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『イスラム国』人質救出の失敗「検証」させぬ政府・・・「特定秘密に当たる」と経緯明らかにせず
http://www.j-cast.com/tv/2015/02/06227311.html?p=all
2015/2/ 6 17:49 J-CASTニュース 元木昌彦の深読み週刊誌
「よく頑張ったよ、後藤健二さん」
2月2日朝(2015年)、少し週刊誌について知っている人は『週刊現代』の新聞広告を見て「おや?」と思ったに違いない。週刊現代の締め切りは木曜日の夜で、後藤さんが殺害された映像がYoutubeで公開されたのは発売前日の日曜日の早朝だったからだ。もしや週刊現代だけが極秘に後藤さん殺害情報を掴んでいたのか。そう思って読んでみたがそうではなかった。
亡くなられた後藤さんはもちろん、残された家族や親類、友人たちには失礼になるが、日本中が後藤さんの死の衝撃と悲しみに包まれているとき、このタイトルはみんなが思っている気持ちをそのまま表していると、私には思えた。後藤さんの安否がわからない中でタイトルをつけなくてはならない週刊現代編集長が、考えに考え抜いてつけたタイトルに違いない。
■「子どものころは丸顔で本当に可愛かった」後藤健二さん兄の慟哭
『週刊文春』と『週刊新潮』は後藤さんの死についてさまざまな角度から取材している。週刊文春は実兄の後藤純一さん(55)の「慟哭手記」を巻頭に掲載している。弟の死を受け入れざるを得ない動画を見て、「覚悟はしていたはずなのですが、その後は虚無感だけが襲ってきました」と話している。
健二さんが行方不明になっているという連絡(どこからとは書いていない)があったのは昨年の11月7日だったという。8歳下の弟は子どもの頃は「丸顔で本当に可愛かった」こと、高校時代はアメフトをやっていたが腰を痛めてやめたこと、法政大学在学中にアメリカのコロンビア大学に語学留学してジャ−ナリズムに関心を持つようになったこと、テレビの制作会社を経て自分の会社を作ったが仕事がなかったため、彼がやっている学習塾で英語を教えていたことなどを語っている。
仲間のジャーナリストに話を聞くと、普段は慎重に綿密な取材計画をたてて行動する弟が、なぜ今回に限って焦ってシリアに行ったのか、「今まで無事でいられたことによる自信過剰というか、慢心があったのではないか」と自らに問いかけている。淡々としてはいるが、兄の悲しみが心にしみ入ってくるインタビューである。
週刊文春はこの事件のさなかに、徳島県の30代男性がとんでもない画像をツィッターに投稿して、大きな騒動になっていると報じている。<十四世紀に編纂されたペルシャ語による歴史書「集史」。ここにはキリスト教三大天使のひとり、ガブリエルがムハンマドに天啓を授けている図を表した絵画が掲載されているのだが、問題画像はこれを加工し、ガブリエルがムハンマドの額を打ち抜いている姿にしてしまっているのだ>(週刊文春)
ネット上で「このコラージュはさすがにマズいだろう」という意見が広まり、ハンドルネーム「ゆき氏」の犯人捜しが始まった。あっという間に実名、徳島市内の自宅住所、アルバイト先などが晒されてしまったというのである。そして、アラビア語のハンドルネームを持つ者たちから怒りを込めた「殺害予告」がツィッター上に投稿されたという。
だが、週刊文春によれば、これはどうやら「ゆき氏」というハンドルネームからたどり、それと共通点のある人間の情報を無責任にネットに投稿したもので、真の画像投稿者は別の<「30代の男性」(徳島県警警備部公安課)>だという。さらに取材を進めていくと、このハンドルネームを最近使っていたのは徳島県内の10代の女性だという情報もあり、事態はより複雑だという。
それはさておき、このような画像を投稿するバカのおかげで、30代の男性の自宅や、間違われて実名を出されてしまった人の自宅周辺も県警の捜査員が警戒中だという。こういう下劣な画像をあげた人間に言論・表現の自由をいう資格はない。
■日本人標的で欧州・中東より危ない東南アジアのリゾート地
