http://www.asyura2.com/15/senkyo179/msg/675.html
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岩上安身のインタビューに応える藤田早苗さん(2015年1月6日)
安倍総理の報復宣言で150万人の在外邦人の安全が脅かされる! 平和国家・日本の「ブランド」に終幕!? イギリスから岩上安身に届いた在外邦人の叫び
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/231555
2/10 18:00 IWJ Independent Web Journal
※本日(2月10日)、IWJ代表・岩上安身が体調を崩し、レギュラー出演中のテレビ朝日「モーニングバード!」をお休みさせていただきました。皆さんに大変なご心配とご迷惑をおかけしています。
現在もまだ通常通りの仕事をこなすのは難しく、静養を続けています。本稿は本日アップしましたが、こちらは、岩上安身本人が本格的にダウンする前に書き上げていたものですので、ご了承ください。
「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせる」――。
イスラム国による邦人人質殺人事件を受け、安倍総理は2月1日、声明を発表、いまだかつてないほどの踏み込んだ言葉使いでイスラム国を非難した。
「その罪を償わせる」という部分は、官邸の事務方が用意した「首相声明」に、わざわざ安倍総理自ら書き足したとも言われており(※1)、あまりの表現の強さに、海外メディアも驚きをもって報じている。
翌2日付のNYタイムズ紙は、「過激派の暴力に指導者が直面した際、こうした報復の誓いは西側では普通だろうが、対立を嫌う日本では異例」と紹介。米オンライン誌スレートは、「日本の指導者としてはまれな発言だが、平和主義の外交方針を放棄しようとする安倍氏の取り組みの一環だ」と指摘した(※2)。
安倍総理の発言は、英語ではのきなみ「Revenge」即ち「報復」「復讐」と訳されている。世界中のどこに潜むともわからないイスラム過激派に対する全面的な「宣戦布告」である。
「今や海外に住む日本人は150万人、さらに年間1800万人の日本人が海外に出かけていく時代」――。
これは、「集団的自衛権」の行使の必要性を訴えるために、安倍総理自らが記者会見で放った言葉である(※3)。
「150万人」の在外邦人たちは、今、「テロとの戦い」に突き進む安倍総理をどのような目で見つめているだろうか。
「今後、日本人に指一本触れさせない」などと啖呵を切った安倍総理だが、その言葉によって150万人の在外邦人にどれだけリスクを負わせたことだろうか。
記事目次
・安倍総理発言に危機感を抱く在英邦人・藤田早苗さんからの「メール」
・大使館「日本人及び日本の関連施設がテロ・誘拐等のターゲットになり得る」
・「外では日本語を話さないように。スカーフをかぶったらどうか」
・息を殺すような生活を余儀なくされる日本人
・NYタイムズ「長い間平和主義だった国の重大な分岐点」
・本格的な事件検証と、今後に向けた議論を
・「イスラム国」を利用した「ショック・ドクトリン」
・カサースベ父「米国主導の有志連合へのヨルダンの参加はわれわれの利益にならない」
■安倍総理発言に危機感を抱く在英邦人・藤田早苗さんからの「メール」
イギリスから、一通のメールが、私宛に届いた。
「常にアンテナを張って、デマに惑わされては危険だ。1日の行動は家族や所属先に伝えて、街で目立ってはいけない。大声で話さず、周囲には注意を」――。
「一体なにごとだ?」と聞き返したくなるこの物騒な指示。これはイギリスの日本大使館が、在英邦人に向けて送信したメールの中身である。
イギリス在住の藤田早苗さんは現地時間の2月2日、夜8時10分にこのメールを受け取った。もちろん、「イスラム国」による邦人人質殺人事件を受けてのことだ。
国際人権法の専門家で、英国エセックス大学人権センターのフェローである藤田さんは、安倍総理の「テロとの戦い」という言葉に危機感を募らせる在外邦人のひとり。
最近は、「特定秘密保護法」が国民の基本的人権を脅かすとして、国連に、日本へ強く勧告するよう働きかけたり、精力的に国内外で講演したりするなど、広く警鐘を鳴らしてきた。これまでにIWJにも寄稿いただき、過去三度にわたって私のインタビューにも応じていただいている。
