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首相はネトウヨと同じ? 予算委で「日教組」やじ
2015年2月21日 東京新聞 特報 ニュースの追跡
「日教組、日教組」−。安倍晋三首相が十九日の衆院予算委員会で、民主党議員に「労働組合とカネ」の問題が存在するかのようなやじを飛ばした。西川公也農相の「環太平洋連携協定(TPP)とカネ」を追及されたことへの意趣返しだが、何かと言えば「日教組」「左翼」などと誹謗中傷するのはネット右翼(ネトウヨ)の常套手段。一国の首相たる者の振る舞いか。 (林啓太)
■単なる誹謗か
首相のやじは、民主党の玉木雄一郎衆院議員の質問中に飛び出した。西川農相が代表を務める自民党栃木県第二選挙区支部がTPPの交渉前に、精糖団体の関連会社から百万円の献金を受けた問題が取り上げられていた。玉木氏が、政治資金規正法改正の必要性を説くと、首相席から「日教組はやっているよ」と食ってかかった。
教職員でつくる日教組は民主党の強力な支持母体ではあるが、西川農相の問題とは関係ない。玉木氏は「政治に対する信頼をどう確保するかの話をしている。やじを飛ばさないでください」と懇願したが、首相はら笑いを浮かべながら「日教組はどうするんだよ」と畳み掛けた。一時紛糾したものの、大島理森委員長が「総理もちょっと静かに」とその場を収めた。
しかし、首相は悪びれない。民主党の前原誠司元外相が二十日の衆院予算委で「(玉木氏へのやじは)極めて品位に欠ける」と迫ったが、答弁で「日教組は補助金をもらっている。教育会館から献金をもらっている議員が民主党にいる。それをどう考えるかの指摘をした」と開き直った。
首相は、なぜ日教組を持ち出したのか。その言い分に根拠はあるのか。
日教組の担当者は「東京都千代田区に日教組が入居する日本教育会館がある。民主党と日教組、会館を運営する一般財団法人の関係にも、西川農相の問題と似た政治とカネの問題があると言いたいのだろう」と推測する。
西川農相の問題では、精糖工業会への国の補助金の一部が、同会運営の精糖工業会館の管理会社を媒介に、第二選挙区支部へと流れていたかに見える構図が問題視されている。首相は、日教組を精糖工業会、日本教育会館を精糖工業会館になぞらえているようだ。
日教組の担当者は「日教組は国から補助金をもらっていない。日本教育会館は日教組とは人的な交流はあるが、国会議員に献金はしていない。首相の発言は全くの事実無根だ」と憤る。
もし首相の言い分が正しかったとしても、まずは西川農相の問題に正面から向き合うのが本来である。ましてや、日教組側の説明に従えば、誹諦中傷以外の何物でもない。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「内閣支持率が高ければ、軽率な言動も許容してしまうマスコミの甘さが、今回のやじにつながっているのではないか。一国の首相が安易にケンカ腰になってはいけない。首相の態度は軽い」と指弾する。
■「ヘイト浸透 民主主義の危機」
『ネットと愛国』などの著書があるジャーナリストの安田浩一氏は「議論の文脈を無視して『日教組』『左翼』『売国奴』となじって反論を封殺するのは、ネトウヨの常套手段。首相のやじは、ネトウヨにこびているのではなく、本人がネトウヨ的な感性の持ち主であることを示している」とみる。
首相とネトウヨと言えば、昨年の衆院選の最中、へイトスピーチ(差別扇動表現)を集めたネット掲示板の記事が、首相のフェイスブックにシェア(共有)され、ネット上で「(首相は)正真正銘のネトウヨだった」などと物議を醸した。へイト団体と一部政党との親密な関係もたびたび取り沙汰されている。
安田氏は「ネトウヨのような罵詈雑言が、ネット上や一部の右翼の街頭行動にとどまらず、国会の議論にも浸透してきている。首相までネトウヨ化する状況は民主主義の危機だ」と警鐘を鳴らした。
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