12. 2015年2月08日 20:23:11
: GY0AcLTKk2
◆ 報 道 特 集 : 書 き 起 こ し ◆金平茂紀: こんばんは、 報道特集です。 最悪の結末となったイスラム国による邦人殺害事件の衝撃が 私たちの社会に強く、大きく、深く広がっています。 私たちは今、何を考え、何をなすべきなのか、あるいは何がなされるべきであったのか。 今週の「報道特集」も総力取材でこの問題を徹底検証します。 日下部正樹: 次は、そのイスラム国に関するニュースです。 過激派組織イスラム国は6日、 人質のアメリカ人女性がヨルダン軍による空爆で死亡したと発表しました。 小林悠: ただ、アメリカ政府は裏づける証拠はないと懐疑的な見方を示しています。 ナレーション: 過激派組織イスラム国のネット上の活動を監視しているアメリカの民間団体は6日、 イスラム国がネットの掲示板でヨルダンの空爆が、 アメリカ人女性の人質を殺害と題する文書を掲載したと発表しました。 女性の個人情報とともに空爆後とされる建物の写真が掲載されているということです。 一報を受け、アメリカのホワイトハウスは非常に懸念しており、 情報機関が確認中とする一方で、 国防総省高官はイスラム国の主張を裏づける証拠は現時点で何一つないと話し、 懐疑的な見方を示しています。 ヨルダンは、パイロットを殺害したイスラム国への空爆を強化する構えを示していて、 イスラム国による今回の発表はヨルダンを牽制する狙いもあると見られます。 金平茂紀: 特集です。 イスラム国による邦人人質事件を今日はこの時点でできる得る限り徹底検証します。 まずは、後藤健二さんが殺害されたという第一報が 流れた以降のヨルダンを中心とした動きからお伝えします。 日本大使館前:アンマン=金平茂紀 後藤さんが殺害されたというビデオがインターネット上に投稿されたという一報が入って今、 現地対策本部が置かれている日本大使館前に来ましたけれども、 あのビデオは予告していたとおりのことを、まぁ、イスラム国側がやってしまったという 非常に冷酷無比というか、非道な結末を迎えてしまったということですけれども。 (ホテルのロビーで臨時ニュースが…) 官邸から:アベサン テロリストたちを決して許しません。 その罪を償わさせるために、… 後藤さんの母:石堂順子さん 憎悪の連鎖になってはいけない と、心から信じております。 ヨルダン首相官邸前:金平茂紀 今、首相官邸前ですけれどもこの時間、 パトカーが1台停まっていますけれども、今、静まり返ってますね。 (アンマンで高遠菜穂子さんに会った。 イラクの難民キャンプに医療品を届けるため来ていた。) 金平茂紀: 第一報に接したときの気持ちは、正直いってどういうことを考えました? 高遠菜穂子さん: 言葉にならない…残念。 (翌日、アンマン市民に後藤さん殺害について聞いた) 何と言っていいかわかりません。 ヨルダン政府はきちんとした対応をしているように思えません。 後藤さんの奥さんとご家族の方にお悔やみ申し上げます。 このような残酷なことが二度と起きないように祈っています。 イスラム教に対するイメージが悪くならないで欲しいです。 金平茂紀: えーっと、今日の新聞がこうやってありますね。 これ、ケンジ・ゴトウの… (アンマン市民) 後藤さん殺害のニュースをとても悲しく思っています。 日本のことが好きだから、 イスラム国の連中にアッラーの罰が下されますように。 ヨルダン政府はもっと早く交渉すべきでした。 このような鈍い対応ではダメです。 (アンマンにある民間テレビ局 「ヤルムーク」カンデル・アルマシャイク報道局長) 政府は記者会見で短く声明を出して去ってしまいます。 私たちには情報を得るソースがないのです。 金平茂紀: このテレビ局はヤルムークというムスリム同胞団系のテレビ局ですけれども、 その処刑のシーンというのは政府が放送で出すことを禁止しているということで 今見ていたら、その映像というのは流れていませんでした。 パイロットのカサースベ中尉の家族や部族が集まっている家ですけれども、 後藤健二さんの殺害を示す動画が公表されて以降、 希望が失われてしまったのか、 こういうふうに、この中も閑散とした状況となってますけど。 カサースベ中尉の父親: アラビア語がわからない人に、きちんと通訳しなさい。 私たち家族は誤解されています。 通訳ができない人がいる。 通訳しても、それを理解できない人もいる。 メディアは、スクープを目指して私たちが言ってもいないことを報道しているではないですか。 (2日、人々が日本大使館の前で祈りをささげた) (3日 午後:ヨルダン時間 カサースベ中尉の殺害映像が投稿された) 殉教者の血は無駄ではない 殉教者はアッラーに愛される (動画投稿から約9時間後 リシャウィ死刑囚ら二人の死刑が執行された 憎悪と復讐の連鎖はどこまで続くのか) (コマーシャル) ナレーション:屋良有作 なぜ人質たちの命を救うことができなかったのか。 