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2015年02月10日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆朝日新聞DIGITALが2月8日午前時11分配信したところによると、「外務省は7日、シリア渡航を計画していた男性に対し旅券法に基づいて返納を命じ、男性から旅券を受領したと発表した。返納を命じた理由について、同省は『隣接国を経由してシリアに渡航する旨を表明しており、警察庁とともに渡航の自粛を強く説得したが、意思を変えなかった』などと説明している。同省が名義人の生命保護を理由に旅券の返納命令を出すのは初めて」という。旅券返納を命じられたのは、フリーカメラマンの杉本祐一さん(58)=新潟市中央区である。
安倍晋三首相が、「シリア渡航」を禁止するのは、米英フランス中心の「有志連合」が展開中の「イスラム国=ISIL」殲滅作戦の「主戦場」が「シリア」であるからでもある。
どうしても、渡航したいというのであれば、いまから161年前の嘉永7年(1854年)3月28日午前2時ごろ、長州毛利藩の藩校「明倫館」軍学教授だった吉田松陰(当事25歳)と愛弟子・金子重輔(金子重之輔、当時24歳)の2人が、「国禁」を犯して下田に停泊していたペリー艦隊に小船を寄せ、未知の国である米国を目指して密航を希望して失敗、萩城下の「野山獄」(士分の者を収容する上牢)に投獄された。金子重輔は、庶民を収容する下牢「岩倉獄」で病死した、この「蛮勇」を思い出さなければならない。
安倍晋三首相は、今回のイスラム教スンニ派過激武装勢「イスラム国=ISIL」による日本人2人人質事件での対処に失敗したことに余程懲りているのだろう。米国では、このようなジャーナリストからパスポートを取り上げるというような措置は過去も、現在もなく、未来永劫にあり得ないと言われている。あえて危険な戦場に出かけていき、人質になり殺害されても、米政府は原則として関知しない。「自己責任」を重んじる国であるからだ。
だから、日本でも米国流儀を行うのであれば、手術をする前に患者から万が一失敗しても医師や医療機関は、責任を問わないという承諾書を取るように、外務省も「日本政府は生命の安全は保障しない。このことを承諾する」と一札取ればよいのである。
◆しかし、安倍晋三首相が、「イスラム国=ISIL」=「テロ組織」と決めつけて、「テロとの戦い」に熱を上げ、ジャーナリストの「シリア渡航」を禁止することを、パスポート発給禁止の大義名分とすれば、その影響は、深刻で多大である。
というのは、テロリストによる「卑劣なテロ事件」は、世界各地で頻発しているからである。「卑劣なテロ事件」が起きている国や地域への渡航禁止=パスポート発給禁止が、一般原則となる。
すると、たとえば、以下のような国々や地域が、渡航禁止の対象としなくてはならなくなる。米国(ボストン・マラソン事件)、英国(ロンドン事件)、フランス(風刺絵を掲載したパリの新聞社事件)、ロシア(モスクワ事件)、中国(北京天安門事件)、アルジェリア(日揮プラント襲撃事件)、中東全域、部族紛争激化のアフリカ全域などである。
◆渡航禁止の対象国や地域がどんどん増えて行けば、渡航できる国や地域は、ますます少なくなり、最後は、地球上のどこにも渡航できなくなり、気づいたとき、日本は再び事実上、「鎖国状態」になっていないとは限らない。日本は、江戸時代の265年間、どこの国とも戦争をせず、平和を維持してきた。ところが、開国して文明開化して以来、日本は、「石炭→石油→天然ガス→ウラン」などをめぐる「資源エネルギー争奪戦争」の渦に巻き込まれてきた。
すなわち、日清日ロ戦争、第1次世界大戦、第2次戦争(大東亜戦争=日中戦争・太平洋戦争などの複合的戦争)、その後も、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン空爆・イラク戦争、イスラム国=ISIL殲滅作戦という具合に「10年サイクル」で米国が勃発させる大戦争では同盟国米国に対する後方支援で関わり、戦争とは無関係ではいられなかった。
日本がこうした大戦争の「業」を断ち切り、逃れる道は、ただ一つ、再び「鎖国」するしかない。そして、当面は安倍晋三首相の「由(よ)らしむべし知(し)らしむべからず」(人民を為政者の施政に従わせることはできるが、その道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はない=「論語」泰伯より)の政治に従順にならざるを得なくなる。NHKが2月9日報じた世論調査の結果によると、安倍晋三内閣の支持率が、今回の「人質事件」以降、54%(前回調査より4ポイント上昇)を回復しているという。これが、日本人の国民性を象徴している。日本人は、政府の情報操作に乗せられやすく、信じやすい。
【参考引用】朝日新聞DIGITALが2月8日午前時11分、「シリア渡航を計画、カメラマンに旅券返納命令 外務省」と見出しをつけて、以下のように配信した。
外務省は7日、シリア渡航を計画していた男性に対し旅券法に基づいて返納を命じ、男性から旅券を受領したと発表した。返納を命じた理由について、同省は「隣接国を経由してシリアに渡航する旨を表明しており、警察庁とともに渡航の自粛を強く説得したが、意思を変えなかった」などと説明している。
同省が名義人の生命保護を理由に旅券の返納命令を出すのは初めて。旅券法19条は、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」は、外相などが名義人に旅券の返納を命令できると規定。同省は同法に基づいて「緊急に旅券を返納させる必要があると判断」したとしている。
旅券返納を命じられたのは、フリーカメラマンの杉本祐一さん(58)=新潟市中央区。杉本さんによると、今月27日から取材などのためにシリアへの入国を予定していた。外務省は杉本さんに対し、返納を命じた理由について、シリアへの入国を計画している▽シリアでは日本人2人が拘束、殺害されたとみられ、過激派組織「イスラム国」は日本人に更なる危害を加えると宣言している――などと説明したという。同省職員が7日、杉本さんの自宅を訪れ、直接旅券を受け取ったという。
杉本さんは同日、朝日新聞の取材に返納の事実関係を認め、「今夜、外務省旅券課の職員が来て、パスポートを持って行かれた。(憲法が保障する)渡航と報道の自由はどうなるのか。突然のことで困惑している」と話した。
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