http://www.asyura2.com/15/senkyo184/msg/409.html
Tweet |
4月27日、ハーバード大学でスピーチする安倍首相の横に立つジョセフ・ナイ氏(写真:ロイター/アフロ)
ナイ教授「辺野古移転を強行すべきではない」 日本列島各地への分散配置を検討せよ
http://toyokeizai.net/articles/-/68769
2015年05月05日 ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済
ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア氏は、ハーバード大学特別功労教授で同大学ケネディ政治学大学院の元学長。同氏は国際安全保障問題担当国防次官補、国家情報会議議長、安全保障援助・科学技術担当次官代理などの要職を歴任してきた。
最近の著書 『Is the American Century Over? (米国の世紀は終わったのか)』はペーパーバックで発売されており、。ナイ教授は4月27日 、ハーバード大学ケネディ政治学大学院で行われたフォーラムにおいて、日本の安倍晋三首相を迎えるために尽力した。
同氏には東アジアの「リバランス政策」を中心に話を聞いた。インタビューの最後では沖縄普天間飛行場の辺野古移転問題に関して、個人的見解と断りながらも、きわめて重要な提案を行った。同氏はクリントン政権における国防次官補として、普天間飛行場返還の日米合意を主導した人物である。
■米国は多くの国と協力をする必要がある
──『Is the American Century Over? (米国の世紀は終わったのか?)』のなかで、米国は当分の間、世界の超大国であり続けるが、国力の拡散のために他国を管理する米国の能力はかなり弱まるだろうと主張している。
そのとおり。エントロピー(編集部注:世界における各種の力学)は、中国の役割ではなく、米国の役割に対して、より大きなチャレンジになるだろう。つまり、米国が物事を成し遂げるために中国と協力する場面が生じるということだ。
例えば、アジアインフラ投資銀行 (AIIB) は、米国が反対しなければならないようなものではない。中国が世界に公益をもたらす役割をいくらか果たすようになると希望を持つべきだ。他国が参加することにより、AIIBが中国の不正政治資金となることが防がれ、透明性と組織性を持たざるを得なくなる。
AIIB問題は米国が行うべき判断についてよい見本を提供している。すなわち、米国は超大国であり続けるが、中国だけでなく他国ともっと協力することを学ばなければならないということだ。たとえば地球の気候変動の問題を2カ国だけで解決することはできない。世界の通貨安定は2カ国だけで得られない。欧州や日本、その他の国のことを考えなければ何もできない。そのためには、外交政策について、今までたびたび行ってきたようなゼロサム的なやり方を捨てる必要がある。
──この本を書いた目的だが、外交政策について新しい考え方を採用するよう米政府に促したかったのか。それとも米国が衰退している国ではないことを同盟国や潜在的な敵国に示したかったのか。
両方だ。私はあの本を学術的に価値あるものにしようとして、脚注と参考文献を付した。世界における米国の役割について心配している、米国や外国の人たちに向けて書いたものだ。
──米国の外交政策の一般的な傾向について教えてほしい。ブッシュ政権は非常に干渉主義的で、オバマ政権はそれと比較して退いているようにみえる。
米国の外交政策には「非妥協主義」である時期と、退いている時期がある。後退することは「孤立政策」とは違う。後退は戦略的な目標と手段の調整を行う時期だ。アイゼンハワー大統領は退いた政策をとり、オバマ大統領はアイゼンハワーの政策を思わせるものがある。対照的にブッシュ大統領は非妥協主義者だった。私は、非妥協主義は退く政策より深刻な問題を引き起こすことが多いと主張する者だ。しかし、退きすぎも問題になり得るため、それを心配している。
例えば、「海洋法に関する国際連合条約」の批准を拒否するうえで連邦議会が果たした役割をみてほしい。連邦議会は国際通貨基金における新興国の出資割当額を上げるという、すでに達成されていた合意を推し進めることを拒否した。愚かな判断であり、世界における米国の立場を損なうものだ。
こうした全般的な議論に加えて、具体的な地域について検討することが重要だ。アジアや欧州はもちろん、中南米やアフリカで退くことも米国にとって賢明ではない。
■中東への関与は抑制しなければならない
しかし、中東の場合、さまざまな種類の変革の時期がこれから訪れる。いわゆる「オスマン帝国の行政区画」で現在起こっているように、ある国では国境が変わることになるだろう。宗教的な対立もますます増える。アラブの春で起こったように、近代化の遅れに対する民衆の不満が顕在化するに違いない。
こういった種類の変革はすぐには終わらない。状況はフランス革命に少し似ている。フランス革命は1789年に始まって、ウィーン会議により表面的な安定が欧州で回復したのは25年後の1815年のことだ。このような状況において外部から介入して出来事をコントロールしようとするのは、状況を良くするより悪くすることの方が多い。プロイセン、オーストリアおよび英国はフランスの出来事をコントロールしようとして、そのことに気づいた。
