http://www.asyura2.com/15/senkyo180/msg/782.html
Tweet |
大阪都構想を進める橋下徹市長と松井一郎府知事 photo Getty Images
橋下徹市長vs.藤井聡・京大大学院教授で盛り上がる「大阪都構想」。メリットは「シロアリ駆除」ができることではないか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42312
2015年03月02日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
2月9日の本コラムで「橋下徹・大阪市長vs.内閣官房参与の大阪都構想めぐるバトルが、案外面白い」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42011)を取り上げたら、当事者の一人の藤井教授から丁寧なコメントがあった(2月11日 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42056 と2月27日 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42289 )。
今回は、藤井教授と橋下市長の両者の意見がどうして異なるのかを明らかにしよう。筆者は東京生まれ、東京育ちで部外者だ。藤井教授も大阪市民でないが、関西の人なので、筆者としては、やはり聡明な両者による議論を期待したい。それが、5月17日に予定されている住民投票のために、重要な情報提供になるはずだ。
■橋下市長vs.藤井教授
2月27日の藤井教授の論考は「大阪都構想のデメリット」とある。そこで、ここでは「大阪都構想のメリットとデメリット」を明らかにしよう。もちろん、メリットといっても見る立場によってはデメリットに見えることもあるので、読者はよく留意していただきたい。この意味では、今回のコラムは、藤井教授の見解と大阪都構想の論点整理でしかない。なお、引用する資料は、上にでている論考の中で引用されているものだけばかりであるので、あえて繰り返さない。
藤井教授は、次の興味深い喩えを出している。
『一つ屋根の下で暮らしている五人家族がいたとしましょう。この五人が、今度からバラバラに暮らし、それぞれアパートに住むようになったとしましょう。そうなると、トイレ、台所、風呂、テレビや洗濯機等、全てを共同利用していたのですが、これからは、それぞれのアパートに、トイレ、台所、風呂などを作らなければならなくなります。それが、「独立」というものですから当たり前です(大阪市解体、5つの特別区の設置、とは、こういう風に解釈することもできるのです)。』
『つまり「都構想」というものは、行政の仕組みから考えれば、「五人家族で一つの家に暮らしていた」(現状の大阪市)のに、これからは「5つのアパート」(特別区)と「1つの共同利用のための家の一部」(一部事務組合)との6つを利用して暮らすようにする、という話なわけです。』
この喩えを使って、大阪都構想をみよう。ただし、この喩えには、@五人家族で暮らしていて独立するところにやや正確性を欠いていることと、A大阪府が出てこないことの二つの留意点がある。
■「役人区長」が「公選区長」になる
まず、@の独立であるが、
藤井教授は
『トイレ、台所、風呂、テレビや洗濯機等、全てを共同利用していたのですが、これからは、それぞれのアパートに、トイレ、台所、風呂などを作らなければならなくなります』
という。
既に大阪市には、行政区があるので、日常生活に必要なトイレなどは各人が備えていたといえる。五人が『独立』するのはそのとおりだが、それまで、一家の長の顔色をうかがいながら、同じ行動をとっていた五人は、立派な成人となって、『独立』する。それぞれの「アパート」もはじめは同じだろうが、将来はそれぞれ特色を持っていくだろう。
大阪では、小・中・高校と市立が普通だろう(私立は別)。東京人の筆者からみると、小・中学校は区立で、高校は都立というのが当たり前だ。小・中学校に関することはあまりに細かすぎる。これをすべて都知事なんて扱えるはずない。では、23区を一つの東京市にしたらどうだろうか。戦前は東京市だったので、家で整理していると古いモノで「東京市」というがたまにでてくることもある。
しかし、今は23区も大きくなりすぎて、小・中学校の細々とした案件を一人の「東京市長」に任せることなんてできるはずない。そこで、23区に分けている。今では、人口5万人の千代田区から人口90万人の世田谷区まで大きな格差がでているが、それでも人口910万人で一人の東京市長にすべきとは思えない。
市を分けて特別区(基礎的自治体)にするのは、意味がある。公選区長になるからだ。東京なら投票に行っていれば区長の名前くらいは知っている。大阪は行政区なので、役人区長で名前なんて知らない。公選区長のほうが役人区長よりマシだろう。
ただし。この点は立場によって異なる。選挙より官僚機構のほうがいいという人は、公選区長はデメリットと思うだろう。藤井教授はこの立場だろう。橋下市長はそうでない立場なので、公選区長をメリットと思っている。
この点を少し具体的な問題で整理しておこう。
■「幼稚園の民営化」は市長選ではなく区長選の争点に
大阪では、幼稚園民営化が、市のベースで行われている。東京では、区のベースで行われきたので、区立幼稚園が多い少ないは区地域によって異なっている。私立比率の平均は74%だが、すべて区立で比率0%の中央区からすべて私立で100%の大田区までバラバラである。東京23区における幼稚園の私立比率は以下の図のとおりだ。
これまでは全体としては幼稚園の民営化の流れであったが、それも区によって異なっており、一応結果が上のとおりで、幼稚園の民営化の議論はほとんどない。今では、幼稚園ではなく、保育園の民営化の議論がそれぞれの区において行われている。身近な問題なので、区長選でもしばしば争点になっている。
