特集が毎日のように放送されるようになった。
ちなみに、この投降フィルムだが、湖南省懐化市の中国人民抗日戦争勝利記念館が改装オープンに際して、新たに文物資料として加えたものだ。
この記念館のみならず、「戦後70周年」の取り組み強化の一環として改装を施し、「新たな観光スポット」かつ「愛国教育基地」として開放される事例は、中国全土で枚挙にいとまがない。上海では「上海淞滬抗戦記念館」が、今年改装を経て一大テーマパークとなる。
記念館の改装以外にも文芸、芸術方面でも取組み強化が行われている。
すでに北京の国家大劇院では4月末から特別講演会が始まった。幕開けはショスタコーヴィチの交響曲月第7番「レニングラード」。ドイツ軍が900日にわたりレニングラードを包囲する中でショスタコーヴィチが書き上げたとされる曲であり、中国はこれをファシスト闘争に由来を持つ名曲として起用した。
4月の演奏を皮切りに、今年は、8月15日(日本の敗戦記念日)、9月3日(中国人民抗日戦争勝利記念日)、12月13日(南京大虐殺犠牲者国家追悼日)に特別記念公演が行われるという(※カッコ内はいずれも中国での呼称)。
中国は愛国主義を「文芸創作における恒久的テーマ」に位置づけており、音楽のみならず、京劇、歌劇、音楽、舞踊、現代劇などで愛国心を高揚させる催しが目白押しだ。
作品には、戦争中に国のために犠牲になった8人の女性兵士を描いたバレエ「八女投江」もあれば、日本軍を八路軍の包囲網に陥れた抗日戦争の英雄を題材にした「英雄王二小」もある。
北京のみならず、天津、吉林、遼寧などの芸術界も「戦後70周年」の出し物に力を入れ、また大学など学校単位でも“戦後70周年”への参加をめぐり日夜議論が重ねられている。
一方、今年9月3日、北京では70周年を記念し閲兵式を開催する予定だ。この閲兵式は、「反ファシスト戦争」における中国の貢献を誇示し、中国の国防力増強を世界に知らしめる政治的意図を込めたものだ。10月1日の国慶節以外では初の閲兵式ともいわれ、中国は各国首脳を招待する計画だ。安倍首相の名前も挙がっていたが、この招待に対して、安倍首相は出席を見送る見通しだとする報道がある。
市民もメディアも
安倍批判色はトーンダウン
70周年イベントを着々と進める中国だが、民間の反応はどうだろう。
上海で活動する企業家には外省出身者も多い。筆者は中国東北部・ハルピン出身の若手経営者(30代)に「最近、こうした報道やイベントが多いが」と話しかけた。だが、この経営者は報道などにはほとんど注目しておらず、また「戦後70周年イベント」にもまったく関心を向けなかった。
復旦大学卒のエリートでもある経営者は、「政府がやっていることだから」と割り切る。
ハルピンといえば、1900年代には伊藤博文が安重根に暗殺され、1930年代には満州国に組み込まれ、日中戦争期には731部隊も置かれるなど、“日本の影響”とは切っても切れない土地柄だ。にもかかわらず、この経営者は決して感情的な態度は見せなかった。それどころか、意外な一言も飛び出した。
「私は父親からは、日本の優れた点を学べと教育を受けました」
一方、安倍首相の一挙手一投足に敏感に反応を示した上海市民も、最近は以前よりもトーンダウンしたかのような気配を見せる。
安倍首相は4月26日から訪米し、新たに防衛協力指針を打ち出し、中国の海洋進出を牽制した。なおかつ、米議会演説で中国や韓国が注目する「侵略」や「おわび」を使うことはなかった。にもかかわらず、世間はあまり騒いでいない。
中国の電子ニュースも静かだ。従来ならば、安倍批判のオンパレードだろう。通常、舌鋒鋭く批判する記事が出れば、たちまち各社サイトがそれを転載(中国は転載を禁じるどころか奨励する)して、“世論”は「批判一色」に染まる。だが、今回はこうした動きがあまり見られない。
実際、中国外務省の報道官は30日の記者会見で、「中国は日本の指導者に対し、村山談話を含め、侵略の歴史を直視して深く反省する態度を一貫して促してきた」とし、「おわび」に触れなかったことを批判しつつも、その反応は抑え気味だった。
市井の反応はどうか。上海在勤の女性会社員(20代)は次のように話す。
「安倍首相の訪米は、地下鉄やバスで流れるニュースでもあまり取り上げられていなかったという印象。私自身も多忙なのであまり注目していませんでした」
男性会社員(40代)からも強い関心はうかがえない。
「5月に日本に行きます。そのためのビザがようやく下りたところ。今、上海で日本旅行は一大ブーム、日本に行きたい中国人は本当に多い。政治は政治、旅行は旅行ですよ」
中国側は安倍首相に
すんなり謝罪されても困る?
だが、安倍首相がこの夏発表する「戦後70年談話」が注目の対象から外れるとは考えにくい。
このまま「侵略」を認めず「おわび」をしなければ、中国政府はそこに向けてより効果的な攻撃を準備するだろうし、メディアもここぞとばかりに突き上げに出る可能性がある。恐らく中国全土、朝から晩まで「戦後70年談話批判」で燃え上がるだろう。
ましてや安倍首相は、1997年に結成した「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」で事務局長を務めた経験があり、日本軍の関与を政府が認めた「河野談話」を撤回するよう働きかけたことでも知られている。
また、先のリー・クアンユーシンガポール元首相の葬儀では、生中継に居眠りが映り込み、シンガポールどころか、アジアでの日本の印象を一気に低下させてしまった。
上海の外資企業の中間管理職として働く男性(30代)は、「安倍首相は戦争被害国に心からのおわびをしていない」と安倍政権に批判的なひとりだ。
日本軍の攻撃に命からがら逃亡した祖母を持つこの男性は、「中日両国の間には歴史的な恨みが存在する。この恨みを忘れるのにはあと100年、いや、200年の時間がかかるだろう」と否定的だ。
一方で、「おわび」問題にはこんな解釈もある。日本に留学経験を持ち、現在上海で事業を行っている台湾人男性(40代)は、次のようにコメントした。
「何かの拍子で喧嘩になり、夫が妻に『謝れよ』と求めるが、妻にも意地がありそれができない。最初に手を出したのが妻であるにもかかわらず、謝らないために関係はこじれ、妻はことあるごとに夫に付け込まれ上げ足を取られる…。日中はそんな構図と言えませんか」
そしてこう続ける。
「中国側の本音は、謝罪してほしいのではなく『謝罪しないでほしい』ということにあるのでは。常に日中間が緊張していたほうが、為政者にとってこれを利用しやすいからです。日本はこの“おわび”をどう政治的に利用するのか、その戦略はあるのでしょうか」
考えてみれば、中国の国内問題は山積みであり、しかも、それらはもはや手が付けられない状態にある。だとすれば、為政者は日本を格好のガス抜き対象に活用したいはずだ。
逆に日本がすんなり謝罪してしまったら、中国はガス抜きの対象を失うどころか、日本をこれ以上攻撃することができなくなってしまう。謝罪した日本を踏みつけになどしたら、国際社会が許さないだろう。
果たして安倍首相はこの夏、どのような演説を行うのだろうか。中国のみならず、アジア、そして世界がこの演説に注目している。
http://diamond.jp/articles/-/71119
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