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池上彰氏に陰謀論的解説や反近代的視点を求めはしないが、「テロなき国づくり支援こそ日本の役割」として、「その第一歩は、経済援助や人道支援を続けながら、紛争や対立の芽となりうる貧困や格差の問題を解消していく以外にないだろうと思います。直面するテロの危機に備え、リーダーシップを発揮していく道は、テロを力で封じ込める手法ではなく、テロを生まない国づくりに貢献する手法という選択肢もあるのだということです」というのは、ちょっと利口な高校生なら思いつくあまりに表層的なものでいただけない。
IS−IS(イラクシリアの「イスラム国」)のように金回りがいい組織もあるようだから戦闘員を札ビラで釣ることもあるとは思うが、基本的に、生活困窮者は、家族の日々の暮らしをなんとかやりくりすることで精一杯だから、過激主義に身を投じるような余裕はない。
また、過激主義に身を投じたムスリムは、ISISなどの主張やプロパガンダを確認すればわかるように、貧困や経済格差の問題にこだわっているわけでもない。
70年頃に終焉を迎えた日本や欧米の過激左翼運動は、確かに、貧困や経済格差も重要なテーマになっていたが、過激左翼運動に身を投じた多くは、相対的に恵まれた経済条件で成長を遂げてきた“高学歴”の人たちである。
20世紀までのできごとはともかく、2001年の9.11を契機として激化した“イスラムと欧米の対立”という問題にしっかり向き合わないまま、テロを減らすとかなくすための方策を語ってみても戯言になってしまうだろう。
陰謀論ではない立場で少しでもテロを減らしたいと願っているのなら、米国を筆頭に、日本も含むが、米国政治的指導層の叫び声以外に“個別的自衛権や集団的自衛権の発動根拠がない”アフガンとイラクへの侵攻軍事作戦に参加したり、それらの侵攻行動を支持したりした国々が、世界に向け、何を誤ってしまったのかをきちんと説明した上で、きちんと謝罪することがそのための出発点と主張すべきである。
(IS−ISなど米英仏を中心とした西側諸国によって創設・育成された過激派組織の“インチキ信心者”上級幹部には通用しないが、過激派に引きずり込まれかけている信心深いムスリムや西側諸国の非道にいらつきながらも普段の生活に忙殺されている善良なムスリムをテロから遠ざけるためなら有効な手立てになると確信している)
根拠レスのままアフガニスタンやイラクに侵攻し、殺戮した民間人が30万人とも言われるほどの暴虐非道の軍事作戦を今なお継続し(自国兵士の手をできるだけ汚さず実質的に占領している国の国民にやらせるかたちに変わってきたが)、国家や共同体まで破壊し欧米的価値観にすり寄った統治システムを構築していることに、世界の“信心深い(心ある)”ムスリムは怒りを募らせてきたのである。
そのような怒りのマグマが、一部のムスリムを過激派に向かわせている温床なのである。
西側諸国の政治的指導者を謝罪に踏み出させるのは難しいが、西側諸国がまっとうなムスリムなら心が張り裂けそうな暴虐を行ったり支持したりしてきたということは、過激主義に走る人々のことを論じたりイスラム世界のことを考えたりする上で前提となる不可欠の認識である。そして、そしてそのような認識を西側諸国の多くの人々が持つことにより、「イスラムと西欧の対立」の様相も大きく変わり始めるだろう。
“西側諸国”が9.11以降に行ってきた軍事行動や占領政策を脇に置いたまま、イスラム過激派のテロは悪とか、テロをなくすためには経済援助や人道支援が必要などと言っても意味がなく無効であるだけでなく、“有識者”なら恥知らずの言動になってしまうものである。
最悪最強のテロ組織が米国であり、その軍事行動に参加した国々やその軍事行動を支持した国々も“テロ国家”であり“テロ支援国家”なのである。
この認識がないままイスラム世界の心ある人々と対話することはできない。(イスラム基盤国家の統治者はほとんどが不信心者であり、イスラムを支配の道具に便利に使っているだけ)
リベラリズム的発想でテロを減らすことができると錯誤し経済援助や人道支援を続ければ、生活に余裕ができるムスリムが増えることから、逆に、過激主義に身を投じるムスリムが増えることになるだろう。
それで済めばいいが、池上氏的発想のひとなら、これだけ経済援助や人道支援を行っているのにテロが続くのはやはりイスラムが異様で危険な宗教だからといったスジ違いないし勘違いの総括をしてしまう可能性すらある。
イスラムは日本人の多くが抱いているような観念とマッチする宗教ではない。
イスラムが宗教的観念も内包した「革命思想」であることを理解しなければ、9.11以降そして今後の世界がどうなっているか見えないままであろう。
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池上彰の大岡山通信 若者たちへ
テロとどう向き合うか?
