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農業生産法人・新鮮組の岡本重明社長
菅官房長官の懐刀・改革派“変人農家”が怒りの出馬!地元自民と戦い 政権は見殺すのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150421-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 4月21日(火)6時1分配信
安倍晋三政権は地方創生や農業改革に本気で取り組む気があるのか――。
その試金石となるような選挙戦がある。統一地方選の後半、4月26日に投開票される愛知県田原市長選挙だ。
渥美半島に位置する田原市は全国有数の農業地帯で、そこに本拠を構える「JA愛知みなみ」は全国の農業協同組合の中で売上高1位。億単位の売上高を上げる農家がごろごろしている。名産は「電照菊(温室内で電灯の光を当てながら促成栽培する菊)」で、葬儀の必需品であることなどから年中出荷が続く。このほかにも、メロンやブロッコリー、キャベツの栽培が盛んだ。同市にはトヨタ本体で国内最大の田原工場もあり、「レクサス」を生産している。気候も温暖でとても裕福な地域だが、同時に安定志向の保守色の強い地域でもある。
そんな田原市を中心とするこの地域でも、高齢化の波が押し寄せている上、農協が貸し剥がしをするので農業をやめる人が出始めている。街の中心部から外れると限界集落的な地域も増えて公共交通の便も悪く、高齢者や子どもにとって必ずしも生活しやすい環境ではなくなっている。このため、街づくりの在り方が問われ始めている。
こうした問題意識を背景に、地元では「変人農家」と呼ばれている農業生産法人・新鮮組の岡本重明社長(54)が徒手空拳で選挙戦に名乗りを上げた。岡本氏は現在、大規模に稲作を展開するほか、タイとインドネシアでコシヒカリの栽培指導も行っている。
この保守的な土地で岡本氏は約30年前から「農協不要論」を唱えてきたばかりか、コストと利益、グローバル化を意識した農業を目指し、それを自助努力で実行してきた。今でこそ「JA全中」の解体で農協の存在意義が問われ、農業のグローバル化も珍しくないが、30年近く前から公然と農協不要論を唱えて海外展開を意識していた岡本氏は、ムラ社会の中では「変人」だった。
岡本氏が取り組んできたことをいくつか紹介すると、次のようなことがある。
農業資材販売も手掛け、土の改良剤やトラクターの爪など、農協・メーカー経由で買えば高いものを回避するため、自らリスクを取って海外に出向き、品質は同等で価格が安い資材を仕入れてきた。花き農家が農薬の効かないウィルスに悩んでいることを知ると、欧米では使用が認められている二酸化塩素を輸入して2009年から販売を開始。これは耐性菌を生まない消毒薬で、日本でも滞留性が少ないとして食品添加物として認められている。岡本氏は農水省に登録が必要な農薬としてではなく、水を殺菌する資材として販売に踏み切り、病気に苦しむ菊農家から高い評価を受けた。
また、岡本氏が持つ水耕栽培の特許技術を地元で障害者を雇用しているNPOや山口県内の福祉法人に貸している。この水耕栽培でつくった野菜を販売することで、身障者らの自立に少しでも貢献したい考えだった。
●補助金に依存しない農業を目指す
今回、岡本氏の立候補は、組織の応援がまったくないばかりか、地元の有力組織である農協や自民党を敵に回しての挑戦である。2月に立候補を表明した際には「泡沫」扱いだったのが、今や密かに支持する人たちが出始め、本命候補を少し焦らせているという。その背景には、掲げる政策がユニークで、それが実現できれば地域の活性化は十分に期待できるということもある。
岡本氏はよくこう問いかける。
「米1俵(約60kg)からおにぎりが何個できるか知っていますか」
答えは約1400個。岡本氏が訴えたいのは、いかに農家が付加価値を取り逃がしているか、という点に尽きる。その構造を説明するとこうなる。
コンビニエンスストアで売られているおにぎりは1個が約100円。単純計算して、コンビニは米1俵から14万円の売り上げが得られる。これに対して、生産者である農家が米1俵を出荷して受け取る平均的な価格は、現状では1万円程度。約13万円分の付加価値が農家から見て「下流」のコンビニに奪われているのだ。コンビニ各店舗の売り上げは、フランチャイズを束ねる東京の本社に吸い上げられ、地方の生産者にはまったくといっていいほど利益は残らない。だから補助金を当てにする。
岡本氏は、この付加価値を農家が取り戻せば、補助金に依存しない農業が展開でき、地域経済に好循環をもたらすと考えている。農家が地元加工業者などと提携しておにぎりやお惣菜をつくって販売し、可能ならば弁当類を冷凍させて輸出することも視野に入れる。こんなビジネスを展開することで、農家の手取りは増え、地域に雇用も誕生するといった考えだ。岡本氏はこの考えを「ふるさと弁当構想」と呼ぶ。
最近よく「農業の6次化が重要」といわれる。これは1次産業の農業、2次産業の加工、3次産業の流通サービスが合体して(1+2+3=6)、付加価値を原料生産者が取り込んでいくことだが、まさに「ふるさと弁当構想」がそれに当たる。
これは絵空事ではない。筆者の経験でも、検疫の許可をもらってペルーの日系移民向けにお節料理を冷凍して大量に輸出し、現地でフジモリ元大統領の娘さんたちと一緒に食べたことがある。現在は冷凍技術が発達しているので、解凍後につくりたてと同じ感覚でお節料理を食べることができる。2年前には「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されており、その存在は世界でも注目され始めている。和食弁当が「グローバル商品」になり得る可能性は十分にあるのだ。
