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【長谷川豊】この時期にシリアに入りたい?売名だと思います
2015年2月9日 11時0分
http://news.livedoor.com/article/detail/9765694/
本日のテーマは、フリーカメラマンのシリア渡航計画を巡り、外務省がパスポートの返納をこの男性にさせたことで、「邦人保護か、報道の自由か?」と議論を呼んでいることについて、持論を展開します。
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新潟に住むフリーカメラマンの男性が、この時期にシリア渡航を計画したんですが、こちらが「邦人保護か、報道の自由か?」と議論を呼んでいるそうです。
外務省は7日、シリア渡航を計画していた男性に対して、旅券法に基づきパスポートの返納を命じ、男性から旅券を受領したと発表しました。この男性は朝日新聞の取材に対し返納の事実関係を認め「今夜、外務省旅券課の職員が来て、パスポートを持って行かれた。(憲法が保障する)渡航と報道の自由はどうなるのか。突然のことで困惑している」と話したということです。
さすがにこの話は14年間にわたり2000近くの現場を取材してきた人間としては、一言申し上げたいと思います。
このカメラマンさんの気持ちは分からないとは言いません。私も様々な現場で、ディレクターの制止を聞かずに突っ込んで行った経験があります。伝えるべき現場があれば、取材したくなるのが私たちのサガです。一般の方々には分からないでしょうが、胸が熱くなるというか…そこにニュースがあれば伝えたくなりますし、ほかの人には取材できないようなものを取材したくなるのです。そして、それが安全に出来たとき、何らかの幸運が重なった時に、それらの取材内容は「スクープ」と呼ばれます。なかには表彰されるものもあるほどです。
つまり、ジャーナリストにとって、危険な地域に赴かなければ「スクープ」は手にすることが出来ません。要は、名を挙げることもできないのです。
フリーのジャーナリストは安定収入のある仕事ではありません。危険とも思えるところに取材に行かなければ、収入も入らない仕事です。危険な地域の取材は、大手のテレビ局や新聞社は、一部上場企業としての責任も管理やコンプライアンスもありますから社員を取材に出すわけにはいかないからです。なので、より危険な地域に取材に行こう、とすることは多くの方とは違って、私は理解できるところ、というのが正直なところです。
でも、今回のケースに関しては、ちょっと私の印象は違います。
まず、「本当に伝える意思を強く持ち、何が何でもイスラム国を取材したかった」のなら、私なら絶対に渡航理由としては「旅行のため」「あくまで安全な周辺取材のため」と報告するでしょう。伝えたいことがあるのですから。取材したいことがあるのですから。この時期に、シリアに行く、といったところで行ける訳なんてありません。本気で取材したいのであれば、私なら絶対に渡航理由には別のことを書きます。そして、秘密裏にシリアに潜入を試みるでしょう。外務省の立場もあることくらい、私たちは分かっています。こんな時期に渡航を許せるわけがありません。旅券法には「邦人の命の安全を守るため」であれば、パスポートを取り上げることが出来る権利があることは常識の範囲です。
※旅券法19条=「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」に、名義人に旅券の返納を命令できると規定。
と、ここまで考えるとすでにネットでも多く言われている通り、この男性のした行為は…ただの売名行為であることが分かってきます。正直言って、何もこの時期にシリアに行かなくてもいいんじゃないか、という当たり前の感覚はジャーナリストなのでおいておきましょう。でも、この男性も旅券法19条くらいは絶対に知っています。フリーのジャーナリストでこれを知らないはずはありません。
で、あれば、「外務省が止めてくれるのを知った上で」ごねた、と見えざるを得ない、というのが私の見解です。
逆に19条すら知らずに渡航しようとしていたのであれば、ジャーナリストとしては致命的なただの「勉強不足」です。いや、絶対に知ってますけれど、もし知らなかったら、その程度の知識もなしに、危険地域に行こうとしていたというなら逆に恐ろしいことだということです。
今回の件は外務省の判断が正しいとか適切、というのではなく、あくまで「当たり前の処置」がなされただけ」だと思います。
長谷川豊(Hasegawa Yutaka)
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