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2月19日の衆院予算委員会で安倍晋三首相に「格差是正」を訴える民主党の岡田克也代表=衆院第1委員室(酒巻俊介撮影)
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150314/plt1503141529004-n1.htm
2015.03.14
平成27年の春闘がまもなく佳境を迎えるが、昨年を上回る賃上げを実現させ、「経済の好循環」に結びつけられるかどうかが焦点だ。連合加盟の大手労働組合からは、前年実績を大きく上回る要求が次々と出ているだけに期待感も高まるが、春闘を見ていてつくづく不思議に思うのが民主党の存在感のなさだ。
春闘は労組にとって1年で一番大きい生活改善のための闘いの場であるだけに、連合が最大の支持母体である民主党にとっても力の見せどころのはずである。ところが春闘に関する政治の動きといえば、目につくのは安倍晋三首相をはじめ安倍政権の閣僚らによるものが圧倒的だ。
例えば、一昨年9月から労働界、経済界の代表らと「政労使会議」を開催して賃上げを要請し続けてきた首相は、今春闘に備えて昨年12月の衆院選直後に会議を開催し、賃上げに向けた「最大限の努力」を約束させる合意文書をまとめあげた。
さらに、1月の衆院本会議でも「賃上げの流れを今年の春、来年の春、再来年の春と継続させ、経済の好循環を全国津々浦々に届ける」と強調するなど、「官製春闘」という言葉がすっかり定着するほどの熱の入れ方を見せている。
もちろん、安倍政権がここまで賃上げにこだわるのには理由がある。
賃上げで個人消費や投資が増加すれば、企業収益が拡大。企業は設備投資や生産、雇用を拡大するとともに、一段の賃上げを実施。それがさらなる企業収益の拡大に結びつく−。
安倍政権としてはこんな好循環を描いているのだが、円安や昨年5月の消費税増税による物価高に賃金上昇が追い付かず、想定よりも景気がもたついているからだ。
実際、麻生太郎副総理兼財務相は「経済界に覚悟なり決意を示してもらわないと(アベノミクスは)成功しない。民間が内部留保だけを増やしていくのでは景気が良くなることはない」と指摘しているが、首相周辺の1人はこう解説する。
「15年以上続くこのデフレから脱却するのは並大抵のことではなく、政権としてできることは徹底してやっている。例えば、首相は1月3日に今年初めてのゴルフをしたが、一緒に回った相手は榊原定征経団連会長や御手洗冨士夫同名誉会長といった財界トップ。当然、今回の春闘も見据えていたのは間違いない。また、麻生氏や他の閣僚も財界人らと食事やゴルフを共にするなどして、公私にわたって賃上げを要請している」
これに対して、肝心の民主党は春闘や賃上げにどう対応しようとしているのか。
国会論戦の中で同党議員が賃上げについてただす場面は幾度かあったが、安倍政権のように特別な活動や働きかけなどをしているようには見えないのが実情だ。同党のホームページ(HP)をのぞいてみても、春闘や賃上げに関することをすぐに見つけるのは難しい。それだけに、果たして今回の春闘で大幅な賃上げが実現した場合、連合傘下の組合員たちは安倍政権や民主党に対してどのようなスタンスを取るのだろうか。
ある民間労組の幹部は「民主党の弱点としてよく安全保障政策がバラバラだという声を聞くが、それより何よりダメなのは経済政策だ」としたうえでこう危惧(きぐ)する。
「やはり組合員にとって大事なのは生活だ。こんな状態で大幅な賃上げが実現すれば、表面上は民主支持と言いながらも、実際にはアベノミクス万歳となり、組合員の民主離れがさらに進むことになるのではないか」
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)による2月の合同世論調査(21日、22日)によると、民主党の支持率は9.9%と自民党(41.2%)の4分の1にも満たない悲惨な状況が続いている。
民主党の細野豪志政調会長は「アベノミクスが失敗しているという認識は変える必要はない」と指摘しているが、ならばこそまずは民主党が目指す社会を示すとともに、アベノミクスに変わる経済政策を具体的に国民に提示することが肝要だ。でなければ、民主党の信頼回復はおぼつかないままだろう。(政治部編集委員 新井好典)
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