16. 2015年3月17日 22:39:20
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2015.3.17 06:00 【プーチンの「戦争」クリミア併合1年】 核臨戦態勢「用意していた」 物流・観光を断つ「国境線」 http://www.sankei.com/world/news/150317/wor1503170007-n1.htmlウクライナをめぐる動き http://www.sankei.com/world/photos/150317/wor1503170007-p2.html 「クリミアがロシアに編入されていなければ、ウクライナ東部のような戦争になっていただろう」 ウクライナ南部クリミア半島の中心都市シンフェロポリ。ロシアのプーチン大統領(62)の肖像写真が掲げられた執務室で、戦闘服に身を包んだ「人民義勇軍」のトゥルチャネンコ指揮官(46)が語った。 腰に下げた拳銃にはショイグ露国防相の名が刻まれている。ロシアのクリミア併合の際の功績をたたえて贈られたものだという。 人民義勇軍は、併合の根拠とされた昨年3月のクリミア半島での住民投票や、議会などの施設占拠で重要な役割を担った自警団だ。執務室には義勇軍傘下にあった16中隊の隊旗があり、相当に組織された存在だったことをうかがわせる。 「われわれは(ウクライナの首都)キエフが準備していた挑発行為からクリミアを守った」。ソ連時代、アフガニスタンでの戦闘に加わったという指揮官は当時の行動を正当化した。 ロシア系住民が6割以上を占めるウクライナのクリミア自治共和国では、もともとロシアへの親近感は強かった。住民の多数派はロシアへの編入を歓迎している。給与が大幅に増えた公務員や、年金が3倍にもなった高齢者はなおさらだ。 1年前の住民投票の結果は、投票率が83%、ロシア連邦への編入賛成が97%と公表された。だが、40代の地元報道関係者は「編入に賛成という人は多数派だろうが、投票結果の数字は現実離れしている。プーチン氏の『作戦』がなければ、クリミアでは何も起きなかったはずだ」と断じる。 プーチン氏の「作戦」の全容は今もみえない。モスクワの軍事評論家、ゴリツ氏(59)は、クリミアにロシア軍の空(くう)挺(てい)部隊や特殊部隊の2〜3千人が投じられたと推定する。 そうした中、当の本人が15日、ロシア国営テレビが放映したドキュメンタリー番組「クリミア、祖国への道」のインタビューで、「作戦」の一端を明かした。 「それを行う用意はしていた」。質問に答える形で、核戦力を臨戦態勢に置く可能性があったと認めたのだ。 ロシアのクリミア併合宣言から18日で1年となる。プーチン露政権がウクライナに仕掛けた「戦争」の実相と欧米の対応を追った。 ウクライナ南部クリミア半島は昨年2月22日、首都キエフや西部の大規模デモで親露派のヤヌコビッチ前政権が崩壊して以降、激動の渦に巻き込まれた。 クリミアの中心都市シンフェロポリには、軍の所属を示す記章のない武装兵士や、ナンバープレートを外した軍用車両が突如出現。「ロシア軍ではないのか」といぶかしむ外国メディアの記者を横目に、この武装勢力は数千人とされる自警団の支援を受けて議会や政府庁舎、空港を占拠した。半島各地のウクライナ軍施設も封鎖し、放送拠点ではロシアのテレビ番組だけが流れるよう工作した。 混乱の中、クリミア自治共和国の議会は新首相を任命し、昨年3月16日の住民投票実施を決定。欧米諸国の矢のような非難の中、露主要テレビ局は、キエフで実権を握った「ファシスト」「民族主義者」が南部・東部への攻撃を準備している−とのプロパガンダ(政治宣伝)を続けた。 親欧米派に鉄(てつ)槌(つい)を下し、ロシアの黒海艦隊が駐留するクリミア南端のセバストポリ軍港を死守する。「作戦」は着々と進行した。 ■ ■ クリミア各地では「編入1周年」の各種行事が予定され、高揚感は今も続いているように見える。ただ、新たな現実に失望する人も少なくない。 最大の理由は、ウクライナ本土との間に事実上の「国境線」が引かれたことに伴う経済的孤立だ。ロシアとの往来や物流は航空機かケルチ海峡の船舶に頼るしかなく、大量輸送には耐えられない。ウクライナからの食料品や日用品の流通は減り、スーパーの棚には空きが目立つ。昨年のインフレ率は43%に上った。 主力の観光産業も、ウクライナ本土からの客足が遠のいたため、昨年の観光客は半分以下に激減。ウクライナは条件で折り合えないとしてクリミアへの淡水供給を停止し、農業分野も大打撃を受けている。 ■ ■ 主要企業の「国有化」など、親露派政権の横暴にも不満が募る。弁護士のジャプルタ氏(40)は「昨年8月の共和国新法で事実上、どんな資産も政権が強制的に取得できることとされた。ロシア憲法に完全に違反している」と憤る。 「地域にとって死活的に重要」「指導部が非効率的」といった理由で約250社がすでに「国有化」された。その実動部隊となっているのが、内閣府直属の団体として存続する「人民義勇軍」だという。 「少数派のウクライナ人やタタール系を中心に、ロシア編入を受け入れられない人は多い。数万人がクリミアを去り、残った人も口を閉ざすしかないと考えている」。前出の報道関係者はこう指摘し、以下のように続けた。 「不満が広がらないのは、ウクライナ東部のような紛争にならなかっただけ、ましだと考える人が多いからだ。実際は、クリミアでの出来事こそが東部の紛争を誘発したのだが」(シンフェロポリ 遠藤良介)
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