イスラム国の前身組織に拘束された外国人ジャーナリストの解放を仲介したという ヨルダン人弁護士に話を聞いた。 (映像:ムーサ・アブドラ弁護士 私はなんとしても命を助けたかった) ナレーション:屋良有作 ムーサ・アブドラ弁護士はおととし9月にシリアで 人質となったスペイン人ジャーナリストの解放交渉を依頼されたと言う。 (映像:ムーサ・アブドラ弁護士 スペイン大使館から人質の解放交渉を任されました。 そこで人質の経歴を調べると彼らがジャーナリストで、 しかも人道支援に熱心だったことが分かりました。 だから、私は、その点を積極的にアピールしたんです。) ナレーション:屋良有作 そして拘束から半年がたった去年3月、 スペイン人ジャーナリスト2人は無事、解放された。 金平茂紀: Q・人質の解放と引き換えにスペイン政府が金を払ったというのは本当か? ムーサ・アブドラ弁護士: A・知りません、 私は知りません。 ナレーション:屋良有作 交渉の具体的な中身は明らかにしなかったアブドラ弁護士。 今回の日本人人質事件でも協力する意思を示したが日本側からは何の接触もなかったと言う。 ムーサ・アブドラ弁護士: 日本側から連絡がなかったことは残念。 ナレーション:屋良有作 最悪の結末に終わった日本人人質事件。 政府の対応に間違いはなかったのか。 イスラム過激派研究の第一人者、 ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏に話を聞いた。 (映像:ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 日本が中東についてなにも知らないことが分かった。) ナレーション:屋良有作 イスラム過激派についての著作も多いアブハニヤ氏は 日本政府が3つの重大な過ちを犯したと指摘する。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 最も大きな間違いは日本の対応が遅く、 すぐに人質解放に向けて動き出さなかったことです。) ナレーション:屋良有作 アブハニヤ氏が最初に挙げたのは、日本政府の対応のスピードだ。 政府は去年8月に湯川さんが行方不明であることを把握。 さらに、11月には後藤健二さんも不明となっていることを家族からの連絡で知っていた。 しかし… (映像:国会=02月03日参議院予算委員会 小池晃議員の質問。 「(ヨルダンの)現地対策本部が出来た時から、どのような体制だったのか…」 岸田外相の返答。 「基本的には先ほど申し上げました十数名の増員は1月20日以降でありますので、 1月20日以前は(外務省)本省、或いは他の在外公館からの応援はなかった次第です」) ナレーション:屋良有作 湯川さんが不明になったことを受けて去年8月に ヨルダンの日本大使館に現地対策本部を設置した日本政府。 しかし、その体制はイスラム国による殺害予告があった1月20日まで強化されることはなかった。 さらに、政府が犯行グループの特定にも時間を要していたことが明らかになった。 (映像:国会=02月04日衆議院予算委員会 辻元清美議員。 総理、やっぱりね、この1月20日にビデオでああいう形で公開される前ですね、 ここが勝負やったと思うんですよ。 やはりここで非常に大きなですね反省をしなきゃいけない、 相手も特定されていなかったということが今日、明らかになったわけですが、 総理、どのようにお考えですか? アベサン: 残念ながら我々は、 1月20日以前にISIL(イスラム国)という特定出来なかったわけでございますし。 また、ISIL(イスラム国)側からですね、 我々政府に対する要求もなかったわけでございます。) ナレーション:屋良有作 アブハニヤ氏が2つ目に挙げた過ち。 それは、安倍総理による中東諸国の訪問だ。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 もう一つの過ちは「イスラム国」対策として2億ドルの人道支援を表明したことです。) 国会:アベサン 大切なことは実際にこの過激主義、 ISILを中心とする過激主義とヨルダンを初め多くの国々と戦っているんです。 彼らに対して明確にその戦いを支援していく、 そして、日本は人道支援をしていく、 このメッセージを発していくのは当然日本の役割であろうと、 このように考えたところでございます。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 日本と中東諸国は長く友好的な関係が続いてきました。 日本はこの関係を今後も維持していくべきだと私は思います。 テロ対策を掲げて中東を訪問することは控えた方が賢明だと思います。) ナレーション:屋良有作 そして、最後に挙げた過ち。 