●故郷の破壊をくい止める
この「ふるさと弁当構想」を発展させるかたちで、岡本氏は今回の選挙での主要政策を打ち出した。その政策の中心には、渥美半島内に「産直広場兼バスステーション」を置くことが掲げられている。これは、地元の個人商店や農業・漁業従事者が販売経路を幅広く選択できるために設ける施設で、イメージとしては「道の駅」のようなものだ。その販売施設を巡回し、主要駅にまでつながる新たなバス網を第三セクターで構築する考えだ。販売施設で上がった収益を、バス運営の資金に充てる構想だ。
岡本氏がいう「おにぎりの付加価値」をしっかりと農家が取り込めるようになれば、このステーションでは一定の利益が期待できるのだ。渥美半島では地元産とうたうあさりご飯の弁当が高く売られているが、実際に製造しているのは地元以外の業者であり、そこに付加価値が流れているという。施設とバス網を関連付ける狙いは、地方の公共交通網の維持整備のためだ。渥美半島では限界集落のようなところも出始めており、交通網がなければ学生は通学できず、運転できない高齢者ら住人は買い物にも行けないので、ますます人が住まなくなる。これでは「故郷が破壊されてしまう」と岡本氏は危機感を募らせている。
●立ちはだかる「利権集団」
また岡本氏は、トヨタに依存する市の財政からの構造転換も訴える。グローバル経済の中で活動するトヨタの経営にはリスクがつきもの。リーマンショック後にトヨタは赤字に陥り、本社がある豊田市に法人税を払えなくなった。パナソニックもプラズマ戦略が失敗したため、行政から補助金を受けて建設したばかりの大阪・尼崎工場での生産を中止、工場を閉鎖した。こうした他都市の事例を鑑みながら岡本氏は「田原市の財源は渥美半島にある農産物などの豊かな資源を活用して、事業を興し、自ら賄っていく考えが重要になる」と訴える。
しかし、こうした政策に取り組もうとすると、既存のバス網を持つ地方のバス会社などが反対に出る。農家が新たな販売網を持つことに農協も協力しない。こうした企業や農協は自民党の有力支持者である。地方の既得権の多くは自民党の支持者だ。こうした人たちは、同じく立候補した元田原市議会副議長の北野谷一樹氏や元同市教育部長の山下政良氏を推すとみられる。
また、岡本氏の政策には規制緩和も必要になる。それがないと、施設での販売が難しいケースも想定される。例えば、農家が自家製の野菜を使って屋外の窯で焼いた焼きたてのピザを売る場合、愛知県ではピザの窯は防火設備のある屋内にしか設置できない条例がある。まず、こうしたことから規制緩和をしなければならないが、岡本氏によると、愛知県は前向きではないという。バス路線の新設にも許認可が必要だ。
岡本氏の政策は、大胆な規制緩和がないと前に進まない面もあるが、そこに地方の自民党やその支持者である「利権集団」が立ちはだかる。要は、変革しようと思えば既得権益とぶつかってしまうのだ。
●地方の改革派を安倍政権は見殺すのか
冒頭に述べた安倍政権が地方創生に取り組む「本気度」が問われるのはこの点だ。実は、岡本氏は菅義偉官房長官とつながりがあり、菅氏から依頼を受けて、政権の目玉政策の一つである兵庫県養父市の農業特区に進出する計画も進めている。岡本氏の著書『農協との30年戦争』(文春新書)を読んだ菅長官が知人を通じて接触、それを契機に現政権の農業改革の手助けをするようになったのだ。
岡本氏は養父市でも「ふるさと弁当構想」を進める計画で動いており、地方経済再生策のひとつでもある農業特区に深く関与している。当初は養父市で一定の成果を上げて、そのノウハウを田原市に持ち帰る考えでもあったが、養父市側が計画を一向に前に進めないため、岡本氏は業を煮やし、自らの構想を掲げて田原市長選挙に出ることを優先させた。いったんは養父市からの撤退も検討したが、事務局の内閣府関係者から引き留められた。実務派の岡本氏がいないと、養父市の特区構想は動かない面もあるからだろう。
しかし、田原市で岡本氏は、安倍政権の身内である地方の自民党と戦っている。「今回の選挙は、私の政策vs.地方の大組織です」と岡本氏も語る。これでは、岡本氏は政権の改革に貢献しながら、政権の身内に攻撃を受けているに等しい。岡本氏のように既得権を崩すような覚悟で臨まない限り、地方の政治システムは変化しないのではないか。歴史的にも大きな既得権が崩れ新たな時代を迎える時には必ず「破壊」があって、創生がある。既成概念に囚われない岡本氏には「破壊力」も期待されている。
結局、田原市長選挙から見えてくる構図は、安倍政権と地方の自民党は「同床異夢」であるということだ。今年1月に投開票された佐賀県知事選挙でも、安倍政権が推す規制改革などを重視している候補が、地元農協や地元自民党が支持する候補に敗れている。
組織の応援のない岡本氏の選挙は率直にいって厳しい。都会と違って浮動票も多くはない。しかし、政権の農業改革の一端を担う岡本氏がどこまで善戦するか。これは安倍政権の地方創生や農業改革が見せかけではなく、本質的に前に進んで成果を出せるのかということとも絡んでいると筆者は思う。政権に貢献している地方の改革派を、安倍政権は見殺しにするのだろうか。
(文=井上久男/ジャーナリスト)
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