21. 2015年3月29日 13:41:57
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2013.05.24国連の委員会が日本に対して、慰安婦めぐるヘイトスピーチの改善を求めたニュースに関連して 国連の委員会が日本に対して、慰安婦めぐるヘイトスピーチの改善を求めたというニュースが流れ、一部で話題になった。報道に関連したメモを簡単にまとめておきたい。 初出ニュースがどこであるのかがまず気になったのだが、あまり明確にはならなかった。個人的に最初に見かけたのはTBS系のニュースだったように思う。現在ネットから追跡できる日時は22日の16時21分の「「ヘイトスピーチ」国連委が日本政府に改善求める」(参照)である。 過激な言葉で特定の人種や民族などを憎悪する表現「ヘイトスピーチ」が問題となっていますが、国連の委員会が韓国人の元従軍慰安婦に対するヘイトスピーチを防止するよう日本政府に対して求めていることが分かりました。 過激な言葉で、中国人や韓国人の排斥を訴えるデモが各地で行われています。「ヘイトスピーチ」と言われるこうしたデモは竹島や尖閣諸島の問題が再燃した去年夏ごろから特に激しさを増してきたといいます。 「一部の国、民族を排除しようという言動があることは極めて残念なこと」(安倍首相) 国会でも取り上げられたヘイトスピーチですが、現在日本には言論・表現の自由の観点などから法律での規制はありません。そんな中・・・ 「委員会は日本政府に対し、慰安婦からの搾取についての教育を進め、ヘイトスピーチなど元慰安婦に汚名を着せるような運動を防ぐよう求める」(国連の社会権規約委員会の見解) 世界の人権問題を監視する国連の社会権規約委員会は17日までにまとめた見解の中で、日本社会の元慰安婦に対する理解の足りなさを指摘し、日本政府に対して元慰安婦を中傷するヘイトスピーチなどを防止するよう求めています。この見解をまとめるための調査は、日本維新の会の橋下共同代表の従軍慰安婦に関する発言よりも前に行われたということです。見解はさらに元慰安婦の経済、社会、文化的な権利や賠償への悪影響を懸念しているとし、日本政府に必要なすべての措置をとることを要請しています。(22日16:21)
TBS報道で事実とされる部分で気になるところは、まず、ニュースの元になるのは、「世界の人権問題を監視する国連の社会権規約委員会は17日までにまとめた見解」であること。このため、「日本維新の会の橋下共同代表の従軍慰安婦に関する発言」の文脈とは別であることをが明記されている。なお、そうであれば、ニュースの切り出しのヘイトスピーチと関連があるかについての検証が必要であるように思われるが、その部分の説明は弱い。また、「日本社会の元慰安婦に対する理解の足りなさを指摘し、日本政府に対して元慰安婦を中傷するヘイトスピーチなどを防止するよう求めています」としているが、「日本社会の」が「元慰安婦」にかかるのか、「理解の足りなさ」にかかるのかは曖昧である。前者であれば、日本社会での元慰安婦が問題ということになる。が、報道が「特定の人種や民族などを憎悪」の話題で始まっていることから、暗黙に、日本国外の慰安婦が対象となっている印象を与えている。 新聞報道では22日付け朝日新聞「慰安婦めぐるヘイトスピーチ、国連委が日本に改善求める」(参照)が詳しくTBS報道に先行していた。報道検証なのであえて全文を引用したい。 国連の社会権規約委員会は21日、日本に対して、従軍慰安婦をおとしめるような行為をやめるよう求めた。一部の排外主義的グループが「従軍慰安婦は売春婦だった」という趣旨のヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返しているのを受けたもので、政府に改善を求めている。 同委員会は発表した見解の中で、日本政府に対して「公衆を教育し、憎悪表現や汚名を着せる表現を防ぐ」ことを求めた。さらに元慰安婦の「経済、社会、文化的な権利や補償への悪影響を懸念する」としたうえで、「必要な全ての措置」をとることも要請した。 今回の見解では、朝鮮学校が国の高校無償化制度の対象外となったことについても、「差別にあたる」と批判し、改善を求めている。 同委員会は、人権を保障するための国連の条約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」の締約国を対象に、定期的に見解をまとめている。