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2015年03月27日
以下は山田厚史氏のコラムである。筆者自身も、口が酸っぱくなるほど、アメリカの「一強他弱」と云う権力集中はなくなる。その考えは、今や「神話」であり、幻想に近い観念になりつつある。アメリカが、抜けて有利なのは世界展開できる軍事力だったが、それも縮小傾向にあり、諜報陰謀的な動きに変りつつある。つまりは、企みがないと、減少したパワーの維持が困難になってきた証左なのだろう。
欧米先進国経済には、必然的で、人間の根源的欲求に根ざす「需要」が枯渇するところまで、先進してしまったのである。アイホーンの売れ行きや不老不死のIPS細胞等と云う話題で、人々が生きるようになったと云うことは、もう死活問題から、遠く離れているわけで、人間が生きる上での、自然の叫び「需要」ではなくなっていると云うことだ。必然的に、根源的欲求があり、一定上の文化文明を持っており、経済的力をつけて来た、開発余地を充分に残すところに、大きな発展が期待される。
それが、好き嫌いを別にして、中国大陸であり、延いてはユーラシア大陸である事は、世界の知識人であれば、当然理解している事である。無論、モノマネや偽物などの文化もあるわけだが、経済の発展に合わせて、いずれは是正される過渡的問題だ。山田氏は「実利」の面から、日米の外交の瑕疵を指摘しているが、筆者は歴史観の問題なのだと思う。哲学的志向性の強い、EUやロシア、インドが、中国の抬頭はリスキーだが、歴史の必然であり、抗うことに、何の意味も持たないと結論づけるわけである。
正直、アメリカの最大のウイークポイント、「歴史の浅さ」が露呈しつつあると云うことだ。その歴史のない国が、第二次大戦後世界のリーダーであったわけだが、経済的豊かさ、豊富な天然資源、「世界一」であることで人工移民国家アメリカ合衆国を繋ぎ合わせていたわけだ。ただ、自然発生する根源的人間の欲求と云う意味では、その需要は枯渇しつつある。このように、具体的に具現化されるものだけを素材に繋ぎとめていた集団には、脆さがある。それが、歴史に裏打ちされた、哲学の強みである。
そのような情勢に向かって、世界の潮流が流れ出している以上、逆らう理由はどこにもない。プライドが、どうのこうのと云う問題でもない。歴史に逆らうことは、戦争に突き進んでいった先人の愚を、再び繰り返すのみである。たかが尖閣諸島の為に、100年、200年先の日本と云う国を捨てるも同じことだ。筆者の思いとしてある準鎖国国家になり、慎ましく生きる国を目指したいのなら、それでも構わない。しかし、殆どの日本人は、そんなこと望んでもいない。であれば、好きも嫌いもあるわけがない。いずれ、ドル基軸は崩れるだろう。米国国債を抱えた日本はどうするのか?財務省の官僚たちに聞いてみたいものだ。
わが国の指導的立場に立っている人々は、アメリカ依存の70年を生きてきているので、利益相反な立場主義として、中国に靡く云々の前に、アメリカの顔色を見ると云う習性が、骨身に染みついているので、そのトラウマから抜け出すことは、容易ではない。残念ながら、日本と云う国には、大和の哲学が育たなかった。器用に、中国文化を取り入れることには熱心だったが、自分たちの哲学で生みだすより早く、利便性豊かなものに改変する器量が先走ってしまったようだ。まあ、日本と云う国の運命的問題かもしれない。
≪ 中国に破れた通貨マフィア AIIBは日本外交の試練の場に
英国はじめEU主要国が参加を表明し、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、先進国の協力を得て実現する流れが決まった。日本は「慎重姿勢」を採りつづければ取り残させる。遠からず参加へと方針は転換されるだろう。
「後からの参加」という外交敗北を反省するしかない。より大きな傷を負ったのは米国。「参加は慎重に」と呼びかけた欧州やアジアの友好国が次々と中国に引き寄せられた。市場として、投資先として、中国を無視できない。そんな現実が国際政治に投影したのである。
戦後世界の金融秩序は「通貨マフィア」と呼ばれる人脈のネットワークだった。国際通貨基金(IMF)と世界銀行を中心とする国際金融体制は米国とドルを基軸とする経済支配の装置でもあった。だからこそ中国の動きを「国際通貨体制に対する反逆」と見て警戒した。
中国は途上国を束ねて米国支配にくさびを打ち込んだ。AIIB誕生は大国興亡の歴史的転換点かもしれない。
■「爆買い」は欧州でも 世界経済を下支えする中国マネー
中国人の「爆買い」が話題になるのは日本だけではない。ロンドンでもパリでも中国人の旺盛な消費は、低迷する消費の下支えだ。観光客だけではな い。中国とビジネスを拡大することは成長戦略と意識されるようになった。ロンドンでは東京の臨海副都心に当たるテムズ川河口のドックランドをアジアビジネスの拠点にしようと、人民元で商売ができる中華ビジネスセンターが構想されている。
