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大メディアを鷲掴み?(「週刊新潮」)──安倍官邸のメデイア戦略
http://blogs.yahoo.co.jp/moritakeue/12792339.html
2015/4/4(土) 午前 0:48 TABIBITO
今週の週刊誌は、「報ステ騒動」について、各誌がさまさまな角度でとりあげている。
昨日発売された「週刊新潮」9日号では「大メディアを鷲掴み 報道ステーション『古賀茂明』暴走でその一端が白日の下に! 『安倍官邸』剛柔のカギ爪」との見出しで冒頭3ページでとりあげている。
『週刊新潮』4月9日号
3月27日の「報道ステーション」での古賀氏と古館アナとのやりとりを紹介したあと、古賀氏が、自身と「報ステ」のプロデューサーが「官邸の圧力を受けたテレ朝上層部等の判断で『クビ』になったと明かした」ことについて、「あるテレ朝関係者」が「問題のプロデューサーは、脱原発報道に力を入れるなど、反権力色が強い報ステを象徴する人でした」「このプロデューサーが古館さんを番組に引っ張ってきたんですが、政府との摩擦を忌避する傾向のあるテレ朝の現在の上層部に睨まれ、2人とも3月で番組を去ることになった。これが古賀さん側の言い分です」と説明。
確かに菅官房長官は、古賀氏が報ステで安倍政権のイスラム国(ISIL)対応に異を唱えると、2月24日の記者会見で「先日、この運動(反体制運動)をやっている方がテレビに出て、ISILの事件で政府を批判していましたが、全く事実と異なることを、堂々と延々と発言していました」と、名指しはしないが古賀氏を念頭に置いたと思われる発言をした。
これがテレ朝側を動揺させた。「テレ朝のドンと言われる早河会長は、出版社・幻冬社の見樹(徹)社長とともに安倍(晋三)首相と食事をしていますし、テレ朝の社長に吉田(慎一)さんが就任した時も、彼を伴い、やはり安倍総理と会食している。つまり、安倍官邸との距離を縮めようとしている早河会長にとっては、安倍政権批判を『売り』にしている今の報ステノ報道が煙たい。そこで古館キャスターの降板もチラつかせつつ、『うるさ型』のプロデューサーと古賀さんの交代を古賀サイドに飲ませたと言われています」(前出関係者)という。
問題の「報ステ」放送の2日後の3月29日に、三重県での講演で「朝ステのテロップやナレーションを、テレ朝の政治部も経済部も必死にチェックしている。番組の直前まで、こんなことをしたら安倍さんに怒られる、みなさんに怒られる」とぶちまければ、一方の菅氏も30日の記者会見で「(古賀氏の言う菅氏によるバッシングは)全く事実無根。公共の電波を使った報道として極めて不適切」と、テレ朝に圧力をかけたことを完全否定した。
そして記事では「無論、その日のニュースとは何ら関係のない『テレ朝・古館・官邸』批判を展開し、暴走した古賀氏の行動は大人げないとの誹りを免れないだろう」としながら「しかし、菅氏が圧力の存在をいくら打ち消そうとしたところで説得力を持たないほど、安倍官邸が『メディア操縦』を行っているのもまた事実なのだ」と指摘。
その具体例として「直近では」と3月27日でNHK『ニュースウオッチ9』を降板した大越健介キャスターの1件をあげて、NHK職員の言葉を紹介。
「脱原発や反米の姿勢が目に付き、安倍官邸に批判的と思われていた大越さんは、1月に『週刊新潮』で降板報道が出た直後、親しい友人に『うち(NHK)は忖度政治だから』と漏らしています。忖度する対象は安倍政権と、総理の思想に共鳴している籾井(勝人)会長です」
このように「メディアの人事にも影響力を持っているとされる安倍官邸の『増長』ぶり」は他にも見られとして、3月19日の晩に安倍首相と読売新聞の政治部軍団と2時間半にわたって会食したことを挙げて「その場には今井(尚哉)秘書官が同席。読売側は彼の番記者や元番記者で、総理は顔も分からないようなメンバーでした。言ってみれば、今井さんが自分の権勢を総理に見てもらうために呼び集めた飲み会なんですね」との官邸スタッフの声を紹介。
総理を身近で支える秘書官が「俺が声をかければ記者なんてホイホイ駆けつけてくる」などとメディアを舐めきっている状況を、全国紙のデスクがこう証言する。
「総理の側近議員は最近、こう言い放っていました。『第一次政権時代、安倍さんは朝日新聞にかなり叩かれたが、去年の(従軍慰安婦)問題で、朝日と闘いは決着した。安倍さんも菅さんも、もはやメディアに敵なしと思っている』。実際、安倍官邸による、リベラルな朝日、毎日新聞の干し方は徹底していて、例えば政治報道の花形の一つである内閣改造(2014年9月)でも両紙は情報がなかなか取れず、四苦八苦していました」
また、昨年11月には、安倍首相がTBS「ニュース23」に出演して、「アベノミクス」のについての街頭インタビューが紹介されたが、それを見た安倍首相は批判的な意見が多いと感じたのか「これ、全部(本当の街の)声が反映されていません」と苛立った。
