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憲法改正へ、自民党が国民の支持を得るためのベスト戦略とは何か?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43221
2015年05月04日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■自民党が憲法に盛り込もうとしている新たな権利
一日遅れだが、今日のコラムは憲法の話をしよう。
この時期になると、マスコミ各社が憲法改正について賛成、反対の世論調査を行う。
NHK、共同通信、朝日、産経FNNが行った世論調査では、それぞれ賛成と反対は、28%と25%、46.7%と42.3%、43%と48%、40.8%と47.8%だった。一言で言えば、賛成と反対が拮抗して、どちらが多数とは断言できない調査結果だ。
朝日の調査では、憲法9条について、変える方がよいは29%、変えない方がよいが63%だった。
自民党は憲法に新たな権利を盛り込もうとしている。緊急事態の際に政府が国民の権利を一時的に制限できる「緊急事態条項」、国や国民が環境保護につとめる「環境権」、次世代に借金を残さないようにする「財政規律条項」である。
いまの憲法でも十分は55%、加えるべきは36%だった。加えるべきと答えた人は、加えるべきものとして、「緊急事態条項」40%、「環境権」51%、財政規律条項」67%だった。
これを見る限り、今の自民党の憲法改正の手順はうまくいっていない。憲法9条ではなく、新たな権利の盛り込みを狙っているが、それが国民の支持を得ていない。
ただし、新たな権利の中で「財政規律条項」が比較的支持を得ているように見えるが、これは他の権利が魅力的でないとともに、財務省に変な期待を持たせるので、かなり不味い。
今の状況で、「財政規律条項」が規定されれば、過度な緊縮財政になってしまうのがオチである。その結果、経済が停滞し、国民経済に悪影響がでてしまう。これは、昨年4月からの消費増税でその後の経済が落ち込んだことを思い起こせばいい。
「財政規律条項」を憲法に入れるくらいなら、政府と中央銀行に対して雇用の最大化とインフレ目標を規定することのほうがいい。ちなみに、過度な財政赤字は酷いインフレと裏腹であるので、インフレ目標を入れることは「財政規律条項」を入れたのと同じ効果があるからだ。しかも、雇用の最大化を入れておけば、多くの国民は賛同するはずだ。
■憲法改正でのベスト戦略
そもそも、新しい権利を入れるという自民党の戦略自体を見直したほうがいい。世界各国の憲法では、後述するが、改正はしばしば行われている。ただし、その改正の多くは、政府のありかたや国会の仕組みという統治機構に関するものだ。
朝日の世論調査でも、興味深い結果がでている。憲法改正に反対の人に、特に大切な分野を聞いたところ、「戦争放棄と自衛隊」が78%、「国民の権利と義務」が67%、「天皇制」20%、「国会の仕組み」7%、「地方自治」7%、「憲法を変える手続き」7%だった。
憲法改正に賛成の人に、特に変える必要があると思う分野を聞いたところ、「国会の仕組み」53%、「戦争放棄と自衛隊」32%、「憲法を変える手続き」28%、「地方自治」24%、「国民の権利と義務」22%、「天皇制」11%だった。
これらをみれば、「戦争放棄と自衛隊」、「国民の権利と義務」を変えずに、「国会の仕組み」、「地方自治」、「憲法を変える手続き」、つまり統治機構にかかる部分を変えるというのが、憲法改正でのベスト戦略になるだろう。
たとえば、道州制など地方分権も本格的に行おうとすると、憲法改正が必要になってくる。地方への権限委譲のために、地方の条例制定権を自立させようとすると、憲法94条の改正が必要になってくる。憲法94条では「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」とされているが、あくまで「法律の範囲内」でしかできない。アベノミクス特区も、あくまで国にお願いして作ってもらうという立場だ。
また、首相公選や今の衆参が同じになっていることを直そうと思っても、憲法の壁があってできない。これらの統治機構の関わる部分は、戦争放棄や国民の権利義務という憲法の根幹部分ではないので、もっと柔軟に改正してもいいと筆者は思っている。
ただし、実際の憲法改正では、「憲法を変える手続き」のハードルが大きい。
■世界の国々の憲法改正難易度
具体的な憲法改正については、国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)の賛成により憲法改正案の原案が発議され、衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査されたのちに、本会議に付される。
両院それぞれの本会議にて3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされる。国民投票は、憲法改正の発議をした日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行われる。国民投票で過半数の賛成となるわけだ。
日本の憲法改正の難易度を世界の国と比較してみよう。
憲法改正手続きとして、@通常の法律の成立要件と同じ(軟性憲法)、A通常の法律の成立要件に加重(硬性憲法)がある。主要国では、@はイギリス、イスラエル、ニュージーランドくらいで、Aが多い。
Aのうち加重されるものとして、@議会議決の加重要件(1/2より大きい表決数、一定期間後の再議決)、A国民投票、B特別の憲法会議、C州の承認がある。
このうち、@の加重された表決数、A国民投票、C州の承認が、憲法改正の難易度の鍵を握っていると考えてもいいだろう。そこで、加重された表決数(一院制の場合はその半分、再議決は0.1とカウント)、国民投票はやる場合を1、やらない場合をゼロ、州承認の表決数の平均したものを、憲法改正難易度としてみよう。
主要国17カ国で難易度指数を計算してみると、日本0.56、韓国0.44、中国0.11、インドネシア0.11、インド0.45、フランス0.53、ドイツ0.22、イタリア0.2、イギリス0.17、カナダ0.39、メキシコ0.39、アメリカ0.45、ブラジル0.23、ロシア0.42、トルコ0.13、南アフリカ0.39、オーストラリア0.67となって、日本は世界でも憲法改正難易度が最高ランクに高い国だ。
これらの国の中で、戦後憲法改正回数が手元にある9カ国について見ると、日本ゼロ、韓国9回、中国9回、フランス27回、ドイツ57回、イタリア15回、カナダ18回、アメリカ6回、オーストラリア3回である。
■「戦争放棄と自衛隊」ほかの改正への懸念を解消
ちなみに、憲法改正難易度と憲法改正頻度(1年あたり)の関係を示してみると、下図の通りだ。
特に、国民投票は改正のハードルが高く17カ国中、日本、韓国、オーストラリア、フランス(政府提案以外)の4カ国しかない(ロシア、トルコ、イタリアには一定の場合にある)。
この意味で、日本が、「憲法改正発議要件を3分の2から2分の1」としても、国民投票が残るので、やはり憲法改正の難易度の高い国であることは間違いない。
それでも、「憲法改正発議要件を3分の2から2分の1」について、憲法改正に反対の人には、「戦争放棄と自衛隊」、「国民の権利と義務」の改正につながるのではないかと懸念を持つだろう。そうした懸念を解消して、少なくとも統治機構の関する憲法改正をしやすくするのが、憲法改正の第一歩であろう。
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