今回は4月下旬に日本政府と市民団体の双方から意見を聞いたうえで、発表した。法的な拘束力はないが、政府は誠実に受け止める義務がある。(ジュネーブ=前川浩之) ■国内での無理解、懸念した指摘か 日本でのヘイトスピーチ横行が、国際人権機関から改善を求められた。 社会権規約委員会の日本審査では、複数のNGOが国内の人権状況を報告。その中で、日本のバンドが「売春ババア殺せ チョン斬れ」などの歌詞が入った曲を作り、そのCDが韓国の元慰安婦らに送りつけられた出来事も紹介されたという。委員会はそうした情報も得た上で、教育などを通じたヘイトスピーチ防止を求めた。 審査は、日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長の慰安婦発言や、西村真悟衆院議員(同党から除名)の「韓国人の売春婦はまだうようよいる」発言の前だった。委員会が政治家の発言を直接批判したわけではないが、元慰安婦について日本社会で理解が深まっていないことを懸念しての言及とみられる。 委員会は日本が包括的な差別禁止法をつくることも求めた。「殺せ」と連呼するデモのように、きわめて差別的な表現行為が放置されている日本の現状は、今後も厳しい批判にさらされそうだ。(石橋英昭) 朝日新聞の報道はTBS報道より詳しい。報道の元となる事実は、「国連の社会権規約委員会は21日、日本に対して、従軍慰安婦をおとしめるような行為をやめるよう求めた」であり、5月21日の同委員会発表であった。また、日本政府への要望は、「法的な拘束力はないが、政府は誠実に受け止める義務がある」として、法的な拘束力がないことも明記されている。 朝日新聞の報道でも「慰安婦」の国籍については問われていない。一部の排外主義的グループの指摘を受けたとするのは、朝日新聞の解説である。 NHKでも22日18時8分に報道された。「国連 “慰安婦”でひぼう中傷防ぐ手だてを」(参照)。 国連は、日本国内で、いわゆる従軍慰安婦だったとされる韓国の女性たちに対してひぼう中傷が行われているとして、日本政府に、こうした言動を防ぐ手だてを講じるよう求める報告書をまとめました。 この報告書は、世界の国の社会や経済などでの権利を調査している国連の委員会が、日本政府や市民団体から意見を聞いたうえでまとめたもので、21日、発表されました。 この中で、いわゆる従軍慰安婦だったとされる韓国の女性たちを、ひぼうしたり中傷したりする言動が日本で行われているとして、日本政府に対して、これを防ぐ手だてを講じるよう求めています。 報告書は、日本維新の会の橋下共同代表などによる従軍慰安婦問題を巡る発言が出る前に行われた調査に基づくものですが、従軍慰安婦だったとされる女性たちを差別的な表現を使って非難する声がインターネットなどで出ていることなどを受けて指摘したものとみられます。 また、報告書は、従軍慰安婦だったとされる女性たちについて、「さまざまな権利や補償に悪影響が出ていることが懸念される」としたうえで、こうした状況に対処するためにすべての必要な措置を取ることも求めています。 NHK報道で特徴的なのは、慰安婦の国籍を「いわゆる従軍慰安婦だったとされる韓国の女性たちに」として、韓国に特定している点である。TBSや朝日新聞との報道の差がNHKに見られるので、この部分については報道の検証が必要になる。もし、国連委の報告に慰安婦の国籍が韓国と明記されていなければ、NHK報道になんらかのバイアスがあるし、逆であれば、TBSや朝日新聞は報告に記載されているのにそれを曖昧にしたという点で、何らかのバイアスがあるだろう。 NHK報道では、TBSと朝日新聞報道とは異なり、慰安婦の文脈から離れた「ヘイトスピーチ」についての記載はなく、問題はあくまで「従軍慰安婦だったとされる女性たちを差別的な表現を使って非難する声がインターネットなどで出ていることなどを受けて指摘したものとみられます」として、慰安婦に焦点化されている。この点もまた報道の検証が必要になるだろう。 その他の国内報道だが、ざっと調べた範囲ではテレビ朝日の報道があるが、手短で特徴もないので省略したい。読売新聞、産経新聞、毎日新聞ではこの話題は見かけなかったように思われる。気になるのは毎日新聞はジュネーブ共同を元に23日「橋下氏発言:国連委、日本政府の見解要求」(参照)として類似の報道を出していることだ。