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美濃加茂市長に無罪判決――なぜ検察は「敗北」したのか?
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2015年03月05日 21時55分 弁護士ドットコムニュース
浄水プラントの学校への導入をめぐり、受託収賄などの罪に問われていた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長に対し、名古屋地裁(鵜飼祐充裁判長)は3月5日、「無罪」の判決(求刑懲役1年6月・追徴金30万円)を言い渡した。
裁判では、贈賄側とされた浄水設備会社の中林正善社長が「2度にわたり、計30万の現金を渡した」と証言し、検察も「中林社長の供述は信用できる」としていた。しかし藤井市長は「現金を受け取っていない」と真っ向から否定し、一貫して無実を主張していた。
この裁判で、藤井市長を起訴した検察が「敗れた理由」はどこにあったのだろうか。また、今回の裁判所の判断をどう評価すべきだろうか。元検察官の落合洋司弁護士に聞いた。
●裁判所は「供述の変遷」を問題視
「判決についてこれまでに接することができた情報によると、無罪になった理由は、贈賄したとされる人物の供述に、裁判所が強い疑問を持ち、証言の信用性を全面的に否定したことによるものと考えられます」
裁判所はどういう理由で、中林社長の証言が「信用できない」と判断したのだろうか?
「判決は、供述の不自然さ、不合理さを、さまざまな点において指摘しています。
当初は、現金授受の場に同席した人物がいたと供述していなかったのに、後からそう供述するようになったことなど、捜査段階から公判段階に至るまでの『供述の変遷』が、相当に問題視されています。
法廷において、贈賄側の供述を裁判官が聞き、その供述態度も含めてかなり疑問があるという心証を得たことには、かなり重いものがあったと言うべきでしょう」
●逆転有罪になる可能性は「疑問」
今回の無罪判決を受けて、検察が控訴する可能性もあるとみられるが、その点はどうだろうか?
「今回の判決は、事件の証拠について『有罪の根拠にできない』とする、種々の問題点を説得的に指摘しています。
今後、もし名古屋地検が控訴したとしても、逆転有罪判決が得られるのか、疑問を感じます。
ただ、これは、高裁の裁判官が、この事件の証拠をどう評価するかにもかかっています」
●贈収賄の捜査手法の見直しも
今回の判決は、今後の警察・検察の捜査に何か影響を与えるだろうか?
「今後、無罪判決が確定すれば、捜査機関が贈収賄事件の捜査に及び腰になって、立件される事件が減少している最近の傾向に、さらに拍車がかかる可能性が高いのではないかと思います。
捜査能力を向上させる努力が求められるとともに、たとえば外国で行われているような『おとり捜査による立件』を可能にするなど、贈収賄事件の捜査や立件の手法も、抜本的に見直すべき時期に来ているのかもしれません」
落合弁護士はこのように指摘していた。
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/yjochi/
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