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近著に「大阪都構想が日本を破壊する」(文春新書)(C)日刊ゲンダイ
京大大学院・藤井教授が警告「橋下維新が暗示する日本の危機」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159113
2015年4月20日 日刊ゲンダイ
橋下徹・大阪市長が最重要課題に掲げる「大阪都構想」。その可否を決める住民投票が1カ月後の5月17日に行われる。前哨戦とされた統一地方選では、大阪維新の会が府議会と市議会ともに第1党の座を確保。もっとも、府議会は目標の過半数には届かず、都構想の実現可能性は、まったく読めない。住民投票の行方に注目が集まる中、都構想の問題点を舌鋒鋭く指摘し、橋下維新と激しいバトルを繰り広げてきたのが京都大学大学院教授の藤井聡氏(46)だ。
――世論調査では、都構想への賛成・反対が拮抗しています。
たしかに賛成と反対が拮抗しているように見えますが、都構想の具体的な中身については「知らない」、もしくは「よく分かっていない」人が多い。つまり、「都構想で何かが変わる」というイメージだけが先行している。このままでは、十分な情報がないまま住民投票が行われ、とてつもなく重い決断が下されてしまいかねない。そこに大きな不安を感じています。
――最新刊の「大阪都構想が日本を破壊する」(文春新書)では、都構想の設計図は「論外」とバッサリですが、最大の問題点はどこにあるのでしょう?
都構想の設計図である「協定書」の中身をじっくりと見ると、都構想とは「大阪市を解体して5つの行政区に分割し、大阪市民が自治を失うだけの話」だということが分かります。「大阪都」という名称に変わるわけでもない。大阪市は年間約2200億円分の財源を大阪府に吸い上げられ、巨額の予算を市の判断で使う権限まで失うのです。それによって、大阪市民への行政サービスが低下する恐れもあり、メリットはほとんどありません。
――橋下市長は、大阪府と大阪市のいわゆる「二重行政」が解消され、行政が効率化して大阪が活性化すると主張していますが、それはウソだと?
二重行政の解消による財政効果は、11年の時点で「年間4000億円」といわれていました。ところが、都構想が具体化していく中で、どんどん減額され、昨年の府と市による行政的試算によれば「年間平均155億円」にまで激減。市議会では、「年間1億円にすぎない」という市役所からの試算も報告されています。これに呼応するように、当初は財政効果を前面に出して、「これが都構想のすべてといっても過言ではありません」と言っていた橋下市長が、「僕の価値観は、財政効果に置いていない」と発言を修正しています。
■改革イメージを鵜呑みにしてはいけない
――NHKの最新の調査によれば、賛成派の実に3分の2の人々が、都構想に賛成する最大の理由として「二重行政の解消」を挙げています。それがマヤカシだとすると、都構想を進める意義が失われてしまう。
むしろ、初期費用だけで600億円から800億円かかり、ランニングコストも毎年20億円ほどかかると言われています。大阪市という1つの役所を解体して5つの特別区に分ければ、二重行政解消によるコスト節約どころか、業務内容によっては5倍のコストがかかってしまう。それはあまりに非効率ということで、多くの項目で5つの特別区全体で業務を行う「一部事務組合」という“プチ大阪市役所”をつくることが議論されていますが、こんな矛盾はない。これまで大阪市役所1つで済んでいたのに、都構想によって「大阪府・プチ大阪市役所・特別区」という三重構造が生まれるわけです。
――大阪では今、橋下市長が登場して「徹底した改革なんですよ」「まだまだできるんです」と叫ぶCMがガンガン流れている。中身をよく知らないまま、有権者が改革イメージに引きずられれば、住民投票では賛成多数になるかもしれません。
大阪維新の会によるCMで、「大阪都で二重行政を解消し、豊かな大阪をつくる」というメッセージが日々、喧伝されています。万が一、有権者が事実と乖離した認識を勘違いしながら鵜呑みにすれば、これほど危険なことはない。中身を理解しないままに、ムードやイメージで何となく判断を下してしまえば、取り返しがつかない。都構想で大阪が衰退し、関西がエンジンを失えば、西日本全体が沈んでいく。ひいては日本全体が沈没することになりかねません。こんな大事なことが大阪市民だけの住民投票で決まってしまうのですから、有権者の責任は重大です。
