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「「セキュリティ・ダイヤモンド構想」安倍政権の本質は、怨恨、ルサンチマンである:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/17050.html
2015/4/6 晴耕雨読
https://twitter.com/iwakamiyasumi
安倍政権に、対米追従以外の戦略があるかと言われれば、まったくないのだけれども、それでも独善的で我田引水の戦略構想めいたものを政権発足直後に発表している。
それが、「ダイヤモンドセキュリティ構想」という、姑息なことに英文でのみ発表された論文である。
日本語では発表されていないし、また、メディアも取り上げようとしなかったので、ほとんどの日本人はその論文の内容も表題も知らない。
しかし我々IWJは、この論文が発表されるとすぐ、その内容の空想性、危険性を問題視。
これに批判と検証を加えて、2013年の07月30日号の「 IWJ特報第95号 「ワイマール時代」の終幕? 孤立を深める日本(前編) 〜幻の安倍論文「セキュリティ・ダイヤモンド構想」のすべて」 http://t.co/cQlrxNQT6dを発行した。
安倍政権の本質は、怨恨、ルサンチマンである。
かつての大日本帝国が粉々に滅んだ、中国侵略の野望が潰え去った、大東亜共栄圏の名の下、日本が極東に覇をなす夢が消えた、その復讐をしたくてたまらないのだ。
でなければ、政権のスタート時に、「セキュリティダイヤモンド構想」などという構想を掲げはしない。
ここには、自国をどう発展させるか、というビジョンがない。
国民をどう豊かに幸せにするかというビジョンもない。
周囲の諸国といかに円満に友好と平和を保つか、というビジョンもない。
要するに、何かしらの愛や善良さや幸福や希望にもとづくビジョンが皆無なのである。
あるのは、まず、中国への敵視、憎悪。
それが彼の世界の中核を占めている。
その中国が未曾有の発展を遂げつつある。
それを日本と米国のハワイとインドとオーストラリアで軍事的に封じ込めようというのだ。
こんなものは、軍人が密かに仮想敵国をイメージして地政学的な戦略を練る、そのシナリオの一つ程度のものに過ぎない。
シナリオは、常に複数存在すべきであるし、また相手があることだから、当然、次々変化する。
固定的に考えるべきものでもない。
こんな幼稚なシナリオ一つに頼って思考停止し、インドやオーストラリアと軍事的な関係が深まったなどとして、中国包囲網は着々と完成しつつある、などというアホ丸出しの提灯記事が、2015年の4月という時点に至ってからも! 世に出回ったりする。
安倍政権のすべての限界は、この「セキュリティダイヤモンド構想」という論文に詰まっている。
中国が貧しくて危険な存在であるなら、寄ってたかって制裁してやろう、という話にもなるだろう。
だが、中国が世界で最も富裕な経済超大国で、世界のすべての国家・地域にとって最大の貿易相手国である時に、誰がわざわざことさら中国敵視、中国包囲戦略に加担するか。
中国との関係を悪化させて、自国と中国との貿易を止めるような愚かな選択を、日本に与するためにする国があるか。
リアリズムをはき違えているとしか、言いようがない。
残念ながら、日本の官民にまともな戦略が描かれた試しがない。
あるのはひたすらの米国追従であり、安倍政権の今ならばその上に偽装愛国主義、偽装戦後レジューム脱却、といった塗装がなされてはいるけれども、中身に何の変わりもない。
「ダイヤモンドセキュリティ構想」は、米国の「Pivot to Asia」という外交戦略を鵜呑みにして、そのいわば「下半身」に相当する軍事戦略の一部を担いますよと、しゃしゃり出てみたお調子者の下手な作文に過ぎない。
ここには政治哲学はまったく欠落している。
「中国との敵対」と「中国との友好」と、どちらを望むか、中国を悪魔化するプロパガンダに毒されていなければ、答えは明らかである。
中国は軍事大国化している、だから警戒しなければならない、という声が至るところから聞こえてくるが、だったらなおのこと「友好」が必要だろう。
