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自民党が17日、テレビ朝日とNHKの経営幹部を呼んで、個別番組の問題について異例の事情聴取をした。特に自民は、コメンテーターが菅義偉官房長官を名指しで批判したテレ朝の「報道ステーション」に照準を合わせる。国はテレビ局に対し、許認可や行政指導の権限を持つだけに、政権を握る自民のこうした対応が、報道の萎縮につながるおそれがある。
■「圧力」党内からも懸念
「二つの案件とも真実が曲げられて放送された疑いがある」。17日、自民党本部で開かれた党情報通信戦略調査会。国会議員やテレ朝とNHKの幹部を前に、調査会長の川崎二郎・元厚生労働相は語った。
一つは、テレ朝の「報道ステーション」でコメンテーターが菅氏を名指しし「官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」などと発言した件。もう一つはNHK「クローズアップ現代」で「やらせ」が指摘されている問題だ。
自民の狙いはテレ朝の「報ステ」だ。事情聴取はテレ朝の約30分に対し、NHKは15分。調査会幹部の一人は「NHKはどうでもいい。狙いはテレ朝」と話す。
3月27日夜の古賀茂明氏の発言後、政権の対応は早かった。菅氏は30日の記者会見で「まったくの事実無根」と古賀氏の発言を否定。「放送法があるので、テレビ局がどう対応されるか見守りたい」と述べた。テレビ局を所管する総務相を務めた佐藤勉国会対策委員長は、テレ朝幹部から国会内で説明を受けた。
菅氏と佐藤氏は、国会運営などについて日頃から頻繁に意見交換する仲だ。自民党幹部は「長官や佐藤氏が動かなかったら、テレ朝は番組での謝罪だけでやり過ごそうとしただろう」と話す。菅氏は17日の記者会見で事情聴取について党から相談を受けたかと問われ「ありません」と否定した。
調査会関係者によると、川崎氏や佐藤氏ら調査会幹部は3月30日、番組の映像を確認。その場で「(テレ朝幹部を党に)呼ぼう」と一致した。複数の調査会メンバーは、テレ朝だけに政治的な圧力をかけたと思われないよう、NHKも呼ぶことにしたと明かす。
自民は今後、NHKと民放で作る第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」へ申し立てを検討する。党幹部の一人は、仮にBPOの出す勧告や見解が甘いとみれば、「身内組織のBPOでは役割を果たせない」として「不要論」を持ち出し、政府が直接抑え込むことができる展開も描く。
自民が報道に敏感になる背景には、政権から転落した経験がある。政権批判を放置すれば、支持率の下落につながりかねない。報道の自由への介入と取られたとしても、批判の芽を摘んでおきたいという思いもある。党中堅幹部の一人は「自民は下野して変わった」と語る。党内には「私なら呼ばない。ただでさえ衆院選のときに報道に圧力をかけたと言われているのに」(幹部の一人)との批判の声もある。(蔵前勝久)
■民放関係者「明日は我が身」
放送免許の許認可に影響力がある政権与党の振る舞いに、テレビ局では驚きと憤りが広がった。テレ朝関係者は「コメンテーターが番組で私見を述べるのは当たり前で自民にとって面白くない報ステが狙い撃ちされている」と憤る。別の民放プロデューサーは「明日は我が身で恐ろしい」と話す。
報ステでは17日、自民党の聴取を報道。古舘伊知郎キャスターは「100人いれば100通りの考えがある。今の私が言えることはただ一つ。伝えるべきであるニュースを伝える。その決意のみ」と話した。
テレ朝は、古賀氏が出演した報ステで混乱があったことを早河洋会長が会見でおわびし、NHKはやらせ疑惑を調査中。主体的な取り組みがあるのに、自民党は幹部を呼び出し、BPOへの申し立ても検討する。しかし、BPOは政治の圧力を跳ね返すために民放とNHKが設立したものだ。
1993年、テレ朝報道局長が「非自民政権が生まれるように報道するよう指示した」とされる「椿(つばき)問題」で放送免許の不交付が検討され、2002年には個人情報保護法案などメディア規制3法が議論になった。翌年できたのが、放送に関わる問題を自主的に解決することを目的とした第三者機関BPOだ。設立に尽力した氏家斉一郎・日本テレビ会長(故人)は「メディアは自ら言論の自由を守ることが必要。第2次大戦でマスコミはなぜ、政権を批判できなかったか。権力に対する恐怖なんだ」と語っていた。
放送法は番組編集にあたり、政治的な公平性や多様な意見を紹介することを求めている。番組出演者のコメントに対し、放送局はバランスを取る責任があり、その点が繰り返し権力側から指摘されてきた。
だが、自民党が「放送法」を持ち出して、テレビ局を繰り返し牽制(けんせい)することには疑問の声が上がる。BPO委員だった、こうたきてつや・日本大学名誉教授(テレビ文化史)は、「放送法の第1条には『自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること』とある。政権与党が放送法を順守していないことこそが問題だ」と指摘する。(才本淳子、岩田智博)
■<考論>法解釈の面からも問題
鈴木秀美・慶応大教授(メディア法)の話 自民党の今回の行為は、法解釈の面からも問題がある。放送法4条は「報道は事実をまげないですること」などと定めるが、これは倫理的規定とするのが識者の間では通説だ。そう解釈しないと、報道内容の規制につながるこの条文が表現の自由を保障した憲法21条違反になるからだ。自民党は名誉毀損(きそん)などの当事者でも監督官庁の総務省でもなく、放送法上の権限はない。議席の上で1強の与党が個別の番組内容で関係者を呼び出せば、強制力がなくても萎縮効果がある。政治的圧力そのものであり、批判されても仕方がない。
■<考論>自己検証能力問われる
メディア論に詳しいジャーナリスト武田徹氏の話 メディア自身の自己検証能力が問われている。NHKと民放で作った「放送倫理・番組向上機構(BPO)」は何のためにあるのか。放送の独立性というなら、問題が起きた際、解決に向けて自主的かつ迅速に対応する義務を果たすべきだ。一方で、国から免許を与えられる構造は、放送局の独立性を妨げ、権力の干渉の余地を残す。放送局側はこの点に自覚的でなければならない。いま多くの国民は既存メディアに同情的ではない。メディア自身が独立性を担保し、自己検証能力を持たないと、信頼を得られなくなってしまう。
4月18日 朝日新聞 朝刊より
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