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転載する記事に、「国債を完済する必要はないというのが、日本を除く国際社会のスタンダード」、「実態と懸け離れたところで「来るべき破綻」に怯える様子は滑稽」とあるが、日本では、政府・多数派学者・主要メディアが、消費税制度を導入したり消費税の税率をアップしたりする目的で、“財政危機”や社会保障制度の持続性疑念を声高に叫ばれてきたため、国民の多くが“そうなんだ”、“家計を考えればわかる。借金でずっとしのげるわけないもんな”といった気持ちで流布される“財政危機”説を信じるようになった。
“財政危機”説や財政再建必要説は、消費税の税率を引き上げるための手段であって目的ではない。
逆に、消費税導入(89年)以後、消費税税率アップ(97年)を挟みながら、日本の財政は総税収の減少によってさらに悪化していったというのが歴史的事実である。
「多くの人が統計の実態を理解しないままに、財政再建が必要だという感情に陥っている」と、コロンビア大学のワインスティーンは言う。「いま日本の財政再建に必要なのは、経済成長を刺激する政策だ」という考えには半分ほど同意する。
財政破綻統計の実態はほとんど意味がない。どうであれ財政破綻はしないからである。
財政問題は、詰まるところ、悪性インフレの発生を回避できるかどうかである。
国民経済は現在及びちょっと先の未来が問題なのであり、過去は、集積された生産設備など現在の経済活動に資するものだけに意味がある。
過去の借入金は、民間企業・家計・地方政府にとって重要な規定要因だが、通貨を発行できる中央政府にとって重荷ではない。
とにかく、国民経済にとって重要なのは、現在の供給力であり、将来の供給力を強化する現在の設備投資なのである。
この供給力が、国民生活を支え、社会保障制度を支えるのである。お金がそれらを支えるという考えは、近代人が嵌まっている特徴的な錯誤である。
「いま日本の財政再建に必要なのは、経済成長を刺激する政策だ」という提言は、財政再建は考慮する必要がないのだが、短期間の政策としては正しい。
しかし、設備投資の呼び水としての需要増大策(賃金引き上げや公共投資)は有効だが、中長期にわたって設備投資を誘発しない賃金引き上げや公共投資は、物価上昇を招き実質所得を低下させかねない危ない政策である。
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『ニューズウィーク日本版』2015−4・21
P.28〜29
「「日本財政危機」という神話
財政:消費増税を先延ばしすれば国債が暴落し、国家が破綻する―20年以上前から繰り返されてきた主張には数字のカラクリが潜んでいる
先月末、参院本会議で15年度税制改正関連法が可決。これで消費税は、17年4月から10%になることが正式に決まった。大きな争点だった景気条項はあっさり削除。景気がどれだけ悪くなっても、増税は予定どおり行われることになった。
この決定に誰よりも胸をなで下ろしたのは、日本銀行の黒田東彦総裁かもしれない。黒田は2月、安倍晋三首相が議長を務める経済財政諮問会議で「オフルコにしてほしい」と切り出すと、消費増税を念頭に財政再建の必要性について熱弁を振るった。世界の格付け機関は日本の財政赤字に懸念を募らせており、財政再建をこれ以上先延ばしすれば日本国債が格下げされ、大暴落しかねない―。
議事録に掲載されない発言がわずか数時間後にニュース番組で報じられたことを考えれば、黒田自身も情報漏えいを期待しており、ニュース価値を高めるためにあえてオフレコを強調したのではないかとさえ勘繰りたくなる。
もちろん真相は藪の中だが、財務省出身の黒田が安倍(と世間)に訴えたかったことは明白だろう。日本の財政赤字は危機的な水準で、それを解消するにはもはや消費税を上げる以外にない、というメッセージだ。
財政破綻に警鐘が鳴らされ始めてから20年以上がたち、近年は国民の問にも「消費増税やむなし」の空気が醸成されつつある。だが、日本の財政危機は本当にそこまで崖っぷちなのか。根拠とされる数字を精査すると、財政危機説がいくつかの誤解の上に成り立っている実態が浮かび上がってくる。
債務残高はGDPの2倍?
IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)などのエコノミストや格付け会社が、財政危機の根拠としてこぞって言及するのが日本政府の債務残高がGDPの2倍以上という衝撃的な数字だ。毎年の「稼ぎ」の倍以上もの「借金」を抱えているというのだから恐ろしい話に聞こえるかもしれない。しかし、この数字をうのみにすると本当の日本財政の姿を見誤ることになりそうだ。
コロンビア大学日本経済経営研究所副所長であるデービッド・ワインスティーン教授によれば、この数字は日本政府が保有する膨大な資産がまったく考慮されていない、「誤解を招く」負債規模だという。
日本は政府関連の公的機関がアメリカに比べて非常に多く、それぞれが大きな資産を保有している。しかし財政赤字に警鐘を鳴らすエコノミストは、そうした資産を考慮に入れず債務の額面だけに注目しているようだ。
「企業財務と同じく、国家の財政も資産から負債を差し引いた正味の赤字額で判断しなければならない」
ワインスティーンが日本の政府系機関全体の資産を含めた上で、「純粋」な財政赤字額を算出したところ、債務残高の対GDP比はせいぜい80%程度。よく言われる「GDPの2倍以上」の3分の1ほどでしかなかったという。
資産を考慮しないのは日本財政の実態を見誤る初歩的な落とし穴。さらにエコノミストらを惑わすのは、日本国債の保有者をめぐる複雑なカラクリだ。
「多くのエコノミストは、発行された国債の多くを日銀など政府機関が保有している事実を認識していないと思う」と、ワインスティーンは指摘する。「そのため、日本政府の中で相殺されていることに気付いていないのではないか」。いわゆる「日銀オペ」だ。やり過ぎるとインフレを招くリスクがあるが、今のところその可能性は低い。
借金をめぐる日本特有の慣習のために、赤字が実態よりずっと大きくみえてしまうという問題もある。
意外かもしれないが、国債を完済する必要はないというのが、日本を除く国際社会のスタンダードだ。その前提条件の違いを理解せずに、日本と諸外国の抱える負債を単純に比較すると誤解を招く。
諸外国では新たな国債を発行することで、国債の返済を賄っている。一方、日本には「60年償還ルール」という独自の制度がある。ひとことで言えば、60年ローン。例えば、10年物国債の場合は国債の元本を、6回に分割して10年ごとに返済する仕組みだ。あまり知られていないが、返済が滞らないよう「積立金」が毎年の国家予算に組み込まれている。
備えあれば憂いなしという日本的な発想に基づくものだろうが、この積立金の規模があまりに大きい。積立金と利子を合わせた国債費が毎年、国の支出の実に4分の1を占める。
しかも、帳簿上の数字にはカラクリがある。積立金の支出は一般会計に計上され、赤字額を増やす一因となっているが、実際はその多くが特別会計の枠で文字どおり積み立てられている。そのため日本政府の支出の多くが借金の返済に充てられているようにみえるが、グローバルスタンダードではその半分程度で済む計算になる。
「特別会計から一般会計に繰り入れられるため、支出が水増しされている」と、山口大学経済学部の馬田哲次教授は言う。「特別会計を合わせて計算すれば、言われているほど財政赤字が深刻ではないことが分かるのではないか」
実態と懸け離れたロジック
日本の財政がそこまで危機的ではないのなら、消費税引き上げの判断に疑問を挟む余地が生まれる。
それだけではない。消費増税のもう1つの板拠とされる、景気浮揚効果にも疑問符が付いている。
日銀は長年、景気がよくならない理由の1つは消費税を上げないことだと言わんばかりの主張をしてきた。国民は将来に不安を抱いているために金を使わないが、消費税が上がって老後の年金が確保されていると安心すれば、消費に金を回して景気が上向く―。まさに「税と社会保障の一体改革」を地でいくロジックだ。
しかし現実には、消費増税には政府の思惑とは逆の効果があるようだ。安倍政権が昨年末に消費税の10%への引き上げをいったん先送りすることを決めると、景気は上向き税収が増え始めている。消費者の多くは増税されないほうが金を使うということが証明されてしまったわけだ。「これまで『安心効果』をうたって増税の必要性を説いてきた日銀は、自己矛盾に陥った」と、ソシュテジェネラル証券東京支店の会田卓司チーフエコノミストは言う。
独り歩きした数字に踊らされ、現実に即さないロジックに基づいて進む税制改革は、どこかぎくしやくしている。「多くの人が統計の実態を理解しないままに、財政再建が必要だという感情に陥っている」と、コロンビア大学のワインスティーンは言う。「いま日本の財政再建に必要なのは、経済成長を刺激する政策だ」
実態と懸け離れたところで「来るべき破綻」に怯える様子は滑稽ですらある。それは、どこか16年前のあの人に似ている。99年、小渕恵三首相が「世界一の借金王だ!」と自らを椰輸すると、深刻な財政赤字をネタにした笑えない冗談だと批判を浴びた。小渕政権が「バラマキ」によって国の借金をさらに増やしたのは確かだ。
だが本当に批判されるべきは、実態を精査することなく日本財政の危機説をやみくもにあおってきた悲観論者たちのほうもしれない。
前川祐輔(本誌記者)」
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