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2015年02月07日
山本太郎が、参議院での全会一致を望んでいた与党政権に対し、棄権一票を投じた。そのことで、やいのやいのと騒いでいるが、唯々諾々と賛成に回った連中の、一番痛いところをつかれ、一人目立ったことへの嫉妬が渦巻いている。「空気」に支配、乃至は迎合している連中と、空気以外の行動原理で生きている人間との違いが、よく現れた事件だろう。彼が、全会一致から「イチ抜けた」の抜け駆けをしたわけだが、彼の多くの疑問点は、“そもそも論”から、理解可能だ。取りあえず、テロは悪いまでなら、彼も賛成だったわけで、政治家の一人として、自分の意思表示を明確にした点は、何ら文句を言われる筋合いはない。
ざっくり読んでみると、山本の主張は、多くの識者も、おそらく議員の半分近くが「本当はそうだけど…」という立場である可能性の方が高いのである。山本が提案している、以下の3項目は、有効な「テロ非難決議」に影響させようと思えば当然のことで、何の不都合もないはずだが、実は@に重大な問題点が含まれており、最終的にアメリカの不用意なイラク軍事介入が、元凶だという帰結を迎えるので、臭いものに蓋をしたうえで、国家が行動すると云う欠陥を露呈するのだから飲めない。ゆえに、山本は、そこを提案していると云うことだ。
@今回の事件の検証。イラク戦争の総括を含む。
A特定の国名の明記を避けた関係各国への謝辞。
B英訳文を同時に用意する事
≪ 山本太郎はテロリスト?!
「テロ非難決議を、途中退席した山本太郎はテロリストだ。」 そう思われた方。
採決に、賛成・反対ではなく、退席を選んだ理由、説明します。 その内容を理解した上でのテロリスト認定をお願いいたします。 まず、非難決議の本文を皆さんはご覧になったでしょうか? 特に問題なかった、そう思われた方もいらっしゃるかも知れません。 確かに、6行目までは、山本太郎も賛同です。
誘拐、殺害が許されることでないのは当然ですから。
*ここから参議院テロ非難決議
【シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議
平成27年2月6日
参議院本会議
今般、シリアにおいて、ISILにより二名の邦人に対し非道、卑劣極まりないテロ行為が行われた。本院は、この許しがたい暴挙を、断固非難する。また、御家族の御心痛を思えば言葉もなく、誠に無念、痛恨の極みであり、深い同情の念を表明する。 このようなテロ行為は、いかなる理由や目的によっても正当化されるものではない。我が国及び我が国国民はテロリズムを断固として非難するとともに、決してテロを許さない姿勢を今後も堅持することを本院はここに表明する。
我が国は、中東・アフリカ諸国に対する人道支援を拡充することにより国際社会の平和に寄与するとともに、国連安保理決議に基づいて、テロの脅威に直面する国際社会との連携と取組を一層強化するよう、政府に要請する。 さらに、政府に対し、国内はもとより、海外の在留邦人の安全確保に万全の対策を講ずるよう要請する。 最後に、本院は、我が国国民を代表し、本件事案への対応に際し、ヨルダンを始めとする関係各国、国際機関及び関係者によって示された強い連帯と、解放に向けてなされた協力に対し、深い感謝の意を表明する。 右決議する。】
ただ、後段部分に文言の追加と修正、一つの提案を山本太郎から、議院運営委員会に投げかけていました。
今回の決議に対する修正は、基本的には議院運営委員会の理事会派に認められると言うルールで、1議員がモノ申せる立場にないそうですが、「屈さない」「許さない」など場当たり的な、形だけの決議ではなく、国内でのテロを抑止し、国外に生きる邦人の安全確保の為にも、信託を受けた議員たちによる覚悟を感じる決議でなければならない、と考え、最低限の提案を以下の通りいたしました。
@今回の事件の検証。イラク戦争の総括を含む。 A特定の国名の明記を避けた関係各国への謝辞。 B英訳文を同時に用意する事
