23. 2015年3月29日 23:27:09
: lhZlvVWmzQ
2015.3.1 12:30 【日曜経済講座】 人民元現預金2400兆円、日本の3倍! 膨らむ中国マネー・バブル http://www.sankei.com/column/news/150301/clm1503010008-n1.html中国の投機性資金流出入 http://www.sankei.com/column/photos/150301/clm1503010008-p1.html 資本逃避加速で崩壊の恐れ 先週半ばまで、中国の春節「爆買い」ツアーは、世界の主要都市を席巻した。 チャイナマネー・パワーの源泉は人民元の現預金にある。その総額は昨年末で20兆ドル強(約2400兆円)で、実に日本の3倍、米国の1・7倍。増殖速度もすごい。年間で2兆ドル(約240兆円)増えている。日本の8倍、米国の3倍だ。発券銀行の中国人民銀行がおカネを1増発すると、現預金は5以上増える。 人民銀行を支配する中国共産党の打ち出の小槌(こづち)。可能にするのは米国を中心とし、欧州も日本もどっぷり漬かる国際金融システムである。 2008年9月の「リーマン・ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年末までにドル資金発行残高を4倍に増やしたが、人民銀行はドルに見合う元を増発した。人民銀行は中国に流入するドルを自ら決めた交換レートで全面的に買い上げて、相当額の元資金を発行する。ワシントンは元安には厳しく反応するが、人為的な外為操作は見て見ぬふりだ。元の量が増える金融緩和効果で中国市場が拡大することは、本国市場で苦戦するビッグ3など米企業にとっても利益になる。 北京の思い通りに外貨が中国に流入するとは限らない。主な流入源は貿易黒字と外国からの直接投資だが、輸出は低迷し、人件費高騰を嫌った外国企業は他のアジアに生産をシフトさせている。それでも外貨流入方法はある。海外からの借り入れである。 国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)によると、中国の海外の銀行からの借り入れ残高は14年9月末、1兆700億ドルで、前年比2800億ドル増えた。世界全体での2700億ドル増をしのぐ。ということは、国際金融で稼ぐ米欧日などの大手銀行を、もっぱら対中国金融が支えていることになる。北京は国際金融界の協調のもと元資金を供給し、富裕層は海外で買い物に狂奔する。 銀座、ニューヨーク五番街も、ロンドン・シティー、ニューヨーク・ウォール街も毛沢東のお札、元のチャイナマネー、で踊る。そんなざまで世界は大丈夫か。そう、安心している場合ではない。 グラフは投機性の高い資金の流出入状況を示す。中国の国際収支統計をもとに、筆者が推計した。当局が国境を越える外貨をすべて売り買いする中国の場合、対外資金収支は公的外貨準備に反映する。資金収支のうち貿易、直接投資、利子・配当分の合計額と外貨準備の増減額の差額は逃げ足が速い投機性資金である。中国語では「熱銭」と呼ばれる。熱銭は、中国国家統計局が金融収支項目として把握している分と、そうでない「正体不明」に分かれる。正体不明分には党幹部の不正が絡むはずだ。プラスは流入で、マイナスは流出で「資本逃避」を意味する。 昨年1年間の資金流出額は4200億ドルで統計のある1998年以降、最大規模になった。リーマン・ショック直後の流出額約年2千億ドル、12年6月の同3千億ドル超をはるかにしのぐ。12年の場合、胡錦濤前指導部から習近平体制に移行する直前に、巨額の不正蓄財資金が海外に逃げた。さらに、不動産投機の資金が不動産相場の下落を嫌って流出する傾向も時期によっては出てくる。 資金の流出入がほぼ一貫して連動するのが、景気動向である。鉄道貨物輸送量は李克強首相が信頼する景気指標の一つである。モノが国内総生産(GDP)の約5割を占める中国では景気実体は物流に反映しやすい。すると、最近の中国経済はGDPの実質伸び率7%台どころではなく、マイナス成長に陥っていることがわかる。輸入量、電力消費など他の停滞ぶりとも一致する。 はっきりしているのは、鉄道貨物輸送量の落ち込みに連動するように資金が流出することだ。景気の低迷は今後も続く。となると、資金の流出はまだまだ増えるし、加速しかねない。 資金流出を止めるためには利上げし、元相場を切り上げるしかないが、経済が沈む。逆に元を切り下げると、資本逃避が加速する。元安では対外債務の重圧がぐっと高まり、信用不安になろう。 対外債務の大半には党幹部が関与し、多くは不動産を担保にしている。不動産市場崩落で日米欧の貸し手は不良債権を抱える。「爆買い」が示すのはバブル化したチャイナマネーであり、資本流出は、そのマネー・バブルの崩壊を暗示する。その時、ブランド物が売れなくなる程度ならよい。株式を含め世界の市場全体が大きく揺れるだろう。