■大使館「日本人及び日本の関連施設がテロ・誘拐等のターゲットになり得る」
藤田さんは、在英日本大使館からメールを受け取ったその日のうちに、怒りと悲しみをもって、私にメールを寄せてくれた。
岩上さま、(スタッフの皆様)
イギリスから藤田です。昨日の古賀さんのインタビュー拝見しました。
インタビューで話された内容、もう「ステップ」まで来ている、ということ、今回の「外交ミス」は実は確信犯だったというのも、気がめいりましたが、とても勉強になりました。ありがとうございます。
今日、「在英国日本大使館からのお知らせ」がメールできました。「今回の事案の発生によって、日本人及び日本の関連施設がテロ・誘拐等のターゲットになり得ることが改めて明らかになりました」と。そして注意事項として:○常にアンテナを張って、○連絡手段の再確認、○その日の行動日程の共有… そして、こんなことまで・・
○目立たない
当地は様々な人種の人たちが住んでいるので、日本語であっても公の場(レストランなど)での言動に注意→政治的な話や特定の国や民族、宗教、習慣、文化などについて大声で話さない。
○周囲に注意を向ける
人が多く集まる場所を訪れる際には、周囲にも注意を払うようにする。また、一つの場所に不必要に長居しない(待ち合わせ場所の選定等にも注意)。
2005年7月7日のロンドンでのテロ事件の時も、「私の国は大丈夫だ」と日本の平和主義を本当に誇りに思い、感謝したのに、現政権の悪政のおかげでみるみるそれが崩れていくのを見ていて毎日いたたまれない思いです。ほんとに最近気がめいっています(特に周りに日本人の仲間がいないのもきついかな)。
1月のそちらのインタビューでも話に出ましたが「負け続け」という脱力感、次々出てくる問題、きついですね。
時々思いますが、産経や読売を読んでNHKを信じて、あとはバラエティー見て笑ってたら気楽でいいんでしょうね。また、在外日本人に時々いますが、「日本のことなんてどうでもいい」と思えたらそれも楽かもしれませんね。私はどちらにもなれませんが。
古賀さんの報ステでのコメントとそれに対するバッシングはネットで見ていましたので、私も報ステに応援メール何度か送りました。
バッシングにあっても、屈しないで発言し続けてくださる古賀さんや岩上さんのような人たちの発言や士気にも励まされる人は多いでしょうね。私も今日は内容はきつかったですが、励まされました。
微力ですが、自分にできることこれからも続けていこうと思います。その一つがIWJを紹介することです。イギリスに留学している日本人にも日本の問題を話し、IWJを勧めていますよ、「伝道」だと思って。最近も一人会員になってくれましたよ。
それから、インタビューの最後に紹介された声明、想田さんのFBで見ていましたが、共感します。賛同します。あれが広まって、一つのムーブメントになればいいですね。
これからもどうぞよろしくお願いします。
藤田
冒頭の「古賀さんのインタビュー」とは、2月2日に私が行った、元経産官僚の古賀茂明さんへのインタビューのことだ(※4)。1月23日、テレビ朝日「報道ステーション」に出演した古賀さんは、「我々は“I am not Abe”と訴える必要がある」と提案し、大反響を呼んでいた。
古賀さんは私のインタビューにおいて、報ステでの発言の真意を詳しく説明した。
「『I am Kenji』こそが、日本の心であり、憲法の心であると思います。しかし安倍総理が、それと違うことを言って歩いているわけですね。だから我々日本人は、『I am Kenji』と『I am not Abe』をセットで世界に発信すべきではないでしょうか」
藤田さんがいう「平和主義を本当に誇りに思い、感謝したのに、現政権の悪政のおかげでみるみるそれが崩れていくのを見ていて毎日いたたまれない」という思いは、海外にいて身の危険の高まりをひしひしと感じているだけに、古賀さんの「I am not Abe」への共感も切実なものに違いない。
国民ひとりひとりが、「私は安倍総理の政治姿勢とは違う」と訴えずにはいられないほど、一般市民の思いと安倍政権の間には隔たりがある。特に在外邦人は、安倍総理の強硬姿勢のせいで大きな迷惑を被っている。
この藤田さんの複雑な生の声を、在外邦人の貴重な意見として広く紹介させてもらえないだろうか。メールの返事を書いた。
藤田様
ありがとうございます。
このメール、表で公開してもいいですか?