ザックリと順に説明します。
@ 今回の事件に関する細部に渡る検証が政治の場でも必要な事は当然です。 発覚から、犯行映像が出るまでの間、政府の指示は的確であったか? 拘束から殺害まで、関係機関が、どの様なルートに繋ぎ、危機管理の最高責任者がどんな判断をしたのか。
人質の存在を知りながら総選挙まで行った経緯、人質の生命が危険な状態に置かれる事を鑑みることなく行われた中東訪問と、演説内容などなど。人質の救出のために何がベストの方法であったのかも、検証が必要です。
特定秘密になる可能性に逃げず、説明責任を果たさねばならない事は沢山あります。
そして、今回の事だけでなく、何故イラク戦争にも総括が必要か。 今回、事件を起こしたISが巨大化した背景を考える責任が我が国にもあると考えるからです。
2003年、米国大統領が、「イラクに大量破壊兵器がある」「軍事行動をおこす」と演説し、その3時間後には、素早く支持を表明した日本政府。
その後、有志連合でイラクを破壊し、解体した後にわかったことは? 「大量破壊兵器は存在しなかった。」言いがかりを付けて他国に攻め入り、人々の主権を奪い、国を破壊した。
それを支持した日本や諸外国。 しかし、イラクから自衛隊撤退後、今まで10年近く、日本の政治も、社会も、イラク問題にはほとんど目を向けてきませんでした。
僕もその1人です。
イラク国内の治安は悪化の一途をたどり、シーア派による、スンニ派への民族浄化にも近い、虐殺が日常的に行われていた。 その中から、生まれた存在が、ISだったと聞きます。
スンニ派の住民が暮らすファルージャでは、スンニ派に対する乱暴狼藉を やめないマリキ政権に対する平和的なデモが行われ、それが国内各地に拡がり、大規模なデモにまで発展しましたが、参加者を射殺する武力鎮圧が行われていたと言います。
日本を含む国際社会は、無視を決め込み、メデイアは積極的に取り上げなかった。 今回、2人の邦人が危険な地域に足を踏み入れ起こった事件、と考えるのではなく、「大量破壊兵器がある」と決めつけ、「大量破壊兵器が見つからなかった」国を破壊し、放置した結果、その地域の治安が悪化、危険な状態に陥り、 生み出されたISや地域の混乱に関して少なくともイラク戦争から総括する必要があるのではないでしょうか。
A お世話になりました、とお礼を言う事は大切です。 しかし、特定の国名を挙げての謝辞は今は避けた方が良いと考えます。 この決議文では具体名が上がっているのは、ヨルダンですが、直接の空爆に踏み込んでいる国でもあります。 現在、武力攻撃を行っている国に対して、謝辞を述べる事は、リスクがあると考えます。 それも国民の信託を受けた国会議員の決議文にそれが記される事は、有志連合と一体になって、「屈しない」「許さない」と言う話にとらえられないでしょうか? 中東地域で現在、武力による直接攻撃を行っている有志連合国とは一定の距離を置かなければ、日本国内がテロの標的にされる可能性が高まる、と考えました。
B 総理の発言や発信が、英訳のされ方によって、考えていたよりも強い表現になってしまう、という事を私たちは何度も経験したのが、今回の事件だったのではないでしょうか。 日本の国会議員が揃って出す決議の内容を意訳されてしまわない様に、一言一句、こちらの意図通りの翻訳で、決議内容を英訳する必要性を提案しました。
以上3点を最初に紹介したような形で簡略化し、提案しましたが、 全く反映されませんでした。 より不安定な状態に自ら足を踏み入れる事に発展してしまった我が国に生きる人々、在外邦人への影響を最小限に食い止める為にも今回の問題提起を含む、採決途中の退席を選択した次第です。
最後に。 会派として(生活の党と山本太郎となかまたち)、賛成しているのに、1人だけ退席、これは内部分裂か?と想像力を働かせている方もいらっしゃいますが、御心配なく。 党内でたった1人違う意見や意思表示を許されているのが党議拘束なし、と言う我が党の考え方ですし、小沢一郎代表はじめ会派の方々とは十分協議して決めたことですので。 ≫(山本太郎公式HPより)
