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日本経済の幻想と真実 政治 メディア
政治とメディアの生み出す「老人翼賛体制」
膨張する「行政国家」と無力化する国会
2015.4.7(火) 池田 信夫
古賀茂明氏(元経済産業省官僚)が、テレビ朝日の「報道ステーション」の生放送で「菅官房長官が私をおろせと圧力をかけて経営陣が私を降ろした」などと10分余りにわたって主張し、"I am not ABE"(私は安倍じゃない)というプラカードを掲げた事件は、その後も波紋が広がっている。
官房長官は「事実無根だ」と反論し、テレビ朝日の早河会長は謝罪した。古賀氏は「安倍政権の翼賛体制だ」などと批判しているが、政権とメディアの関係はそれほど単純ではない。戦前の大政翼賛会をつくったのは、朝日新聞だったのだ。
ガラパゴス的な「平和論争」の続く国会
1月23日の「報道ステーション」で、古賀氏は「安倍さんは『後藤さん犠牲になっちゃうかもしれないけど、もっと大事なことがあるんだ』っていう判断をして、一連の発言をしたんだろう。[中略] 私だったら"I am not ABE"というプラカードを掲げて『本当にみんなと仲よくしたいです』と言いたい」と、安倍首相の人道支援を批判した。
古賀氏は「日本は戦争しない国なんだと世界に訴えたい」と言っているが、テロリストとも戦わないで仲よくする国とは何だろうか。ここには彼の世代以上の人々の頭に刷り込まれてきた、戦後の一国平和主義が典型的に見られる。
安倍首相を「危険な右派政治家」として批判する人々はいまだに多いが、彼の安全保障政策は常識的なものだ。こんなガラパゴス的平和主義が争点になる国は他にない。例えばアメリカのオバマ大統領はリベラル派だが、「『イスラム国』と仲よくしよう」とは言わない。
こういう論争の原因は憲法第9条だが、ここにも歴史的なボタンの掛け違えがある。現在の憲法が占領下の特殊な状況で制定されたことは事実だが、安倍首相の祖父(岸信介)の時代ならともかく、いま第9条を改正してどういう意味があるのだろうか。
自民党の改正案では、自衛隊の名称を「国防軍」とすることになっているが、中身には大きな違いはない。文民統制や有事法制などの整備は必要だが、それは憲法を改正しなくてもできる。
一国平和主義が野党をダメにした
他方、「護憲勢力」は何を守りたいのだろうか。第9条を厳格に守るとすれば、自衛隊は解散し、日米安保条約も解消するしかないが、かつてそう主張していた社会党は、村山委員長が首相になった途端に、安保も自衛隊も容認して空中分解してしまった。
今国会で論議されている安保法制にしても、そこで想定されているような「存立危機事態」が起こったら、集団的自衛権なんか関係なく自衛隊が出動するだろう。要するに、実際には存在しない問題をめぐって延々と国会論議が続いているのだ。
他方で、もっと大きな問題が放置されている。すべての原発が止まって毎年3兆円以上の国富が流出しているが、与野党とも問題にしない。政府債務は1000兆円を超えたのに増税は延期され、社会保障関係費の膨張も止まらない。野党も「福祉充実」は主張するが、財源は考えない。
日本の国会は、利害対立を多数決で決定するという民主政治の機能を果たしていない。老人が有権者の圧倒的多数になったため、与野党とも老人に迎合する政策しか出せない老人翼賛体制になったのだ。新聞やテレビの最大の顧客も老人だから、彼らも高齢者に迎合する。
これは戦前の大政翼賛会と似ている。当時も圧倒的多数の国民は戦争に熱狂し、新聞はそれに迎合して戦意高揚記事を書いた。朝日新聞の論説委員だった笠信太郎は、ナチスのような国家社会主義で経済を再建しようという『日本経済の再編成』という本を書いてベストセラーになった。
笠は「昭和研究会」というグループの中心メンバーとなり、これが大政翼賛会に発展した。近衛内閣が「東亜新秩序」を唱えたときも、朝日は列強の植民地支配に対してアジアが団結すべきだと説き、国家総動員法に代表される産業の国有化を提唱したのも朝日だった。
こうした思想は岸信介などの「革新官僚」とも共通で、戦時体制のイデオロギーとなった。国家総動員法は敗戦でなくなったが、こうした「総動員体制」は戦後の通産省に受け継がれた。この意味で、安倍政権の国家資本主義的な経済政策は、祖父の精神を継承しているとも言えよう。
日本は「行政国家」と心中するのか
そもそも国会は、日常的な行政を行う官僚機構を納税者の代表としての国会議員が監視し、立法によって行政をコントロールする制度だが、日本の国会では法案の8割以上は内閣提出法案、つまり官僚のつくった法案である。
税金の使い道をコントロールするための立法府が、税金を使う官僚にコントロールされているのだから、財政の膨張に歯止めがかからないのは当然である。しかし野党には、戦後ずっと「平和憲法を守れ」というスローガンしかなかったため、財政やエネルギーなどの経済政策が争点にならない。
こうした翼賛体制で際限なく財政が膨張した結果、何が起こったかは周知の通りだが、あれを「軍部の独走」と総括するのは正しくない。戦費を承認する権限は帝国議会にあったのだから、議会は戦争を止めることができたのだ。
問題は官僚機構に立法・行政・司法機能が集中し、主権者(国民)がそれをコントロールできない行政国家の巨大化なのだ。行政指導だけで原発を廃炉にする官僚の暴走の結末に待っているのは、かつての戦争とは違う意味の「焼け跡」だろう。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43448
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