この放送の2日後、自民党の萩生田光一総裁特別補佐らが在京テレビキー局に、〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉と題した文書を送付し、メディアを牽制した。
『週刊FRYDAY』2014年12月19日号
こうした官邸のメディア対応によって、「メディア側も政府に気を遣っている」という。
あるテレビ局の政治部記者は、「……例えば、靖国参拝について、うちは若干、賛成意見が目立つように『手心』を加えています。当然、政権への配慮です。やっぱり、官邸に睨まれたくないですからね」とする。
さらにある民放記者はこう述べる。
「安倍総理と日枝久会長がゴルフをする仲であることから分かるように、フジテレビは現政権と良好な関係にあります。これを象徴する話として、昨年4月、安倍総理の弟である岸信雄代議士の息子と、総理の信頼が篤い加藤勝信官房副長官の娘が、揃ってフジに入社しています」「岸さんは昨年5月の『安倍晋太郎を偲び安倍晋三総理と語る会』で、『息子にだけは取材されたくない』なんて、笑いながらおどけていました。政府与党とメディアの間の緊張感のなさを物語っています」
上智大学文学部新聞学科の田島泰彦教授は、メディアの現状について「安倍総理が総理に返り咲いて2年3ヶ月の間にメディアの人と会食した回数は、3年3ヶ月続いた民主党政権時代の総理3人の総計の既に4倍に達しています。加えて15年度の政府広報費の予算案は83億円で、民主党の野田政権時代と比べると2倍に膨らんでいる。こうした影響を受けているのか、大手メディアは今、長いものに巻かれている印象が拭えません」と指摘する。
ジャーナリストの徳岡孝夫氏は「……権力者がメディアを懐柔しに掛かるのは政治手段の一つ……」としながら「総理とメディアの会食だって、何も悪いことじゃない。それで巻き込まれるような弱々しい記者じゃダメですけどね。暖簾(のれん)をくぐる前と後でメディア側の気持ちが変わらないことが大事なんです」と説く。
政治評論家の浅川博忠氏は、安倍政権が高支持率であることが自信となり、強気の姿勢を取っていると付箋関下上で「長期政権を狙うにはメディアコントロールが欠かせませんし、メディアも取材のし易さを考えると政権を慮った報道をせざるを得ない。しかし、森喜朗さんが総理時代、番記者に無言を貫き、連日紙面に総理コメントを『……』と書かれて支持率が低下したように、メディアをあまり締め付けると、政権失速の端緒となりかねません」と述べる。
記事は最後に「剛柔とりまぜた手法で大メディアを鷲掴みにする安倍官邸。だが、そのカギ爪で真の長期政権を掻き寄せられるのか否かの見通しは、まだ「森喜朗(“しんきろう”と読む)」の如く、おぼろげなものと言えそうだ」と森元首相と蜃気楼をかけて結んでいる。
『月刊 宝島』の2月号
「アメとムチ」と言うが、安倍官邸は主に「会食」+「広告費」というアメと、陰に陽に「監視」と「圧力」というムチをうまく使っている。そのうえ、秘密保護法の施行によって国家の重要問題についての報道に「縛り」がかかり、メディア側からの「自主規制」という空気も感じる。
まさに、権力・官邸とメディアの“一体化”が着実にすすんでいるように感じる。
先日紹介した、ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマイメージ 3ーティン・ファクラー氏が、「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」(双葉新書)と題した著書において、世界をまわってきた経験から「欧米諸国では、メディアが政府批判をするのが当たり前で、権力の“監視役”“チェック機関”としての役割を果すのは当然」と指摘。ところが、日本では、政府や政治家、大企業との距離が極めて近く、癒着さえして批判精神批判に欠け「まとも記事を書けるはずがない」と断言している。
さらに「大臣や政治家からパーティーでプレゼントをもらったり、会食でご馳走にでもなれば、ニューヨーク・タイムズの記者なら即刻クビを宣言されるだろう」と延べ、日本のマスコミの「常識」は、世界の他の国々のジャーナリストの「非常識」だとし、「このままでは、いずれ、読者から見放されるであろう」と警鐘をならしている。
そもそもメディアとは、ジャーリズムとは何なのか──その原点に立つべきだろう。
欧米諸国では政権批判が当たり前だといわけるが、日本でも江戸時代のメディアだった浮世絵やかわら版の頃から常に庶民とともにあり、庶民の立場に立っていたはずである。
新聞や週刊誌も我々国民が購読料などお金を払って読んでいる。NHKだって受信料を払っているのだ。我々読者や視聴者は、堂々と意見を言い、庶民の立場にないメディアに対して堂々と声をあげる権利がある。
われわれ国民も原点に立ち戻るべきだ。庶民感情を代弁するメディアとするために。
「週間現代」2012年3月17日号
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