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橋下大阪市長の圧力にさらされた関西ローカルの情報番組『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送番組ページより)
橋下徹が都構想批判の学者を出演させるな、とテレビ局に圧力!安倍との言論封殺コンビで次は…
http://lite-ra.com/2015/03/post-924.html
2015.03.07. リテラ
橋下徹という政治家がファシスト体質であることは知っていたが、まさかこんな露骨な報道統制までやってくるとは……。
「大阪都構想」を巡って橋下市長と京都大学大学院教授の藤井聡氏がバトルを繰り広げていることは、すでに本サイトでも取り上げた。藤井教授がメルマガで都構想の問題点を指摘すると、橋下氏がツイッターで藤井氏のことを「バカな学者の典型」「この、小チンピラ」などと罵っていたのだ。
ここまでならよくある“橋下ケンカ商法”だが、今回は藤井氏が出ているテレビ各局に対して「藤井を出すな」という“要請文”を出していることがわかったというから尋常ではない。これをすっぱ抜いたのは5日発売の「週刊新潮」(新潮社)だった。その日、新聞各紙が同誌の報道をもとに記者会見で橋下氏に質問すると、自らの指示で文書を出したことを認めた。
問題の文書は2通あって、いずれも松野頼久幹事長名で送られている。「週刊新潮」の報道によれば、一つ目は2月12日付で、〈藤井氏が、各メディアに出演することは、放送法四条における放送の中立・公平性に反する〉などと記され、続く16日の文書では、〈先日、皆様に藤井聡に関するお願いを送付させていただき=中略=藤井氏が、維新の会、大阪都構想に中立なわけがなく、番組内で虚偽の中立宣言をした藤井氏を出演させている放送局の責任は重大〉などと書かれていたという。
ちなみに放送法第4条は公平性をうたっているが、ここでいう「公平」とは、意見が対立するテーマでは両論を報道すべきという意味で、圧力をかけて一方の論者を出演させるなという意味では当然ない。これは明らかな言論封殺だろう。
しかし、橋下市長はこうした意見にも耳を貸さず、会見で「露骨に政治活動をやっている人がレギュラー番組に出るなんてありえない」「藤井氏は番組で自身のポジションを『中立』だって言っているから、中立偽装だ」「公にあのような政治活動にくみしているような、その人が本当に中立なんですか、と。これはやっぱり、放送局としては自律性できちっとチェックしないといけないと思いますよ」と、ムチャクチャな論理をわめきたてるばかりだった。
改めて指摘しておくが、藤井教授は都構想の問題点を指摘しているだけで、政治活動をしているわけではない。むしろ、政治活動をしながら、テレビに出続けてきたのは、橋下市長のほうだ。
都構想についても、橋下は『行列のできる法律相談所』(日本テレビ)や『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)などお気に入りの番組に出演しては一方的な賛成意見をベラベラ話してきた。
にもかかわらず、橋下市長は、藤井教授が関西ローカルの情報番組『正義のミカタ』(朝日放送)にレギュラー出演していることを問題視し、「出演させるな」と圧力をかけてきたのである。「中立」「公平」などと大義名分を持ち出しているが、ようは批判を封じたいだけ。ご都合主義もはなはだしい。
ところが、テレビ局側は、橋下氏の反撃をおそれて、自粛モードに入っているという。そもそも、橋下市長のターゲットになった『正義のミカタ』からしてそうだった。同番組は、今日、3月7日の放映で予定通り、藤井教授を出演させて「大阪都構想」を取り上げたが、明らかに橋下市長に配慮した番組になっていた。
何しろ、都構想反対が藤井教授1人なのに対して、賛成派は、高橋洋一氏に、佐々木信夫氏と2人をキャスティング。しかも、この2人は大阪市の顧問をつとめている橋下市長の完全な応援団だ。
内容も、前半は高橋氏に二重行政の解消、特別区設置で住民サービス強化という都構想のメリットを語らせ、後半は藤井教授がデメリットを語るという構成だったのだが、前半はほぼ高橋氏が言いっぱなしだったのに対し、後半、藤井教授が問題点を指摘し始めると、佐々木氏から逐一反論がはさまれる、という不公平きわまりないものだった。
また、橋下市長から「中立偽装」と指摘されたのを受けて、藤井氏が解説する前にMCの東野幸治が「藤井センセイは大阪と構想に反対ということでいいんですよね」と、わざわざその立場を念押しする始末だった。
「都構想を取り扱うのをやめたり、藤井教授をすぐにおろす、ということは露骨すぎるのでしませんでしたが、あれは明らかに橋下市長に配慮して、番組内容を変更したとしか思えない。実際、これからしばらくは都構想を扱うのを控えるらしいですよ」(朝日放送関係者)
他のテレビ局も同様らしい。関西の別の民放関係者はこう語る。
「住民投票までは藤井教授など反対派を出さないという方針を決めた局もあるようです。かといって、賛成派だけを出すわけにもいかない。それで、都構想問題についてつっこんだ議論をするような番組をつくらないようにしよう、という暗黙の了解ができている感じです」
まったくテレビ局のだらしなさにはいつもながら唖然とさせられるが、しかし、この橋下の暴挙を見て何か思い出さないだろうか。
そう、昨年末の衆院選で発覚した安倍自民党がNHKと在京テレビキー局の編成局長、報道局長らに〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉という“要請文”を送りつけた一件だ。差出人は〈自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井照〉となっているが、もっぱら安倍晋三総裁(首相)自身の指示で出されたものだといわれている。
