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4月10日には株亜kが15年ぶりに2万円越え photo Getty IMages
バラマキと財政健全化を「両立する」安倍マジックのタネが尽きる日
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42867
2015年04月14日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
まるで北上する桜前線を追いかけるかのように、“安倍マジック”が先週、満開のときを迎えた。
■15年ぶりの株高騒ぎ
バラマキを復活して一般会計を過去最大に膨らませると同時に、年来の課題だった財政健全化目標も達成するという魔法のような2015年度予算が先週木曜日(9日)、国会で可決され、成立したのである。株式市場に目を転じると、先週末(10日)には、日経平均株価が一時2万円を突破し、15年ぶりの株高騒ぎに沸いた。
だが、この2つには、国家的な分厚いドレッシング(お化粧)という共通点がある。
そして、政府は、あろうことか新たな財政健全化目標の設置という形で、さらなる厚塗りを試みようとしている。
桜は盛りの短いものだが、華やかに見える経済の宴は永遠に演出し続けられるだろうか。
2015年度予算は、一般会計の歳出総額が96兆3420億円と前年度より4596億円も膨らんだ。その大盤振る舞いにもかかわらず、新規の国債発行額は4兆3870億円減の36兆8630億円にとどまった。誰の目にも、“安倍マジック”とでも呼ぶべき離れ業に映るはずだ。
結果として、当初予算段階とはいえ、政府は2015年度が達成期限だった財政健全化の中間目標を達成した。税収で社会保障や公共事業などの政策経費をどの程度賄えているかを表し、新規の国債発行を除いた歳入から、国債の償還・利払い費を除いた歳出をさし引いて算出するプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字が13.4兆円にとどまったのだ。この赤字額は名目の国内総生産(GDP)の3.3%に当たる。これによって、2010年度(6.6%)から「5年で半減」させるという財政健全化目標を達成した。
では、なぜ、このようなマジックが可能だったのだろうか。
答えは簡単だ。国家の税収が増える、つまりわれわれ納税者が納める税金が増えるのである。2015年度の税収は、54兆5250億円と24年ぶりの高水準になる見込み。前年度より4兆5250億円も増えるのである。
税収が増えた原因は、税率を5%から8%に引き上げた昨年4月の消費増税である。前年度より1兆6860億円の増収が見込まれている。企業業績の回復や賃金の上昇で所得税・法人税なども2兆8380億円の増収になる見通しだ。金額は小さいが、税外収入も前年度より3226億円伸びる見込みだ。
以上の説明で、マジックのタネは明らかだろう。税収と税外収入が5兆円弱増えるから、歳出を4596億円膨らませても、新規の国債発行を減らしたうえで、財政赤字を縮小するお釣りが出たのである。
■選挙対策で納税者にも財界にも「いい顔」
次に、予算の中身に触れよう。12ある主要経費の中で、前年度を上回る予算を配分したのは、社会保障関係費(前年度比3.3%増)、防衛関係費(同2.0%)、中小企業対策費(同0.2%)の3分野だ。一方、恩給関係費(同11.5%減)、エネルギー対策費(同6.8%減)、地方交付税交付金(同3.8%減)、文教及び科学振興費(同1.3%減)など7項目の配分額が前年度を下回った。公共事業関係費と予備費の2項目は配分額が横ばいとなっている。
カネに色がついているわけではないが、このうち消費増税に伴う増収分(1兆3500億円)を財源にするというのが、社会保障関係の「子ども・子育て支援新制度」だ。今月スタートで、待機児童の解消加速化や放課後児童クラブの充実を図るという。認知症対策、国民健康保険の財政対策、難病対策にも力を入れるという。
バラマキ一辺倒と言われないためともとれるが、介護報酬は、全体として引き下げて利用者負担を軽減しつつ、介護職員の処遇改善(月額1万2000円増)や良好なサービスに対する加算を行うと説明している。今年は統一地方選挙の年だし、来年は参議院議員選挙が控えている。政権としては、ただでさえ重い高齢者介護や育児負担を抱える有権者を直撃するような歳出カットはやりにくいのだろう。
高齢化に伴い、社会保障分野はこれまで、歳出が年1兆円ペースで増えてきた。
2015年度は4200億円増にとどめたとか、介護分野でサービス業者に支払う介護報酬を2.27%減額して支出の自然増を当初見込みのほぼ半分に抑えたと、政府は胸を張っている。
しかし、こうした予算は、納税者からすれば満足できないはずだ。全体の3.3%というこの分野の予算の伸びは、1%前後とされる潜在成長率を大きく上回っているからだ。しかも、社会保障は全体の3割を超す最大の歳出項目だ。高齢者への手厚い給付を抑えることが課題だった年金改革は期待ほど進まなかったし、医療費も2.6%増と膨らみ続けている。抜本策を講じたというには程遠い状況だ。
選挙対策でいい顔をしたいのは、経済界に対しても同じようだ。中小企業対策費を3つしかない予算増額の対象としたほか、公共事業関係費もマイナスとせず前年度並みを確保した。この辺りも、分厚いバラマキの財源にならないか、予算の執行をしっかりと見守っていく必要がある。
