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安倍首相の米紙での発言が心配されている
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150423/plt1504230700001-n1.htm
2015.04.23
安倍晋三首相が3月末、米紙ワシントン・ポストのインタビューで、慰安婦問題について「ヒューマン・トラフィッキングの犠牲」と表現したと報じられたことを心配する声がある。26日からの首相訪米を前に、慰安婦問題を追及してきた拓殖大学の藤岡信勝客員教授が問題提起した。
米下院議会は2007年、慰安婦問題で対日非難決議を採択した。決議文には次のように書かれている。
《日本政府による強制軍事売春である「慰安婦」制度は、その残酷さと規模の大きさにおいて前例がないと考えられるものであり、集団レイプ、強制堕胎、辱め、性暴力のあげくの果ての四肢切断・死亡・結果としての自殺、を含む20世紀最大のヒューマン・トラフィッキング事件の1つであった》
何の根拠もない、荒唐無稽のデマである。この決議は、カナダやオランダ、EU議会、台湾にまで飛び火し、米国各地に慰安婦像や碑が設置される口実となった。
さて、ここで使われた「ヒューマン・トラフィッキング(Human Trafficking)」という言葉は、メリアム・ウエブスター辞典によれば「(売春や強制労働など)人間を管理し搾取できる所有物として扱う組織犯罪」と定義される。この語には、(1)人間をモノ(奴隷)として扱う(2)組織犯罪の意味に加えて、(3)違法な人の移動(オックスフォード辞典)という語義も含まれる。
(1)(2)(3)を並べれば、米国がかつて行った黒人奴隷の移動・売買を背後のイメージとしている言葉であるのは明らかだ。ひとことで言えば「人を奴隷として売買する組織犯罪」が、「ヒューマン・トラフィッキング」なのだ。日本政府はこれを「人身取引」と訳している。米議会決議は、日本人も近い過去に奴隷制度を行っていた、と言いたいのである。
ワシントン・ポストは、安倍首相の発言として「慰安婦についての質問ですが、ヒューマン・トラフィッキングの犠牲者となって計り知れない苦痛と筆舌に尽くしがたい受難を経験したあの人々に思いを馳せるとき、私の胸は痛む」と報じた。
これではヒューマン・トラフィッキングを日本がやったと誤解される。
慰安婦は、女衒(ぜげん)とよばれた仲介業者が親に前払いした借金を、一定期間に自分が稼いで返済すれば、仕事の拘束から解放された。これは広く行われた「年季奉公」という雇用形態の1つであり、彼女らは決して奴隷として、モノとして売られたわけではない。
女衒の仕事は、そのリクルート・システムの一環を担っていたわけで、犯罪でも何でもなかった。朝鮮半島は当時、日本統治下にあり、事情は同じである。
安倍首相は「人身売買」という言葉を使ったようだ。日本語の「人身売買」は、「ヒューマン・トラフィッキング」とピッタリは重ならない。誤訳に近い。
来週の訪米で、この件が話題にされる機会があれば、将来に禍根を残さないような、適切なコメントをお願いしたい。
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