寄せられた反響として、取り上げさせていただくとともに、在外法人が、安倍政権のおかげで、急激に不安な日々を過ごさざるを得なくなっている現実の一端をお伝えしたいと思います。
また、IWJを広めてくださっていることにも感謝です!
そうしたことも、皆さんにお伝えしたいと思います。
よろしくお願いします。
岩上
■「外では日本語を話さないように。スカーフをかぶったらどうか」
「メールを公表したい」という依頼を、藤田さんは快諾してくれた。
と同時に、藤田さんは安倍政権の政策に対する危機感や怒り示し、そんな安倍総理らを野放しにしてしまっている野党や国民を憂いた。こうした現状を打破したい、という思いが新たに綴られていた。
岩上さん
お返事ありがとうございます。
今日、母が心配して「外では日本語を話さないように。スカーフをかぶったらどうか」とメールがきました。同じように心配している在外邦人のご家族は多いと思います。
メールの内容の公表、大丈夫です。どうぞ皆さんに海外からの声を伝えてください。ただ、その時に次の2点のお願いがあります。
まず、メールをきちんと読んでいただければわかりますが、これは「在外の藤田さんが安倍政権のせいでこんなに不安がっています。」というのが主旨ではありません。
私が毎日気が滅入るのは、特に海外にいてその尊さを実感する、日本の貴重な平和主義ががらがらと崩れているからです。それは辺野古の美しい海が壊されるのを見る痛みのようなものです。そして、悪政のために今後、日本人が犠牲になる危険性が高まってしまったということへの危惧と怒りです。その点は誤解のないようにしてください。
そして2点目は、会員、読者の方に、今回の外交ミス(確信犯だそうですが)を野党がしっかり国会で追及するように、野党にメールなどで働きかけるように呼びかけてほしいのです。
IWJの会員の方は、安倍政権を何とかしたい、と思っている人が大半だと思います。「ぎりぎりからのターンオーバー」を本当に望むなら、ここであの中東政策の犯した責任を国会で追及されるようにアクションを起こしてほしいのです。
FBやツイッターでつぶやいたり、街頭や官邸前でデモを繰り返したりするだけでなく、その声が国会内で反映されるようにしなければならないと思います。残念ながら野党は全く頼りにならない感じです。共産党でさえ、首相の責任を追及するなどとはまだ言ってないのではないでしょうか。山本太郎議員のところくらいのようです。それではかき消されてしまうと思います。
人質救出対策についての責任追及だけでなく、「安倍政権の中東外交政策の功罪」をきっちり追及するように働きかけるよう皆さんに提案していただけますか?私もいくつかMLで呼び掛けていますが、限界があります。これがうやむやになれば、今回犠牲になった後藤さん、湯川さんそして遺族の方にも申し訳ないのではないでしょうか。
皆さんに配信されるときには今日のこのメールの内容もお使いいただいて大丈夫です。
あるMLの仲間が送ってくれた野党の連絡先も下につけておきます。よろしくお願いします。(注)
藤田
■息を殺すような生活を余儀なくされる日本人
藤田さんが気を揉むのも当然だろう。
確かに海外での生活は、日本での生活とは勝手が違う。中東以外の地域に住んでいれば、アルカイダやISのような組織的テログループの標的になって攻撃を加えられたり、誘拐されたり、ということがそうそう起きるわけではあるまい。それはその通りだ。
しかし、イスラム教徒の住民は中東だけでなく、ヨーロッパにもアジアにもアメリカにもアフリカにも、全世界に存在している。大多数のイスラム教徒は穏便で理性的であり、安倍総理の一回や二回の不用意な発言でこれまでの親日的な感情から、急に反日的になるとは考えにくい。としても、である。どんな政党にも、どんな民族にも、どんな宗教の信者にも、粗暴な者や日々の生活の面白くなさから苛立ちの吐け口を求めているものはいる。今後、はね返りによる暴行事件が起きないとも限らない。
仮に不吉な事件が何回か繰り返されたら、日本におけるイスラム教やイスラム教徒への感情も悪化するだろうし、その感情の発露がまた、悪循環を生むこともあるだろう。テロは大衆の間に、ヘイト感情の存在しないところに生棲はできない。憎悪と報復感情が連鎖している場所が、テロの温床となる。テロを断つには、憎悪、怒り、復讐の感情を絶たないといけない。火を鎮火させなければならないのだ。
それにしても、である。
「様々な人種の人たちが住んでいるので、日本語であっても(中略)政治的な話や特定の国や民族、宗教、習慣、文化などについて大声で話さない」
