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(左から)孫崎享さん、鳩山由紀夫さん、木村三浩さん(撮影/横関一浩)
鳩山元首相 クリミア「侵略」官房長官の失言に言及〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150417-00000002-sasahi-pol
週刊朝日 2015年4月24日号より抜粋
刻々と潮流が変わる世界情勢。3月には鳩山由紀夫元首相と新右翼「一水会」の木村三浩代表がクリミア半島を訪問しバッシングを浴びたが、元外交官の孫崎享氏を交えて、安倍政権の外交を非難した。
* * *
孫崎:私が外務省にいたとき、国際情報局という部署をつくった。例えば中国なら中国課だけでなく他の課も見るというように、一つの路線に縛られず、複眼的に検討する組織です。戦略を考えるときのポイントは、複数のバリエーションを提示して、比較検討するということなんですよね。
鳩山:その国際情報局はどうなったんですか。
孫崎:局としてはもうなくなりました。今は米国の言うとおりやるだけ。イラク戦争の前に大量破壊兵器がないという情報を総理に持っていったら喜ばれるかというと、米国に追随するためにはそんな話はいらない。そういう劣化が起きている。
木村:日本の外交にも、もっと多様性が必要です。3月中旬に私と鳩山さん、ジャーナリストの高野孟氏などでクリミア半島を訪問したのもそのためです。
鳩山:日本は米国に追随してロシアに経済制裁を科しましたが、本当に制裁が必要なのか、この目で見極めたかったんです。
孫崎:日本ではクリミアが軍事力を背景に無理やり併合されたように言われていますが、国際監視団がいる中での住民投票で住民の9割以上が独立ないしロシアへの併合を支持した。歴史的な経緯からもロシア人がたくさんいる地域です。
鳩山:現地の状況からも、日本でイメージされているように脅されて投票したのではないとわかりました。二つの大学で学生と交流しましたが、彼らは自由を謳歌した雰囲気で、断じて作られた笑顔などではなかった。町に銃を持った兵士もおらず、穏やかな観光都市そのものでした。
木村:しかし、鳩山さんへのバッシングはひどかった。単に「宇宙人だ」とレッテルを貼って、クリミア問題の本質についての議論がほとんどない。
鳩山:私は宇宙人であることを否定しません。地球を空から広い視点で見られますから(笑)。日本は西側の視点からしか物事を見ず、オバマが正義でプーチンが悪というイメージが作られてしまっている。
孫崎:例えばカーター元大統領は米国が国家として承認していない北朝鮮に行ったが、「国務省の考え方と違うから売国奴だ」などとはたたかれない。物事がどう展開するかわからないからこそ複数のチャネルが必要で、相手が敬意を持ってくれる元首相というのはある意味、利用価値が高い。
木村:鳩山さんの訪問について会見で話す中で、菅官房長官はクリミア編入を「侵略」と言い切ってしまった。これでは住民の意思を踏みにじることになる。
鳩山:今後の北方領土問題の交渉を考えても、官房長官がああいう発言をしてしまうのは問題です。国際社会はいずれ、クリミアをロシアの一部と認めるでしょう。ならば早く経済制裁を解いて、領土問題に取りかかるべきです。
孫崎:そうですね。プーチンのように右派なのに領土問題の解決に積極的な指導者がいなくなれば、ロシアは今まで以上に強硬になる。プーチン在任中が解決の最後の機会かもしれない。
(構成 本誌・小泉耕平)
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