米国は中東について、変わっていく協力国をどう利用するかを学び、可能な場合、働きかけを行う必要がある。しかし、変革をコントロールすることは、米国の能力でも、他のどんな中東以外の国の能力でも不可能なことを受け入れなくてはならない。中東に関しては、変革の影響を抑制する観点から政策を考えることが必要だ。
東アジアでは、対照的に米国の存在感を強く示すことが必要だ。それこそが「リバランス」政策だ。東アジアは米国の存在を歓迎している。つまりベトナム、フィリピン、日本、インド、オーストラリアのことだ。これらの国は、中国の力の強まりに対抗するうえで米国の助けを望んでいる。それは抑圧ではない。中国の力が強まるなかで、自然な勢力の均衡を確保するためのものだ。
■オバマ大統領は正しい方向に歩んでいる
──オバマ大統領は弱々しくみえるとの批判がある。
東アジアで進めているリバランスは正しい政策だ。オバマ政権に対しては、中東で問題が次々と持ち上がった。そのため、政府高官らの渡航記録をみても、それほどリバランスが進んでいないようにみえる。緊急事項が重要事項を押しのけている状態といえる。
欧州においては、オバマ大統領が、プーチン大統領が進めた欧州から米国を引き離す政策を許さなかったことは正しかった。それがロシアの主要な目的だったためだ。オバマ大統領がドイツのメルケル首相と緊密な関係を維持したことは非常に賢明だったといえる。また、中南米ではキューバに対して門戸を開く政策をとったことも賢明だった。イランに関しては、核問題の交渉がどうなるか6月になるまで分からないが、これらは全部正しい方向への歩みだ。全体としては、オバマ大統領は正しい方向に歩んでいる。
──重要事項である東アジアのリバランスを進める上でのカギは何か。
重要な問題の1つに、環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) が成功するかどうかがある。貿易協定の詳細について文句をいうことはできるが、私は貿易の専門家ではない。TPPが失敗すれば、リバランス政策における米国の大きな失敗とみられるだろう。米国と日本の間の交渉が合意に近づいている兆しがあるが、どうなるかは最後まで分からない。
重要な問題においては中国と協力する方法も見つけなければならない。オバマ大統領はそれを見つけようとした。昨年末の訪中で合意に達した気候変動に関する声明は有益だった。大事件でないにしても有益な前進だ。AIIBに関しては、もっとうまいアプローチを考えなければならない。
米日の軍事関係は、ここ数年よりも良好になっている。20年前に国防総省にいたころ、みな日本との安全保障条約を冷戦時代の遺物と考えていた。今では誰もそうは考えていない。インドと米国の関係は健全な方向に進んできている。したがって、リバランスの全般的な方向は間違っていない。しかし、私の期待よりゆっくりと進行している。
──歴史問題について、日本の安倍首相の政治姿勢をどう評価するか。
歴史問題を後回しにして、先に進むべき時だ。第二次世界大戦終了から70年目の今、お互いに21世紀に向かい合うべきであり、20世紀の細部にとらわれていてはならない。安倍首相は時として歴史問題に現実的な姿勢をみせる。この現実的な側面が持続することを期待したい。
安倍首相は岸信介の孫で、そのことがその歴史観に影響している。2013年末の靖国神社参拝は日本の近隣国を刺激しただけでなく、米国政府を失望させた。あのような行動は、その価値以上に犠牲が大きいことに気づいてほしい。彼は実績を作ることを望んでいる。そこにはTPP締結、日米防衛ガイドラインの改訂だけでなく、北朝鮮との有事に備えた韓国との関係修復も含まれている。考えるべきはそうした事柄であって、歴史ではない。
■沖縄に大規模基地を置く体制は見直す必要がある
──沖縄は不安要因であり続けている。普天間代替施設計画について米国はどうするべきなのか。
辺野古に代替施設を建設することについて、沖縄側に十分な政治的な支持があるなら、計画を進めるべきだ。しかし、それが可能かどうかは分からない。先行きを見守る必要がある。もっと大切な問題は、10年先を見通すことだ。米軍をどのように配備したいのか。
私は、日本列島各地の複数の基地に米軍を分散配置することを検討するよう提案する。そうすることで基地の脆さを軽減し、同時に、日本の国旗を掲げた日本の基地でありながら米軍が交代で駐在していることを明確に示すことができる。三沢飛行場が好例だ。10年先を見越して、米軍と自衛隊が共同で行動できる、同盟関係の継続、米軍の強いプレゼンスの継続をどうやって確保するかを考えれば、長期的な解決策として、沖縄に固定させた大規模基地の考え方から離れることがどうしても必要になる。
この10年を見越したプロセスに向けて計画するべきであって、普天間の米軍を辺野古の新しい設備に移設する計画に一か八かすべてを賭けるべきではない。
──これはあなたの個人的な意見か。それとも同じアプローチを検討している者が米国政府にいるのか。
これは私個人の考えだが、政府にいる友人に提言したことはある。私は、笹川平和財団と戦略国際問題研究所 (CSIS) が組織した日米安全保障研究会などでも自分の考えを述べてきた。
しかし、あくまで個人的な意見であり、沖縄に関する新しいアプローチを広めるために国防総省の代わりに行動しているわけではない。実際、国防総省にそのような考えの人はほとんどいない。多くは私が孤立無援の立場にあることを証言するだろう。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK184掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。