AIIBへの参加を表明した英国のオズボーン財務相は「欧州で真っ先に創設メンバーになる」と誇らしげに語った。戦国時代の合戦で戦端を切った「一番槍」にご褒美が与えられたように、他国が逡巡している時、真っ先に手を挙げて流れを作った国は厚遇される。 「英国は中国に恩を売り、引き換えにふさわしいポストを得る約束を取り付けたのだろう」。経済外交の現場で汗をかいた官僚OBは推測する。同じ「参加」でも真っ先に手を上げるのと、後から渋々加わるのでは、外交価値は天と地の違いがあるという。
フランスもドイツも同様だ。文化を売り物にするフランスは中国の富裕層に狙いを定めている。ブランド品や高級品を惜しみなく買ってくれるのは中国 の消費者。ドイツは工業製品を売りたい。日中関係が悪化している間にドイツは中国の市場を席巻した。外国車の首位を独走するのはフォルクスワーゲン。ベンツやBMWも中国市場で潤い、シーメンスは上海を手始めにリニア鉄道を売り込んでいる。膨大なインフラ事業はドイツにとって願ってもない商機である。
成熟経済の欧州にとって、やがてはユーロ圏とつながるユーラシアの勃興は他人事ではない。インフラ需要を取り込みビジネスの根を広げることは「国益」がからむ。
■日本が参加をためらう三つの理由 懸念と参加は分けて考えるべき
同じことが日本にも当てはまるが、政府は「中国主導のAIIBは問題が多い」と参加などとんでもない、といわんばかりだった。 「安全保障問題がない欧州と(尖閣などの緊張感を抱えた)日本とは事情が違う」
政府首脳が言ったとされるが、そんな発想は鉄のカーテンで仕切られた冷戦時代のものではないのか。経済のグローバル化は政治的対立を乗り越えて動く。ビジネスは儲かるところに出ていく。経済の一体化が政治的対立を無意味なものにするのがこの時代だ。
安倍首相はことあるごとに「中国に対話のドアは常に開いている」という。ところがアジアインフラ投資銀行では腰が引けていた。というより中国主導の運営を批判する急先鋒が日本だった。
理由は三つある。第一は米国の反対だ。資金不足の途上国に金繰りの面倒を見るのは米国主導で、と考えIMF・世銀体制への挑戦は許さない、という盟主意識が米国にある。
第二はアジアのインフラ建設は日本に主導権がある、という思いだ。マニラに本部を置くアジア開発銀行(ADB)の歴代総裁は日本人が務めてきた。インフラへの投融資はADBの仕事だ、中国の都合で第二アジ銀を作らせてたまるか、というわけだ。
第三は中国流の金融に対する不信。中国でまかり通っている人脈や政治がらみの融資をアジアに広げたら先進国が作ってきたルールを壊される、という 心配だ。主導権を握った中国がインフラ建設への融資を外交の道具にしかねない。審査も甘くなり、環境破壊のプロジェクトさえまかり通る恐れがある、というのだ。
一・二の理由が主だが、公然と主張するのは憚られる。もっぱら第三の理由を前面に掲げ反対を表明している。AIIBの問題点を整然と指摘したのがアジア開発銀行研究所長だった河合正弘東大公共政策大学院特任名誉教授だ。 「中国が主導する『アジアインフラ投資銀行 ビジョンもガバナンスもなき実態」という論文を雑誌「ウエッジ」(1月6日号)に掲載。(1)ビジョン・理念(2)ガバナンス(3)融資政策・条件(4)ドナー間の強調の4点が問題として書かれている。
私はバンコク特派員として3年間アジアを回り、中国の援助案件の現場を取材した。 例えばフィリピンの漁港整備の裏には米国の軍事基地に対する牽制があったり、中国に電力を送るラオスでのダム建設が流域住民の暮らしや環境を無視して作られるなど、乱開発や政治利用が少なくなかった。
河合レポートは現場経験のある専門家の指摘だけに納得いく指摘が多々ある。インフラ建設の銀行が中国主導でできるのは「ヤバいこと」と私も思った。だが、懸念があることと、参加することは分けて考えた方がいい。
■好き嫌いで外交はできない 大切なのは「実利」
中国は昨秋、日本に参加を要請してきた。アジアのインフラ開発を一緒にやりましょう、という誘いを「中国主導の銀行に血税を注ぐことはできない」と断るのは簡単だが、果たしてそれですむだろうか。
日本が加わらなくても中国主導の援助銀行はできてしまう。AIIBだけではない。「シルクロード基金」と名付けた中国版IMFも用意している。貿易黒字で膨れ上がった外貨準備などを使い総額400億ドルの基金を設け、資金繰りが危なくなった途上国に緊急融資する。アジア危機ではタイ、インドネシ ア、韓国がIMFからカネを借り、耐乏政策を強制された。米国支配のIMFに代わって中国が困った国に救済の手を差し伸べる体制を作ろうというのだ。
これから米国が金利を引き上げる。資金の収縮が起きグローバルマネーが途上国から引き揚げると、アジア危機のような事態が起きないとも限らない。途上国にとって国家の資金繰りは命綱である。日本が参加しなくても中国にカネがあるからには、途上国はなびく。
