07. 2015年3月31日 01:54:30
: Atbs1Jjyms
2009.08.14自民党安倍政権が種を撒き、民主党鳩山政権が刈り取る 自民党安倍政権が種を撒き、民主党鳩山政権が刈り取るの絵だなと思った。朝日新聞記事「民主、国家戦略局に民間人常勤 政治任用で30人程度」(参照)を読んでの印象である。他の報道では触れてないようだが、この件については民主党は、給油法や日米FTA議論のような愉快なブレはないだろうが、すでにその内実にはブレが含まれているようでもある。 以前の「極東ブログ:民主党の行政改革は、ようするに小泉改革じゃないのか」(参照)で触れたように、民主党の行政改革は、小泉改革及びそれを継いだ安倍政権の公務員改革と「瓜二つ」であり、むしろ大局的には安倍政権以降の自民党の混乱を小泉改革に戻すという流れに見える。 その目玉といえるのが、小泉内閣の時に設置された自民党の国家戦略本部で、これが民主党鳩山政権では、国家戦略局と看板に僅かな違いがある程度の変更になる。が、この話、民主党政策集INDEX2009(参照)には、明示的には記載されず、5月の民主党代表選以降打ち出された鳩山ビジョンの5原則を具体化する「5策」の枠組みで、「官邸機能を強化し、首相直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」として語られた(参照)。 民主党マニフェストに含まれると見てよいのだが、民主党としてどう実現するのかについてはよくわからない。鳩山氏としては国家戦略局のトップに「政調会長級の政策に精通している閣僚を任じたい」とのことで、実際にはトップは政調会長になるようだ。つまり、直嶋正行氏。 疑問点は発表時点で指摘されていた。例えば、7月26日の毎日新聞社説「’09衆院選 国のかたち 「官僚内閣制」を超えよ」(参照)では、「首相直属の「国家戦略局」で予算の骨格を策定する構想を鳩山氏は表明し、省庁の縦割りを廃した予算編成を進めるとしている。だが、法律の制定を必要とし、財務省との役割分担やその陣容も不明確だ」と述べ、(1)法律制定が必要とされる、(2)財務省との役割分担が不明、の2点が指摘された。 前者については、2010年度予算編成前に可能なのか疑問視されるなか、鳩山氏としては「強い権限を持った形で動かすためには法的整備が必要だ」(参照)として臨時国会に関連法案を提出して法制化を狙っていた。しかし8月7日、民主党菅直人代表代行は「国家戦略局は内閣官房組織令という政令で置く。組閣後の最初の閣議で政令をかえれば、即座に設置できる」と述べ、法律ではなく政令で設置することで妥協した(参照)。事実上の政策後退と見てよいだろう。 後者については、「国家戦略局」は当然ながら予算争奪戦のリングとなることが含意されている。ちなみに現状は、小泉改革の名残りとして首相を議長とする経済財政諮問会議が方向性を定め、詳細は財務省が担っていた。実際は財務省がグリップしている。 民主党は以前、予算編成を行う主計局を財務省から切り離し、内閣の財政局に組み込む構想を出していたが、今回財務省の顔色を見て早々に撤回し、鳩山氏も「予算全体は主計局がやるが、その前段階で予算の骨格を議論する」(参照)としている。大筋では現状の自民党政権と変わらない方式になりそうだが、それでは「国家戦略局」がナンセンスに帰すだろう。 国家戦略局について現状、事実上前提とされているのは、7月26日の産経新聞記事「民主「政権構想」 国家戦略局で政策立案 首相直属 予算・外交、政治主導前面に」(参照)にあるように、「民主党が政権を獲得した場合は、首相直轄の国家戦略局に官僚と同数程度の民間スタッフを起用し、官邸主導の予算編成を実現させる狙いがある」ことだ。要するに、官僚と同数程度の民間スタッフの起用は前提となっていた。 民間スタッフがどのようになるのか。冒頭触れた、今日の朝日新聞記事「民主、国家戦略局に民間人常勤 政治任用で30人程度」では、「戦略局の実務を担う国家戦略スタッフは30人程度とし、党の政策スタッフらの起用を想定している」としている。私が誤解しているのかもしれないが、民主党のシンクタンク的な機能を税金でまかないますよと聞こえないでもないが、興味深いのはその経緯だ。 国家戦略スタッフの構想は、昨年の通常国会で与党と民主党の修正協議を経て成立した公務員制度改革基本法に盛り込まれた。ただ、実際に設置する法案は先の国会に提出されたものの、衆院解散で廃案となった。民主党はこうした経緯から自民党も反対しにくいとみており、臨時国会で成立させたい考えだ。
もともとこの国家戦略スタッフの構想は自民党政権下で開始されたもので、「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」(参照)の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会」報告書の概要(参照PDF)ではこう言及されている。 1.議院内閣制にふさわしい公務員の役割 (1)内閣中核体制の確立 ○大臣等の政務を補佐する「政務専門官」の創設。 ○各府省の立場を超えて、内閣の国家的重要政策の企画立案を行う「国家戦略スタッフ」の創設。内閣総理大臣が、公務内外から公募により登用。 ○公務員と政治家との厳格な接触ルールを確立し、政官の接触を集中管理。 民主党政策というより、既存の自民党の改革の流れに乗っていると見てよい。 平成19年7月2日の「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会(第1回)の議事次第」(参照)が当時の様子を物語っている。 議事次第: 開会 安倍内閣総理大臣挨拶 渡辺公務員制度改革担当大臣挨拶 懇談会の運営について 国家公務員の人事管理の現状等について 閉会 当時の安倍内閣総理大臣と渡辺公務員制度改革担当大臣が冒頭挨拶をしている。この二人が国家戦略機構を含めた行政改革の種を撒いた人であった。そして安倍元総理はこの改革がゆえに失墜し、渡辺元公務員制度改革担当大臣は自民党に夢破れて離党した。 当時を知る山谷えり子参議院議員の回想が現下の状況を「【福島香織のあれも聞きたい】山谷えり子氏インタビュー」(参照)で述べている。 それから、国家戦略局なんて、国家戦略が嫌いな人たちがまたカムフラージュで作るんだっていっているけれど、あの安倍政権のときの“チーム安倍”(の首相補佐官たち)は事実上の国家戦略局なんですよ。安全保障と経済と、私が教育、それから拉致と戦略。5人でチームを作って、霞が関(省庁)から後ろを断ち切って応募してこいと呼びかけて、若手30代の官僚たちが100人くらい面接・試験を受けにきたんですよ。それで25人採用して30人で国家戦略を考えるチームを作ったんですよ。それをマスコミは、あれをお友達ナントカと、揶揄したわけでしょう。今度、民主党が安倍政権のまねして、国家戦略局をつくるっていったら、いかにも新しいことやるように書いているんですよ」 そう見えてもしかたがないのではないか。しかし、自民党安倍政権が種を撒き、民主党鳩山政権が刈り取るとしても、その実を得るのが国民であればよいのだが、読売新聞記事「民主公約…政府に議員100人、政治主導図る」(参照)に図示されているように、内閣から霞が関のパス(経路)が2つ増設されるだけとなれば、政治は混乱するだけに終わるだろう。 http://homepage3.nifty.com/finalvent/images/ksryaku.png http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2009/08/post-ad61.html |