米国は経済大国にして、軍事超大国だ。
その米国に対して敵対政策を取ろうという国が、地上のどこにあるのか? ポーズだけだとしても北朝鮮ぐらいのものではないか。
米国は、世界にとって軍事的脅威である。
だからこそ、あらゆら国は正面から衝突することがないよう対米友好をはかる。
中国とつきあうことは、経済的なメリットが極めて高い。
さらに中国が軍事的に力をつけたことを認めるなら、それと正面衝突の愚は避けよう。
警戒はしても腹にしまって、表向き笑顔で「友好」の看板を掲げ、諸々の問題が生じてもこれを大きな火種にしないようにつとめよう。
これが常道だ。
AIIBは、中国中心のインフラ投資銀行である。
はっきりと、これまでの欧米日中心の国際金融体制とは一線を画すものとしてBRICsの新開発銀行NDBとともに設立されるものである。
国際金融秩序の旧秩序に対して新秩序を打ち立てると宣言している。
これに対し、旧秩序の中心に位置する米国は創設メンバーに参加しないように同盟国などに呼びかけてきた。
しかし、まず、米国の最も信頼する親兄弟のような同盟国であるイギリスが裏切って参加を表明した。
イギリスは、実は中露の呼びかける非ドル化の動きにもこれまで呼応している。
そしてフランス、ドイツなど、現在、ロシアを経済制裁している欧州各国が続いた。
ロシア、ブラジルなどのBRICs諸国はもちろん、安倍政権が「セキュリティダイヤモンド構想」で中国封じ込めの四隅の一つとして名を挙げたインドも、オーストラリアも参加を表明した。
韓国も台湾もだ。
そしてとうとうイスラエルも参加を表明した。
東アジア、環太平洋で、見渡しても参加を見送ったのは日本と米国だけだ。
いや、北朝鮮がいるが、これは参加を中国から断られている。
米国の同盟国で、未参加なのは日本だけなのである。
その米国は、しのごの言ってはいるが、3月31日の締め切りまでに、ルー財務長官を中国へ派遣して交渉を重ねている。
オセロゲームのように、黒星がすべて白星に変わった中で、米国は自国がどういう形で、AIIBに加わるかの模索を始めているとみられる。
自分では何一つ決められない、中国と直接、交渉もできないのは、日本だけである。
何と惨めなことか。
そもそもが、クラスの中のいじめのような、誰それをハブにしよう、シカトしようなどと、いう陰湿で下品極まる「構想」を一国の総理が掲げる時点でその国は「終わっている」と言っていい。
新冷戦」なぞ、現実味のない妄想に他ならない。
そもそもの冷戦の構想も、ジョージ・ケナンという外交官が、「フォーリン・アフェアーズ」という外交評論誌に書いた「ソ連の行動の源泉」という論文が「封じ込め」戦略の始まりだが、その時でさえ、ケナンはXという偽名で発表した。
外交には、慎重さが求められるのはいうまでもなく、ゲームの最中に自国の戦略の、あからさまで攻撃的な本音を、国のトップの名前で出すバカがどこにいるだろうか。
安倍政権が世界史上初めてではないか。
ダイヤモンド構想、などと発表してしまった時点で、もはやその戦略に何の価値もない。
欧米のイスラムフォビア(イスラム嫌悪)を見ていて、病的な偏執を感じることがしばしばあるが、日本の一部のチャイナフォビアにも、異常をみる。
近代以前にそんな見下しや憎悪、嫌悪が存在しただろうか。
国学の独善にその萌芽がみられるが、福沢諭吉の掲げた「脱亜論」の影響が大だろう。
AIIBに、イスラエルまで含めて、世界各国が参集したこと、しかも平時に、である。
この事実を直視できず、中国による運営の失敗を期待するがごとき卑屈な論調を目にすると、日本の衰退は避けられないのでないか、と真剣に憂う。
理想を言えば、今、日本に必要なのは、石橋湛山のような政治家であるが、そんな贅沢は言ってられない。
漢字の読めない麻生氏でも、パンダ大好きの二階氏でも構わない。
自民党は、反中極右の安倍内閣から一歩も二歩も距離を取った政治家を糾合し、次の政権の準備を一刻も早くすべきである。
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