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文書費を公開した維新の党のホームページ
維新の党が国会議員「月100万円のつかみ金」を公開。垣間見えた「文書費」の常識外れに他党からは「余計なことを・・・」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42055
2015年02月11日(水) 磯山 友幸「経済ニュースの裏側」
維新の党は1月30日、同党所属国会議員の「文書通信交通滞在費」の使途を党のホームページで公開した。
■維新の党が公開した「つかみ金」の使途
文書費はすべての国会議員に議員歳費(給料)とは別に月額100万円が支給されている。通常の政治資金については明細を付けた政治資金収支報告書の提出が義務付けられているほか、領収書も開示ルールがある。ところが、文書費は支出明細や領収書の公開が義務付けられておらず、いわば「つかみ金」。
維新の党は年末の衆議院総選挙での選挙戦を通じて、この文書費が不透明だと批判を展開してきた。「身を切る改革」を実践する姿勢を示すとして公開に踏み切ったが、はからずも、世間の感覚とはズレた文書費の実態が垣間見える結果となった。
公開に当たって維新の党の江田憲司代表は、「何分、根拠法たる歳費法等に明確な使途についての規定もない中で試行錯誤的な公開となります」とことわっている。文書費は“渡しきり”で使途を開示しなくてよいため、使途範囲がこれまでの慣行でどんどん広がってきたのだろう。
もちろん、法律にまったく規定がないわけではない。
文書費は「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」の第9条に基づいて支給されている。その規定には「各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として、月額百万円を受ける」と書かれている。
「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等」に、一般の企業経理や世間の常識からいう「通信費」が含まれるのは明らかだろう。郵送代、電話代、インターネットのプロバイダー代といったものだ。
問題は「通信をなす等」の解釈だ。すぐあとに「交通滞在費」という単語が出て来る以上、郵送や電話だけでなく、本人が出向いて話をするのも「通信」に含まれるという解釈が成り立つということだろう。その昔「通信使」というのもあったので、それもまあ良しとしよう。企業経理で言う「旅費交通費」にあたる飛行機代や宿泊費などだ。ここらへんまでは世間の常識の許容範囲だろうか。
■「通信をなす等」の解釈が広がって
では、実際にはどんな使い方がされているのか。江田議員自身が公開した「使途報告書」をみてみよう。
まず目に入ったのが「人件費」。12万6000円が支払われている。備考には「公用車運転代」とある。ドライバーの人件費ということだろう。企業経理では運転手の人件費を「旅費交通費」として計上するのは無理がありそうだが、「通信」のための必要経費と言えないことはない。「ガソリン代」や「車のリース代」も計上されている。
また、「機関紙印刷代」として65万3400円が使われているが、書類を発送するには書類自体を作らなければ話にならないということだろうか。
同党の柿沢未途・政調会長の使途報告書には「資金管理団体繰入(寄付)」として95万1933円が支出されている。その内訳は「スタッフ人件費に充当」「事務所賃貸費用に充当」と書かれている。
「通信をなす等」の「等」の解釈がどんどん広がってきた結果なのだろう。どうやら、それも永田町では「常識」の範囲内ということらしい。ほかにも「名刺」や「議員連盟会費」、「政党支部繰入(寄付)」など多岐にわたる。議員宿舎の使用料を「滞在費」としている議員もいる。地方選挙区の議員にとっては東京の議員宿舎も通信のための「滞在」ということなのだろう。さらには、議員の中に100万円のうち95万円を翌月に繰り越した人もいた。
さすがに「飲食費」を計上している例はないようだが、他党の国会議員に聞くと、領収書がいらないため、飲食経費などに使っている例も少なくないという。文書費は毎月、議員個人の口座に振り込まれるほか、現金給付も選択できるという。現金で給付を受けた議員の多くがそれを事務所経費費用に回しているケースが多いようだ。
議員個人の資金管理団体や政党支部の場合、政治資金収支報告書で支出先などが明らかになってしまう。文書費は領収書のいらない「使い勝手が良い資金」として長年にわたって重宝されてきたのだという。
■使途不明で許されていた「年間86億円」
だが、そんな政治家の経費に対する国民の目は厳しくなっている。
昨年、兵庫県議会で問題になった政務活動費の不透明支出では、「号泣会見」を開いて釈明した県議が、結局は辞職に追い込まれた。政治資金収支報告書の記載を巡って問題が発覚した小渕優子議員も経済産業相を辞任した。カネの透明性と使途の説明責任を政治家に求める流れは定着している。
今回、長年の問題視されながら放置されていた文書費について、維新の党が自ら使途の開示に踏み切ったことは大きい。大いに評価されてしかるべきだろう。もちろん、「余計な事をしてくれた」とぼやいている他党の議員もいる。もし文書費の開示がルール化されれば、領収書をもらえないような支出に当てる資金の確保が難しくなるからだ。
維新の党によって文書費問題に風穴が空くのは間違いないだろう。月100万円の支出先としてどこまで認めるのか、という議論も必要になってくる。そもそも「文書通信交通滞在費」という名称で良いのか、という問題もある。
国会議員の支出で大きいのは私設秘書の人件費だ。現在は秘書は3人まで公設として国が人件費を負担する制度になっている。だが、本気で政策立案に力を注ごうと思えば、3人では足りないという問題もある。
とくに霞が関のサポートがなかなか受けられない野党議員にとっては、スタッフの拡充は常に頭の痛い問題だ。また、選挙区で議員本人に代わって地域活動をする私設秘書を何人も雇っているケースが少なくない。そうした人件費の確保が難題なのだ。もちろん様々な文書の印刷経費も馬鹿にならない。
衆議院議員の定数は480人。これに月100万円つまり年1200万円をかけると57億6000万円になる。参議院は242人だから29億400万円。合わせて年間86億6400万円の税金が文書費として国会議員の手にわたっている。決して小さくない金額だ。1円以上の領収書をすべて添付しろなどとは言わないが、使途の概要ぐらいは毎月報告する制度を作るべきだろう。
維新の壮挙を受けて他党がどんな行動に出るのか、注目していきたい。
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