内容は、大阪の文書と同じく「公平中立」をタテマエとした“お願い”だ。しかし、受け取った側は露骨な“圧力”だと認識した。なにしろ、“指示”内容が〈出演者の発言回数及び時間等については公平を期していただきたい〉〈ゲスト出演者の選定についても公平中立、公正を期していただきたい〉などとあまりに具体的だったからだ。とくに分かりやすかったのが〈街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたい〉という要求だ。この一文には、安倍首相の個人的な“恨み”が隠されていた。
というのも、解散表明のあった昨年11月18日、TBSの『NEWS23』に出演した安倍首相は、VTRの街頭インタビューで一般国民が「景気がよくなったと思わない」「全然アベノミクスは感じてない」と答えるのを見て、「(テレビ局の)皆さん、(人を)選んでおられる」「おかしいじゃないですか!」とキレまくり、そのことが逆にネットで批判されるという一幕があったからだ。この問題はつい最近、3月3日の衆院予算委員会でも取り上げられた。
民主党の大串博志議員がTBSでの“事件”があった2日後に問題の“要請文”が出されたことを指摘して、「安倍政権では国民に情報が開示されていないのではないかという疑念がある。メディアに対していろんな圧力があるのではないか」「個別の番組の編集をおかしいというのは言論弾圧ではないか」と追及したのだ。すると安倍首相は例のごとく色をなしてこう反論した。「その場でおかしいと思ったから国民の前で言った。圧力ではない。私の考えを述べるのはまさに言論の自由だ」「前提として、いったい何人に聞いたのか。不偏不党な放送をしてもらいたいのは当然だ」「選挙を前にしてイメージ作りは困る」「(発言は)何の問題もない」。
しかし、『NEWS23』の放映内容は不偏不党どころか、世論調査よりアベノミクスを評価する意見の比率が高いもので、安倍首相の怒りは明らかにイチャモンとしか思えないものだった。
「安倍首相の性格を考えると、おそらく、テレビで自分がムキになってしまったことを正当化するために、側近に要請文を出すことを命じたんじゃないでしょうか」(政治評論家)
だが、この理不尽なイチャモンにもかかわらず、自民党の“要請文”は功を奏した。なかでも〈過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い=中略=大きな社会問題になった…〉と暗に名指しされたテレビ朝日への“萎縮効果”はてきめんだった。直後に放映された解散総選挙をテーマにした『朝まで生テレビ!』では、出演の決まっていた荻上チキ氏、小島慶子氏ら評論家、文化人を「公平性が担保できない」としてドタキャンする事態が起きた。現場は相当抵抗したが、結局、局の上層部に押し切られ、政治家と司会の田原総一朗氏、局コメンテーターだけの出演になった。
こうした圧力行為が「イスラム国」人質事件での異様な“安倍批判封じ”につながったことは明らかだ。人質事件発覚の翌日はテレビのみならず新聞までが「安倍政権の人道支援は不可欠。毅然として向き合っていくべき」「(安倍政権の人道支援は)『イスラム国』との戦闘に力点を置いた支援ではない」といった論調で埋め尽くされた。テレビでは政府の対応に少しでも疑問のコメントを挟もうとすると、すかさずMCが打ち消すという始末だった。
ジャーナリストの常岡浩介氏は「イスラム国」と独自のルートを持っていることから、当初、テレビ各局から引っ張りだこだった。ところが、番組内で「人質は救出できたはずだ」という発言を繰り返していたため、本番前にディレクターから「あの発言はやめて欲しい」と言われたという。「それでは僕はしゃべることがありません」と反論すると、「でしたら、お帰りになってください」とドタキャンされた。別のキー局の朝番組では露骨に「政権批判はやめて欲しい」と言われた。生放送だったので、そのまま政府の対応を批判すると二度と呼ばれなくなったという。常岡氏はこうした経緯をツイッター等で明らかにしている。
そして、テレビ朝日の看板番組『報ステ』で堂々と政府の対応に問題アリと批判した古賀氏は番組を“降ろされる”ことになった。テレビ・新聞から政府批判が消えたおかげで、2人の人質救出に失敗したにもかかわらず、安倍政権の支持率が下がらなかったどころか、世論調査では政府の対応を「評価する」と答えた人が大半を占める結果となった。現地の対策本部で指揮をとった中山泰秀外務副大臣をはじめ、誰一人責任をとっていないのに。
おそらく、橋下首相は安倍政権の一連の圧力が大きな効果をあげているのを見て、それをお手本にしたのではないだろうか。会見で恫喝し、つるし上げるよりも、「中立公平」を大義名分に政党名で文書要請したほうが、効果をあげられる、と。ひょっとしたら、直接、安倍首相からアドバイスを受けている可能性もあるかもしれない。
いずれにしても、本サイトでも指摘したように、安倍首相と橋下市長はここにきて急接近しており、次の参院選では、橋下市長が維新の党をわって「憲法改正」を旗印に自民党と合流する可能性もささやかれている。
ということは、つまり、この「言論弾圧コンビ」が日本を牛耳るということだ。憲法の国民投票を前に、テレビに護憲派の学者が出演するだけで、安倍と橋下が「政治活動をしている人間をテレビに出すな」と吠え、メディアは権力の報復をおそれて改正反対の意見を自粛する──。そんな恐ろしい未来が、すぐ目の前までやってきている。
(野尻民夫)
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