「人が多く集まる場所を訪れる際には、周囲にも注意を払うようにする。また、一つの場所に不必要に長居しない(待ち合わせ場所の選定等にも注意)」
息を殺し、潜むようにして過ごせ、と言われている政府からのこの勧告。ここまで注意喚起れれば、さすがに身に危険が迫っていると実感せざるをえない。藤田さんのお母さんが、「外では日本語を話さないように。スカーフをかぶったらどうか」と娘を心配する気持ちもわかる。しかし、そんな危険に国民全体をさらしたのは誰なのか。よくよく考えてみなくてはいけない。
■NYタイムズ「長い間平和主義だった国の重大な分岐点」
まがりなりにも「平和主義国家」として70年間過ごしてきた日本が今、大きな岐路に立たされている。海外メディアも安倍政権の強気な姿勢に着目し、日本の「心境」の変化を分析しようとしている。
BBCは2月1日付の記事(※5)で、イラクへの自衛隊派遣に関して、自衛隊撤退を求める武装勢力が04年に日本人男性を拘束・殺害した際も、小泉純一郎首相(当時)が撤退を拒否したことと今回のことを比較。「安倍首相はこの姿勢を強めており、尋常ではないほど強い言葉で『日本はテロに屈しない』し、『彼らに罪を償わせるために国際社会と行動を共にする』と明言した」と報じた。
米紙・NYタイムズは2月3日付けの記事(※6)で、「安倍総理は日本の平和主義から離れ、殺害への報復を誓う」との見出しで、日本の現状を「長い間平和主義だった国の重大な分岐点」と分析している。
安倍晋三首相は激怒し、『テロリストに償わせる』と約束した。
このような報復の誓いは、過激派の暴力に直面した西欧の主導者にとっては普通のことかもしれないが、これまでは、衝突を嫌う日本では前代未聞だった。
ジャーナリストの後藤健二さんと、もう一人の人質である湯川遥菜さんの殺害の後、首相が復讐を求めたことは、軍関係者にとってさえも驚きであり、この危機がこの長い間平和主義だった国の重大な分岐点であることがますます明らかになった。
12日間の人質事件は、後藤氏の殺害という無惨な結果に終わり、長い間アメリカやその西洋の同盟国が直面している暴力からは免れているとみなしていた、平和で繁栄する国家にとって、世界は突如として非常に危険な場所に見えはじめた。
日本の話をしているとは考えにくい、どこか遠くの国の話をしているような錯覚に陥る。いったい、我々は、なぜ、いつの間にこんな分岐点に立たされるはめになったのだろうか。
■本格的な事件検証と、今後に向けた議論を
「イスラム国」に「報復」を誓うよりもまず、安倍政権の中東政策には見直す点がなかったか、人質事件の対応は十分だったか、冷静に、かつ徹底的な検証をする必要があるはずだ。2人の日本人の命が奪われたのだから当然のことではないか。安倍総理自信、「日本人の命(を守る責務は)、すべからく国の最高責任者である私にある。その責任を引き受けるのは当然のことだ」と述べている(※7)。
にも関わらず、ろくろく検証も、責任の追及もされていない。それどころか、誰からもさしたる批判も受けない安倍総理は、「戦争」に向かって、日増しに勢いづいている。
自民党の鳩山邦夫議員グループが都内で開いた会合で、安倍総理は、「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本触れさせない。その決意と覚悟でしっかりと事に当たる」(※8)とまで語った。
鳩山議員が「首相が『罪を償わせる』と言ったことは、国民として本当に安心した」と述べたことに対する発言だという。
もしかしたら、「テロとの戦い」を誓う安倍総理の言葉を頼もしく思う人もいるかもしれない。しかし、「テロとの戦い」を喧伝するのと引き換えに、「平和国家日本」という、70年間かけて築きあげてきた「ブランド」と、「世界との信頼関係」を失うことの意味を本気で考えなくてはならない。
これまでとは見える景色が変わるだろう。海外に出たら、街では息を潜めるようにして目立たないよう心がけ、周囲には注意を払い、たとえ日本語でも大声で話せない。そんな窮屈な思いをしなければいけない。本当にそれでいいのか。
海外で展開するビジネスも萎縮を余儀なくされるだろう。今回の安倍総理の中東歴訪に、軍需関連企業26社の関係者が随行したという。彼らはイスラムとこれから武器取り引きなどで商売してゆくのだろうが、現地駐在員自身が危険に身を晒すことになる。その覚悟はどれほどあるのだろうか。