2015/2/23 3:30
イスラム過激派組織「イスラム国」を名乗るグループが日本人の人質2人を殺害した事件は、日本に大きな衝撃をもたらしました。もはや日本人もテロと無縁ではなく、「テロとどう向き合えばよいのか」という時代になったのです。これから海外の大学や研究機関に活動の場を広げる多くの若者たちにとっても、関係の深いテーマではないでしょうか。
■グローバル・テロの時代を迎えた
イスラム国の大きな戦略の一つが、IT(情報技術)を巧みに操り、全世界に情報発信する点です。独自編集した残虐な動画や脅迫文を動画共有サイト「ユーチューブ」にアップします。世界の関心が集まっているのを逆手にとって、低コストで主張を拡散させるのです。しかも欧米や日本の首脳の発言をチェックして、それに素早く反論する手際のよさです。
支配地域での活動や戦果を発信し、世界の若者を兵士として集めています。これまでに参加した外国人は、米国の推計では約90カ国、2万人に及ぶという報道がありました。同じイスラム過激派であるナイジェリアの「ボコ・ハラム」やパキスタンの「パキスタン・タリバン運動」なども、イスラム国に忠誠を誓い始めています。グローバル化といわれる時代、テロは地域を超えてネットワークを広げ、進化しているといえるでしょう。グローバル・テロの時代なのです。
今回の日本人人質事件に際して、安倍晋三首相や政府高官らは記者からの質問に対し、「テロには屈しない」、しかし「人命第一で考える」と答えていました。相反する主張を繰り返していたことに気づいたでしょうか。
これはテロと対峙する国際社会に向けたメッセージであると同時に、日本政府の置かれた立場を表明したものだと思います。常に、イスラム国側が日本の報道をチェックしていることを想定する必要があったのです。
自衛隊による人質救出作戦も話題に上りましたが、それは果たして実現可能でしょうか。これまで米軍が関わった救出作戦などを見ると、砂漠地帯での特殊任務は非常に危険を伴います。米軍の作戦行動では、砂嵐でヘリコプターが墜落したこともあります。
しかも、作戦決行に備えて誰がテロ組織の支配地域の現地情報を集めるのか。救出部隊がテロ組織からの反撃にあって危機に陥った際、その救出のための部隊をどう派遣するのか――など、課題は山積しています。部隊や装備をどう国外へ輸送するのか、法的手続きの問題もあります。決してハリウッド映画のような展開にはならないのです。
■部族社会との人脈作りを
ザアタリ難民キャンプで遊ぶシリア難民の子どもたち=3日、ヨルダン北部(共同)
それでは、テロ事件が避けられないならば、事態打開のためにどう備えればよいでしょうか。これまでの中東における取材経験を踏まえると、まずは日本独自の情報収集力を高めるためにアラビア語に堪能な人材を育て、現地に派遣することが必要です。時間はかかりますが、地道に人的なパイプを築いていくことが、打開への糸口になるのではないかと思います。
とりわけ中東という地域では、「国家」よりも「部族」という枠組みが絶対的な存在です。そもそも「国家」という意識が希薄なのです。部族長の発言や決定は大きな力を持ち、宗教を土台にした一族の固い結束は長い歴史の中で脈々と受け継がれています。部族の結びつきは、地域を越えて複雑に張り巡らされています。部族や部族長との信頼関係が、テロ組織との間で水面下の交渉ルートになる可能性があるからです。
幸いなことに、日本が戦後、中東地域で協力してきた様々な支援策の効果もあって、日本人に対する現地の感情は悪くありません。それは道路や病院の建設、難民への人道支援などを通じて、友人を育ててきた成果といってもいいかもしれません。今回、人質救出交渉に尽力してくれたヨルダンは、ほかの中東産油国のように石油資源が豊富ではありませんから、日本からの経済援助が重要な役割を担っている面があります。
こんなエピソードもあります。激化していたイラン・イラク戦争の時の1985年、邦人救出に苦慮していた日本に対し、トルコがイランのテヘランに航空機を飛ばして助けてくれたのです。当時、トルコは「これはエルトゥールル号の乗組員を助けていただいたお礼です」と言ってくれました。
1890年、現在の和歌山県串本町の沖合で遭難したトルコの軍艦エルトゥールル号の乗組員を、地元の人々は危険を顧みずに救出しました。トルコの人々は、およそ1世紀も前の感謝の気持ちを忘れずにいて、恩返しをしてくれたのです。
■テロなき国づくり支援こそ日本の役割
日本は今年の選挙で、国連安全保障理事会の非常任理事国入りを目指しています。安倍首相は「積極的平和主義」を掲げ、戦後70年の節目に国際社会で役割を果たそうとしています。では、日本が海外に友人や協力者を増やすために必要な貢献とは何でしょうか。
その第一歩は、経済援助や人道支援を続けながら、紛争や対立の芽となりうる貧困や格差の問題を解消していく以外にないだろうと思います。直面するテロの危機に備え、リーダーシップを発揮していく道は、テロを力で封じ込める手法ではなく、テロを生まない国づくりに貢献する手法という選択肢もあるのだということです。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO83307950X10C15A2000000/?n_cid=DSTPCS001
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