これは「人権条約に基づく拷問禁止委員会」で別の委員会である。なぜ毎日新聞が、人権問題を監視する国連の社会権規約委員会の話題をバイパスしたのかはわからない。 ニュースがどのように伝搬したのかは、以上の報道からははっきりとはわからない。韓国側の報道を日本が受けた可能性もあるかもしれないと、日本語で読める範囲であるが探すと、朝鮮日報(参照)でも中央日報(参照)でも日本の朝日新聞の参照を記していることに加え、朝日新聞記事以上には事実に関する情報がないことから(報告書の関連情報は朝鮮日報の記事にあるが)、おそらく、この話題は韓国側の報道から流れたものではないだろう。総合した印象としては、朝日新聞が起点になっているように思われる。 事実検証に移りたい。重要なのは、「経済的、社会的および文化的権利委員会(ICESCR:社会権規約委員会」の報告書である。この公開されているかについては、朝鮮日報の記事で「「日本の経済・社会・文化的権利に対する観察結果」と題する報告書をウェブサイトで公表」とある。ネットに公開されていることがわかる。この文書名とインターネット公開については、日本国内での報道には含まれていなかったのも興味深い。 文書は探すとすぐに見つかる。該当の文書は「Concluding observations on the third periodic report of Japan, adopted by the Committee at its fiftieth session (29 April-17 May 2013)」(参照・DOC形式)である。文書は、改変しやすくかつウイルス感染の懸念のあるDOC形式である点が、奇妙にも思われるが、草稿的な含みがあるのだろうか。 該当文書は、見るとわかるように、項目はすべてナンバリングされており、話題と勧告は7番から37番まであり、24番では東北大震災と福一原発事故に関連した弱者の問題、25番では福一原発事故の情報開示なども扱われている。 今回の慰安婦関連の話題は26番で、以下がその全文である。 26. The Committee is concerned about the lasting negative effects of the exploitation to which ‘comfort women’ were subjected on their enjoyment of economic, social and cultural rights and their entitlement to reparation. (art. 11, 3) The Committee recommends that the State party take all necessary measures to address the lasting effects of the exploitation and to guarantee the enjoyment of economic, social and cultural rights by ‘comfort women’. The Committee also recommends that the State party educate the public on the exploitation of ‘comfort women’ so as to prevent hate speech and other manifestations that stigmatize them. 参考までに試訳しておこう。 本委員会は、‘慰安婦’の経済、社会、文化的な権利の享受と彼女らの賠償の権利について、彼女らに加えられた不当待遇による長引く悪影響を懸念している。(11.3条項) 本委員会は、該当締約国が、不当待遇の継続効果に取り組み、慰安婦’の経済、社会、文化的な権利の享受を保証すべくあらゆる手段を行使するよう勧告する。本委員会はまた、ヘイトスピーチやその他の汚名を着せる示威を防ぐべく、慰安婦’の不当待遇について、該当締約国はその公衆を教育することを勧告する。 「exploitation」の定訳語がわからなかったが、ロングマンの「a situation in which you treat someone unfairly by asking them to do things for you, but give them very little in return - used to show disapproval」という解釈から「不当待遇」とした。