編集委員・田村秀男 2015.3.29 12:55 【日曜経済講座】 インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る 編集委員・田村秀男 http://www.sankei.com/economy/news/150329/ecn1503290012-n1.html 中国外資と海外銀行から借り入れ http://www.sankei.com/economy/photos/150329/ecn1503290012-p1.html 中国のあらゆる政府組織、中央銀行(中国人民銀行)とも軍と同じく、習近平党総書記・国家主席を頂点とする共産党中央の指令下にある。 中国主導で設立準備が進められている「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」はどうか。中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。総裁は元政府高官、本部も北京、主要言語は中国語。AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意思に左右されるだろう。今後、何が起きるか。 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け低利融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。東南アジアや南アジアでの中国の軍艦が寄港する港湾設備がAIIB融資によって建設されることもありうる。そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない。 今、政府内部や産業界、日経新聞などメディアの一部で、AIIB出資論が出ている。党指令先組織に日本もカネを出せ、というブラックジョークである。 反論もあるだろう。「AIIBは英独仏など欧州主要国も参加するではないか、党に支配されるはずはない」という具合に。世界銀行、アジア開発銀行、国際通貨基金(IMF)など既存の国際金融機関は主要出資国代表で理事会を構成し、運営されている。これに対し、楼継偉財政相は22日に北京で開いた国際会合で「西側諸国のルールが最適とはかぎらない」と強調した。同財政相らは世銀やアジア開銀などの理事会決定方式を否定し、トップダウンによる即断即決方式を示唆する。圧倒的な出資シェアを持つ中国の意図は、世銀やアジア開銀などと全く違う中国式の意思決定方式なのである。 日経新聞は「AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」(3月20日付社説)と論じたが、仮に日本がマイナーな出資比率で参加したところで、党中央政治局に伺いを立てるAIIB総裁に影響力を持てるはずはない。 世界最大の外貨準備という「資力」を持つ中国が、アジアなどのインフラ建設資金融通を主導するのは理にかなっている、と思い込む向きもあるだろうが、とんでもない誤解である。 中国の外準残高は2014年末で3兆8430億ドル(世界2位の日本は1兆2千億ドル)もあるが、実は半年間で約1500億ドルも減った。景気の低迷や不動産相場の下落の中で、資金流出が年間で4千億ドル以上に上るからである(本欄3月1日付参照)。無論、習近平政権による不正蓄財追及から逃れるために、一部党幹部らが裏ルートで資産を外に持ち出していることも影響している。 外準は人民銀行による人民元資金発行の原資になっている。外準が減ると、中国経済が貧血症状を起こす。そこで、中国は急激な勢いで、国際金融市場から借り入れを増やしている。グラフは、最近の外準と海外の銀行からの借り入れの増減額の推移である。昨年9月末には、外準の増加額を借入額が上回った。12月末のデータはまだ公表されていないが、借り入れは資金流出分を補うためにも、かなり高水準になると推計される。このまま資金流出が止まらないと、ロンドンなど国際金融市場から借金を増やさないと、外準は数年間で半減してしまうだろう。しかも、人民元金融システムを維持するためにこれ以上減らすわけにいかないのだから、外準をアジアのインフラ整備のために活用すること自体、ありえない。「世界一の外貨資産」というのは、いわば見せ金にすぎないのだ。 中国がAIIBを創立し、アジア地域全体でインフラ投資ブームを演出する背景には、自身の窮状を打開するためでもある。鉄道、港湾、道路などで需要を創出し、中国の過剰生産能力、余剰労働力を動員する。そのために必要な資金はAIIBの名義で国際金融市場から調達する。そして、中国主導の経済圏が拡大するにつれて、人民元が流通する領域を拡大して、人民元経済圏を構築する。各国が人民元に頼るようになれば、外交面での中国の影響力が格段に強化される。AIIBは党支配体制維持・強化のための先兵なのである。 政府は参加するかどうか、6月までに最終的に決めるが、北京の思うつぼにはまりこんでよいはずはない。
|