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震災4年 安倍首相会見詳報「被災した皆さんの悲しみとご苦労に、しっかりと寄り添い、復興に全力を挙げる」
http://www.sankei.com/politics/news/150310/plt1503100034-n1.html
安倍晋三首相は10日夕、東日本大震災から11日で4年を迎えるのを前に、官邸で記者会見した。詳細は以下の通り。
「あの東日本大震災から明日で4年となります。改めて大震災によってお亡くなりになられた方々に、心より哀悼の意を表したいと思います。愛する家族を失い、そして友を失い、被災した皆さんの今も癒えることのない悲しみと厳しい生活環境のもとでのご苦労に、今後もしっかりと寄り添いながら復興に全力を挙げていく。その決意を新たにしております」
「4年前、発災直後に被災地へと足を運んだ際、その被害の大きさにがくぜんといたしました。あのときの光景は今もこの目に焼き付いて離れません。そんなとき、宮城県の避難所で一人の女の子に出会いました。震災でひいおばあさんとお母さんを失った小野望美ちゃんは当時、小学校3年生でありました。私は望美ちゃんに『夢』と書いた色紙をおくりました。2年前、首相となって再会を果たしたとき、望美ちゃんは『小学校を早く建ててほしい』という夢を私に語ってくれました。そして昨年夏、その夢はかないました。新しく完成した長瀞小学校の校舎を、6年生になった望美ちゃんは誇らしげに私に紹介してくれました」
「住まいの再建は、この春までに1万戸の公営住宅が完成し、随時、避難していた皆さんの入居が始まっています。これからの1年でさらに1万戸の完成を目指します。高台移転も加速し、来年3月までに全部で1万戸分の宅地を整備してまいります」
「津波で大きな被害を受けた1万8千隻におよぶ漁船の復旧が完了し、水産加工施設はその8割で業務を再開しています。今年は震災前の7割を超える農地で作付けが行われる予定です。被災地を南北に貫く常磐自動車道も全線で開通しました。浜通り地域のおいしいお米や海の幸を消費地へと送り、観光客が行き交う大動脈として、復興の起爆剤となることを期待しています」
「福島では除染した土の中間貯蔵施設への搬入がいよいよ今週から始まります。受け入れを決断してくださった双葉町、大熊町の皆さんに改めて御礼を申し上げます。皆さんのふるさとを思う気持ちを胸に刻みながら、福島の再生に向けて除染を一層加速し、県内8万8千カ所に及ぶ仮置き場の1日も早い解消に取り組んでまいります」
「長期にわたって仮設暮らしを強いられている皆さん、厳しい状況におかれている方々が、まだまだたくさんいらっしゃることも事実です。そうした皆さんのお気持ちを考えると、大変つらい思いです。東京電力福島第1原発の廃炉、汚染水対策についても、引き続き国が前面に立ち、取り組んでまいります」
「そうした中でも一歩ずつではありますが、復興は確実に新たなステージへと移りつつある。月1回のペースで続けてきた被災地訪問で私はそのように感じています」
「福島に完成したばかりの復興公営住宅で、一人のご婦人が私にこのように語ってくださいました。『将来の不安はある。しかし、前向きに明るく生きていきたい』。大きな不安を抱えながらも懸命に今を生きる。こうした被災者の皆さんの気持ちにしっかりと寄り添っていく。そして必要な支援は全てやっていく。この安倍内閣の決意は、これからも揺らぐことはありません。地域の新たな絆づくりを支援します。長期にわたって厳しい避難生活を送っている皆さんへの見守り態勢を強化するなど、心の復興に一層力を入れてまいります」
「そして、生業の復興も今後さらに加速してまいります。今般訪れた岩手の大船渡では、再建された魚市場が震災前を上回る水揚げにわいていました。朝5時からの仕事は大変だと思いますが、『やりがいを持ってやれる仕事です』と一人の若者が語ってくれたことが、今でも強く印象に残っています」
「来年3月で5年間にわたった集中復興期間は終了いたしますが、次の5年間の新たな復興支援の枠組みをこの夏までに策定いたします。閣僚全員が復興大臣である。その思いのもと、内閣の総力を結集して策定作業に当たるよう、先ほど指示をいたしました。被災地の皆さんの自立を支援し、一人一人が希望に満ちた将来を描くことができるよう、政府としてこれからもできるかぎりの支援を行っていく考えであります」