通常は「搾取」であるがそれだと文脈ではわかりづらい。 訳は拙いものの、原文に当たるとわかるように、‘comfort women’つまり「慰安婦」として表現され、これに他の形容は加えられていない。つまり、NHK報道のように「韓国」のという限定は見られない。 この点については27条が「韓国」を明記しているのと対照的である。この話題は朝日新聞記事にあった朝鮮学校が国の高校無償化制度の対象外とされたことである。 27. The Committee is concerned at the exclusion of Korean schools from the State party’s tuition-waiver programme for high school education, which constitutes discrimination. (art. 13, 14) 「慰安婦」の26条と比較すると、ICESCRの視点では、「慰安婦」の国籍は特定されていないと見てよい。TBS報道や朝日新聞報道がその点を配慮していたことがわかる。 日本軍が管轄した「慰安婦」が韓国人と限定されないことは、今日の毎日新聞記事「橋下氏発言:オランダでも抗議 慰安婦支援者、大使に書簡」(参照)からでもわかる。 【ブリュッセル斎藤義彦】日本維新の会共同代表の橋下徹・大阪市長が、第二次大戦中の旧日本軍による従軍慰安婦制度が「当時は必要だった」と主張したことに対し、オランダ人元慰安婦への「償い事業」の実施責任者だった2人が駐オランダ日本大使に「誤った危険な発言」とする抗議書簡を送ったことが23日わかった。橋下発言への欧州からの抗議は初めて。元責任者は毎日新聞に「発言は被害者を傷つけるもの」と批判した。 長嶺安政駐オランダ大使に16日付で書簡を送ったのはマルガリータ・ハマー・モノ・ド・フロワドビーユさん(71)ら2人。旧日本軍占領下のインドネシアで慰安婦にされたとして償い事業の対象となったオランダ国籍保有者79人への医療福祉支援事業(1998〜2001年)の実施責任者だった。 ハマーさんによると、書簡では橋下発言に「憂慮」を表明。発言は従来の日本政府見解を逸脱した「間違った方向」で、従軍慰安婦の被害国、とりわけアジアにとり「危険なものだ」と非難した。 元慰安婦の大半は死亡しているが、全員と接触して事業を行ったハマーさんは「発言はこれまでの元慰安婦へのおわびを否定するもので、謝罪が謝罪でなくなる。日本の首相のおわびの手紙で救われた元慰安婦を深く傷つけた」と述べた。 ハマーさんは、橋下市長が07年の安倍政権の政府見解を根拠に「国を挙げ暴行、脅迫、拉致をした証拠はない」と強制性を否定している点に関し「日本軍政下で収容所に入っていたオランダ人慰安婦への強制は明白。安倍晋三首相の見解が橋下市長の発言の基礎になった」と首相も批判した。 オランダ政府の93年の調査報告は、インドネシアで65人が強制的に慰安婦にさせられたことは「確実」と指摘している。 長嶺大使は「コメントは差し控える」としている。 オランダでは下院が07年、日本政府に元慰安婦への公式謝罪と補償を求める決議を採択するなど、日本への不満がくすぶっている。 「償い事業」は「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)が元慰安婦に対し、民間からの募金で「償い金」を払い、政府の拠出金で医療福祉支援事業を行うとともに、首相のおわびの手紙を渡す事業。基金は95年に発足、07年に解散した。 ◇インドネシアのオランダ人慰安婦 オランダが植民地支配していたインドネシアを、第二次世界大戦中の1942〜45年に旧日本軍が占領。オランダ政府の調査によると、占領下で欧州系の女性200〜300人が慰安所におり、うち65人が、強制収容所から暴力で連行されるなど「確実に」慰安婦になるよう強制された。軍の呼びかけに「自主的」に応じ慰安婦になった例は除外されたが、「背景に軍の暴力や貧困があり、自主的とは認めづらい」としている。収容所の外にいたインドネシア系オランダ人が軍に連行された例もある。 話をICESCRの今回の勧告に戻すと、「慰安婦」が韓国人に特定されないことや、日本国内での問題とされているから、臆見なく読む限りでは、日本の国内問題への勧告であり、「慰安婦」に含まれていた日本人の慰安婦が対象と理解してよいようにも思われる。 