週刊新潮はこれから誘拐の危険が高まる海外リゾートやテロのリスクがある国内施設について触れている。まず海外では欧州や中東よりも、「むしろインドネシアのバリ島など、東南アジアのリゾート地だと思います」と話すのは軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏。東南アジアには狂信的なイスラム原理主義者が多いからだという。
国内では渋谷のスクランブル交差点など人の多く集まるところは要注意だろうが、警視庁公安部外事三課の捜査員は、2002年に都内に住むパキスタン国籍の人間を入管法違反で逮捕したが、その交友関係からたいへんな資料が出てきたといっている。
その人間はアルカイダのナンバー3の指揮下にある米国オフィスと頻繁に連絡を取り合っていたそうだが、出てきたのは0系から800系に至る新幹線の写真だったという。<「やつらがテロ対象として新幹線に強い関心を抱いていたのは間違いありません」(同捜査員)>
新潟の柏崎狩羽原発や福井県の大飯原発など複数の原発施設の写真も出てきたそうだ。
想像したくもないが、日本はテロリストたちにとってやりやすい国であることは間違いない。そうした日本がテロリストの標的にならないように「国民の安全と安心」を守るのがトップの役割であるはずだが、安倍首相はそれをわかっているのだろうか。国会の答弁を聞いている限り、その覚悟は伝わってこない。「テロに屈しない」というだけで、今回の人質事件の詳細な経緯も「特定秘密」に当たる恐れがあるから詳らかにできないのでは、政府がどのような対応をし、どこが間違ったのかの検証すらできないではないか。
だいいち、湯川さんはもちろん、後藤さんまでもが人質になっている情報を掴んでおきながら、中東歴訪中に「イスラム国と断固戦う」と強調する演説を行い資金援助を表明したのはなぜなのか。これがイスラム国側の怒りを駆り立て、要求をエスタレートさせたのではないのか。
まずは安倍首相の責任を国会で明らかにし、野党がそれを十分にできないのであれば、ものいわぬ新聞、ものいえぬテレビに代わって週刊誌が得意の「徹底追及」すべきである。
■安倍内閣より一枚も二枚も上手だった「イスラム国」交渉力!金塊運ぶ案も・・・
今週は『週刊ポスト』だけがメディアの責任と「人質解放交渉」の裏側をわずかだが報じている。週刊ポストは、野党も最初から安倍批判を封印し、「安倍首相の中東歴訪がテロリストを刺激し、今回の事件を招いたかのような、的外れの政権批判が野党の一部などから出ていることだ」(読売新聞1月23日付社説)、「事件は首相の歴訪が招いたものとの批判があるとすれば、誤りだ。卑劣なテロによって評価が左右されることはない」(産経新聞1月22付社説)のように、安倍政権の御用新聞が安倍の責任逃れに荷担していることを難じている。
週刊ポストによれば、一昨年の英国サミットで安倍首相が署名した首脳宣言には「テロリストへの身代金を拒否する」ことが盛り込まれていた。それによってイスラム国へ直接身代金を払うことはできないため、ヨルダンへの経済援助という形をとることが検討されたという。
しかし、イスラム国のほうが一枚も二枚も上手だった。ヨルダンを噛ませることで身代金も死刑囚の釈放も手に入れようとしたのだと国際政治アナリストの菅原出氏は見る。
また週刊現代によれば、湯川さんとの交渉で、身代金として払えばFRB(米連邦準備制度理事会)に嗅ぎつけられてしまうから、数億円の金塊を運ぶ案まで出されたという。だが、「湯川さんはすでに殺害されている」という情報が出たため実現しなかったという。真偽の程はわからないが、「カネですめば」という考え方が日本政府にあったのは間違いないのかもしれない。
そもそも、日頃から人的接触もルートもないままの裏交渉がうまくいくはずはない。日本という国は外交には未熟で、カネだけで解決しようとする国だというイメージが定着すれば、これから第2、第3の人質事件が出てくるのはいうまでもない。
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