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後藤さんは不自然なほど瞬きを繰り返していた(ユーチューブから)
「後藤さんの瞬きはモールス信号」説の“デマ” 映像検証でみえた「覚悟」
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150207/frn1502071529006-n1.htm
2015.02.07
「イスラム国」がインターネット上に公開したフリージャーナリスト、後藤健二さん(47)とみられる男性の映像が思わぬ波紋を呼んでいる。映像の中で男性が見せる瞬きが、「モールス信号によるメッセージではないか」との見方が広がったのだ。後藤さんの最期の訴えだったのか、それとも…。ネットなどで広がる噂を検証すると、卑劣なテロに屈することのなかったジャーナリストとしての「覚悟」が浮かび上がってきた。
議論になっているのは、1月20日にイスラム国が出した最初のビデオメッセージ。戦闘員とみられる黒装束の男がナイフを手に声明を読み上げる間、後藤さんとみられる男性は身じろぎせず、表情を崩すことはなかったが、その目はパチ、パチリ、パチと不自然なほど頻繁に瞬きを繰り返していた。
「モールス信号で何かメッセージを送ろうとしていたのではないか」という一部のネットユーザーの憶測が、ツイッターなどで一気に拡散した。
「メッセージは『タ・ス・ケ・ル・ナ(助けるな)』『ミ・ス・テ・ロ(見捨てろ)』という意味だ、との解釈もあった。動画サイトに検証映像が投稿されるほど注目が集まった」(メディア関係者)
モールス信号は、「トン」「ツー」と表現される短点と長点の組み合わせで文字を構成するもので、日本では、非常用の連絡手段として、一部の漁業無線、自衛隊の野戦通信、アマチュア無線などで用いられている。映像の中で、後藤さんとみられる男性の目を閉じる間隔が、この「トン」「ツー」を表しているとの観測があるが、実際のところはどうなのか。
モールス信号に詳しい国立弓削(ゆげ)商船高等専門学校・商船学科の多田光男教授(航海学)は、「指先や瞬きでも、信号に熟知している人ならメッセージとして伝えることは可能だ」としつつ、こう話す。
「ただ、映像の中の瞬きを確認しても、コードとして読み取れる規則性のある動作には見えなかった。そもそもモールス信号は、海上での通信手段としても使われなくなって久しい。いくら信号の知識にたけた人でも信号を送るというのは考えにくい」
アマチュア無線技士の資格を持つ元自衛官の軍事ジャーナリスト、神浦元彰氏も「瞬きだけで信号を送るのは非常に難しい。よほど精通していないとできない芸当で、後藤さんにそれができたかといえば、可能性としては非常に低い」との見方を示す。
どうやら「瞬き=モールス信号」という言説の根拠はかなり薄弱なものであるようだ。
「ヒガノクリニック」院長で精神科医の日向野春総氏は、「極度の緊張で起きた生理現象の一種だろう。人間は死の恐怖にさらされると思考がまひし、自律神経に乱れが生じる。典型的な現象として、視線が泳いだり、瞬きが増えたりする」と解説する。
「あれだけ過酷な状況で表情の変化があの程度に留まっているのは、胆力の強さを証明している。普通の神経なら、姿勢を保つことさえできずにその場にへたり込んでいるはずだ。よほどの覚悟がないとあれほど毅然(きぜん)としてはいられない」(日向野氏)
極限状態の中、最期まで取り乱すことのなかった後藤さん。その姿はテロリストの卑劣さを一層際立たせている。
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