歴史的に見ると韓国は第二次世界大戦後に独立したが、それ以前は国連(連合国)の枠組みでは、日本に含まれ、日本と同様に敗戦国になっている。別の言い方をすれば、現在の韓国人「慰安婦」は当時は、国連(連合国)の枠組みとしては、日本人に分類されていた。本来なら、日本国家の国民としての権利や補償の対象となるはずである。 しかし、現在の韓国政府は、その憲法などから推測されるように、李承晩の中国内の抗日政府を継いで独立したものとして、中国のように戦勝国の立場を取っているようにも思われる。いずれの場合も、独立後、韓国は日本とは別の国家となったため、こうした国民への賠償は国家間の問題に移行された。そのため、現在の日本政府としては、慰安婦への保証も日韓基本条約で扱ったことになっている。該当条約では付属協定で、請求権問題については「完全かつ最終的に解決された」と明記されているため、日本政府は現韓国人慰安婦への補償問題も「法的に解決済み」としてきた。 しかし韓国政府は、韓国人慰安婦の賠償請求権は基本条約の対象外と主張し、これを同国の司法である韓国憲法裁判所も2011年8月に、韓国政府がその請求権について十分に努力をしていないのは違憲との判断を下した。つまり、韓国は現在、日本側に「法的責任」を認めるよう求めている。これに対しては、日本政府は従来の立場を維持しつづけている。 台湾人兵士の補償でも問題になったが、基本的に旧日本国下の国民の保証はどうあるべきかについては難しい問題がある。それでも、韓国側の現韓国人慰安婦の賠償を日本政府が認めるとなると、同じ境遇にあった日本人の慰安婦の賠償をどうするかということが日本政府に問われるようになる。 この問題について党内議論を進めてきた民主党は、1999年12月22日に「戦時性的強制被害者間題の解決の促進に関する法律案」(通称本岡法案)で扱い、日本人の慰安婦は賠償から除外するとした。これに対して、日本人慰安婦も同等に扱うべきだとして日本共産党は異論を唱えたものの、民主・共産・社民三党案では民主党案に折れる形になった。 この時点での共産党・吉川春子参議院議員の見解が興味深い。「藤原美紀さんからのお便り」(参照・現在はリンク切れ)より。 「藤原美紀さんからのお便り」 疑問に思うのですが、従軍慰安婦さんて、朝鮮人よりも日本人の方が圧倒的に多かったのにどうして彼女達は名乗り出てこないのでしょうか。また、韓国人慰安婦ばかり調査するのに日本人慰安婦については何故調査しないのでしょうか。 どうして日本人慰安婦は軽視するのですか?国籍違えど同じ女性なのに! もう一つ、「解決」とは具体的にどのような事ですか? それと慰安婦だと判断する基準は何ですか? 慰安婦でした・・って言ったら慰安婦になるんでしょうか。 教えてください。たった10万、100万でもアジアの方には大金なのでお金目当てに近づいてくる方は絶対いないと言う保障はありませんよね。 できるだけ協力したいのですがそこら辺をはっきりさせてくれないと、出す必要の無い方にまで出してしまった・・なんて笑い話にもなりませんので。 藤原 美紀 さま メールを有難う御座いました。 ご指摘のように日本人慰安婦は大勢いたのです。(朝鮮の方より多いかは定かではありませんが) 私も匿名で2回お手紙をいただきました。日本人慰安婦を見捨てないでほしいと書いてありました。 共産党の法案では日本人慰安婦についても補償と謝罪の対象に含めています。民主・共産・社民三党案では、旧植民地と占領地出身の慰安婦という形で日本人は対象にしていません。 理由は (1) 日本人を含めることについては3野党で一致できなかったので共産党としては譲歩しました。 (2) しかし外国人の慰安婦について謝罪・保障するとの野党案が成立すれば、日本人の方についても当然話題になるでしょうし、引き続いて立法の努力をしたいと思います。 ともかく先ずは早く成立させるための法案にしたということです。 日本人慰安婦について 貴女のご意見に賛成です。「慰安婦」という制度が許されないのは日本人についても同じです。 三党案には、総理大臣を長とする促進委員会の設置を義務付けています。 ここでは慰安婦問題の調査を行なうこととしています。 慰安婦について詳しい資料を政府に提出させ、日本人についてもはっきりさせることができると思います。 