それは日本が現地対策本部をヨルダンに設置したことだと言う。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 誰が決めたか知りませんが… 最初から交渉のパートナーにヨルダンを選ぶべきではなかったんです。) 金平茂紀: 日本の専門家にもトルコに交渉を依頼すべきだったと言う意見があります。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 その方が確実だったでしょう。 トルコは人質の解放に成功した実績もありますからね。) ナレーション:屋良有作 日本政府は現地対策本部を置くヨルダンに実質的な交渉を委ねた。 しかし、ヨルダンはアメリカなどとともにイスラム国への空爆に参加していて 日本もさらなる敵意を買うおそれがあった。 ならば、むしろ同じくシリアと国境を接しながらも空爆には参加せず、 しかも、去年9月にはイスラム国から49人の人質を 解放させた実績があるトルコに協力を仰ぐべきだったと言うのだ。 国会:記者 Q・ヨルダンに対策本部を置いた判断はどのように考えていますか? 菅官房長官: A・いや、全く問題なかったと思いますよ。 あのー、シリア大使館が避難してヨルダンに置いてあるので、 当然シリアに… 中にですね… ヨルダンに対策本部を置くことは自然なこと…。 ナレーション:屋良有作 一方、日本側からほぼ全面的に交渉を委ねられる形になったヨルダン政府。 一体、イスラム国側との間でどのような交渉を進めていたのだろうか。 アブハニヤ氏は、独自の情報をもとに後藤さんとリシャウィ死刑囚との身柄交換の交渉が 途中までは上手くいっていたのでは、との見方を示す。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 取引は成功しかけていたと思います。 身柄の交換に向けて既にリシャウィ死刑囚を トルコの国境付近に移送したという情報までありました。) ナレーション:屋良有作 実際、一部のアラブ紙では、 ヨルダン当局が死刑囚の釈放を決断したと報じるなど人質の交換に向けた動きが 加速しているとの情報は現地でも飛び交っていた。 しかし、その後、交渉は大きな転換点を迎えた。 アブハニヤ氏によると、それは先月28日、水曜日の夜のことだったと言う。 (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 水曜日の夜にヨルダン側が(「イスラム国」側に)突如パイロットの生存確認を求めたんです。 そこで交渉の流れが変わりました。) 金平茂紀: Q・水曜日(先月28日)の夜が転換点だったと。 では誰がその判断を下したのか? (ヨルダンのハサン・アブハニヤ氏 間違いなくアメリカからヨルダンに対して圧力がかかったのだと思います。 アメリカはイスラム国を正当な交渉相手として認めたくなかったのではないでしょうか。) ナレーション:屋良有作 結局、パイロットの生存情報は寄せられず、イスラム国側は後藤さん、 そしてパイロットを殺害したとする映像を公開した。 最悪の結末を迎えるまでに水面下で一体、どのような交渉があったのか。 政府は各国との連携などを理由に その詳細を明らかにしていない。 ◆ ス タ ジ オ か ら ◆ 小林悠: 日本人2人が犠牲となった今回の人質事件。 これまでのいきさつを整理します。 …、…、…、。 事態は最悪の結末を迎えました。 日下部正樹: その2人の殺害予告ビデオが出てから 日本政府はイスラム国に対してどのように対応したのでしょうか。 水面下の動きの一端がイスラム国とのパイプを持つ イスラム法学者、中田考氏への取材で明らかになりました。 ナレーション:小山芙美 日本政府は人質解放に向け何をしていたのか。 おととい国会で、野党議員からこんな質問があった。 (国会:参議院予算委員会 松田公太議員 Q・中田さんには協力要請されたのでしょうか?) ナレーション:小山芙美 中田さんとは、同志社大学客員教授でイスラム法学者の中田考氏のこと。 その中田氏が今週、日下部キャスターのインタビューに応じ新たな事実を明らかにした。 先月20日、湯川さんと後藤さんの殺害予告ビデオが公開されて以降 独自にイスラム国の司令官と行ったやりとりの詳細。 中田考・同志社客員教授: もう時間があまり残されていません。 先生「イスラム国」は約束したことを執行するでしょう。 ナレーション:小山芙美 司令官とのやりとりはスマートフォンのトークアプリを使って行われていた。 イスラム国司令官: 身代金の支払期限はもうすぐです。 我々に重要なのは「イスラム国」の条件を満たすことです。 もし捕虜が日本政府にとって大切なら急ぐことです。 中田考氏: 私個人としては日本政府に時間的猶予を与え二人を解放して欲しいです。 