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日本銀行は、経済社会及び政治国家に仕える公的組織である。
主要な役割は、経済社会の円滑な運営を支えるため政府部門が行う財政政策をスムーズに展開できるようにすることである。むろん、そのためには、インフレやデフレという通貨価値の変動をウォッチし、とりわけ悪性インフレの兆しについては敏感に反応しなければならない。
引用するコラムの論者は、「デフレ脱却のため国債を大量購入する日銀は、財政ファイナンスとみられないよう財政再建を求める責務がある」と主張しているが、日銀が国債を大量に購入するのは、国債サイクルを円滑に回すためであり、デフレ脱却と直接の関係はない。
インフレは、ベースマネー(現金発行残高+日銀当座預金残高)の変動に規定されるわけではなく、マネーストック(マネーサプライ:民間金融機関の貸し出し残高)と通貨回転率に規定されるものである。
この20数年、国債を中心に公的借入が増大し政府の債務残高が1000兆円を超えるレベルまで膨らんだのも、ひとえに、グローバル企業に利益(手元資金)を膨らませたことで、資金の借り手の位置から資金の貸し手の位置に転じてしまったことによる。
日本の政府債務残高の肥大化は、貯め込まれたおカネを政府が借り入れというかたちで使うことで、銀行の資金運用難を救済し、同時に、経済社会の再生産過程をなんとか動かそうとするなかで進んだのである。
(97年までは企業部門が最大の借り手であったのが、98年からは企業部門が資金の出し手になったため、政府が銀行が抱える預金を国債というかたちで借りるほかなくなった。97年の消費税増税がそのような転換のトリガーになった)
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[大機小機] 黒田総裁は「財政の番人」に
「通貨の番人」が中央銀行総裁の通常の役割だが、財政危機にある日本の場合、黒田東彦日銀総裁はそれと併せて「財政の番人」でなければならない。デフレ脱却のため国債を大量購入する日銀は、財政ファイナンスとみられないよう財政再建を求める責務がある。
日本の財政は先進国最悪の状態にある。長期債務残高の国内総生産(GDP)比は2倍を超え、ユーロ圏の重債務国より悪い。しかも、超高齢化のもと財政支出は膨らみやすい構造にある。
にもかかわらず、日本の政治に財政への危機感は乏しい。内閣府の試算では、消費税率を10%に引き上げても、2020年度の基礎的財政収支の黒字化という目標は達成できそうにない。永田町には目標の先送り論も出始めている。
そもそも基礎的財政収支という財政再建目標そのものが甘い。国債発行もその利払いも外す基礎的財政収支を財政再建目標にする先進国はない。とくに大量の国債発行を続け巨額の利払いを迫られる日本が基礎的財政収支を目標にするのは間違いだ。国際水準の財政収支を目標にすべきだ。
デフレ脱却へ日銀は国債をほぼ一括して購入している。市場を通じた購入で、禁じ手の日銀引き受けではないにしろ、財政ファイナンスと受け取られかねない。そうなれば国債の信認に響く。
長期金利はいまのところ日銀の国債購入で低く抑えられているが、脱デフレへの過程で上昇は避けられない。
しかも、国際決済銀行(BIS)は国債をリスク資産とみなし始めている。巨額の国債を抱える金融機関の経営を揺るがすことになる。成長による税収増はアベノミクスの成果だが、税収増にばかり期待をかけるのではなく、財政再建に真正面から取り組まないかぎり、日本国債に格下げリスクが生じかねない。
3年目の黒田総裁はこれからが正念場だ。金融政策と財政は密接にからむのだから、財政再建への注文は日銀総裁の使命である。米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)も財政運営に注文をつけてきた。
日本の財政は持続可能ではない。財政再建を緩めれば、金利上昇につながり、財政危機はさらに深刻化する。安倍晋三政権は財政の不都合な真実を直視し、黒田総裁の苦言を受け入れる度量が求められる。
(無垢)
[日経新聞3月24日朝刊P.19]
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