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7年ぶりに来日したメルケル独首相(C)AP
国際基準に照らしてヒドすぎる日本のメディア報道 永田町の裏を読む/高野孟
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158780
2015年4月9日 日刊ゲンダイ
米紙「ニューヨーク・タイムズ」のマーティン・ファクラー東京支局長が、日本の大手紙の報道ぶりに本気で怒っている。「イスラム国」によって邦人2人が殺害された事件に関連して、「神奈川新聞」(3月3日付)のインタビューに答えてこう語っていた。
「日本のメディアの報道ぶりは最悪だと思います。事件を受けての政府の対応を追及もしなければ、批判もしない。安倍首相の子どもにでもなったつもりでしょうか。保守系新聞の読売新聞は以前から期待などしていませんでしたが、リベラルの先頭に立ってきた朝日新聞は何をやっているのでしょう。もはや読む価値が感じられません。私がいま手にするのは、日刊ゲンダイ、週刊金曜日、週刊現代といった週刊誌です。いまや週刊誌の方が、大手紙より読み応えがあるのです」
いやあ、NYタイムズ支局長が本紙の愛読者とはビックリ仰天だが、裏返せば、日本の大手紙が国際基準に照らしてそれだけ酷くて「読むに値しない」ということである。
先に来日したドイツのメルケル首相は講演先に朝日新聞社を選び、「ドイツは過去ときちんと向き合った」こと、「福島原発事故に学んで脱原発の決定を下した」ことを語って、上品かつやんわりと安倍政権の歴史修正主義と原発再稼働方針を批判したが、「言論の自由」についても多弁を弄し、「言論の自由は政府にとって何の脅威でも問題でもない。さまざまな意見に耳を傾けなければならない」と強調した。
このことの全体的な意味を、朝日新聞自身がちゃんと理解していたのかどうか疑問だ。従って同紙は読者にもそれをきちんと伝えていないのだが、実は、昨年夏に従軍慰安婦問題をめぐるいわゆる「偽証」問題で朝日が政府・国会・マスコミから袋だたき状態に遭った時に、独有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」は「安倍政権はリベラルなメディアの息の根を止めようとしている。メルケル首相は安倍にクギを刺すべきだ」という論調を張っていた。
メルケルはまさにそのような独メディアの空気を背に、あえて朝日で講演して言論の自由について語り、暗喩として「朝日頑張れ」のメッセージを繰り出したのだ。が、私の見るところ、朝日はこのメルケルの腹の据わりを受け止め切れていない。
ファクラーは「日本はいま、重大な局面を迎えています。平和主義を守り続けるのか、米国や英国のように『列強』としての道を歩むのか」と言うが、その重大局面に正面から向き合っているのが本紙だけだとしたら余りにも寂しい。
▽〈たかの・はじめ〉1944年生まれ。「インサイダー」「THE JOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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