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最大のテーマはやはり「中国の脅威に日米でどう対抗するか」だった photo Getty Images
カギは南シナ海での中国の脅威にあり! ホルムズ海峡と安保法制の手続き論に拘る左派マスコミの空虚
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43155
2015年05月01日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
やはり、最大の脅威は「中国」である。新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)の合意、および日米首脳会談で安倍晋三首相とオバマ大統領がもっとも力を入れて取り組んだのは「台頭する中国に日米がどう対応するか」という課題だった。なかでも、今後の焦点は尖閣諸島ではない。むしろ南シナ海だ。
■機雷掃海も邦人保護も「小さなテーマ」
私は2週続けて当コラムで「安全保障法制を見直す根本的な理由は中国の脅威に対抗するためだ」と強調してきた(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/42934とhttp://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43029)。
中国の脅威を名指しして指摘しないと、なぜ集団的自衛権を限定容認して安保法制を見直すのか、国民は話が腹に落ちないのではないか、と思ったからだ。首相と大統領が今回、会談で名指ししたことですっきりした。
だが、見直しに反対する一部の左派系マスコミは、もしかすると勘違いしていたのではないか。たとえば、ガイドラインの合意を受けた4月28日付の東京新聞1面トップ記事は「戦時の機雷掃海明記」という見出しを掲げて、ホルムズ海峡での機雷掃海に焦点を当てて報じている。
機雷掃海も大事だが、はっきり言って日本から遠く離れたイランが仮に機雷を敷設したところで直接、日本を攻めに来るわけではない。なぜ、ホルムズ海峡の機雷掃海に焦点を当てたかといえば、これまでの政府の説明や与党協議がそうだったからだろう。
目先の議論に目を奪われてしまい、自分自身の頭で物事の本質を考えない。だから、いつまでもホルムズ海峡の議論にこだわっている。なんのことはない、政府を批判しているようでいて、自分自身が政府の説明にとらわれているようだ。
あるいは朝鮮半島有事で避難する邦人を輸送中の米艦防護についても、あれこれとさんざん議論された。しかし、機雷掃海も邦人保護も「いま現実に日本の平和と安全を脅かしているのはどの国か」という大テーマに比べれば、せいぜい「あるかもしれないシナリオ」の1つ、小テーマにすぎない。
目下の大問題は、そんな可能性の話ではない。軍事力を肥大化させ、現実に尖閣諸島や南シナ海の周辺諸国を脅かしている中国の脅威にどう対抗するか、である。中国は南シナ海で複数の岩礁を埋め立てて、急ピッチで軍事基地化を進めている。領有権をめぐってフィリピンやベトナムなどと争いがあるのに、既成事実化を図っているのだ。
■ 自衛隊が南シナ海で中国に警戒活動
東シナ海では、中国公船が何度も尖閣諸島周辺の日本領海を侵犯している。海だけではない。空でも2013年11月に防空識別圏を設定し、中国軍機が自衛隊機や米軍機に異常接近する事件を起こしてきた。
今回の安保法制見直しとガイドライン改定、日米首脳会談はまさに、そんな中国の脅威にどう日米が結束して対抗するかがテーマだった。多くの答えが用意されたが、もっとも重要と思われるのは、中国の無法行為をけん制するために、南シナ海で日米が平時から共同で「情報収集、警戒監視および偵察(ISR)活動を行う」という点である。
つまり、自衛隊が南シナ海で中国に対する警戒活動をするという計画だ。これは米国側が望んできた。米国は防衛費を節約せざるをえない中で、少しでも日本に負担を分担してもらいたいからだ。
実際に自衛隊が平時から、はるばる南シナ海まで出かけて行って警戒監視活動をするかどうかは分からない。そんなオペレーションをするとなると、経費はかかるし能力も十分かどうか。南シナ海に能力を割けば当然、尖閣諸島防衛が手薄になってしまうという議論もある。
そこで、ガイドラインは注意深く「自衛隊および米軍は〈それぞれのアセットの能力および利用可能性に応じ〉…ISR活動を行う」と書いている。アセットとは資産、つまり自衛隊にそんな能力と余裕があればやってください、という話になっている。
実際に何ができて何ができないのか、政府は検討を始めているだろう。実施するとしても、いきなり部隊派遣ではなく、まずは期間を定めて米軍との共同訓練、合同演習あたりからではないか。
そうは言っても、日本にとって南シナ海が今後、これまで以上に重要な地域になるのは間違いない。日本の生命線である原油タンカーが通るシーレーンだから、というだけではない。中国から見ると、今回のガイドライン改定と日米首脳会談の結果、日米の結束が飛躍的に高まった。尖閣諸島を力で奪取しようとすれば、大変な実力が必要になる。
