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朝日新聞の題字(手前)と、問題視された夕刊コラム「素粒子」(奥)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150222/dms1502220830005-n1.htm
2015.02.22
★(5)
朝日新聞夕刊のミニコラム「素粒子」は1月13日、「少女に爆発物を巻き付けて自爆を強いる過激派の卑劣。70年前、特攻という人間爆弾に称賛を送った国があった」と書いた。
これに対し、産経新聞は同月29日、宮本雅史記者が「この記事を読んで言葉を失った。というより強い怒りがこみ上げてきた。特攻隊とテロを同一視しているからだ」「特攻隊は敗戦が濃厚になり、抜き差しならない環境の中で採用された究極の戦術だった。標的は軍事施設だけであり、決して無辜(むこ)の民は標的にしなかった。無差別攻撃を行うテロとは根本的に違う」「極限状態の中で愛する者たちを守りたいと強く願う気持ち、国の行く末を案じる気持ちが、行動の芯であり源だった」などと、厳しく批判している。
朝日は2014年10月23日朝刊で、戦後70年に向けた企画記事「特攻 戦局悪化の末に」を1ページの全体を使って報道している。それによると、航空機以外の特攻を含めて、全体の死者は5845人であるという。また、朝日自身も「社説でも称賛 戦意高揚図る」と、終戦までに300本以上の記事を掲載したことも記しているが、左下の隅に載っていて、あまり目立たない。
特攻は1944年10月25日、海軍の神風(しんぷう)特別攻撃隊が出撃して、開始された。この時の攻撃隊はまず4隊で編成され、それぞれに名称がつけられた。「敷島隊」「大和隊」「朝日隊」「山桜隊」である。
次いで、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将・楠正成にちなむ「菊水隊」が加えられたが、初めの4つは、ある有名な和歌を典拠としたものであった。それは本居宣長の「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」である。日本のナショナリズム・大和魂の表現として、最も有名なものと言ってよい。
実は、朝日の題字(1面右上の新聞名を記した部分)は2種類ある。東京本社、北海道支社発行の背景は山桜で、大阪、西部、名古屋本社は難波の葦だ。山桜は前出の本居の和歌にちなんだもの(2009年1月25日朝刊)で、つまり朝日の題字はナショナリズムを表現したものともいえる。
13年4月5日夕刊の「素粒子」では、「日本を軍事国家にと石原慎太郎氏。もはや戦争に行かない特殊兵器」と石原氏をからかい、「いまどき敷島の大和心でもあるまい」と続けている。まさに題字真下の素粒子欄で、それを真っ向から揶揄するような意見を吐露しているともいえる。自爆ではないか。
クオリティーペーパーの正体など、こんなものだ。他人を攻撃する言葉が、自分自身に見事に当てはまるのに、それにはまったく無自覚な鈍感さ。日本のナショナリズムを危険視して皮肉るのなら、まず自社の題字を改めてはどうか。 =おわり
■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、新聞や月刊誌で記事やコラムを執筆する。著書に「虐日偽善に狂う朝日新聞」(日新報道)など。
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