http://www.asyura2.com/15/senkyo181/msg/130.html
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元外務官僚の宮家氏も、わかってはいるのだろうが、見当違いの分析をしてみせている。
マイナーなメディアや阿修羅のようなネットサイトなら、ISIS=「イラクとシリアのイスラム国」は米英仏の国家機関が育成してきた便利なアセットという事実を語ることもできるが、テレビや一般紙のような主要メディアでそのようなことを語る勇気ある評論家はいない(いたとしても、使って貰えないか、使われなくなる)ということだ。
多くの人が自分の判断や価値観より地位・収入・名誉のほうを重視するのはしかたがないことだから、自分の頭で考えて判断するしかない。
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IS人質殺害事件:日本国内評論を総括する
日本は間違いなく標的の1つ〜一神教の研究(その9)
2015.03.03(火) 宮家 邦彦
Islamic State(以下IS)による日本人人質殺害事件からもう1カ月経った。この間日本のマスコミでは多くの「中東情勢に詳しい」専門家・評論家がISにつき様々な「見識」を開陳してきた。恥ずかしながら、かく言う筆者もその1人だ。だからこそ今も毎日自問している。我々は本当にISの実態を知っているのか?
ISのことは実は誰もよく分かっていない
そもそも日本人でISを正確に理解している専門家が何人いるかは疑問だ。
突如生まれたこの「IS評論」なるマーケットに、アラビア語・非アラビア語の中東専門家からイスラム教に詳しい宗教研究者・歴史学者、さらには英会話すら危ない独立系ジャーナリスト・戦場カメラマンまで有象無象の「有識者」が参入した。
あまり喋ると嫌われるぞと警告されたが、ここは真実を語らざるを得ない。
申し訳ないが、中東が専門でない日本人国際政治学者等のIS評論は大半が再利用、すなわち外電と欧米・日本の中東専門家の言説をもっともらしく繰り返すだけだった。もちろん仕事だから、彼らも何か喋る必要があったのだろう。
一方、中東専門家も玉石混交だった。
中東全般なら何とか説明できるが、ことISとなると結構的外れの論評が目立った。やはりアラビア語の能力は重要だ。筆者も人のことは言えないが、ISが極めてイラク・アラブ的現象であることを考慮すれば、非アラビア語の専門家にISのフォローは難しいのではないか。
イスラム法学者にISは分からない
それではアラビア語の堪能なイスラム研究者なら大丈夫かというと、そうでもない。ISはイスラム教を悪用した過激派集団だ。されば、こうした集団は「テロリスト」として、神学的・法学的にではなく、政治学的に分析すべきだろう。
イスラム教神学の知識は時に参考となるが、ISの深い理解にはあまり役立たない。
イスラム法の専門家ではないが、イスラム教徒として現地シリアに入った経験を持つジャーナリストもいた。しかし、中小過激集団の集合体であるISに一枚岩の団結があるとは思えない。現地からのリポートはあくまで「ある場所のある時点でのISの実態の一部」に過ぎないと割り切るべきだろう。
それでは、いったい何を信じればよいのか。今筆者が最も注目するのは中東調査会の高岡豊研究員率いる「イスラーム過激派モニター班」だ。
彼らは10年以上前からアルカイダなど過激派の各種ウェブサイトを丹念にフォローしてきた。こうした専門職人集団にこそより多くの資源を投入すべきだと思う。
これ以上喋ると多くの仲間や元同僚に嫌われそうなので、ここからは過去1カ月間日本国内で流された多くの言説を一つひとつ検証していきたい。もちろん、いつもの通り、以下はすべて筆者の独断と偏見だ。今後ISのような集団に犯罪を繰り返させないためにも、あえて申し上げる次第である。
ISに身代金を払えば解放できたのか
内外マスメディアはISの目的として、(1)身代金奪取、(2)人質奪還、(3)戦士勧誘などを挙げていたが、これは違う。ISの目的は「聖戦継続」による「イスラム国家樹立」だ。
この目的遂行のため、彼らは敵に最大限の衝撃と動揺を与え、敵対勢力を分断・弱体化させるべく、上記の戦術的手段を組み合わせてきた。
