http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/230.html
Tweet |
20世紀後半の日本外交は、基本的に対米関係だけを考慮すれば大きな誤りはないという意識のもとで展開されてきた。(あくまでも対米従属関係が基礎だが)
しかし、21世紀に入って顕著になった中国の台頭を目の当たりにして、日本は、対米・対中の両関係をにらんだ外交が必須となった。
幸いなのは、多くの日本人が錯覚しているように米中関係が険悪ないし対立的ではないことだ。どちらに付けば、片方からにらまれるとかいじめられるという状況ではないことは外交判断に幅を与える。
逆に不幸なのは、米国も中国も、日本の存在を強く意識し、日本をいかに利用するかを画策したり、相手国(中国は米国に、米国は中国に)に日本牽制を求めたりしていることだ。
日本人の多くが誤解している一つが、中国が日米安保条約を嫌っているという認識である。中国(共産党)は、日米安保がなくなり自立した日本と対峙するより、米中関係で日本を制御できる日米安保体制の継続を望んでいる。強大な産業力=軍事力を有する日本が自力本願の国になり、そのような日本と渡り合わなければならないほうが面倒だからである。
AIIB(アジアインフラ投資銀行)参加問題も、そのような米中関係を軸とした外交政策上の重要な判断として浮上した。
日本は、アジア開発銀行(ADB)で、米国の“代理”とはいえ最大の出資国として総裁の地位を独占してきた。その役割と地位は今後も続くだろう。
記事によれば、中国は、AIIBについても日本の影響力が他の国を超えるレベルのポジションを用意したようだが、日本は、米国との関係を重視して参加を先延ばしにしたようだ。
日本は、ADBとAIIBというアジアにおける二つの公的国際金融機関で同時に枢要な地位を占めるチャンスを自ら放棄した。
それでも、アジアで近代化をどこよりも早く進め現在の中国と同じような台頭ぶりを世界に見せつけた日本が蓄積した金融ノウハウや組織運営術が優れたものであれば、日本は、ADBとAIIBをアジアにおける公的国際金融の両輪としてうまく活用する操縦士の役割をしばらくの間は担えるはずである。
※ 関連投稿
「AIIB外交戦から見える「日中分離」政策とアジア経済牽引二頭立て馬車方式:日本はイソップの狐意識から脱却を」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/359.html
「中国 AIIBで日米と意思疎通続けたい:福田元首相が見せた鳩山元首相的役回り:46ヶ国が参加表明」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/389.html
「AIIB不参加の日本はインフラ輸出が不利に? 日本国内でも懸念:AIIBは経済ではなく政治の問題」
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/229.html
=========================================================================================================
[迫真]アジア投資銀の衝撃
(1)幻の日本人副総裁
3月22日、北京の釣魚台迎賓館。ひとりの中国政府高官がアジア開発銀行(ADB)総裁、中尾武彦(59)に早口の英語で語りかけていた。
「やはり日本にもぜひ参加してほしい。必要なら私が日本に出向く」
高官の名は金立群(65)。財政次官やADB副総裁を歴任した。国家主席、習近平(61)の意を受けて年内に発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の初代総裁と目される人物だ。
金は何としても日本を引き込みたかった。創設メンバーとなるための申請を締め切る3月末まで残り9日しかない。日本側で交渉の窓口役を担う財務省出身の中尾との接触は、金にとって最後の賭けだった。
金に勝算がなかったわけではない。実は水面下で、日本が創設メンバーになった場合の「優先待遇」をひそかに伝えていた。「筆頭格の副総裁、そして日本単独の理事ポスト」である。
これなら日本は乗ってくるかもしれない――。金のもくろみは外れる。中尾は「来日は歓迎する」と答えただけで、会談後に「日本がすぐに手を挙げるのはムリだ」と周辺に漏らした。日本人を筆頭格の副総裁として迎え入れる構想は、まぼろしに終わった。
□ □
金はなぜ日本の参加にこだわったのか。「人材だけでも出してもらいたい」。昨秋、北京を訪れた日本の財務省幹部は、極秘に会った金からこう頼まれた。
米ボストン大で経済学を学んだ金は、財政省で一貫して国際畑を歩んだ。中国の力だけで一流の国際機関を育てられないことは、だれよりもわかっている。人材面で日本の助けが欲しかった。
ADBの副総裁時代には総裁の黒田東彦(現日銀総裁、70)に仕えた。日本で財務官として長く国際金融の最前線に立ってきた黒田の手腕を、金は間近で見ている。
東南アジア諸国から、日本を誘うよう金を突き上げる声も上がったようだ。北京の外交筋は「中国の抑え役を日本に期待する国は多かった」と話す。アジアの国々を引き入れるためにも、金は日本の参加を望んだ。
しかし、日本は首を縦に振らない。米国の顔色ばかりを気にして「組織運営が不透明」「融資審査の基準がわからない」などと、参加できない理由を積み上げているようにしか見えなかった。
□ □
業を煮やした金は、欧州勢の切り崩しに軸足を移し始める。
北京の人民大会堂で全国人民代表大会が開幕した3月5日。西に3キロほど離れた金融街のホテルには、日米を含む30カ国以上の政府関係者が続々と集まっていた。
世界銀行などいまある国際機関の枠組みを研究するために、中国が呼びかけた会合だった。ここに姿を現した金は、何度も欧州諸国の代表と別室に消えた。ある出席者は「AIIBへの参加について詰めの協議をしていた」とみる。
中国財政相の楼継偉(64)が記者会見で「欧州の一部も参加の意向を示している。比較的大きな国も含まれる」と語ったのは翌6日だった。
「比較的大きな国」はすぐに明らかになる。12日、英国が主要7カ国(G7)で初めてAIIBへの参加を表明したのだ。世界は「英国ショック」に揺れた。
中国に有利な流れが一気にできる。ドイツ、フランス、イタリア……欧州諸国がなだれを打って駆け込んだ。中国政府の関係者は「一から説明が必要な国まで参加に転じた」と驚く。
日本とともに動かなかった米国。3月末、北京を訪れた米財務長官のルー(59)は、中国首相の李克強(59)に「AIIBとの協力に期待する」と伝えた。
中国は世界銀行に約30年勤めた米国人の法律専門家をAIIBの顧問に迎え入れる方針だ。「米英が推薦した」(外交筋)とされ、両大国は水面下で歩み寄りを探る。
翻って日本。AIIBの創設メンバーが設立協定を結ぶ6月末までに、参加の是非を「慎重に判断する」と繰り返すだけだ。「まだそんなことを言っているのか」。欧州勢からの申請処理に忙殺される中国側担当者のつぶやきは、金の本音にも聞こえる。
(敬称略)
◇
AIIBの創設メンバーは50カ国を超える見込みだ。舞台裏で何が起きていたのか。
[日経新聞4月14日朝刊P.2]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK183掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。