「福島では、新しい復興拠点をつくり、まちづくりを進めてまいります。さらに、ロボットや再生可能エネルギーといった分野で、世界最先端の研究、新産業が生まれる地へと再生してまいります。あの原発事故から5年目を迎える今、被災者の皆さんの自立への道を後押しする。そのために、営業損害賠償の再検討とあわせ、事業や生業の再建に向けた支援策、大幅に拡充してまいります。こうした福島再生のための政策パッケージを早ければ5月に決定し、福島の自立に向けた将来像をこの夏頃までにとりまとめてまいります。復興はいまだ道半ばです。しかし、私達の歩みは、着実に前へ前へと進んでいます。そして、これからも前進あるのみであります」
「先週、岩手では、地元の皆さんが待ちに待ったJR山田線の復興工事が始まりました。その起点となる釜石は、先月、2019年ラグビーワールドカップの開催地に決まりました。海外からもたくさんの観光客がお越しになるはずです。そのときにはぜひとも、日本が誇る美しい三陸海岸を下から上まで満喫してほしいと思います」
「宮城ではこの春、地域の皆さんの足である石巻線、仙石線が順次、全線で運行を再開する予定です。福島の富岡駅には2年前に私も訪れました。駅の周辺には今もなお、津波と原発事故の爪跡が残されたまま、帰還困難区域を通るJR常磐線は、4年を経た今でも再開の見通しが全く立っていませんでした。今般、地元の皆さんの強い期待に応え、JR常磐線については浪江−富岡間も含めて、将来的に全線で運行を再開させる、その方針を決定いたしました。今後、順次、開通を目指してまいります」
「『外で遊べるようになって、みんなが元気になった』。真新しい長瀞小学校のグランドで、笑顔いっぱいの小野望美ちゃんがこう語ってくれました。この春、望美ちゃんは中学生になります。夢と希望を持って、新たなスタートを切ってほしいと願います」
「福島ではこの春、ふたば未来学園高校が誕生します。少し早いですが、152人の新入生たちの新たな船出を心から祝福したいと思います。双葉地域は今、原発事故から再び立ち上がり、力強く復興しようとしています。その姿を自らの目に焼き付けながら、先進的な教育環境のもと成長していく。3年間の学びの日々は、必ずこれからの人生において大きな糧となるに違いありません。子供たちは未来への希望であります。大いに学び、遊び、そして友達と交わりながら、福島のみならず日本、さらには世界をリードする人材へと成長してもらいたいと大いに期待しています。私からは以上であります」
−−福島第1原発への対応についてうかがう。福島第1原発をめぐっては、汚染水が排水路から海に流出していた事実が発覚し、東京電力による公表が遅れるなど、安全管理の体制について問題が指摘されている。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定も依然行われていない。こうした諸課題について、いつ頃までにどのようにして対処していくか
「東京電力の情報公開が不十分であったことは誠に遺憾です。十分な情報公開を徹底することにより、関係者の信頼関係を再構築し、また、排水路を通じた放射性物質の流出を抑制するための適切な追加対策を取るよう東京電力に指示をしています。安全面についても原子力規制委員会が変化する施設の状況に応じた能動的な規制を実施していきます。東電任せにせず、国も前面に立って廃炉、汚染水対策に取り組んでいく考えです」
「すでにわが国には、相当量の放射線使用済み燃料を負担しており、原発の再稼働の有無にかかわらず、高レベル放射性廃棄物の最終処分場が必要であることから逃げることはできません。このため、廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、これまでのやり方を見直し、科学的根拠に基づき、国から適否を提示するなど、国が前面に立って最終処分をしっかりと確保していく考えです」
−−来年はG7(先進7カ国)サミットが日本で開催されることになっており、仙台も会場候補地となっている。また、2020年東京五輪にあたり、首相は以前から被災地の復興をアピールしたいとの考えを示している。こうした機会で、復興の姿をどのように世界へ発信していくか
「来年のサミット開催地については現在、選定に向けて作業を行っているところです。本年6月にドイツでサミットが開催されるまでには決定したいと考えています。サミット開催地は警備や宿泊施設、会議場などさまざまな観点から総合的に検討していくことになりますが、開催地がどこになるにせよ、主要国のリーダーが一堂に会する来年のG7サミットにおいて、力強い復興を世界に向かってしっかりアピールできるよう、引き続き全力をあげて被災地の復興に取り組んでいく考えです」