日本人が名乗り出られないのは、韓国より、北朝鮮より、中国、フイリッピンより、インドネシア、オランダより「慰安婦」とされた女性達を暖かく受け入れる素地がないからではないでしょうか。 その点では女性の人権の確立が悲しいことに、とても遅れているのです。政治家や一部の人達が、「『慰安婦』は商行為だった」とか、「『慰安婦』は存在しなかった」など公然と言うのですから。彼女達はどんなに傷ついていることでしょう。 どうぞ名乗り出てください、と私は日本人『慰安婦」だった方に訴えたい。 彼女達の人権回復を国会議員の仕事として、私は全力で行ないます。 「解決」の意味について 私は日本政府が真に反省して、政府・国会の責任で謝罪と補償を行い、教育を通して次世代にも教訓をしっかり引き継ぐ、そして日本も本当に侵略戦争に反省し、女性の人権を踏みにじった事の反省し、2度と繰り返さないだろう、と世界の人々に認められる行為を行なうことだと思います。 それでも『慰安婦』の皆さんの心身の傷は癒えることはないのです。 原状回復という意味なら、本当の解決はないのかもしれませんね。 慰安婦の認定について 3野党の法案では、『慰安婦』と名乗り出て、その国の政府や責任あるNGOが認定した人は慰安婦と認めることにしています。 これが一番現実的方法だと思います。 『慰安婦』と名乗ることは勇気のいることで、その瞬間に地域社会から受け入れられなくなってしまうので、「インドネシアでは『慰安婦』の認定そのものを行なっていない」と政府代表が私たちに語りました。ですからインドネシアでは『慰安婦」は一人も認定されていません。 どの国でも、名乗り出ない人のほうがはるかに多いのです。 元慰安婦の方の名乗り出るまでの葛藤と名乗り出てからの周囲からの差別的な扱いやイヤがらせ等々、ご苦労はお聞きするたびに胸がつまる思いです。 お金だけが目的であれば、アジア女性基金のときに多数の方がそれを受け入れたことでしょう。それを受け取らず、正式な謝罪と国家賠償を求めています。 その思いを私たちがどう受けとめるか、そこが問われています。 貴女の疑問に適切なお答えができたでしょうか。 なかなか十分なお答えができたとはいえないと思いますが、是非今後も関心を持ちつづけて下さい。メールもお待ちしています。 2003.2.27.吉川春子 興味深い私見ではあるが、全体の方向性としては、「外国人の慰安婦について謝罪・保障するとの野党案が成立すれば、日本人の方についても当然話題になるでしょう」ということで、まず日本人以外の慰安婦の賠償を優先して実施、それが実施できれば、日本人の慰安婦が問題となり、それから別途、日本人の慰安婦についての賠償を考えればよい、ということになる。 そうした外国人を優先するという民主・共産・社民三党のような考え方もあるかもしれないし、インドネシア人の慰安婦のような事例では有益な方針でもあるだろう。しかし韓国人の場合は、基本的にその賠償の法的な根拠は日本国の自国民の補償、つまり現在は外国人であっても以前は日本人であったことの補償の枠組みになるので、その点からすれば、日本国政府は、戦前の日本の版図にある日本人を包括的に含め、全慰安婦の個人賠償を明確にし、その中で現在、韓国人となった慰安婦への賠償手続きを進めていけばよいのではないだろうか。 具体的には、日本共産党に原点に立ち返って本岡法案への叛意を促し、さらに自民党の有志や民主・社民以外の政党へと連携し、新法案を促していけばよいだろう。なお、その際は吉川春子参議院議員が「どうぞ名乗り出てください」というようなことなく、プライバシーを配慮した認定団体への登録のみとすればよく、むしろ、「名乗り」を求めるような負担をかけるべきではないだろう。 また慰安婦への賠償問題を日本国民への個人賠償の視点で見ていくなら、特殊慰安施設協会(RAA:Recreation and Amusement Association)――連合国軍占領下、国連軍兵士の相手をする慰安婦の国家施設――も日本国政府の主導であったのだから、同じ流れで賠償を検討していけばよいだろう。生存者の確認という点だけで言えば、RAAを先行したほうがわかりやすくはなるだろう。なお、歴史証言ではなく文学作品ではあるが1929年(昭和4年)生まれの三枝和子は『その夜の終りに』(参照)において、この時代の感性を上手に表現している。 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2013/05/post-4c88.html |