http://www.asyura2.com/15/senkyo179/msg/545.html
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今回の農協改革で、安倍政権は岩盤規制さえ穿つ規制改革派と自慢できる名を取り、農協上部組織は状況の変化を踏まえ新規事業の拡大が計れる実を取ったと言えるだろう。
産業国家であり対外直接投資国家でもある日本が、今後も、高率関税政策で農産品の国内価格を維持するという政策を維持していくのは難しい。
工業製品の輸出や金融などのサービス事業の海外展開をより拡大したいと考えるのなら、“対価”として農産品の関税を引き下げる方向を選択するしかないだろう。
かといって、国家の根幹である食糧生産基盤を瓦解させることは許されない。
今後必要な政策は、農家に対する所得保障である。低関税=低価格で入ってくる輸入品に対抗できる品質と安全性を達成しつつ、価格面でもそれほど差がつかない条件で事業を継続できる農家(農業法人)を国策によって支えなければならない。
これまでの農協機構は価格維持政策があることに支えられていたものであり、価格及びマージンが下がる(その代わりに所得補償)状況では“頭でっかち”になり転んでしまうことになる。(農協組織がマージンを取っても、農家の手取りがそれなりに残るのが「価格維持」政策のメリット)
一方、農協組織は、地方の雇用を支えている面もあるから、易々と事業活動を縮小させるわけにはいかない。JA全農は、農協法に縛られる現状よりも、株式会社に転換し“自由に”思い切って商売ができる道を望んでいるはず。
国民経済(マクロ)的には、「価格維持」政策から「所得維持」政策に転換したほうが得である。(国民消費で同レベルの場合食費支出が減少し、農業向け政策コストもこれまでよりも少額で済む)
※ 参照投稿
「全中全農は農協的束縛から離れ「一大アグリ企業」に変身」
http://www.asyura2.com/14/senkyo166/msg/349.html
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農協改革 大筋決着へ
JA全中、監査権限撤廃
全国約700の地域農協の競争と創意工夫を促す政府の農協改革は、全国農業協同組合中央会(JA全中)の制度を廃止することで決着する見通しとなった。地域農協を束ねるJA全中の監査・指導権をなくし、一般社団法人に転換する。1954年に始まった中央会制度をほぼ60年ぶりに見直し、地域農協の自立につなげる。JA全中は受け入れる方向だ。
安倍晋三首相は6日、西川公也農相と会談し、農協改革の骨格について説明を受けた。首相は12日に予定する施政方針演説で、全中の農協法上の位置づけを「廃止」する方針を表明する。
政府はいまの国会に農業協同組合法改正案を提出し、JA全中の組織規定や監査・指導権をなくす。2019年3月末までに一般社団法人に移行させる。都道府県ごとにある地方中央会は農協法の組織である「連合会」にする。4月の統一地方選や来年の参院選をにらみ、事実上温存した。
政府が描くのは農産物の流通の約半分を握る農協が、横並びのサービスではなく、競い合って生産性を高める姿だ。農協の組合長が経営感覚を磨き、新たな農産物の開発や流通ルートを開拓するように期待を寄せる。
農協の経営を担う理事の半数以上に経営者やプロ農家を積極的に登用して、大規模農家の声を反映しやすくする。高齢で零細な農家の集まりの象徴とされる農協に風穴を開け、農業再生の本拠地として位置づける。
これまで地域農協の監査は全中が一手に引き受けていたが、公認会計士の外部監査に一本化する。500人以上の職員を抱える全中の監査部門は分離・独立して監査法人にする。地域農協は民間の監査法人と、全中を母体とする監査法人から選べるようになる。
JA全中は政府の農協改革に反対の構えだったが、新たな監査法人の円滑な運営を条件に容認する方向にカジを切る。全中は農協監査のプロ「農協監査士」を約340人、公認会計士を約30人雇っているが、監査士を公認会計士の補佐役という位置づけにして、農協監査を続けられるように求めている。政府・自民党と詰めの調整中だ。
全中は社団法人に移行後、農協の間の意見集約や広報活動、政策提言に専念する。農政運動は政治団体の全国農政連が担うようになる。
農産物の集荷・販売を担う全国農業協同組合連合会(JA全農)は株式会社に転換できるようにする。力のある農協が出資を増やし、発言権を高めることも可能になる。農協の金融事業を巡っては、農協が貯金やローンなどの金融事業を農林中央金庫に譲り渡せるように道筋をつけた。
全中が農協改革を大筋で受け入れる姿勢に転じたことで、政府は農協に会社員など「准組合員」が大量に加入している問題を是正する規制の導入は見送る方向だ。
[日経新聞2月7日朝刊P.1]
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[解説]強い農業へ農政転換 農協改革 体制の刷新急務に
農協の上部組織、全国農業協同組合中央会(JA全中)の制度をなくすことは、「強い農業」の実現を目指す農政にとって一歩前進になる。JA全中は規模の小さい兼業農家の利害を代弁し、政治に圧力をかけることが多かったからだ。
一般の会社と農協との最も大きな違いは、組合員の農家が規模に関係なく等しく意思決定に参加できる「一人一票制」にある。日本の農家はほとんどが兼業のため、制度的には兼業の意向に左右されやすくなる。
その声を集約し、政治に働きかけてきたのがJA全中だ。典型例が旧食糧管理制度時代の米価闘争。農家の数の力を背景に政治を動かし、政府が農家に支払う米価を高止まりさせた。最近では環太平洋経済連携協定(TPP)に反対するため、農家を東京に集めて何度も集会を開き、政権との溝を深めていた。
問題はこの先だ。JA全中の法的な根拠をなくすことで、各地の農協を束ねて政治を揺さぶる力は弱まる。だが一方で、成長が見込まれる農業法人などの意見を幅広く吸い上げる体制はいまの農政にはない。
小規模農家の保護に傾きがちだった農政から脱却するには、競争力強化のために何が必要かを見定める仕組みづくりが急務だ。
地域ごとの農協の課題も重い。コメの輸出や作物のブランド化に熱心な農協もある半面、これまで通りの運営を続けて農家の離脱を招いた農協も少なくない。
スーパーや外食店、食品メーカーと連携するなど農家の収益を安定させ、拡大する努力が求められる。
JA全中以外の全国組織も変革が必要だ。農林中央金庫の運用資産は有価証券投資が中心で、農業法人などを金融面で支えるノウハウは乏しい。今回の農協改革で政府は地域農協の金融業務の農林中金への移管を促しているが、農業振興に役立たないなら農林中金も存在意義を問われる。
兼業を中心とする日本の農家は平均年齢が66歳まで高齢化し、大量引退が目前に迫っている。農家数の急減で、地域にとって今後ますます大規模経営の役割が高まる。JA全中の制度廃止は、農協がそのための組織に生まれ変われるかどうかを突きつけている。
(編集委員 吉田忠則)
[日経新聞2月7日朝刊P.7]
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