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菅官房長官と翁長沖縄知事の会談も平行線に終わり…(左・菅義偉ホームページより/右・オナガ雄志オフィシャルWEBサイトより)
基地が嫌なら引っ越せ! ネットや右派論壇に横行するおぞましい沖縄ヘイトスピーチ
http://lite-ra.com/2015/04/post-1000.html
2015.04.06. リテラ
辺野古がダメなら普天間は継続するぞ──。ようやく実現した翁長雄志・沖縄県知事と菅義偉官房長官の初の会談は、案の定、傲慢無礼な政府の態度が露わになるだけで、発展もなく終わった。
菅官房長官はこれまでも発言してきたように、「辺野古への移設を断念することは、普天間基地の固定化にもつながるというなかで、政府は関係法令に基づいて工事を進めている」と、沖縄の“県内移設はNO”という民意を無視。対する翁長知事は、「今日まで沖縄県が自ら基地を提供したことはない」ときっぱり撥ねつけ、「(菅官房長官が)上からの目線で“粛々”という言葉を使えば使うほど、沖縄県民の心は離れ、怒りは増幅していく」と釘を刺したが、厚顔無恥な官房長官にその言葉の意味は通じたのだろうか。
だが、こうした翁長知事や沖縄県民の“当然の主張”に、Twitterや2ちゃんねる上では、おぞましい言葉で批判が繰り広げられている。
「基地がイヤなら、自由に基地の無いところに引っ越してもいいんですよ」
「国防だぞオマエラの我儘にウンザリだ 日本全体を考えろ」
「沖縄ってのは、ゆすりたかりの名人どころか、単なる乞食じゃねーか!」
「いつまでも「たかり」を許すな !!! 甘えきった精神をぶちのめせ」
「たかり体質は沖縄人の本質か!? 沖縄人は、属国国家として「下げた頭で舌を出す」朝鮮と通じるところあり!!」
わがまま、ゆすりたかり、甘えた精神……。こんな放言でしか物事を捉えられず、「沖縄」という属性で県民を貶めるのは、想像力や知性のかけらもないネトウヨの仕業、そう思う人も多いかもしれない。しかし問題は、評論家やジャーナリストを名乗る人間までもが、ネトウヨの“沖縄ヘイト”を助長するような言説を繰り出していることだ。
たとえば、経済評論家でネット上でも人気を集める池田信夫は、自身のメディア「アゴラ」に「沖縄県知事は「ゆすりの名人」なの?」と題した記事を昨年12月29日に投稿。2011年にアメリカ国務省日本部長のケヴィン・メアが発したといわれる「沖縄はゆすりの名人」をうけたタイトルと思われるが、記事の中身もまた下劣なものだ。
まず、池田はしたり顔で〈実は、沖縄県には辺野古移転を拒否する権利はありません。日米地位協定で、米軍は日本のどこにでも基地をつくれるので、日本政府も沖縄県もそれを断れないのです〉と、あたかも選択肢がないかのように誘導しながら、こう断言する。
〈問題は、お金をもらった沖縄県が「やっぱり辺野古移転はいやだ」といいだしたことです。これはたかりより悪い嘘つきです〉
そして、事実を強引に歪曲してこう続けるのだ。
〈基地を人質にして、本土から金をせびり取ることが「自立的発展」につながるんでしょうか。沖縄の自立をじゃましているのは、こういうふうにいつまでも戦争の古い話を持ち出して本土にたかる人々と、それに甘える県民です。本土のマスコミも「沖縄に寄り添う」などといって、彼らを甘やかしてきました〉
〈こういうただ乗りは、財政の豊かなときは多少はゆるされましたが、これからは無理です。沖縄県が辺野古移転を拒否するのは自由ですが、振興予算はゼロです。お金をもらう約束をした人が、その約束をやぶったらお金はもらえない。よい子のみなさんでもわかる、簡単な理屈ですね〉
どうも、池田は沖縄振興予算の意味をまったく理解してないらしい。沖縄振興特別措置法を読んでもわかるように、振興予算は米軍基地の大半を押し付けられている沖縄の「特殊な諸事情」全体を配慮して策定されたのであって、辺野古移転を認めるか否かというのは何の関係もない。「辺野古移転を拒否したら振興予算はゼロ」などというのであれば、その法的根拠を示すべきだろう。
また、池田はまるで沖縄が金のために基地を引き受けてきたかのように印象づけているが、沖縄は自ら手を挙げて基地建設を誘致したのではなく、政府に基地を押しつけられてきたに過ぎない。
その金額にしても、沖縄県に対する国庫支出金と地方交付税の合計額は全国17位。とびぬけて沖縄だけが優遇されているわけではない。さらに、戦後通算で見ると、国から沖縄への一人当たりの財政援助額は6割にすぎないのだ。
むしろ、閣議決定や総理大臣談話で「沖縄の負担軽減」を約束しながら、それを反古にしてきたのは日本政府のほうではないか。
とにかく、こういう感じでネトウヨ並みの無根拠な印象やデマに基づく沖縄批判が識者の口からも飛び出すようになっているのだ。しかも、由々しきことにこうしたデマに基づく沖縄攻撃は、どんどん増殖している。
たとえば、ベストセラー『呆韓論』(産経新聞出版)など、嫌韓本の著者として知られる元時事通信ソウル特派員の室谷克実氏は、『韓国人がタブーにする韓国経済の真実』(共著者・三橋貴明/PHP研究所)の中で、その“ヘイト”を沖縄にまで向けている。
〈むしろ、日本政府は沖縄を優遇しすぎている。沖縄の気質は、韓国に似ていると思います。彼らのいっていることは、つまるところ『本土はカネをよこせ』ですから。アメリカ国務省日本部長の観察として伝えられた内容は正しいと思います〉
また、最近では、飛鳥新社から『「強欲チャンプル」沖縄の真実 すべては“軍命による集団自決”から始まった』(大高未貴)なる沖縄ヘイト本が出版された。メインテーマは集団自決が軍の強制ではなかったとする曽野綾子の『ある神話の背景』を後追いするもので、典型的な歴史修正本だが、著者の大高は現在の沖縄についてもこう指摘している。
〈翁長氏は、「いまはオールジャパン対オール沖縄だ」と規定し、「経済支援はいらない、だから基地をどかせ!」と主張して知事に当選した。この、自分(沖縄)を一方的な犠牲者とし、本土(日本)を全面的加害者とする論理は、韓国や中国の外交姿勢と共通するものであり、何より、先の大戦直後の『鉄の暴風』や「軍命令による集団自決」などに象徴される、米軍の沖縄占領政策における宣撫工作そのものである〉
このままいくと、嫌韓反中とおなじように、「沖縄の気質」などといって一括りに差別するグロテスクな沖縄ヘイトが、この国のメディアを埋め尽くすのではないか。そんな嫌な予感がしてならないのである。
(野尻民夫)
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