やや脱線するが、安保重視の安倍政権らしいのが、防衛予算だ。配分額は、過去最大の4兆9801億円。伸び率も社会保障関係費に次ぐ第2位となっている。警戒監視能力の強化、沿岸警備体制の整備、島嶼部攻撃への対応の強化などが柱で、垂直離着陸機オスプレイを5機、水陸両用車30両を導入し、離島奪還作戦を担当する「水陸機動団」の新設に繋げるという。
■財政健全化をいつまで先送りできるか
話を戻そう。政府はいつまで、国家的なドレッシングを講じて財政健全化を先送りできるのだろうか。
大きな鍵を握るのは、デフレ脱却を錦の御旗として、黒田日銀が量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)を続けていることだ。
日銀を含む各国の中央銀行の金融緩和に伴う世界的なカネ余り現象に加えて、日銀が異次元緩和の手段として国債だけではなく、株式やJ―REIT(不動産投資信託)まで買い入れていることは、株式市場が株高に沸きかえることになった主因だ。換言すれば、昨今の株高は、日本経済の実力を実態通りに反映したものと言えない。株価は、日銀の株式買い入れや年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資金の債券から株式へのシフトによって、実力以上に買い上げるドレッシングが施されたものである。
すでに日銀保有株は時価で10兆円と、自己資本(2.8兆円)の3倍を超える規模に達した。償還まで保有を続ければ出口戦略の不安を和らげることが可能な国債と違い、株式には償還がない。いずれは市場で売却されるため、将来、必ず市場が日銀保有株を壮大な「売り圧力」と認識する日が来るはずだ。最悪のシナリオは、その圧力が認識されて、株式市場が変調をきたしたときに起こるかもしれない。自己資本の3倍以上もの株式を持つ日銀が発行する通貨・円への信任が揺らぐ事態がないとは断言できない。
もちろん、日銀の大量買い入れにもかかわらず、いつか国債の利回りが反転して、国債費が膨張して財政を圧迫するリスクもある。急激な長期金利の上昇に繋がれば、ハイパーインフレのリスクが顕在化しかねない。
そうした混乱を防ぐため、かねて政府自身がコミットしてきたのが、プライマリーバランスの赤字を減らす財政健全化目標だ。
冒頭で言及した2015年度予算の話は、中間目標に過ぎない。政府は次の通過点として、2020年度にプライマリーバランスの黒字転換という目標を掲げている。この目標は、他の先進国に比べて生温いものだ。
深刻なことに、ここへきて、2020年度のプライマリーバランスの赤字解消は達成困難とみられている。原因は、今年秋に予定されていた消費税の再増税を1年半先送りして2017年4月に伸ばしたことだ。この歳入改革の先送りが響いて、2020年度の目標達成が難しくなったのだ。2020年以降も、長期的に財政黒字を定着させて、巨額の公的債務を減らさなければならないが、それも大幅に遅れるという。
巷には増税だけで財政健全化はできないから、経済成長を優先して税の自然増収を図るべきだと主張する向きが少なくないが、自然増収だけで歳入を賄うことができないのは、2015年度の予算をみても明らかだろう。
そもそも、税の自然増収を当て込むならば、本格的な成長戦略が必要だ。それにもかかわらず、これまで政府は口先だけだ。本気で成長戦略をやる気も、その力もないのではないか。移民や外国人労働者を本格的に導入するような潜在成長力の抜本的な向上策に取り組んでいないことが、その証左と言えるだろう。
■新たなドレッシング
そうした中で、われわれが憂慮しなければならないのが、政府、特に安倍政権の中枢部が、新たなドレッシングととられかねない財政健全化目標の新設を目論んでいることだ。
その事実が浮き彫りになったのは、2月12日の経済財政諮問会議だ。先週の本コラムでも紹介したが、公式議事録をみると、議長役の甘利明経済財政政策担当大臣が、従来の指標に加えて、「国と地方の債務残高のGDP(国内総生産)比」という新たな目標を設ける方針と、民間議員だけの会合に具体策作りを委ねる考えを説明したのだ。
だが、諸外国や市場からみれば、新目標はまやかしに過ぎず、財政健全化を放棄した、とみなされるリスクがある。というのは、従来の目標と違い、債務残高のGDP比という新目標は、低金利下で経済成長を実現すれば、赤字そのものをまったく減らさなくても、達成できる仕組みだからである。極端な例をあげれば、公共事業の乱発で政府支出を増やしてGDPを押し上げれば、それだけで新目標は達成できるのだ。
しかも、下駄を履かせることも可能だ。安倍首相が昨年9月に内閣府の統計委員会に諮問したGDPの算出基準の改訂がその下駄だ。これまでカウントしていなかった民間企業のR&D(研究開発)費用を加えることで、例えば2015年度の名目GDPをこれまでより15兆円程度水増しできるという。日本の名目GDPは約500兆円だから、改訂すれば名目GDP(実額)が3%程度膨らむことになる。
GDPの算出基準の改訂は、国際連合が国際比較を容易にする狙いで国際標準として定めたもので、何年も前から後回しにしてきた課題だ。とはいえ、この時期に財政健全化目標の新設と連動させてやると、ドレッシングの意図を疑われかねない。
ドレッシングには、いずれ限界が来る。政府には、そうしたことに頼らない経済運営が求められている。
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