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古賀さんに名指しされた菅官房長官はもちろん圧力を全否定した photo Getty Images
メディアも、自動車会社も・・・権力者の意向を「忖度」する人間が出世していくという怖さ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42690
2015年03月31日(火) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
元経済産業省官僚の古賀茂明氏のテレビ朝日「報道ステーション」の降板(古館キャスターは降板ではないと言っている)や、NHK「ニュースウォッチ9」の大越健介キャスターの交代がネットなどのニュースで話題になっている。
その報じられ方や、SNSでの意見の拡散のされ方を見ていると、官邸からの圧力があったのか否かに焦点が集まっている。
■権力者の意向を忖度する
筆者は23年間、報道に携わる仕事をしてきたが、権力者から圧力があったのか否かを証明することは容易ではないと思う。しかし、今回の場合は、長年記者をやってきた者の「直感」として、権力側から何らかの「圧力」が影響しての降板や交代であると思う。
一般読者の方は、「圧力」と聞けば、たとえば官邸サイドから「あのコメントやニュースの報じ方はけしからん」といったような直接的なプレッシャーがあったのではないかと想像するだろうが、20年以上、報道の現場にいて、現場に見える形であるいは聞こえる形で露骨に「圧力」がかかってくることはほとんどない。多くの場合、それは「忖度(そんたく)する」ことから生まれている。「忖度」とは、人の気持ちを推しはかることである。
朝日新聞勤務時代、筆者の場合は、スポンサー企業を批判したくてもできない時に文句を言うと、「大人になれよ」という表現でよくかわされた。他の記者がそう言われているのもよく見た。この「大人になれよ」も「忖度しろ」という意味に近い。
その「忖度」することが、問題である。今回のケースは、官邸の意向を「忖度」した結果、起こったことだと思う。取材を通じて得た情報や、それを通じて醸成された意見を活字や映像で表現するのではなく、権力者の意向を忖度しながら発信されるものは、本来のニュースではない。
ニュースとは、読者の知る権利に応えるためのものであり、今社会で何が起きているのか、権力はどこに向かっているのかを、たとえ権力者に都合が悪いような話でも率直に伝えるべきものである。一般論として社会は「右傾化」し、中国や韓国を叩くニュースが「売れる」と言われる。こうした「世論」に配慮してニュースを作ることも「忖度」することに含まれる。
■メディアの自主規制
今回のケースに限って言えば、安倍晋三首相が「安保政策」「戦後70年談話」「原発再稼働」など自分がリーダーシップをもって進める政策がどのように報じられるか非常に気にしていていることを、メディアが察知して、政権が求める、あるいは気に入る報じ方をしようと、メディア自身が自主規制的に動いているのではないか。
首相の周辺にいる人々が、メディアが自主規制に動くような画策をしていることも否定できない。
また、長期政権が想定される以上、政権に気に入られた方が経済的にも利点があるとメディアの経営者は思っているに違いない。オリンピック関連事業などは政治とは切っても切り離せないので、政権とは仲良くしておいた方が得策と考えているのであろう。
そして、筆者が最も問題だと思うのは、メディアの経営に影響を与える番組審議会などの第三者機関的な組織に、政権に近い出版社や鉄道会社のトップといった現代版「政商」のような人物が入り込んだり、影響を与えたりして、メディアの方向性を制御していることも少なからず影響していると思う。
たとえば、一例を挙げると、筆者は朝日新聞OBなので多少知り得る立場にあるが、「池上彰氏のコラム掲載拒否問題」など一連の朝日新聞の大問題は、木村伊量前社長が、健全な保守新聞を目指すことを密かに掲げて、政権に近い出版社社長に安倍政権との仲介を依頼、その際に「手打ちの条件」として、「過去の従軍慰安婦報道の検証をすることを政権側から迫られ、それを拙速に行った結果、あのような問題に発展した」(朝日幹部)そうだ。
朝日新聞のリスク管理を担っていた会社も、自民党の広報戦略を担っていた広告代理店の幹部が独立して作った会社でもあった。
今の官邸のように情報操作に長けた政権は、直接圧力をかけて「証拠」が残るようなことはせずに、メディア側にそうした権力者の意向が伝わるしかけを、官邸サイドでしているのである。そこに、現代版「政商」がかかわっている構図だ。
筆者は昨年秋、尾行された。それは朝日新聞に関する官邸批判を雑誌に書いた直後だった。その雑誌は書店にはほとんど置かれておらず、会員制で部数も少ない。電車に乗ると、背広姿の男が私の横にぴたりと付き添い、そのマイナー雑誌で私が書いたページを開いたまま、私が降りるまでずっと立っていた。
筆者は公安関係者による尾行だと思っているが、相手に身分の開示を求めたわけではないので、それが「尾行」だという証拠はない。しかし、記者のような商売をしていたら、付けられていることくらい分かる。その後、自宅に無言電話がかかってきたり、私の家族構成などを調べるような訪問者も自宅に来たりした。さらに、詳細は書かないが、実家にまで意味不明の気持ち悪いハガキが届いた。
たぶん狙いは、「あなたのことを注視していますよ」という一種の脅しだろう。でもそれが官邸の意向かどうかなんて証拠もないし、筆者のような雑魚記者に官邸が注目するほど暇ではないだろう。おそらく、官邸の意向を「忖度」した暇な公安関係者がやったことではないか。
■内向き文化は世界のトレンドを見失う
権力者を「忖度」する風潮は日本で強まっているが、これは何も政治権力に関しての話だけではない。筆者はふだん、自動車産業などの企業取材をよくしているが、企業においても社内で経営トップの意向を「忖度」する人が出世して地位が高くなる傾向にある。
何が正しいか、何をやるべきかと是々非々で議論するのではなく、トップの意向を過度に「忖度」する風潮が蔓延し始めている。
たとえば、トヨタ自動車では、豊田家の意向を忖度できる否かが出世を左右する傾向にある。エアコン大手のダイキン工業でも、長年社長・会長を務めた実力者の井上礼之氏の意向を最も忖度できる秘書が、いきなり後継の社長に抜擢された。大企業で秘書がそのまま社長に昇格するなんて滅多にない人事だ。
豊田家や井上氏が直接指示しているわけではないのに、その意向に沿うことを社内が競って考えるようになり、内向き志向になる。しかし、トヨタ、ダイキンともに業績が抜群によいので、こうした風潮は問題提起すらされず、むしろ好業績を出していることだけが揉め称えられる。企業経営は結果が大事だが、現在生まれている成果は、今の経営者だけの判断ではなく、過去の経営判断も影響している。こうしたことを続けていればいずれ将来に禍根を残すだろう。
企業に関していえば、今年の春闘でも、各社がベースアップ(ベア)を大盤振る舞いしたが、これは、過去の業績や今後の励みなどを考慮して真摯な労使交渉の結果、経営者が労組に「回答」したのではなく、賃上げを強く求める政権の意向を「忖度」したものであり、「政権への回答」と筆者には映った。
企業体力を超えるか、あるいは将来に禍根を残すような回答もあるように見えた。モノ言う経営者で知られる軽自動車大手、スズキの鈴木修会長は、こうした「官製春闘」に苦言を呈し、「こんなことを毎年続けていたら自滅の道を行くことになる」と語った。
これまで述べてきた「忖度文化」の課題は、世間に阿(おもね)ることにつながる。阿るとは、世間に気に入ることを言ったり、したりすることで、媚びへつらうことだ。そして、こうした風潮は「内向き文化」を醸成し、世界のトレンドを見失うことにもつながりかねない。
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