その意味で、ISは一貫した戦略の下、周到に準備しつつ、臨機応変にジハードを継続している。このような相手と「交渉」、「話し合い」を行う余地は極めて少ない。
人質がオレンジ色の囚人服を着た時点で戦いは半ば敗北なのだ。今回もISは比較的早い段階から人質の殺害を考えていた可能性が高い。
首相カイロ演説が人質殺害の引き金か
日本人専門家の一部、特にシニア世代には、「ISの危険性や手法は周知の事実であり、こんな時期に中東を歴訪し、イスラエルにまで甘い顔をして、不注意な発言をした安倍晋三首相に事件の全責任がある」との批判がある。
要するに、彼らの主張は「日本政府は身代金で解決すべきだった」ということらしい。
それでは問うが、この時期に安倍首相が中東訪問をキャンセルし、スピーチでISIL(Islamic State of Iraq and the Levant=イラクとレバントのイスラム国)との闘いなる語を使わなければ、今回の事件は起きなかったのか。
身代金を払えば、日本人が再び狙われる恐れはないのか。
残念ながら、こうした言説は日本の一部旧世代中東専門家の知的限界を露呈しているようだ。
シリア渡航は無謀だったのか
極悪非道テロの犠牲となった日本人人質2人のことはあまり悪く言いたくない。しかし、あえて申し上げれば、何度もシリアに渡航した割には、中東・アラブの歴史、気質、言語、軍事などに関する基本的知識が不十分にも思えた。少なくとも、単独で現地に入ったことはプロフェッショナルらしくないだろう。
他方、世論の側にも問題はある。
2004年の日本人人質事件の際は、保守層を中心に「自己責任論」、「自業自得だ」といったバッシングが吹き荒れた。その結果、全体としては海外における日本国民の生命・財産を守るための真剣な議論が行われなかった。今回も同様のことが起きつつあるのではないか。
日本は初めてテロの対象になったのか
今回特に目立ったのは、「日本が初めてテロの対象となった」という認識だ。
だが、2004年10月当時イラクのアルカイダに斬首された若者は日本人だ。過激派にとって日本は英米とともに、既に11年前からテロの対象となっていた。そのことは2013年1月のアルジェリア事件でも再確認されたではないか。
それにもかかわらず、2004年以来、日本内外の日本人の警備は十分か、仮に不十分ならば、どこまで警備を強化すべきか、そのために国内では基本的人権の一定の制限を含め、如何なる法的措置をとるべきか、などについてはほとんど議論されてこなかった。こうした傾向は今もあまり変わっていないようだ。
ISは軍事的に強いのか
現在ISは窮地に陥りつつある。少なくとも、昨年6月にイラク北部のモスルを陥落させた当時の勢いはない。
その後の米国主導の有志連合による空爆、イラク正規軍の反撃、原油精製施設の破壊や原油安による密輸収入激減などにより、軍事的にはかなり苦しい状況にあるだろう。
例えは悪いが、世界最強の米軍が大リーグクラスの野球チームだとすれば、イラク軍やシリア軍はマイナーリーグ並みであり、IS軍に至っては草野球レベルの戦闘能力しかない。
それでも、IS軍がイラク北部とシリア西部を支配できるのは、イラク正規軍とシリア正規軍が本来の能力を発揮していないためだ。
バラク・オバマ政権が今後、イラクはともかく、シリアに米地上軍を長期にわたって投入する可能性は低い。従って、ISに対抗できる大リーグ級の対戦相手は存在しない。それどころか、イラク・クルド武装組織「ペシュメルガ」を除けば、今のところシリアとイラクにはマイナーリーグ級の相手さえいないのだ。
ISは軍事的にも政治的にも当分生き延びるだろう。
現在イラク軍は米軍・ペシュメルガとともにモスル奪還作戦を準備しつつあるようだ。しかし、仮にイラク正規軍がIS部隊をイラク北部から放逐できたとしても、シリアの正規軍がISを掃討することは当面不可能だと思われる。
されば、日本人に対するテロは今後も続くだろう。それは可能性の問題ではなく、時間の問題である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43063
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