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2014年3月の習-キャメロン会談。AIIB設立は完全に中国外交の勝利 photo Getty Images
AIIBは「中国外交の完全勝利」。間違った安倍首相は、官邸で財務省、外務省幹部を怒鳴った!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42761
2015年04月04日(土) 歳川 隆雄「ニュースの深層」 現代ビジネス
維新の党の江田憲司代表は4月2日の記者会見で、中国主導によって発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加国・地域が50ヵ国・地域を超えたことについて、「中国外交の勝利、日本外交の完全敗北だ」と述べた上で「今からでも遅くないので(日本政府は)参加して欲しい」と要求した。
AIIB(資本金1千億ドル=約12兆円、総裁・金立群元中国財政次官)は、中国から欧州、アフリカまでを陸と海で結ぶ「シルクロード構想」に基づき2012年10月に習近平国家主席(中国共産党総書記)が提唱したものであり、3月初めに主要7ヵ国(G7)で初めて英国の参加を取り付けたことによって参加メンバーは雪崩を打って膨らんだ。
G7構成国では英国、フランス、ドイツ、イタリアの4ヵ国。中国、ロシア、インド、ブラジルのBRICs。ASEAN(東南アジア諸国連合)はインドネシア、ベトナム、シンガポールなど加盟10ヵ国全てが参加。その他にもサウジアラビア、クウェート、カタールなど中東の主要資源国、中央アジアのウズベキスタン、カザフスタン、そしてオーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾も参加している。
その意味では、まさに「中国外交の勝利」と言っていい。ところが日本は、戦後の米国中心の金融秩序への中国による挑戦と捉えて、AIIBの@運営に不透明さが残る、A融資の審査が甘ければ焦げ付く可能性がある、B中国のアジアでの影響力拡大を助長する恐れがある、C独裁政権や環境に悪影響を与える事業への貸し付けに加担する恐れがある、D米国との関係悪化の心配がある―として参加を見送った。
では、想定外の参加国多数は外交当局の「誤算」、即ち日本外交の敗北であったのか。安倍晋三首相は3月31日午後、首相官邸で財務省の山崎達雄財務官(1979年旧大蔵省入省)、淺川雅嗣国際局長(80年同)、外務省の長嶺安政外務審議官(経済担当・77年外務省)と会った際、「聞いていた話と違うじゃないか。君たちは、いったい何処から情報を取っていたんだ」と怒鳴りつけたというのだ。
AIIB構想について、外務省(斎木昭隆外務事務次官・76年)はアジア大洋州局中国・モンゴル第2課が所管している。同省は英国の参加を誤算とするが、キャメロン首相は13年12月に訪中しており、さらに昨年3月のオランダ・ハーグで開催された核サミットの際も習近平・キャメロン会談が行われているのだ。情報収集・分析力が“甘かった”ということである。
一方、財務省の淺川国際局長は中国財政当局に独自の人脈を持っていることで知られており、アジア開発銀行(ADB。本部マニラ)副総裁経験がある金立群AIIB総裁にも通じているはずだ。同省には、勝栄二郎元財務事務次官(現IIJ社長・75年)のような傑出した中国通が少なくない。
それにしても、同省内ではAIIB発足でADBの存在感が希薄になることから参加消極論が支配的だったことが大きかった。ADB歴代総裁は、初代の渡辺武総裁(1930年)から中尾武現彦総裁(80年)まで9人が全て財務省(旧大蔵省)出身者である(因みに、黒田東彦日銀総裁は前総裁である)。
ADB総裁は財務省の既得権益なのだ。こうしたことから、端からAIIBを軽視した情報収集による読み違いとなったのではないか。これは、日米同盟を金科玉条とする外務省にも言えることだ。中国主導の新経済圏づくりと見る米国への過剰配慮が根っ子にあるので、どうしてもAIIB軽視の情報を優先し、それを基にした判断が「日本外交敗北」に繋がったのだろう。
いずれにしても、情報を収集・分析・評価する能力、つまりインテリジェンス機能がまたしても低かったことが露呈したということである。これまでに「想定外」という言葉を何度聞かされたことか。「総合情報力」を制度的に備えなければ、中国に太刀打ちできるはずがない。このままではアジアの巨大なインフラ需要は中国に吸引されてしまう。
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