■「イスラム国」を利用した「ショック・ドクトリン」
今後の日本の在り方を真剣に検討しなければならない分岐点に立っているというときに、安倍総理は、お構いなくアクセルを踏み込み、「戦争」へと続く道を爆走しようとしている。
安倍総理は2月3日の参院予算委員会で、有志連合による過激組織「イスラム国」への空爆作戦に関し、仮に自衛隊が後方支援を行ったとしても、海外での武力行使を禁じた憲法9条には抵触しないとの認識を示した。
その上で「有志連合に後方支援するための法律がないから(今は)できないし、法律ができても政策的にそれは行わない」と強調。社民党の福島瑞穂副党首の質問に答えた(※9)。法を少し整えれば、空爆支援も違憲ではない、と断言したのだ。
また、安倍総理は5日の参議院予算委員会で、自衛隊が多国籍軍などに対する後方支援に当たれるようにするための法整備について、「国会が開かれている場合と開かれていない場合があり、特別措置法で直ちに対応できるのかという大きな課題があるので、恒久法を検討している」と明言。これまでは派遣のたびに特別措置法を成立させ、海外派遣の根拠にしてきたが、今後は自衛隊の海外派遣を恒久化する考えを示した(※10)。
さらに安倍内閣は6日の閣議で、集団的自衛権について、「イスラム国」のように、国家として承認していない相手も行使の対象になり得るとの答弁書を決定。答弁書では、「武力攻撃は一国に対する組織的、計画的な武力の行使」と定義したうえで、国家以外の主体による攻撃でも該当する場合があるとした。民主党の桜井充参院議員の質問主意書に答えた(※11)。
もっとも驚くべきは、「経済的損失」に対しても武力で応じる、という方針が示されたことだ。
今国会に提出予定の安全保障関連法案で、日本への武力攻撃が予測されていなくても、「国民に経済的な被害が生じかねない事態」と判断すれば集団的自衛権の行使を認める案を、国家安全保障会議(NSC)の事務局に当たる国家安全保障局がまとめたことが3日、判明した(※12)。
「集団的自衛権行使容認」の閣議決定が示した武力行使の範囲を可能な限り広く捉え、中東・ホルムズ海峡での戦時の機雷掃海も視野に入る案で、公明党は拒否する構えだというが、ここまで発想が飛躍するとは、正直、想像をはるかに超えている。
もともと今年の国会は「安保国会」と目されていたが、「イスラム国」事件からわずか数日の間に、まさに「ショック・ドクトリン」的に、さまざまな日本の安全保障方針が決められてしまっていたのである。
「対テロ戦争」を口実に、日本は、確実に軍事国家に進もうとしている。
■カサースベ父「米国主導の有志連合へのヨルダンの参加はわれわれの利益にならない」
テロとの戦いに終わりがないことは、9.11以降、米国が証明したといえる。むしろ、世界中におけるテロは勢いを増すばかり。報復の連鎖は断ち切らなければならない。
「今はただ、悲しみの涙がこみ上げてくるばかりです。しかし、この悲しみが憎悪の連鎖になってはならないと、心から信じております」。戦争のない社会を作りたい、戦争と貧困から子どもの命を救いたい、という後藤さんの思いを、この間、代弁しつづけた後藤さんのお母さん。後藤さんの死を受け、「健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています」と語った。
「イスラム国」による焼殺映像が公開されたヨルダン空軍パイロットのモアズ・カサ―スベ中尉の父、サフィさんは、英BBCのインタビューに「モアズが空軍に入ったとき、まさか国外での戦闘に参加することになるとは思わなかった」と語ったという。さらに、「米国主導の有志連合への参加はわれわれの利益にならない。これはわれわれの戦争ではない」と批判した。
我が子を殺されたら、残された遺族は、復讐の念に燃えたぎるものだ、という思い込みが、日本で、そしてヨルダンで崩れていく。悲しみが、そのまま報復への駆動力となるわけではない。
【注釈】
(※1)日刊ゲンダイ 2015年2月2日 「その罪を償わせる」…安倍首相が自ら声明に加筆していた
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156897
(※2)共同通信 2015年2月3日 17:56 首相「報復」発言に米で注目 日本では異例と各メディア
http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015020301001967.html