山本の説明が、説得力があるかないか、それも重要だが、一部異論があっても、「空気」に従う慣行が、日本議会における不文律ならいざ知らず、全会一致である事が、それこそ、真の国際社会に誤ったメッセージを発信するわけで、国会決議にヨルダンなんて、愚にもつかぬ特定国名を入れることは、断じてあってはならない。それだけでも、山本太郎の行動は意味がある。おそらく、彼の横紙破りのお陰で、真の国際社会へのメッセージは幾分是正されただろう。親アメリカ国家を掻き集めて、国際社会と平気で口にする連中は、ただのバカか、黒を白と主張する恐怖政治という「空気」に抗えない人間と云うことだ。
このような日本人の悪癖に断固波紋を投げかけた山本太郎の行動は、注目に値する。便宜上、小沢一郎とタッグを組んだが、あくまでも一便法に過ぎないだろう。彼が、これからの日本の政治シーンで、どれほどの活躍をするか、未定だが、彼のように、空気に絶対に逆らわない議員ではない存在は、これからの政治家に求められる資質の一つになるだろう。マスメディアが信用ゼロになった日本では、政治家が自らの行動で、ニュースを発信せざるを得ない閉塞国家になりつつあると云うことだ。これが恐怖政治型の重大な欠点であり、イスラム文化圏や中東の反アメリカ系国家に対しては、テロ国家と名指しされる憂慮から逃れる方法だ。以下は、日本のメディアが触れない部分を、ガーディアン紙が代弁してくれている。
≪ 人質殺害後、岐路に立つ日本
The Guardian 紙が2月1日に東京特派員発のKilling leave Japan's pursuit bigger foreign role at the crossroad (「死者が出たせいで、国際関係で目立とうと思っていた日本の足が止まった」)という記事を掲載した。 現在の日本の政治状況について、日本のどのメディアよりも冷静で、かつ情報量が多い。たった一人の特派員(取材対象から見て、たぶん日本語ができない記者)の書く記事の方が、何十人何百人を動員して取材し、記事を書いているマスメディアより中身があるというのは、どういうことなのだろう・・・
『 国際関係においてこれまで以上に目立つ活躍をしたいという日本政府の決意は、イスラム国(ISIS)の活動家による市民二人の暴力的な死を迎えて、岐路に立っている。
日曜の朝、日本は後藤健二の斬首という残酷なニュースで目覚めた。同国人湯川遙菜が同じ運命をたどったその一週間後のことだった。日本はそのとき自分たちがISISの標的リストに登録されたことを知ったのである。
「積極的平和主義」とは記録的な軍事費支出、武器輸出、戦後日本の外交的なレゾンデートルに対する法改正による攻撃といった一連の政策を正当化するために安倍晋三首相が用いてきたこれまでより強硬な防衛構想のことであるが、その適否がこれから問われることになる。
ISISに対する非難を一通り済ませたあと、安倍はシリアでの出来事に関与するものと見られている。それが結果的に日本国民を危険にさらすことになろうとも、アメリカの有力な同盟国であり、かつ中東の石油の輸入国という立場にある以上、日本はこの地域の安全を保証するためにこれまで以上に大きな役割を演ずるべきだということを示すためにである。
後藤の斬首映像が発表された後も、安倍は強硬姿勢を変える様子がない。 「ご家族の悲しみを思うと、言葉もありません」と明らかに動揺した様子で語ったあと、安倍は日本は引続きISISと戦う国々への人道的支援を続けると述べた。
後藤の死は激しい嫌悪感をもって迎えられたが、安倍はこれを奇貨として、憲法が彼の国の軍隊に課している制約(憲法九条の下では自衛隊の活動は専守防衛に限定されている)を緩和したいという彼の宿願を達成しようとしている。
「今回の悲劇は九条の再解釈と自衛隊の海外活動の軍事的権限の拡大を計画する安倍の決意を強めただろうと私は見ている」とMark Mullins (オークランド大学教授、日本研究)は語っている。