習近平がAIIBを提唱したころ日本では「中国と領土紛争を抱えるベトナムやフィリピンは参加しない」「先進国は参加しない」「韓国も米国との関 係から無理だろう」という観測が関係者にあった。ところがベトナム・フィリピンを含むASEAN10ヵ国は賛意を表明し、中国と張り合っているインドも加 わった。英国はじめ欧州勢が合流し、韓国も時間の問題だ。
好き嫌いで外交はできない。カネが中国に集まり、巨大な市場が中国にあり、世界の工場が中国なら、手を携えないわけにはいかないのだ。
G7諸国である英・仏・独・伊の参加は、日本から見れば「恥知らず」かもしれないが、大事なのは「実利」なのだ。AIIBに問題が沢山あることは 英国も承知している。だが外から文句を言っても始まらない。「我が国が加わることで健全な運営に寄与したい」と英国はいう。なぜ日本はこうした態度が取れないのか。外交力に自信がないからか。
■選択は「参加」しかない アジア諸国との絆を強めよ
前回の「世界かわら版・第80回」で AIIBを取り上げ「日本は参加し、中国に正々堂々と向き合え」と書いた。反応はおおむね「中国主導のAIIBに参加しろ、というのはずいぶん思い切った主張」というものだった。だが世界の趨勢を見れば、選択は「参加」しかない。あの時点で財務省は英国が参加するという情報は得ていた。しかしフランス・ドイツの動きは分からなかった。創設メンバーの締め切りである3月末を過ぎても、欧州勢と手を組んで参加条件を打診することができるのでは、と淡い期待を持っていた。
国内に渦巻く「反中感情」や歴史認識を巡る中国との綱引き、尖閣を巡る緊張関係に目を奪われ、世界の動きが見えていなかった。
最大の懸念は参加しても十分な発言権を持てない、という心配だった。発言の重みを決める出資比率は経済規模が目安になる。日本は中国の半分である。圧倒的な比率を持つ中国を抑えらえない、というのだ。
だが他の参加国まで中国の言うなりではない。ASEAN諸国は中国の突出を懸念して「日本はアジアでもっと力を発揮してほしい」と願っていた。インドも中国とは緊張感のある付き合いをしている。日本の出資は中国の半分でも、インドやASEANと手を組めば中国もやりたい放題はできないはずだ。膨張中国は周辺諸国にとって悩ましい問題になっている。領土問題で力の差を見せつけられたベトナム・フィリピンだけでない。ミャンマーもラオスも中国の膨圧に は手を焼いている。そうした国に日本に対する期待は強い。アジアを回っていてそう感じた。
問題は日本の姿勢だ。目が向くのは太平洋のかなたアメリカである。先進国の一員として上から目線でアジアを見てきた。国際会議でも日本は米国の子分でアジアの仲間ではない、という受け止め方をされている。
先進国側であるから中国の風下には立てない。そんな陳腐なプライドが、アジア諸国との交わりを妨げてきたのではないか。
中国主導のAIIBは日本外交が一皮むける試練の場になる。対等な目線で途上国と向き合えば、中国という鬱陶しい存在はアジア諸国との絆を強めてくれるだろう。
地球の軸は太平洋からユーラシアへと動いている。ワシントン情報に聞き耳を立て、ホワイトハウスの期待から外れない行動が立派な外交官という風土を改めるチャンスでもある。 ≫(ダイアモンドONLINE:国際―山田厚史の「世界かわら版」
PS: 韓国、アジア投資銀に参加=創設メンバーで発言力確保
【ソウル時事】韓国政府は26日、中国主導で年内設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、創設メンバーとして参加することを決定し、中国に通知した。企画財政省が発表した。トルコも同日、参加の意向を示しており、これで参加表明国は36カ国となった。
インフラ整備や建設に強く、日本と競争関係にある韓国がAIIBの創設メンバーとなることで、AIIBに距離を置く日本は難しい対応を迫られそうだ。
企画財政省は「参加により建設、通信、交通などのインフラ事業の経験が多い韓国企業の事業参加が拡大できる」と期待。「AIIBは韓国が設立時から参加する最初の国際金融機関となり、金融外交の影響力を増す上で重要な手段になる」と強調した。
韓国は、米国の意向を考慮し、参加に迷いを見せてきた。しかし、経済的に中国への依存が大きい現実から、インフラ整備で韓国企業の受注機会を逃すわけにはいかないと、実利を重視。英国やフランス、ドイツなど欧州の主要先進国が参加を決めたことで、中国が独占的に運営する懸念は緩和されたと判断し、参加を決めた。
また、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では発言力が小さいことから、両国が参加に慎重なAIIBの創設メンバーになり、発言力を確保することが得策と考えたもようだ。ただ、参加により、中国寄りの姿勢が一層濃くなり、米国の不満が強まる可能性もある。 ≫(時事通信)
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