「そして2020年のオリンピック・パラリンピックは何としても復興五輪にしたいと考えています。先月末にはIOCに提出した大会の基本計画では、聖火リレーの実施など被災地支援と復興の発信が盛り込まれたところです。今後、被災3県と政府、そして東京都、組織委員会などによる協議会で具体的に検討していく考えです。また先日、2019年のラグビーワールドカップが釜石市で開催されることが決まりました。これらの大会が復興の後押しとなり、被災地が見事に復興した姿を世界に向けて発信できる、そういう大会にしていきたいと考えています」
−−アベノミクスの目標はデフレから脱却することだが、世界的にデフレ傾向が強まってきたことは、この目標にどんな影響を与えているか。それに対して、どんな政策が必要か
「世界経済は全体として緩やかに回復しています。その中にあって、物価については原油価格の下落の影響によって、先進国を中心に伸びが低下していると承知しています。一方、日本においては、原油価格の下落は輸入物価の下落を通じて、企業収益や家計の実質所得を押し上げるという効果がありますし、経済にプラスの影響を与えると考えています」
「日本銀行は2%の物価安定目標を掲げ、大胆な金融緩和を実施しているところですが、その具体的な手法については日銀に委ねています。消費者物価について日本銀行は、原油価格の下落の影響が薄れるにつれて伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみていると承知しています。いずれにせよ、デフレ脱却、経済再生は、日本にとって最重要の課題です。引き続き三本の矢の経済政策によって経済の好循環を確かなものとしていく考えです」
−−集中復興期間が終了した後の2016年度以降の復興財源について、被災地自治体からは「全額の国費負担を継続してほしい」との声がある一方、政府内には自治体負担を求める声もある。首相の見解は
「まずは復興の加速化に重点化をしています。平成27年度予算の成立に向けて全力を尽くしていきたいと思います。その上で、28年度以降も、必要な事業は引き続きしっかりと実施していきます。財源も含めて、今後、そのあり方を検討していきます。28年度以降も私たちは止まらない。これが基本的な姿勢であります。被災地の方々の心に寄り添いながら、しっかりと対応していきます」
「来年3月で5年間の集中期間は終わりますが、次の5年間の新たな復興支援の枠組みをこの夏までに策定します。その中で、地方負担のあり方も含め、被災地の声に耳を傾けつつ、丁寧に検討していく考えです。復興は新たなステージに移りつつあります。被災者の皆さんの自立を応援し、政府としてこれからもできる限りの支援を行っていく、取り組んでいく考えです」
−−宅地を造成しても思った通りに人が戻ってこないという懸念が出るなど、復興事業の遅れから復興事業と住民のニーズのミスマッチが出てきているとの指摘がある。住民のニーズは今後も変わっていくことが予想されるが、大型公共工事と住民ニーズとの間のミスマッチをどう是正していくか
「課題点について、事業主体である市町村において、被災者の住まいに関する意向を調査した上で、整備する場所や個数を決定してきていると承知しています。事業には一定の時間を要することから、被災者の意向に変化があった場合にも、市町村において可能な限りその意向に添えるよう、調整等を行っていただいています」
「また、国としても、住民意向の把握や適切な規模への見直しについては、職員が市町村を訪問するなど必要な助言をしてきたところであります。こうした取り組みによって、実際に高台移転の全体の計画個数が変更されてきているところでもあります」
「確かに、時をへて被災者の方々のお気持ちが変わるということは、十分にあり得ることであります。そうした皆さんのお気持ちの変化にも、丁寧に、そしてそうしたお気持ちに寄り添いながら対応していく、調整していくことが大切だろうと思います。今後とも、市町村において高台移転事業の早期整備とあわせ、丁寧に被災者の皆さんの意向を把握しながら、事業を進めていただきたいと考えています」
[産経ニュース 2015/3/10]
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