「先生事態を理解してください。身代金支払期限はもうすぐです。」 緊急感が伝わってきます。 「我々に重要なのは「イスラム国」の条件を満たすことです。」 「もし捕虜が日本政府にとって大切なら急ぐことです。」 向こうから緊急感が伝わってきます ナレーション:小山芙美 中田氏がやりとりを行った、イスラム国の司令官とはシリア人のウマル・グラバー氏。 去年4月、シリア北部でフリージャーナリストの常岡浩介氏が撮影した映像に姿が映されている。 常岡浩介氏: (ウマル氏は)いずれ世界中のイスラム組織はすべて「イスラム国」の下に、 ひとつになるんだ。 中田考氏: テルアブヤドというトルコ国境とラッカの中間にある町なんですけど、 そこのダウワ局というイスラム伝道宣教部門の責任者です。 日下部正樹: これは上級幹部と話ができる人物ですか? 中田考氏: もちろんです。はい、 彼自身、バグダディ容疑者(「イスラム国」の指導者)と何度か会っている。 ナレーション:小山芙美 中田氏は拘束された湯川さんの裁判の通訳をウマル氏から頼まれ、 去年9月、常岡氏とともにイスラム国の支配地域に入った。 だが空爆が始まったため、湯川さんに会えないまま帰国。 その後、北大生がイスラム国に渡航しようとした事件の関係先として 家宅捜索を受けたためウマル氏への接触を控えていたと言う。 しかし、先月20日、 2人の殺害を予告する動画が公開される事態となり中田氏はウマル氏との連絡を再開した。 中田考氏: しばらく私自身が容疑をかけられ 連絡できなくて申し訳なかったと伝え 二人の映像が出たのでもう一度ご連絡しますと伝えました。 とにかく時間がないということを何度も何度も繰り返し言われました。 そして、日本政府が日本国民のことを思っているのであれば 残された時間はわずかであると繰り返し言われました。 お金を払う気はあるのか どうかと聞かれています。 要求に対して「日本政府」が答えていないといらだっている印象 ナレーション:小山芙美 そして中田氏は、ウマル氏から重要な依頼を受けたことを明らかにした。 中田考氏: 「翻訳してくれ」と 日本語のメッセージがきました。 ナレーション:小山芙美 ウマル氏が中田氏に翻訳を頼んだその日本語の音声メッセージというのが、これ。 (こんなところでコマーシャル入れるか!) ナレーション:小山芙美 イスラム国司令官のウマル氏が 中田考氏に翻訳を依頼してきた日本語の音声メッセージがあった。 中田氏が初めて明かした事実。 その音声がこれだ。 「私、ーーーーは、日本政府の代表である。 日本政府は日本人2名の無事な生還について真剣である。 当該2名のフルネームと生年月日はそれぞれ、 湯川遥菜1972年ーーーー 後藤健二1967年ーーーー である。」 ナレーション:小山芙美 メッセージの長さは25秒。 実在する日本のシリア臨時代理大使の名前で読み上げられイスラム国側が受け取っていた。 この音声について、本当に日本政府のものか確認したいとウマル氏は伝えてきた。 私、…は日本政府の代表である。 日本政府は日本人2名の無事な生還について真剣である。 当該2名のフルネームと生年月日はそれぞれ、 ユカワ・ハルナ、1972年、ゴトウ・ケンジ、1967年…である。 日下部正樹: これ、どこに送ったものなんですか? このウマル氏に送ったものなんですか? 中田考氏: ウマル氏に送ったものではないと思います。 あの、交渉のチャンネルがあったみたいで、 その中から送られてきたものだと憲法学者は言っておりました。 日下部正樹: 中田さんはどうしたんですか? 中田考氏: これが正しいものかと言われたので、 「私にも分かりません」 (メッセージの信憑性について) それについて、彼は信用していないと申しておりました。 私の方から、 これは緊急事態だと思いましたので夜中の3時、4時ぐらいだったんですけれども。 外務省邦人テロ対策室に連絡しまして本物かどうか問い合わせました。 これについては本物だというふうに思ってもらっていいというような表現だったと思います。 日下部正樹: ある意味、このメッセージは日本政府が出したもの? 中田考氏: そうですね。 日下部正樹: 思ってもらっていいと? 中田考氏: そういう言い方だったと思います。 ナレーション:小山芙美 外務省は「報道特集」の取材に対し具体的な交渉の内容は明らかにできないとしているが、 今回の事件の交渉内容を知る幹部は 日本語の音声メッセージをイスラム国側に送ったことを認めた。 音声メッセージの中で日本政府の代表を名乗ったシリア臨時代理大使は、 シリアの日本大使館が閉鎖されているため、 ヨルダンの日本大使館の参事官が兼務している。 現在ここまで http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/52232768.html |