「彼がこれまでこの問題のために注ぎ込んだ政治資本を考えると、彼が立場を転換させるということはありえない。」
二年前に首相の座に就いて以来、安倍は過去10年以上にわたる軍事費削減の方向を反転させ、中国の領海侵犯と北朝鮮の核兵器プログラムに対して強硬姿勢を示してきた。
これらの問題は日本の安全と領土の保全に直接かかわる地域的な問題である。しかし、複数の専門家によれば、安倍は最近の中東歴訪中に、2億ドルの人道支援に加えて、ISISに対する軍事作戦を公然と支持するという無謀な挑発行為をとった。
中野晃一(上智大学教授・政治学)は、日本人の多くは同胞の死のあと、安倍外交に対してはこれまでより用心深く対応するものと見ている。
しかし、かれはこう付言している。「政府はこれから先、この事件を根拠に、軍事活動についての憲法上の制約を解除することの必要性が一層高まっており、『テロとの戦い』においてこれまで以上に大きな役割を引き受ける必要が出て来たと主張することになるだろう。」
「過半の日本人がこの問題について『なんだかわからない』『自分には関係ない』という態度をとる一方で、相当数の日本人はこの考え方に同意するだろう。」
にもかかわらず、昨年末の総選挙で、歴史的な低投票率で彼を政権の座に送った有権者たちが安倍の最大の敵になる可能性もある。
「日本の軍事的役割を拡大することを求めた法律はこれから議会を通過しなければならない。だが、近年の事件を考えると、法案は簡単には議会を通らないだろうし、議案の審議過程で日本がこれから向かおうとしている方向についての国民的な議論が巻き起こることになるだろう」とMullinsは述べている。
安倍は今のところは憲法9条の即時改定については断念している。国民投票で過半数をとれる確信がないからである。
その代わり、彼はアメリカの起草した文書を再解釈しようとしている。彼と彼の率いる保守勢力は、70年に及ぶ平和と繁栄にもかかわらず、憲法こそが戦争の歴史についての『自虐史観』を創り出した元凶と見えているのである。
憲法の再解釈と、関連法制の整備によって、日本の軍隊は戦後はじめて外国領土での戦闘が可能になる。ただし、それは同盟国が攻撃を受けたときにそれを防衛する場合に限られるが。
少なくとも、安倍は人質危機に対する日本の危機管理能力を強化するだろうと見られている。2013年はじめのアルジェリアでの起きたテロリストによる攻撃に際しては、救出のための軍事行動が法律で禁じられていたせいで、対処の不適切さが露呈したからである。
しかし、外交的な冒険主義は結果的に日本をアメリカの「副保安官」にしてしまう可能性があるが、そのような冒険主義に対する世論の傾斜はこのところ少しは緩和しているようにも見える。
それに、自民党内のハト派勢力が、安倍が70年にわたる平和主義的ドクトリンを根こそぎにするのを座視しているという保証はない。
「斬首のニュースを受け止めて、恐怖感を覚えた後に、世論がどういうふうに振れるかは予測できない」とJeff Kingstonテンプル大学教授(アジア研究)は述べる。
「安倍支持の旗の下に結集するという動きがあるだろう。彼がこの危機を無駄にするはずがない。今期の国会審議を利用して、日本の自衛隊の活動強化とアメリカとの安全保障上の協力の必要性を言い立てることだろう。しかし、大衆は安倍の安全保障政策と、反ISIS勢力に同調することの明らかなリスクに対して、 深い懸念を抱いている。」 』 ≫(内田樹の研究室より)
URL: http://blog.tatsuru.com/
筆者の感覚的な、現在のわが国の政治家、官僚、マスメディア、識者連中は、「安倍はヤバイ。居なくなるまで、口を閉ざしておこう。何をされるか判ったもんじゃない」と云う空気に満たされている指摘しておくのが妥当だろう。誰も、凋落中の覇権国家の「副保安官補」みたいな立場になりたいなどと思ってはいない。しかし、あまりにも危険な狂気を抱えているので、立ち竦んでいるのが、今の日本だ。
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