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NHK会長が怒鳴り散らすと、何がマズイのか トップは世間の受け止め方を考えるべき
http://toyokeizai.net/articles/-/61144
2015年02月19日 水島 宏明:法政大学教授 東洋経済
2月18日午前、NHKの籾井勝人会長が民主党の総務部門会議に呼ばれて中期経営計画を説明する席で、顔を真っ赤にさせて国会議員とやりあった。このやりとりの様子は、NHKを除く、主要な民放テレビ局全社のニュース番組やワイドショーで取り上げられた。
昨年の会長就任の記者会見では「従軍慰安婦」について「どこの国でもやっていたこと」などと発言して問題になった際も、政治的に微妙な発言だと考えたのか、あるいは「個人的な発言」だとして「撤回」したことを配慮したのか日本テレビやフジテレビは「問題発言」というふうには取り上げなかった。しかし、今回は違う。民放全社が「色をなして怒り狂うNHK会長」の映像を放送した。
■視聴者が驚くような映像になってしまった
それは公共放送機関のトップという重職にある人物が、感情むき出しで怒鳴るという光景がめったに見られない「面白シーン」として、映像に記録されてしまったからだ。彼の政治的な主張やNHK会長としての対応の是非はともかくとして、視聴者が驚くような「面白い映像」だったからである。
(議員)「よくあることなんですか、本当に?」
(会長)「よくあることじゃないですか」
(議員)「撤回してください」
(会長)「撤回しません」
会場の去り際に議員から「失礼だ」と言われて「あなたこそ失礼だ」と紅潮させて興奮したまま議員に叫び続けた。
この場面を放送したテレビ各局のカメラマンや編集者などは、「久々に面白いものを見てしまった」という感覚で放送したのだろうと想像する。
もし、これが国家公務員=官僚だったら、と想像してみると、わかりやすい。高級官僚たちは国会の質疑などに呼ばれると、議員たちの(時には意地悪な)質問に慇懃無礼に頭を下げて「先生のご指摘の点はまことにごもっともではありますが…」などと相手を立てているふりをしながら、のらりくらりとけっして言質を与えないような曖昧な表現で「こなしていく」のが常だ。いくら挑発されても、けっして感情的にならない。それが「組織を守る」ということだし、「大人の対応」というものだ。
ところが籾井氏は今回、相手の挑発に乗り、怒鳴ってしまうという失態を見せてしまった。今後、民主党側がいくらでも追及できる「言質」を与えてしまったのだ。
■世間はどのように受け止めるか
こんな程度の人物がNHKという巨大組織のトップだったのか、と視聴者は思ったに違いない。お行儀よいイメージでどこかすました印象があるNHK。「でもトップがあんな人じゃねえ…」。主婦の井戸端会議が聞こえてきそうである。
この映像を見たら子どもでも、お行儀の悪さがわかる。事実、テレビで見た中学生が「このおじさん、なんだか大人気ないし、子どもっぽいね」との感想を漏らしていた。籾井氏は自分が持っている幼児性をむき出しにした映像を民放各社に記録されてしまった。今後、NHKや籾井氏にまつわる報道が行なわれるたびに、この「色をなして怒鳴るNHKトップ」の映像は何度も使われ続けるだろう。
組織のトップの役割とは、第一に組織を守ることである。
過去に何度もテレビで使われたトップの感情的な映像を振り返ると、1997年に経営破綻した山一證券の野澤正平社長による「社員は悪くありませんから」と号泣発言が思い起こされる。
この映像はバブル経済崩壊の象徴的なシーンとしてテレビで繰り返し放送されている。この時は、これから路頭に迷う社員の行く末を案じた責任感に満ちた発言として、発言者の野澤社長は男としての株を上げた。トップがテレビカメラの前で感情をむき出しにして、そのことが世間に共感を広げた数少ないケースだ。
多くの場合、トップの「感情的な発言」は組織全体にとってマイナスの影響を与える。2000年に戦後最大の集団食中毒事件でマスコミに追いかけられた雪印乳業の石川哲郎社長が口にした「私だって眠ってないんだ」という発言はその典型といえる。
当時、この社長は徹夜での社内会議の後で会議室から出てきた後で、マスコミから「寝てないで待ってたんだ。何か話をしろ!」と言われて感情的に答えたのが「私だって寝ていないんだ」発言だった。
正義の衣を来て嵩にかかって断罪口調のマスコミの対応もどうかと思うが、結果的には大きな社会問題を引き起こしながら「寝ていないんだ」と居直った会社のトップという印象だけが世間では定着した。
■トップとして発言してはいけない言葉がある
マスコミの質問の仕方の是非が問われたとしても「それを言っちゃあ、おしまいよ」という発言だったといえる。組織のトップとしてけっして口にしてはいけない言葉がある。
今回の籾井会長の発言も、追及した議員の質問が適切かどうかよりも「それを言っちゃあ、おしまい」という子どもっぽい態度を見せてしまったことが致命的だといえる。
おそらく、籾井会長による以前の従軍慰安婦などについての政治的な発言に賛同する人たちでも、会長の「子どもっぽい」姿には少なからずショックを受けたに違いない。組織の長として「ありえない」という感触を持ったのではないか。安倍首相や菅官房長官ら総理官邸の幹部も正直、呆れただろうと想像する。
「色をなして怒鳴る」という対応を見せてしまった籾井氏。これまでの問題発言などをなんとかこなして会長職にとどまってきたが、今度は進退がつまってしまったのではないかと感じる。NHKの歴史上、これほどいろいろ物議をかもしていろいろな映像を残したトップも珍しい。
ある意味ではこれほど「人間的」ともいえる会長が次はどんな面白映像を残してくれるのか、個人的な興味は尽きないけれど。
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