(※3)官邸HP 平成26年5月15日 「安倍内閣総理大臣記者会見」
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0515kaiken.html
(※4)(IWJ)2015/02/02 日本が「戦争なしでは生きられない国」になってしまう――岩上安身が元経産官僚・古賀茂明氏に聞く
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/229813
(※5)BBC 2015年2月1日 Japan hostage killing: Critical test for PM Shinzo Abe
http://www.bbc.com/news/world-asia-31084749
(※6)NYタイムズ 2015年2月1日 「Departing From Japan’s Pacifism, Shinzo Abe Vows Revenge for Killings」By MARTIN FACKLER
http://www.nytimes.com/2015/02/02/world/departing-from-countrys-pacifism-japanese-premier-vows-revenge-for-killings.html?_r=1
(※7)日経新聞 2015年2月4日 12:19邦人人質事件、首相「結果の責任は私にある」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS04H0J_U5A200C1EAF000/
(※8)朝日新聞 2015年2月3日 22:41 「これから日本人に指一本触れさせない」首相が決意表明
http://digital.asahi.com/articles/ASH236WJHH23UTFK01B.html
(※9)WSJ 2015年2月3日 安倍首相、9条改正に意欲=空爆後方支援否定も「合憲」—参院予算委
http://jp.wsj.com/articles/JJ12011662579006184373520186461303049549475?tesla=y&tesla=y
(※10)NHK 2015年2月5日 18:48 首相 後方支援で恒久法の制定目指す
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150205/k10015248141000.html
(※11)読売新聞 2015年2月7日 9:21 「イスラム国」集団的自衛権対象なり得る…政府
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150207-OYT1T50010.html
(※12)毎日新聞 2015年2月4日 集団的自衛権:「経済的被害でも行使」公明拒否の構え
http://mainichi.jp/select/news/20150204k0000m010111000c.html
【参考:藤田早苗さん関連記事】
【IWJブログ・特別寄稿】秘密保護法、ピレイ国連高等弁務官「修正案を含めたさらなる協議を望む」(藤田早苗 英エセックス大学人権センター講師)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/132139
2013/12/18 「秘密保護法は日本自ら批准した『国際人権条約』にも違反している」 〜岩上安身による藤田早苗氏(英エセックス大学人権センター講師)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/116997
2014/06/20 「情報は人権の要石」 国連・自由権規約委員会での秘密保護法審査を前に、岩上安身が英エセックス大学人権センター講師・藤田早苗氏に聞く
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/147623
2015/01/06 「戦争は秘密から始まるという真実」――国連を通じて働きかけ続ける英エセックス大学人権センター・フェロー藤田早苗氏に岩上安身が聞く
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/215066
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