大阪市では、ようやく幼稚園の民営化が活発に議論されているようだが、市立という枠内での議論なので、区立をどうするかという議論になれてきた東京人にとっては画一的に見える。そのようなものは、地域ごとに事情が異なるので、区のレベルで責任を持って議論すればいいのではないか。市長選挙の時に争点としたくても大阪市全域で画一的な対応しかできないのではないか。
いずれにしても、幼稚園などの身近な問題については、一人の市長より身近な五人の区長を選挙で選んだ方が、住民はより大きな満足が得られるはずだ。
■大阪府立大学と大阪市立大学の統合
次に、Aの大阪府が出てこない話を考えてみよう。
藤井教授の喩えをそのまま使えば、五人家族が暮らす一つ屋根の家(大阪市)には、隣家(大阪府)がある。この隣家(大阪府)は、五人家族が暮らす家(大阪市)とそっくりだ。この隣家(大阪府)は、その周りに住んでいる家族の面倒もみている。例えば、本などを収納する勉強部屋(高校・大学)、急病の時のために安息部屋(病院)がある。
ところが、五人家族が暮らす家(大阪市)にも、勉強部屋(高校・大学)や安息部屋(病院)があった。勉強部屋(高校、大学)や安息部屋(病院)はそれぞれの家が持っていることでムダがあった(二重行政)。例えば、安息部屋のベッドは二つが必要であったとしても、一括で2台発注すれば割引があるのにそれぞれの家が別に発注するので高くついていた。
東京であれば、高校・大学、病院は区立ではなく都立であるのは当然なので、区と都の二重行政はない。ところが、大阪では市と府が同じ運営をして争っている。東京人からみれば、二重行政であるが、大阪の人はそれを当然のように感じている。
ある関西人にいわせると、大学は二重でもいいという。それだけ知識が増えているからだという。筆者からみると、市立大学と府立大学が統合されても、当面、先生の数は二つの大学の合計のままでもいいと思う。ただし、間接部門の教務課職員は合理化できるだろう。それと調達部門も合理化でき、調達コストは軽減されるはずだ。そうすれば、少ないコストで知識量は減らさないで、大学経営は可能だ。
■「都構想」是認なら市営地下鉄民営化へ弾み
ムダはそれだけでなかった。本来であれば、周りの家族の面倒を見るべき隣家(大阪府)にあるべき輸送自動車(地下鉄)も五人家族が持っていた。輸送自動車は、周りの家族が使ってこそ意味がある。しかし、五人家族の家だけで使うので非効率だった。
大阪市の地域は地下鉄運営では狭すぎる。おまけに、東京では当たり前の私鉄間との相互乗り入れがない。新幹線で新大阪に行くと市営地下鉄の駅は、橋下市長になってから格段によくなったが、これを民営化して、さらによくしたいという。
市営地下鉄の民営化そのものは、大阪都構想のコアではないが、大阪市が大阪府ではなく、それを飛び越えて民間に移管するという意味で、大阪都構想の考えかたをさらに進めたものといえる。東京では、都営地下鉄と民間のメトロがあるが、大阪では民間のみにしようとするものだ。
大阪都構想が住民投票で是認されれば、市営地下鉄の民営化に弾みがつくだろうし、否認されれば民営化はあり得ないだろう。
■二重行政解消にメリットはあるか
いずれにしても、ここでのポイントは、二重行政についてだ。藤井教授は、二重行政はないとか、それでもムダではないという立場であろう。藤井教授は大阪市からカネが2200億円出て行くのが問題としているが、ここは大阪市と大阪府の二重行政をやめて大阪府に移管する部分だ。それには当然カネが伴うが、これを問題というのは、二重行政でもいいと言うことだろう。
橋下市長は二重行政をいかに少なくするか、個別に二重行政を直すより、大阪都構想で一気に行う方が望ましいという立場であろう。
二重行政の解消について、藤井教授のようにメリットがないと思っている人は、大阪都構想を実現するために諸コスト(これは移行の初期コストがほとんど)ばかりが目につく。それに、移行当初の「1つの共同利用のための家の一部」(一部事務組合)は気になる存在だろう。
一方、橋下市長のように、二重行政の解消のメリットがあると思う人は、当初はコストばかりだが、例えば間接部門を統合すると、徐々に人件費や経費が節約できるので、将来コストが継続的にカットできること重視する。
2200億円もはじめこそ、その金額であるが、二重行政に関わる部分なので、将来的には減っていくはずだ。そこで浮いたカネは府や特別区で新たな事務に回せる。この観点から見れば、当面は一部事務組合がっても、長期的には東京のようにそれもスリム化するはずなので、たいした問題にならない。
要するに、大阪都構想への移行について、藤井教授は区長公選や二重行政排除のメリットは乏しく初期コストを重視するが、橋下市長は区長公選や二重行政排除の長期メリットを考えれば初期コストは些細なモノと考えるので、両者の意見が異なるのだ。
■「シロアリ駆除」という都構想のメリット
なお、大阪都構想について、筆者の見立ては、地域における大規模な行政改革である。市の業務を府へ移管するので、同時に市の既存業務の見直しが行われるからだ。実は、この影響力が意外に大きいと筆者は考えている。
実は行革一般が嫌われるのは、筆者の経験によれば、業務に見直しの結果を受ける公務員より、その周りにいる人たちのほうだ。例えば、業務の見直しで補助金の流れもまったく変わる。
大阪市の業務を5つの特別区と大阪府に移管する場合、大阪市にコバンザメのようにくっついていた人たち(シロアリ)は、5つの特別区と大阪府にくっつかなければいけない。その人たちにとって、そこは死活問題なので、既得権を守ろうとして、必死に抵抗するのだ。
藤井教授の喩えをまた使えば、五人家族がばらばらにアパートに引っ越すとき、家は住む人がいなくなり、いずれ解体される。そのとき、住処がなくなったシロアリ(市に群がっていた既得権者)が大量にあぶり出される。これは大変な出来事だ。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK180掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。