公権力が批判を許さなければ言論封殺になる
――大阪市民の中には、「オモロそう」とか「一回やってみて、アカンかったら戻せばええやん」と、軽いノリでとらえている有権者もいるようですが……。
残念ながら、「アカンかった」と気づいた時には手遅れです。大阪市を廃止して特別区をつくる法律はあっても、特別区を廃止して市をつくる法律は存在しないからです。「都構想自体には賛成だが、この中身は賛成できない」という場合は、はっきり「NO」と意思表示しなければいけません。
――ただ、CMの大量オンエアなど、大阪都構想のメリットばかりが強調されている現状では、反対意見や問題点が有権者になかなか届かないのではないでしょうか。
橋下市長はツイッター等で「都構想に対して専門家から批判は出なくなった」などと主張しますが、実は学者などの専門家筋では、反対派が圧倒的です。アマゾンで都構想関連の書籍を検索すると、賛成派2冊に対し、反対派は13冊。書いた学者の数でいえば、賛成1人、反対7人です。唯一の賛成派学者にカウントしたのは、「専門的大学人」でなく「特任教授の経験あり」という経歴の堺屋太一さんです。
――堺屋さんは「経済人・大阪維新の会」の最高顧問や維新政治塾の名誉塾長に就任されているから、利害関係者というか、維新の“身内”ですよね。有識者の多くが反対しているのに、その声が大きくならないのが不思議です。
皆、バッシングを受けることを恐れているのだと思います。橋下市長の意にそぐわない発言をすれば、ツイッターや記者会見の席上で名指しされ、激しく非難され、シンパの方々から抗議の電話や手紙がひっきりなしに来る。それが分かっているから、テレビや新聞で積極的に発言しようとしない。報道記者もそうだと思います。記者会見の場で連日、同業者が罵倒されるのを見ていれば、萎縮してしまい、モノが言えなくなっていく。
■「維新との公開討論はケンカにしかならない」
――藤井教授も、メルマガで都構想を批判した途端、橋下市長のツイッターで「嘘八百」「デマ」と攻撃され、「バカ学者」「こチンピラ」と罵られました。大阪維新の会からは公開討論の申し入れもありましたが、拒否しましたね。
理性的な議論ならいつでも応じますが、ケンカの申し入れには応じません。橋下市長と在特会の桜井氏との討論という名の「ケンカ」など、テレビ視聴率にとってはいいのかもしれませんが、有権者の理性的判断には有害です。先方は私の批判が嘘・デマだと罵倒を繰り返していますが、どこが嘘なのかについて理性的説明はなく、これではケンカにしかならない。討論を要請するなら、まずは理性的反論を文書でお出しいただいて「議論できる資格」の明確化をお願いしたいとの声明を出していますが、今日に至るまで、そうした文書は送られてきていません。
――橋下市長は、敵をつくってケンカを吹っかけ、勝ったように見せる演出が得意です。公開討論には自信があるのでしょうが、そういう政治手法には危ういものを感じます。
大阪では、言論の自由が深刻な危機を迎えています。公権力者が自分への批判を許さなければ、それは言論封殺になる。維新の党は、在阪テレビ局に「藤井を出演させるな」という趣旨の文書まで送っています。公党によるあからさまな言論封殺と言わざるを得ない。歴史的に見ても、そういうタイプの政治が最初にターゲットにするのが、報道と学問の自由というのが相場です。だからこのやり口を放置することは、大阪の未来の破壊につながるばかりでなく、日本の「自由社会」「民主政治」そのものの危機に直結している。今回の件が我々に暗示する重大な問題の本質は、実は、そこにあるのではないかとも感じています。
▽ふじい・さとし 1968年奈良県生まれ。京大大学院工学研究科修了後、スウェーデン・イエーテボリ大心理学科客員教授、東工大助教授を経て、09年から京大教授。専門は公共政策論、都市社会工学。現在、内閣官房参与(防災・減災ニューディール)も務めている。近著に「大阪都構想が日本を破壊する」(文春新書)。
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