いまや、尖閣奪取作戦はハードルが高くリスクも大きいのだ。
そうなると、むしろ日本と米国から遠い南シナ海で既成事実を積み上げていったほうが、中国にとって合理的である。日本や米国から遠ければ遠いほど、そして中国が挑発すれば挑発するほど、日本と米国の警戒監視負担が重くなる。それは中国にとってメリットである。
原油や天然ガスなど豊富な資源が眠っているのは、南シナ海も尖閣周辺海域も同じだ。南シナ海の周辺国にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)を使って巨額の投資話をもちかけるアメ玉も用意できる。
他国が実効支配している島を奪取するのではなく、岩礁の実効支配はもう完成しつつある。つまり南シナ海制圧作戦のほうがリスクが低い。
さらに将来、日本と全面対決になった場合、南シナ海を抑えておけば、日本への原油供給の喉元を押さえるメリットもある。多くの日本人は南シナ海と聞くと「日本から離れているから関係ない」と思うかもしれないが、実は中国からみると、戦略的に日本包囲網の鍵になる海域なのだ。
日本にとっては、逆に死活的な利益に関わる地域である。ホルムズ海峡は「もしもイランが機雷を敷設したら」という仮定の話だが、中国の岩礁埋め立て、軍事基地建設はいま起きている現実だ。同じく原油供給に関わるシナリオだが、ホルムズ海峡よりも南シナ海ははるかに差し迫った「いまそこにある危機」と言っていい。
■ 国会無視でも国民無視でもない
もう1点。左派系マスコミは「国会で安保法制が整う前に政府が米国と合意して既成事実化を図った」と批判している。朝日新聞は28日付2面で「安保法制を既成事実化 国会論議置き去り」と書き、東京新聞も同じく「国会承認なし、法律以上の力」と書いた。岡田克也民主党代表も「国民無視で理解できない」と批判している。
だが、政府が国会論議や法改正より前に外国と交渉して合意するのは、条約であれば普通である。いま焦点の環太平洋連携協定(TPP)もそうだ。条約なら政府が調印した後、国内法を改正し、国会が批准して発効する。問題があれば、国会が法改正を否決し批准しなければいい。
そもそも今回のガイドラインは、日米安保条約に基づいて両国の行動を規律する運用指針にすぎない。しかも指針のもっとも基盤になる集団的自衛権の限定容認について、政府はとっくに「閣議決定」という形で国民に基本的な考え方を示していた。法改正の技術論で言えば、政府は法案を出せばいいのであって、本来は考え方の閣議決定など必要ない。
左派系マスコミは閣議決定の際も「1内閣が勝手に解釈を変えた。立憲主義に反する」などと大騒ぎした。だが、内閣が憲法を解釈して法律案を国会に提出するのは当然だし、政府が憲法解釈を変えた例はこれまでに何度もある。
だから政府が決めた条約運用方針に問題があるなら、国会が関連法の改正案を否決すればいいだけだ。「少数野党は否決できないじゃないか」というなら、それは国民が投票した選挙の結果である。べつに国会無視でも国民無視でもなんでもない。
それでも問題があるなら、憲法解釈の是非は憲法にしたがって最高裁判所が最終的に判断する。最高裁での争いになれば、最高裁は砂川訴訟判決(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55816)で示したように、統治行為論(裁判所の司法審査権の範囲外にある)を展開して政府の行為を合憲と判断するに違いない。最終的には、国民が選んだ政府が国を統治するのだ。
国会で政府の提出法案が否決されて法改正できないなら、政府がガイドラインの合意事項を実行できないのは当たり前だ。東京が書いたように「法律以上の力」などあるわけがない。日本が法治国家でない、とでも言うつもりなのだろうか。
そんな話は当然、日米政府もわきまえていて、ガイドライン自身が冒頭で「指針はいずれの政府にも立法上、予算上、行政上またはその他の措置を義務付けるものではなく、いずれの政府にも法的権利または義務を生じさせるものではない」と念押ししている。
「国会無視」といった政策決定プロセスの批判は一見、もっともらしいようでいて、実は政策の中身そのものに踏み込んで議論するのを避けている。中身とは、まず「脅威に対する現状認識」それから「政策対応そのもの」だ。
そもそも左派系マスコミや民主党は中国の脅威をどう認識しているのか。そこを明らかにせず、プロセス批判に逃げているようでは、いつまで経っても建設的な議論にはならない。逆に言えば、現実の脅威認識や対応策について具体的な考え方を持ち合わせていないから、プロセスを批判して批判したつもりになっているのだ。
こういう空虚な形式思考が続いているのをみると、いよいよ現実離れした左派が破綻しつつある、と実感する。
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